連載小説1

「We are joker」25 

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「We are joker」

25

「松下に同窓会の誘いの電話したの、おまえ?」
 尚のケータイに残っていた着信履歴を見て、冬紀はその番号に電話をかけた。
「急になによ、そうだけど……ああ、友永くんの声だね」

「その声は……緑? 幸子? ユミ? 真菜? ももこ? 桜? すみれ? えーっと、もっと喋れよ。女だってのは松下にだってわかったみたいだけどさ」
「友永くんが喋りっぱなしだと私は喋れないでしょっ」
「お、わかった、大槻だ」

 ほんの三、四年前なのに、はるかなる過去のように思える、高校三年間を通じてクラス委員だった、大槻優子の声だ。

「女の子の名前を並べ立てたのはなに? 緑、幸子、ユミってクラスメイトはいたけど、桜とかすみれとかってのは?」
「みーんな、俺の彼女だよ」
「……言ってろ」
「それはいいんだけどさ、大槻、太ったんじゃない?」
「電話でわかるものなの?」

 同窓会幹事をつとめるらしいから、大槻は発信者不明の電話にも出たのだろう。首をかしげる気配が伝わってきた。

「俺ら、仕事柄音には敏感なんだよ。声で人の変化ってのもわかるんだ。大槻は相当太っただろ。高校のときには俺よりは二十センチほど低くて、体重も二十キロほどは少なかった。上から、八十二、六十、八十三ってところだったかな」
「あんたねぇ……」
「体重は五十五キロほどになり、上から、八十、七十、九十ってくらいに変化したかな? 下半身にばっかり肉がついてさ」

「そこまでではないけど……」
 あてずっぽうのつもりが、太ったのは事実だったのか。面白くなってきたので、冬紀は続けた。

「高校のときって何キロだった? 身長は百六十はないだろ」
「百五十七、四十五、ってところだったかな」
「バストウェストヒップは?」
「友永くんが言った通り、だいたいは」

「だろ? 俺、そういうのって得意なんだ」
「馬鹿な自慢をしないのっ!!」
 このもの言いは、高校のときとまるで変わっていなかった。

「体重はねぇ……もういい。友永くんは同窓会に来なくていいからねっ」
「そう言われると行きたくなるな。おまえがどんなデブになったのか、見にいってやるよ」
「来なくていいのっ」
「俺のケータイにも、この番号、登録しておくよ。おまえもしておいて。メルアドも教えて」

 さほどに腹を立てたのでもないようで、大槻は冬紀の言う通りにしてくれた。
 最初に知らせを受けた尚は、大槻優子が電話をしてきたとも気づいていない。それを聞いた伸也も、確認する手段を実行していない。面倒だから、誰だっていいから、ではあったのだろうが、女からの電話なのだから、冬紀はたしかめてみたかった。

 ライヴハウスでの待ち時間に尚のケータイをいじって、大槻優子だと調べをつけて、ふたりには内緒にしておこうと決めて笑う。尚と伸也はコンビニに行っていて、「ホーリーハウス」の楽屋には冬紀がひとりきりだ。
 同窓会についてはひとまず忘れて、冬紀は楽屋の畳に寝そべった。

 山根ももこの引きもあって、このライヴハウスで定期的に演奏する仕事をもらえた。真菜にもすみれにも仕事の話はしたものの、演奏する日時までは言っていない。調べてやってきたとしても、ふたりが鉢合わせはしないだろう。

「どっちかひとりにしろよ」
 真菜ともすみれとももとに戻ったのを知っている尚や伸也は、そう言いたそうに冬紀を見る。ホテルには一度行っただけの、ももこにも言われた。
「若いうちは遊びたいのはわかるけど、調子に乗ってると大怪我するよ」
 悠木芳郎にも言われた。
「無名のうちはまだいいけど、売れるとおまえ、週刊誌やワイドショーに追っかけられるぞ」
「友永冬紀を追っかけてると、なにかしらネタが拾えるってな」
 中尾勝彦にも言われ、内田まり乃にも言われた。
「そういう意味で、私には友永くんがいい男だとは思えないのよ」
 みんな、勝手に言ってろ、と冬紀は思っている。

 どうしてひとりだけの女としかつきあったらいけないんだ? 結婚しているのでもあるまいに、この若さでなぜ、誰かに縛られなくてはならない? 俺は好きになった女の子とは何人だってつきあいたい。自然にまかせてもいいじゃないか。

 誰もわかってくれないんだったら、わかってくれなくてもいい。だけど、好きな女にはわかってほしいな。俺の気持ちをわかってくれる複数の女の子とつきあいたい。そんな女が数人、どこかにいないだろうか。俺の好みに合った外見と中身の持ち主が三、四人いたらいいのにな。

つづく




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