企画もの

1500コメント&500拍手御礼「鱒」

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 こういうの、関西では「嬉しがり」っていうんですけどね(^^。。。
 節目のhit、コメント、拍手、本ブログ中の記事数、第何部完了、そのようなときには企画作品をアップしたくなります。
「企画もの」というカテゴリも作ってしまいました。

 このたびは拍手とコメントの数が500に関連した数字になりましたので、5にちなんだタイトルです。
 1500コメントは大海彩洋さん、500拍手は「メタボ」に拍手を下さった方でした。ありがとうございまーす!!

 え? なぜ鱒? と疑問に感じられた方は、読んでやって下さいませ。お読みになってから、くだらなーい!! って怒らないで下さいね。



「鱒」

 
 なんだってまたこんなことになったのかと言えば、500、1500という数字のせいだ。
 
 フォレストシンガーズがメジャーデビューしてからの数年は、単独ライヴはやれなかった。歌える仕事といえば着ぐるみショーのおまけだとか、CDショップ前での街頭ライヴだとか、地方都市のスーパーマーケットでの無料ライヴだとか。

 歌えるのならば幸せだったから、それはそれでよかったのだが、テレビではバラエティ番組ばかりで、突撃リポートコーナーだの、雪の中で走り回るだの、炎天下で料理を作るだの、そんな仕事ばかりだった。

 それでもいつしか、歌が中心のショーに出られるようになり、フォレストシンガーズのみのライヴがやれるようになった。デビュー十年をすぎた今年の年末特別ライヴについて、マネージャーの山田美江子が言ったのだった。

「今度のライヴ、フォレストシンガーズ単独としては500回目なのよ。特別企画をやらないといけないね」
「そうだったか。うん、なにか考えないとな」
「フォレストシンガーズ単独ではない、歌えるショーの出演回数は1500回目でもあります」
「そっちのほうがはるかに多いんだ。だけど、歌えるショーってのはどのあたりからカウントしてるんだ? 山田が数えたのか」

 リーダー、本橋真次郎の質問に、山田はうふふと笑って、めでたいよね、よかったよね、と言いながらスタジオから出ていきつつ、振り向いた。

「あ、そうそう、お祝いっていうんでもないんだけど、その話をしたら、「向日葵」のマスターが特別ランチを作ってくれるって。今日は練習なんだから抜けられるでしょ? 行ってきたら?」
「ミエちゃんは行かないの?」
「私は仕事があるから、行くんだったら連絡しておくよ」

 そしたらお願いしようかな、と乾隆也が言い、山田が頼んでくれたのだろう。フォレストシンガーズ行きつけのレストラン「向日葵」にランチを食べに出かけることになった。

 学生時代から合唱部の先輩が通っていた「向日葵」は、昼間はレストラン、夜は洋風居酒屋にもなる店だ。味はいいのに客が少ないのは、わりあいによく有名人がやってくるせいでマスターがそう操作でもしているのだろうか。

 少々変人のように見えなくもないマスターは、謎めいたところのある人物だ。ただ、縦横ともに大きな彼は、いかにも美味な料理を作るシェフにも見える。今日もランチにしては豪華なシーフードのフルコースを出してくれた。

「今日はいい鱒が手に入りましたので、前菜はノルウェーふう、鱒のムースパンケーキ巻き、メインディッシュは鱒のブールブランです」

 本日の仕事は夕刻からなので、ランチをゆっくり楽しめる。談笑しつつ鱒料理メインのコースに舌鼓を打っていると、乾が言った。

「シューベルトに「鱒」って曲があるだろ。あれって歌曲だったよな、本橋?」
「ああ、歌曲だけど、ピアノ五重奏曲「ます」D667の第4楽章は、歌曲を主題とした変奏曲だな。「ます」全体の主題も素材として『鱒』の旋律と関連づけられてるんだ」

 ます、鱒って音は同じだね、と三沢幸生が笑い、乾は言った。

「つまり、シューベルトのマスっていえば、歌曲でもありピアノ五重奏曲でもあるわけだよ。うちのリーダーはピアニストでもあるんだし、五重奏曲っていえば人数的にも、今回の特別企画にもぴったりだろ」
「五重奏をやるのか、俺たちが?」
「五重奏って楽器はなにを使うのかな」

「ピアノと弦楽四重奏の楽器編成、二本のヴァイオリンとヴィオラ、チェロってのが一般的だけど、シューベルトの『鱒』はピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスだ」
「五重奏なんだから、器楽のほうを選ぶべきだよな」
「俺たちが?」

 えー? 俺たちだったら歌でしょ、と木村章は言い、乾は言った。

「歌曲の「鱒」は五とは無関係だよ。今回は500、1500、おまけに俺たちフォレストシンガーズの5と関連づけるべきなんだから、五重奏をやらなくちゃ」
「歌曲のほうは、男はこうやって女をたぶらかすんだから、お嬢さんたちは気をつけろって寓意があるそうだよ。歌詞の意味はいいとしても、そもそもドイツ語だぜ」
「日本語訳って手もあるけど、歌曲のほうを五に関連づけるのはこじつけがすぎるよ」

 年長のふたりが乗り気になっているのだから、年下の三人は従うしかないと本庄繁之は思う。だけど、俺は楽器は苦手だ。その不安が頭をよぎったので言ってみた。

「乾さんも章もギターが弾けるんだから、ヴァイオリンやヴィオラ、チェロってのは大丈夫でしょ」
「シゲ、同じ弦楽器とはいえ、ギターはヴァイオリンやチェロより易しいんだよ」
「そうなんですか」
「シゲはベースマンなんだから、コントラバスをやれよ」
「……やれと言われるならば」

 いやだとは言えるはずもない。コントラバスならばさわったことはある程度だが、声と楽器の差こそあれ、ベースはベースだと繁之は腹をくくることにした。と、章が歌い出した。

「なんやかんやと 溢れてるけど
 ここにあるもの ここにないもの それで全てです

 今言えること それはなんだろう
 生きてることと 死んでくことと
 それくらいです
 他にも何かないかと思いまして 歌を歌ってるわけです

 あなた一人と 他全人類
 どちらか一つ 救うとしたら
 どっちだろかな?
 迷わずYOU!!!!」

 んん? この歌は? 頭をひねって思い出した幸生は言った。

「その歌は「ます」だったよな。ですます、の「ます」だろ。それがなにか?」
「この歌だったら俺はギターで弾けるし歌えるって……こじつけだって言ったら同じようなもんじゃないですか。俺にはギター以外の弦楽器なんか無理ですよ」
「俺はギターも、おまえ以上に下手なんだよ」
「幸生は器用だろ。俺は不器用なんだよ」
 
 マス料理なんてものを出してきたマスターは、無意識だったのか、ヒントを与えるつもりだったのか。そこでひらめく乾さんも乾さんらしい、と幸生は思う。

「ピアノ五重奏ってのは? リーダー、講義して」
「ああ、っと……」

 乾に促された本橋が語りはじめた。

「ピアノ五重奏とは、一般にソナタと同じ複数楽章から構成されるんだ。すなわち、急-緩-舞-急の4楽章または急-緩-急の3楽章から成っていて、第1楽章がソナタ形式となっているのが基本的な形だな。「鱒」はアレグレット、4分の2拍子。変ニ長調。冒頭はピアノの6連符により……」

 空腹が満たされたものだから眠くなってきそうなのを耐えて、繁之は真次郎の講義に耳を集中させる。
 人気商売は日々これ修練だ。突然思いもかけず、俳句を詠めと言われたり、書をものしろと言われたり、芝居をやらなくてはならなくなったりもした。そうしてファンの方々に飽きられないようにしなくてはいけないのだ。当然なのだ。

 クリスマスコンサートのためには楽器の練習か。日数はあるのだから、なんとかみんなについていげるようにがんばろう。人気が出てきたらそれを維持するのも、我々のつとめなのだから。
 

END

というわけでした、どうもすみません。シャレみたいなものですね。
みなさま、今後ともコメントや拍手も、よろしくお願いします。




DSC05051.jpg
本文とは関係ないんですけど、JR和歌山駅のこの足跡はここに続いています。
たま駅長





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~ Comment ~

おお。5もの、おめでとうございます^^
さらりと企画ものを描いてしまうなんて、あかねさん、さすがです。

鱒メニューがおいしそうですね。
昼から白ワインで^^

ますと5がつながったお話、みんなでわいわいしているところが楽しいですね。
この話、クリスマスコンサートまでつながるのですか。
いらぬ期待をしてしまうかも^^

けいさんへ

ありがとうございます。
チャンスがあれば企画ものを書きたがり、ネタがなくて四苦八苦しているあかねです。

今回もなんだかこじつけただけで、恐縮です。
こんなのでも楽しいと言っていただけると、書いた甲斐がありました。

ここからクリスマス企画につなげる。
それ、いいですね。
そこまでは考えていなかったので、けいさんのご提案、ありがたくいただきます。

早くそのころになって涼しくなってほしい。
日本はもう~~、体調がおかしくなるほどの猛暑で、スキンヘッドにしたいっ!! などと叫んでいるほどなのです。

鱒を絡ませてしまうところが、たのしい^^
鱒って、なんって読むんだっけ、と一瞬焦ったのは内緒。
(だって、あまりお目にかからないんですもん><)

ピアノ五重奏と聞いて、ピアノが5台並んでいるのを想像したことも、内緒です! 音楽のことも学べて、楽しいSSでした。
フォレストの5人のクリスマスが楽しみです^^

さらっと企画モノを書けてしまうあかねさんが、うらやましい~。
そういえば、クリスマス企画しか、やったことないです。
リクエストや、お題企画とかやってみたいけど、書けなかったら申し訳ないので、なかなか手が出せません。

コメントや拍手、トータル数が表示されるんですよね。
見てみよう。
ああ、なにか企画モノ、やってみようかなあ・・・。

それにしても・・・・暑いですね^^;

あ、知りませんでした^^;

なんと、そんな記念すべき数を踏んでいたのですね!
しまった。知っていたら、リクエストするんだった。
でも、5にまつわるお話、楽しませていただいたので良かったです(^^)
う~ん、でも本当にあれこれたくさん出てくるのですね。
あかねさんの風呂敷のおおきさ、というよりも、風呂敷の数に驚きまくりです。
この「ます。」は知りませんでした。思わず調べちゃった(^^)
シューベルトのほうの「鱒」は、昔、シューベルトが気に入っていて(というのか、『魔王』にやられたというのか。なんだ、この人は、この若さでなんて曲を書くんだ!と)、何度も彼の歌曲を聞いたことを思い出しました。
ちなみに、私がこれから連載する中編は、「死と乙女」です。偶然ながら、1500コメントを踏んだ私もシューベルト……御縁を感じました。
御縁と言えば、5円。
お後がよろしいようで……(^^)

limeさんへ

いつもありがとうございます。
食べておいしいのも鱒よりも鮭ですよね。

四重奏とか五重奏とかいうのも、さまざまなバリエーションがあるんですよね。
クラシックでもロックでもジャズでも、バンドや楽団で使う楽器パターンがいろいろあると、私も勉強しました。

で、フォレストシンガーズ秋物語(夏物語は八月中に終える予定です)のひとつとして、続編も書いています。

ブログの「Admin」を開くと、コメントや拍手の数が見られるページがありますよ。
私は次はブログ四周年記念で、「4」を考えています。
limeさんの企画作品も読みたいな。

limeさんの場合は絵、漫画という手もありますよね。
今度なにかありましたら、楽しい企画をアップして下さいね。

ああ、それにしてもほんと、暑いですね。
最高気温が30度以下になる日を待ち焦がれてしまいます。

大海彩洋さんへ

はーい、1500コメントは大海さんでした。
いつもありがとうございます。

もしもなにかリクエストしていただけるのでしたら、ぜひぜひお願いします。
こんなの書いて、だとか、この続きはどうなるの? だとか、このキャラの性格からして……などと言ってもらうと、張り切って書きたくなる性格です。
私にできるようなことでしたら、リクエストして下さいね。

クラシックはなかなか、タイトルが覚えられません。
最近はyou-tubeのおかげで便利になりましたが、世界が広すぎてむずかしいですね。

大海さんもシューベルトものを書いておられるのですね。
ほんと、五円、ご縁がありますね。読ませていただくのを楽しみにしています。
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