ショートストーリィ(しりとり小説)

21「連翹の花ゆれて」

 ←イラストストーリィ(Alby&あかね)「オーディション」 →キャラへの質問(真柴豪です)
imagesre.jpg
しりとり小説21

「連翹の花揺れて」

精神的BLです。
過激さはゼロですが、嫌いなお方は避けて下さいね。


 飲み会の前に先輩に言われていた。
「この間、テレビで大学新入生の無茶飲み、先輩たちの無茶飲ませなんて話題が出てたけど、そもそも大学一年生は酒は飲めないはずじゃないか。おまえらは十八か十九だろ?」
「あたしは二十歳でーす」
「僕は二十二でーす」

「……そういう年の奴はいいとして、例外以外は飲むな。俺たちも飲ませないからさ」
「そしたらなにを飲むの?」
「ウーロン茶だよ」
 ノンアルコールカクテルやノンアルビールだってあるのだから、お酒は飲めなくても「飲み会」は成立する。僕も楽しく参加していた。

「よっ、楽人」
 サークルの飲み会がおこなわれている居酒屋の一画から見えるあたりに立って、僕の名前を呼ぶひとの顔を見て、僕は一瞬くらりとした。
「雷太さん……」

 彼とは同じ小学校で、可愛がってもらっていた。四つ年下だからみんなで遊んでもらうにしてもみそっかす扱いされていたけれど、雷太さんのそばにいられるだけで嬉しかった。

 中学校、高校と雷太さんはサッカーをやっていて、僕は彼と同じ学校に入学し、けれど、年齢的に彼と同時に学校には通えなかった。雷太さんが中学生のときには小学生として、高校生のときには中学生として、遠くから見ていた。

 四歳の年の差は僕たちの仲を阻む。大学だって僕が入学したら雷太さんは卒業で、一緒には通えない。けれど、せめて雷太さんと同じサークルに入りたかった。

「先輩」
「雷太先輩」
「きゃあ、雷太さんに会えるなんてっ」
「来て下さって嬉しいですよ」
 サークルの他のメンバーたちが雷太さんを取り囲んでしまって、僕ははじき出される。

 OBとして飲み会にやってきてくれた雷太さんは、後輩たちに大人気だ。女の子たちはきゃっきゃっと言っているし、男子たちも喜んでいる。雷太さんは僕にはひと声かけてくれただけで、離れた席でみんなと飲んでいた。

「いや、それでも俺はサッカーは好きだから、見るほうに回ってサッカーファンのサークルで活動するのも楽しかったよ。きみたちもサッカー好き仲間なのは同じだもんな」
「膝はどうなんですか?」
 誰かが訊くと、雷太さんは笑って答えた。

「普通にしてる分には問題ないよ。走るのだって大丈夫だ。サッカーだって遊びでだったらできなくもないんだよ。やらないけどね」
 高校三年生のときに故障して、サッカーがやれなくなった雷太さん。だから大学ではサッカーファンのサークルに入ったのだとは、本人は言わなくても僕は知っていた。

 ずっとずーっと、近くにいるようでいて遠かった雷太さん。今でも同じだ。どうせ僕は彼とはこれだけの仲なんだから、阻まれるもなんにもありはしない。雷太さんは就職もして大人になって、ますますかっこよくなったよね。

 そう思いながら、雷太さんが他の人たちと話しているのを聞きながら、僕はそのへんにあるノンアルコールカクテルを飲んでいた。

 座が乱れてきているので、どのグラスが誰のだかわからない。僕だってどのくらい飲んだのかもわからない。フルーツ味やらビール味やらのノンアルカクテルは美味で、食べるよりも飲んでばっかり。まるで自棄酒みたいだ。

「……ラクト、おまえ、顔が赤いぞ」
 聞くばかりでお喋りもせずに飲んでいて、その声に顔を上げた。
「雷太さん……」

「未成年のくせに飲んだのか?」
「ノンアルだよ」
「そんなはずねえだろ。これなんかは……」
 僕の手からグラスを取り上げて、雷太さんが中身を飲んだ。

「酒に慣れてない奴だったら区別がつきにくいだろうけど、こいつにはアルコールは入ってるよ」
「ノンアルコールカクテルも、飲むとなんだかほわっとしたりするんですよね。あれは錯覚だろうけど、たしかにどっちだかわかりにくくても無理ないかも。ラクトくん、大丈夫?」
 女性の先輩が尋ねてくれ、僕は言った。

「らいりょうぶ……れもさ、ノンアルじゃなかったの? ひゃはは、えへへ、いい気持ちらーっ」
 なにを言ってんだよ、こいつはよ、と男の先輩たちは呆れている。あっちでもこっちでも、あれれ? これはノンアル? なんだ、これ、アルコールアリだよ、などとみんなが言っている。

 全部が乱れてきて、飲み物のアルコールが入りなのか抜きなのかさえもが乱れてきているみたい。僕みたいになっている人もいるのかどうか、僕にはわからなかったけれど、気持ちいいんだからどうでもいい。

 へらへら笑ってよろめく足取りでトイレに立った。トイレには行けたのだが、僕がすわっていた席に戻る途中で倒れそうになったら、支えてくれた人がいた。

「送っていってやるよ。おぶされ」
「ら、らいりょうぶだから」
「いいから」
 強引に背負われて外に連れ出される。広い背中だな。いい気持ち、なのに切なくて……。

「お金は……らいりょうぶ?」
「大丈夫だよ。おまえの分くらいは俺が出した金で足りるだろ」
「ごひほうはま……」
「ごちそうさま? 意味がわからないから黙ってろ」

 黙っていよう。だって、これ以上喋ったら言ってしまうかもしれないもの。「ふきれふ」だとかってさ。
 僕が彼を好きだとしても、彼は僕を幼いころから知っている近所の年下の子として可愛がってくれているだけ。今だってだからこうしておぶってくれて、家が近いんだから送ってくれようとしているだけだ。

「ラクト、ほら、あれ、連翹っていうんだよ」
 バスにもタクシーにも乗らずに、雷太さんは歩いていく。彼が足を止めた大きな家の庭先に、黄色い花が揺れていた。

「希望の実現だとか、かなえられた希望とかって花言葉があるんだって、彼女が教えてくれたよ。俺の夢はかなわなかったのかもしれないけど、希望だったらかなったかな。スポーツ用品の会社に就職して、サッカーには関わっていけるんだ。五月からは福岡で修行することになったから、おまえとはしばらく会えないだろうけどな」
 返事ができない僕に、雷太さんはひとりで喋っていた。

「おまえにも夢だの希望だのってあるだろ。大学に入ってがんばって、かなえろよ」
「……うん」

 絶対にかなわない希望だったらあるけど、そんなもの、かなうはずもないんだからいいんだ。僕の希望はかなわなくても、雷太さんの希望のひとつがかなったら嬉しいよ。
 大きな背中に揺られていく僕の心も揺れる。「れんぎょう」というのだとはじめて知った花も、ほのかなあかりの中で揺れていた。

次は「て」です。


「主人公について」

蛇足ながら、小さなストーリィの各主人公について補記しておきます。
21はまったくどこにも出てきていないニューキャラ。ラクトです。
BLっぽいのが書きたくて、新しいキャラを作りました。


 

 
 

スポンサーサイト



【イラストストーリィ(Alby&あかね)「オーディション」】へ  【キャラへの質問(真柴豪です)】へ
  • Tag List 
  •  * |

~ Comment ~

物悲しいですね~

このお話ですね。
かわいらしくて、ちょっと切ない恋ですね。
確かに、あのイラストの子っぽいかも。

れんぎょう、私の実家の周りに、たくさん咲いてて、懐かしい花です。
そんな花言葉があるんですねえ。
(ところで、花言葉って誰が考えてるんでしょう・・・)

ラクトくんにも、幸せが来るといいですね。
いや、きっと来ますよね。
続編をかくなら、ぜひ幸せにしてあげてください(そんなむちゃな・・・)

limeさんへ。ラクト。

limeさんのサイトのイラストを見せていただいたときには、私の頭は「ラクト」していたのですね。
それであんな不躾なコメントで、申し訳ありませんでした。

あの素敵な少年の絵、ラクトだと思って使わせていただいていいんですか?
limeさんさえよろしければ、お名前だけ「イラスト:limeさん」と添えて、続編の挿絵に使わせていただきます。嬉しいなぁ。
upしたらまたお知らせに行かせて下さいね。

続編は過去のストーリィで、楽人と雷太の出会いからを書いています。そうするとlimeさんのイラストではやや大人っぽいかもしれませんが、18くらいの楽人のイメージで。

で、楽人が幸せになるということは……あれがああしてこうなって、うきゃきゃ、パニック。
無理かもしれませんが、努力します。(=^・^=)

それにしても本当ですね。花言葉って誰が考えたんだろ。
私はそんなふうに考えてみたこともありませんでしたから、limeさんの疑問は目からうろこでした。

本日もありがとうございました。

NoTitle

どうぞ、どうぞ、好きなように使ってください。
トリミングしたり、切ったり自由です。
あのイラストの少年の年齢は、私の中では14~16くらいなのですが、
ほら、若作りの子って、いますし^^

あ、この男の子かわいい~と思って観てた役者さんが、実は24だったとか、
ありますもん。(千葉雄大くん)笑
ぜったい18~9にしか、見えなかった><

あ。話がとんだ。

続編、楽しみにしています^^

limeさんへ

ありがとうございます。
あまり高度なテクニックは使えませんので、あのまんまで挿絵にさせていただきますね。

そっかー、14歳~16歳ってことは、高校一年生前後ですね。
あの悩ましげな表情は、目覚めた(なにに?)からに他ならない。
ってことで、楽人、恋を知りそめしころ、ですね。
え? 誰に?
誰になんでしょうか。

楽人が幸せになるにはどうしたらいいのか、幸せは恋の成就だけじゃないしなぁ、などなどと私も悩ましくなっております。
続編はまずひとつ、近いうちにアップしますので、お知らせにいきますね。

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【イラストストーリィ(Alby&あかね)「オーディション」】へ
  • 【キャラへの質問(真柴豪です)】へ