ショートストーリィ(しりとり小説)

30「どの子がほしい」

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しりとり小説30

「どの子がほしい」


 庭に出したデッキチェアに腰かけて、ほーほー息を吐いていた姉の奈々が言った。
「セイなんかいいよねぇ」
「なにがいいの?」

「なんの悩みもなくて、恋もまだしたことがなくて……」
「僕、彼女いるよ」
「なにぃーっ?!」

 そんなにびっくりしなくてもいいでしょ、と清七朗が言いたくなるほどにびっくり顔をした奈々は、真剣に問い質した。

「どこまで進んでるの?」
「進んでるって?」
「あ、ううん、あの、セイ、告白したの?」

「彼女がコクハクしてくれたんだ」
「コクハクって言葉、知ってるんだね」
「常識でしょ」
「小学校一年生の分際でーっ!!」

 今度は、そんなに怒らなくてもいいでしょ? ってか、なんで姉ちゃんが怒るの? といった顔になって、奈々は言った。

「彼女ってなんて名前?」
「ヒマリちゃん」
「ヒマリちゃんはセイになんて告白したの?」
「姉ちゃん、こんな歌、知ってる?」

「たーんすながもち どの子がほしい

 あの子がほしい

 あの子じゃわからん

 この子がほしい

 この子じゃわからん」

 京都の学校から転校してきたヒマリちゃんが、みんなにこの歌と遊びを教えてくれた。「花いちもんめ」という遊びだそうで、みんなで手をつないで横一列になって向かい合ってこの歌を歌い、相談しましょ、そうしましょ、とやるのだそうだ。

 おばあちゃんっ子らしきヒマリちゃんは、今どきの子どもは知らない遊びを清七朗の学校に持ち込んだ。清七朗たちには新鮮だったから、先月はみんなして「花いちもんめ」にはまってしまっていたのだった。

 先週の火曜日の昼休み、ヒマリちゃんと清七朗は別々のグループに分かれて「花いちもんめ」をやっていた。たーんすながもち、というのがなんなのか知らないが、響きが面白くていつものように遊んでいたら、ヒマリちゃんのグループが言いはじめた。

「どの子がほしい
 あの子がほしい」

 相談しましょ、と言ってから本当に相談して、○○ちゃんがほしい!! とやるはずなのに、そのとき突然、ヒマリちゃんが勝手に言ったのだった。

「セイちゃんがほしい!!」

 あれれ? そんなのルール違反じゃない? 他の全員はそう思ったはずなのだが、ヒマリちゃんはグループから抜け出して清七朗を見つめた。

「ヒマリはセイちゃんが好き。これでコクハクしたよ。返事は?」
「え、ええーっと、つきあおうってこと?」
「うんっ」

 一瞬、頭の中が真っ白になったものの、うなずいた清七朗の手を握り、ヒマリちゃんはにっこりした。両方のグループのみんなは次の瞬間、ひゅーひゅーっ!! カップルだーっ!! と囃したてた。

「今どきの小学校一年生ってませてる」
 話を聞き終えた高校一年生の姉は言い、清七朗も言った。

「たんすながもちってなに?」
「タンスはほら、洋服を入れるあれだろ」
「ちがうよ、タンスナガモチだよ」
「それでひとつの言葉? そんなの知らないよ」

「ママも知らないっていうんだよ」
「そんなのどうでもいいけどさ、セイ、女の子とつきあうんだったらしっかりしなよ」
「うん、だいじょぶ」
「どこが大丈夫なんだか」

 清七朗としても、「タンスナガモチ」のなんたるかなんてどうでもいい。それよりも、僕に彼女ができた、という喜びが大きい。
 どうしっかりすればいいのか、どう大丈夫なのか、自分でもよくわかっていないけれど、このごろは毎日が輝いていて、これぞ「ぴっかぴかの一年生」なのかと思うのだった。

次は「い」です。


「主人公について」

蛇足ながら、小さなストーリィの各主人公について補記しておきます。
30は4「お帰りなさい」の奈々の、父親ちがいの弟、清七朗です。「ナナ」の弟だから「七」という理屈なのですが、七の弟は八ではないのか、お父さん?


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