ショートストーリィ(しりとり小説)

22「テンダーレイン」

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しりとり小説22


「テンダーレイン」

 小走りになって道を急いでいるユッコと同級生のそばに、車がすーっと停まった。
「乗っていかない?」
 窓から顔を出したのは見知らぬ男で、ユッコはぶんぶん頭を振った。

「けっこうですから、走っていきますからっ!!」
「おまえに言ってねぇよ」
「うん、おまえは乗らなくていいよ」
 助手席にも男がいて、彼も運転席の男の隣から言った。

「そっちの彼女、乗りなよ」
「おまえのほうは雨なんてへっちゃらそうな身体つきをしてるけど、そっちの彼女は雨に濡れると風邪を引きそうな華奢な身体つきだもんな」

「濡れると毒だよ。乗っていけよ」
「送ってあげるからさ」
「えー? ユッコは?」

「ユッコだかなんだか知らないけど、そいつはいいの」
「きみだけ乗りなって」
 同級生は乗りたそうな顔をしていて、男たちは熱心に彼女だけを誘っていた。

「こっちは男ふたりいるんだしさ、変なことなんかしないよ」
「純粋に親切心で言ってあげてるんだよ」
「うーんと……ユッコも一緒だったら……」
「まぁ、きみがそう言うんだったら、ユッコも乗ってもいいけどね」

 そんな奴らの車に乗ったら、なにをされるかわかんないよっ!! と言ってやるべきなのはわかっていた。が、同級生はユッコを同情のまなざしで見て、乗せてもらう? などと尋ねる。勝手にすればっ!! と声には出さずに叫んで、ユッコは小雨の中を走り出した。

 本当は同級生の手をつかんで一緒に走ればよかったのだろう。けれど、自分が惨めに思えてきて、頬に涙が伝うのも感じて、そんな余裕もありはしなかった。

「いいんだ、いいんだもんっ!! 私は一生……」
 ナンパなんかしていらないもん。おまえじゃねえよ、って言われるほうが、身の危険にさらされるよりもいいもん。

 でも、私だって女の子なんだから、そういう身の危険を一度くらいは……
 ううん、ううんっ!! そんなの、いらないのっ!! 雨の中をユッコは走る。すれちがった小学生の男の子たちの声が聞こえた。

「うわっ!! 今の、人間?」
「高校生のお姉さんじゃないのか? 太かったな」
「制服着てたよな。高校生か」
「身体つきはおばさんみたいだったけどさ」
「コスプレしてるおばさんだったりして」
「キモォっ!!」

 げらげら笑う失礼な子供たちの声が遠ざかっていく。
 激しさを増す夕刻の雨が、ユッコにはあったかく、優しく感じられる。泣きながら走っていたって雨がまぎらわせてくれるから、もっともっと降ればいい。もっともーっと。

次は「いん」です。


「主人公について」

蛇足ながら、小さなストーリィの各主人公について補記しておきます。
22のユッコは、フォレストシンガーズがいた大学合唱部のメンバーで、美江子とは仲良しでした。ユッコの高校時代の悲しい思い出です。
なお、「ん」で終わるのは反則だとのご意見もございましょうが、次は「いん」からはじまるタイトルにしますので、見逃してやって下さいね。




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