novel

小説1-3

 ←小説1-2 →小説1-4(1完結)
「翼を下さい」

3

 新しい彼女ができたら、金子さんとゆかりとの間になにかしらあったのか、と疑惑視していた、浅薄な思いは消えた。金子さんにははなっから俺に対するこだわりはなかったようなのだから、なにもなかったのだろう。
 二年生の終わりごろには、兄貴たちがそろって彼女を我が家に伴ってきた。空手をやっている女性でもなく、でかい女でもなかったので、俺は安堵した。もうひとつ、これで兄貴たちが彼女連れだったとしたら、区別がつくようになるというのもある。義理の姉たちまでが双生児だったりしたら、俺の頭はどうにかなってしまいそうだ。
「ふたりとも来年の春には結婚するんだってよ。あんな奴らに彼女がいるとはびっくりだ。あの面で、兄貴たちも彼女の前ではにやけっぱなしなんだぜ。薄気味が悪くて見てらんねえよ」
 学食で山田と乾と三人で、昼メシを食いながら話した。
「結婚式も合同で挙げるって言ってた。そういうのって女はどうなんだ?」
「兄さんたちの恋人おふたりが仲良しだったとしたら、それも嬉しいんじゃないのかな」
 一時はしょんぼりしていたようにも見える山田も、今では元気を取り戻している。俺には乃理子という彼女がいるが、山田と乾は新しい恋はしていないのだろうか。山田は今年の夏合宿では、乾に言わせると、ピンクの紗のベールを未亡人の黒のベールに取り替えたごとく、憂いをたたえた風情だったのだそうだ。
 が、山田美江子は山田美江子だ。雄々しく立ち直ってらしさも戻ってきている。これでなくちゃ俺の友達じゃない。たとえ女であろうとも、女々しい奴は嫌いだ。
 などと言ってるけど、女々しい奴は俺だったのかもしれない。金子さんと目を合わせたくなくて、ことさらに無視しようとした。金子さんは俺の態度を知ってか知らずか、乾と俺をトレーニングジムに連れていってくれたりもした。そんな金子さんももうじき卒業だ。
「本橋くんも嬉しい? 一気に姉さんがふたりもできるんだよね」
「嬉しいっていうより安心したよ。想像してたのとはちがって、兄貴の彼女たちって案外ちっちゃくて、可愛らしいひとなんだ。あいつらはどんな面をして彼女たちを口説いたんだろ」
「面、面って、本橋くんの兄さんたちってそんなに……?」
 まずい面なのか、と山田は訊きたいらしく、乾を見やった。
「ミエちゃんは敬一郎さんや栄太郎さんに会ったことはないんだね。会わせてもらったら? たしかにすっげえでかくていかついけど、心栄えは温和な兄さんたちだと思うよ」
「あいつらのどこが温和だ。おまえは目までいかれてるのか」
「他のどこがいかれてる?」
「どこもかしこもだよ」
「いかれてるのは本橋くんじゃないの?」
「俺のどこがいかれてるんだよっ」
 ほら、また怒る、と山田は言うが、ゆかりが俺を詰ったような調子ではない。ゆかりと山田は親しかったのだから、ゆかりが合唱部をやめてしまって寂しくなったはずだ。けれども、山田も恋と失恋を知って、一歩大人になったのだろうか。俺を責めたりはしなかった。
 山田と星さんについては、乾とも突っ込んだ話はしなかった。しかし、乾は山田をひどく気にかけていた。鈍感な俺にも察せられるほどだった。俺は故意にそ知らぬ顔をしていた。俺が乾みたいに山田を気遣っても似合わない。気持ち悪いよ、と山田に笑われるのがオチだろうから。
「山田は半分男みたいなもんだって言うくせに、本橋くんったら……」
 いつの間にやら話題が変わったようで、山田が言っていた。
「女はどうなんだ? って私に訊くんだよね」
「そりゃあ、ここには女の子はミエちゃんしかいないんだから」
「男と女ってそんなにちがうの?」
「ちがってる部分もあれば、同じ部分もあるんじゃないかな」
「個人差のほうが大きくない?」
「うーん……それも一概には言えないよ。個人差や男女差、個性や性格がブレンドされて、個々の人間を創り出す。人間の魂の中にはてんびん秤があるんだな」
 またこいつらは抽象的な話をしてやがる、と俺は思って、黙って聞いていた。
「たとえば、強気と弱気ってのもあるよね。強気ばかりの人間なんて化け物だよ。弱気ばかりでは生きていけない。強気と弱気が絶妙のバランスを保つのがベストなんだろうけど、なかなか釣り合いが取れなくて苦労する。それもまた人間の人間味だよ」
「乾くんってそういうの、どうやって学んだの? 人生経験はそんなに豊富じゃないはずなのに、おばあちゃんの教え?」
「ばあちゃんの感化もある。多少は先生や教授にも教えられた。先輩からも教わった。友達からも教わった。あとは俺のちっぽけな脳細胞が、ああでもないこうでもないって考察するんだ。全然熟してないから、鵜呑みにすると腹をこわす。俺自身が消化不良を起こす」
「いつだったか、「しっ」と「こく」がしっこくしっこくと闘って……だとか言ってたよな、おまえ」
 なに、それ? と山田はきょとんとし、乾は笑い出した。
「言ったな。しっって奴とこくって奴がしつこく俺の頭の中で闘ってるんだ。ずーっと闘ってるんだよ」
「……しっとこく? 桎梏?」
「ミエちゃん、大正解。椎名の台詞は恣意的だってのもあったよな」
「椎名くんが恣意的? なんなのよ、話をそらさないで」
「はい。男女差の話だった?」
 男と女は別種の生き物だと俺は思うのだが、女はそうは思っていないのだろうか。むずかしい話題ではあったが、俺もふたりの会話に耳をかたむけていた。
「これは俺の恣意的な考えにすぎないけど、俺はこう思うんだ。肉体的にはあきらかに、男と女には差異があるだろ」
「あるね」
「心の問題はそこから派生するのかな。でもさ、男と女はちがってるほうが楽しいじゃないか。同性間で恋が生まれるってのは、特別な嗜好の持ち主に限られてるよね。それは別問題なんだけど、一般的には男女の間に恋が芽生える。どれほど深く重く関わっても、本橋と俺の間には絶対に恋は生まれない」
 当たり前すぎることを言うな、と俺は言いたかったのだが、山田がまっさかさまの台詞を発した。
「そんなのわからないじゃない」
 わかるんだよ、と乾と俺は口をそろえ、乾は言った。
「男と女って問題は、男にも女にも永遠の大命題だよ。結論でもないけど、男と女は生まれついてちがってるんだ。社会的な訓練の差だって説もあるけど、生まれつきの差異によって発生する部分もあるんだよ。持久力や精神力は女性のほうが強いのかもしれないけど、筋力や腕力は男だろ」
「だから乾くんは、女には暴力をふるわない主義なんだよね」
「そうだよ。話しがいささかずれていってるみたいだけど、ミエちゃんはそっちの話がしたかったの?」
「乾くんがずらしたんだよ。私は両方の話をしたいな。女には暴力をふるわないっていうのは、女を軽視してるからじゃないんでしょ?」
「軽視なんかしてません」
「本橋くんはしてる」
 してねえよ、と俺は言ったのだが、山田は俺を無視して言った。
「本橋くんとはあとでね。乾くんも女を軽視してるようにも見えるんだけど、それもあとで。じゃあね、男同士はいいの?」
「理不尽な暴力は論外だけど、俺は男同士の暴力は時には必要悪だと思うよ」
 え? と山田と俺は同時に乾を見返した。
「むずかしすぎて言えない。考えがまとまったら言うよ」
「本橋くんには乾くんの今の台詞、わかる?」
「……俺に振るのかよ。ええとええと……俺にはそう意外でもないっつうか、意外といえば意外っつうか……」
「意外じゃないの?」
「……乾がむずかしすぎるって言ってるんだから、俺にはよけいにむずかしいんだよっ」
 認めるんだね、と山田は笑い、乾は吐息をついてから言った。
「ごちゃらごちゃらと言ったけど、すべては俺の恣意的考えだからね。今後、成長に伴って考えも変化していくかもしれない。ミエちゃん、ご静聴ありがとう」
「シャレで落とさないでよね」
 はー、終わったか、よかった。俺も吐息をついたのだが、その吐息の意味は、たぶん乾の口から漏れたものとは、かなりちがっていたのだろう。乾って奴も俺にはむずかしすぎる。
「乾くんって心底怒ったらどうなるの?」
 終わったかと安心したのに、山田が近い話題を持ち出した。
「本橋くんは知ってる?」
「知らないな。俺だって心底怒るなんてまずないだろ」
「私もないよ」
「心底じゃなかったら、かなりしばしば怒ってるよね」
 心底ではないにしても、乾がかなり怒っている姿も、俺は見たことがないような気がする。いっぺん怒らせてみたいかも、と山田が含み笑いをし、やめて下さいよ、と乾が応じている。山田って奴もむずかしいといおうか、わかりづらい女だが、女なのだから仕方ないのだろう。やはり男と女には差があるのだと、俺は恣意的な考えにふけってみた。


 すこしは勉強に集中しようと教室に行ったら、高城がいた。同じ理学部宇宙科学学科の学生なのだから、俺が真面目に勉強していたとしたら、もっと会う機会が多いはずなのだが。
「高城、久し振りだな」
「ああ、本橋、久し振り」
「講義がすんだらメシ食いにいこうぜ」
「うん」
 講義を聴いていると、やばいやばい、の気持ちが起きる。ガキのころから大好きだった宇宙の話なのに、一部頭がついていけない。内心で青ざめているうちに講義が終了し、高城と学食に行った。
「高城、おまえはちゃんと勉強してるんだよな」
「してるよ」
「……ついていけてるんだよな」
「まあな」
「そのわりには表情が暗くないか? 俺はなんとか三年生にはなれたけど、合唱部にばっかり熱中してて、さぼりすぎた。卒業できなかったら……うん、それもいいか」
「それでもいいのか?」
「よくはないんだけどな。俺のことは置いといて、おまえ、なにか悩みでもあるのか? まさか佐里ちゃん?」
 同じ学部では真っ先に親しくなったのが高城だった。俺の学生生活は大部分が合唱部に占められているので、友人は合唱部の連中のほうが多いのだが、学部では今でも高城とは親しくしている。
 一年生になって間もないころに、乾、山田、俺、とそれぞれの学部の友達を含めて、六人で食事に行った。俺は高城を、乾は南村という男を連れてきていて、山田は佐里という名の女の子を伴ってきた。山田と佐里は教育学部だ。先入観としては、教育学部の学生は教師志望の堅物かと思っていた。
 山田は一見は堅そうに見える。友達づきあいをしていればその限りではないとわかってきているが、そのころはまだそこまでは知らなかった。見た目だけで、山田は勉強好きの真面目な女なのだろうと思い込んでいた。が、佐里は全然そんなタイプではなかった。背が高くて脚が長くて、モード好きなのだそうで、ファッションには疎い俺とはまるっきり住んでいる世界がちがっているとでもいうか。
 そういえば山田の妹の佳代子もファッション好きだ。女はファッションが好きなのが一般的だろうから、それはいいとしても、佐里は積極的だった。
 あの日は乾が言い出して、最初は俺が佐里の出身地あてゲームをして盛り上がっていた。佐里は俺に気があるのかな、と思わなかったというと嘘になる。佐里はもっぱら俺に親しげにふるまっていたのだから。ところが、佐里の気は高城にあったのだ。ふたりきりになろうよ、と高城を連れ出して腕を組んで出ていってしまった。あれから二年もたつのだから、まさかまさかいまだに佐里にこだわっているわけでもないのだろうか。だったらなんだろう? と俺が首をひねっていても、高城はランチをつつくばかりでなにも言わない。
「ちがうよな? 他の女か? 他の悩みか?」
「うん……」
 二年前を思い出そうとしてみた。
 佐里が高城を連れていった翌日……高城がなにかを言っていたか、言わなかったのかは記憶にない。翌日に高城と会ったのかどうかも覚えていない。それから二年の間には高城とも佐里とも顔を合わせてはいるが、彼や彼女とどんな話をしたのかも記憶にない。俺の記憶には合唱部関係しかないのか?
 佐里については山田の口からも、とりたててなにかを聞いた覚えはない。そうしているうちに、佐里と高城になにごとかあったにせよ、終わったのだろうと漠然と考えるようになっていた。
「古い話だけど、佐里ちゃんとはつきあってたのか」
 今さらではあるのだが尋ねると、高城は口を濁した。
「……うーん、まあ、うーん……」
「なんなんだよ。つきあってたとしても別れたんだろ」
「……というか……」
「はっきりしろよ」
「うん……」
「おまえだけなんだよ、高城」
「なにが?」
 並外れてよく喋る山田と乾といっしょにいることが多いせいでそう思うのか。俺の周囲には無口な奴はおまえしかいない、と高城に言ってはいけないのだろうか。
 一年の年につきあっていたゆかりは、女としては饒舌なほうではなかったが、去年からつきあっている乃理子はよく喋る。合唱部の女たちもたいていは思い切りよく喋る。男もよく喋る。高倉さんや星さんだって無口ではなかったし、金子さんも相当に口がなめらかだった。乾は言うまでもないし、徳永も乾よりはやや劣る程度で、かなりよく喋る。
 先輩も同年も男も女も、俺の親しい合唱部の奴らはよく喋る。一年下の小笠原ヒデもよく喋る。大阪弁の饒舌男、実松って奴もいる。ヒデと同年の本庄シゲあたりだと喋らないほうだとなるのは、他が喋りすぎるせいだ。
 そして、今年合唱部に入部してきた一年生の中には、口から先に生まれてきた男がいる。その名は三沢幸生。彼はあるいは乾にも負けないほどに、口を閉じている時間がないほどに喋りまくる。だもんだから、俺はすっかりお喋り男やお喋り女に馴らされてしまったのだ。合唱部の仲間と話していると、俺が喋らなくても誰かしらが口をきいているのだが、高城とだと俺が喋らないとどうにもならない。
「いや、こっちの話だ。で、おまえの悩みは?」
「悩みってほどでも……」
「話を整理しよう。佐里ちゃんとはつきあってたのか」
「今でも時々……」
「時々?」
「誘いの電話がかかってくるよ」
「かかってきたらどうするんだ?」
「遊ぼうよ、って言われるから……」
「遊ぶのか」
「うーん、まあ……」
 はっきりしない高城の話にイラつく気分を抑えつつ、彼の話をつなぎ合わせてみるとこうだった。
「つまり、おまえには佐里ちゃん以外の彼女はいない。佐里ちゃんには他にも遊び相手の男が何人もいる。そいつらとデートできなくて暇になったら、おまえに電話してくるんだな。それでおまえは、ほいほい飛んでいくんだな」
「好き……だから……」
「佐里ちゃんがか。おまえにはプライドがないのか」
「そんなこと言ったって……」
 彼女のひとりもいないでは寂しい。その気持ちはわかる。彼女の暇つぶしにデートするのであっても、デートくらいしたい。その気持ちもわからなくはない。口の重い高城があの、乾にも山田にもひけを取らないお喋り女の佐里といたら、すべてが彼女のペースで進行していくのであろうともわかる。
「おまえはそれでいいのか」
「よくはないけど……だったらどうしたら……」
「こういう歌があるんだ」
 いつか乾が教えてくれた歌を歌った。

「あちらこちらカップルが
 飛んで飛んで上の空
 やたら僕を刺激する
 ドンマイ、ドンマイ、今に見てろよ」

 あちらこちらのカップルが、彼女のいない男や彼氏のいない女を刺激する。若者としては、今に見てろと言いたくなる気持ちもよくわかる。が、高城のこの様子では今に見てろともならないではないか。よけいなお節介は承知の上だが、俺ひとりのものになれ、と言えないのだったら別れろ、と言ってやりたかった。
 テーブルに顔を伏せて、高城はぶちぶち呟いている。しっかりしろっ、とどやしてやろうとしていたら、女の子が数人近寄ってきた。一年生か二年生か。どの顔にも見覚えはなかった。
「あの、もしかしたら合唱部の本橋さんですか」
「おひとりなんですか」
「本橋さんっていったら、乾さんとのデュオが……」
「乾さんってその方ですか」
 知らないのだから無理もないのだが、高城を乾だと思うとは、笑いたくなった。高城はなおもぶちぶち言っていて、俺は女の子たちに言った。
「俺は本橋ですが、乾は今はここにはいない。ここにいる男は合唱部ではない。なにか?」
「あの、あのね……」
「やだ、なんだか怖いよ」
「ねえ?」
「……ね、ね?」
 なぜだか女の子の数が次第に増えていき、あちこちでひそひそこそこそ言っている。怖い? なにが? と首をかしげていると、その中のひとりが言った。
「知らない歌だったけど、素敵だったから……」
「俺の歌? ああ、ありがとう」
「でも、なんとなーく怖いです」
「歌が? なぜ?」
「……歌じゃなくて……」
「じゃあ、なにが?」
 顔を上げた高城が言った。
「おまえがだよ、本橋」
「俺が? 俺のどこが怖い?」
「その顔だ。女の子を取って食いそうな顔をしてる奴が……」
「誰がなにをだって? はっきり言え。おまえはさっきからぐずぐずめそめそしやがって……大きな声で明確に発音しろ」
 怒鳴ったつもりはなかったのだが、俺のほうが大声になって、女の子たちが小さく悲鳴を上げて散ってしまった。高城は再びテーブルに顔を伏せ、うんともすんとも言わなくなった。蹴飛ばしてやろうかと高城の背中を睨んでいたら、背後で笑い声が聞こえた。
「誰だ、笑ってやがるのは。ん? 徳永……こら、こっちへ来い」
 くくくっと笑いながらの徳永は、明確そのものの発音で言った。
「歌はいいんだけど、おまえのその面がな。彼の言いたいことは俺にはわかったぜ」
「俺の面がなんだってんだよ」
「さっきの女の子たちは部外者なんだろうけど、おまえのファンなんだよな。いまや、本橋と乾のデュオは部外でも噂のまとになってる。新入生だろうな、今の子たちは。おまえが歌ってるのを聴いて、声が低いから本橋だろうと見当をつけた。こんなところでスターの本橋くんの歌が聴けてラッキー、ってなもんだろ。もっと歌って下さい、と頼みたかったんじゃないのか。なのにおまえはそんな面で女の子たちを睨み回した」
「睨んでねえぞ」
「おまえは睨んでないつもりでも、睨んでると見えるんだよ。おまえの歌には難がないけど、顔には難がありまくりだな。それでなくてもおっかない一方の顔をしてるんだから、愛嬌ってのも必要なんじゃないのか」
「おまえに言われたくないんだよ」
「そうか。俺はこんな顔もできるよ。そこの彼」
 んん? と高城が顔を上げた。
「俺の顔と本橋の顔、どっちが見やすい?」
「そりゃあ……きみ」
「だろ? 第三者の客観的な目にまちがいはない。本橋、心しておけよ」
「てめえ……」
「まったく、腕力馬鹿が……」
「腕力なんか使ってないだろうが」
「使いたくなってるんだろ。そういうことでは女には……いや、そうじゃないのか。女っておかしな生き物だよな」
「おまえまでがうだうだと……」
 ふふんとせせら笑って、徳永は背を向けた。高城はぽけっと徳永と俺を見比べ、ぽつっと言った。
「本橋ってけっこう鈍いんだな」
「……ほっとけ。知らなかったのか。俺もおまえなんか知らないよ。勝手にしろ」
 よく喋る奴も喋らない奴も始末に悪い。ほどほどって奴はいないのか。俺くらいがちょうどいいんだよな、と誰にともなく問いかけてみたのだが、むろんどこからも返事はなかった。

 
 
 

 








 


 
スポンサーサイト


  • 【小説1-2】へ
  • 【小説1-4(1完結)】へ
  • Tag List 
  •  * |

~ Comment ~

リアルですね~

ものすごく、リアルに迫ってきて、目の前でドラマを展開されているような臨場感があります。

2年半前…fateも、もしかして「アダム~」とか「虚空の~」はそんな位になるのかも…。

またお邪魔いたします~(^^)

気持ちの変化はありますよね

リアルな生活にはそんなに変化はないけど、
書くものはわりと短い時間で変化していって、
書きたいものも変わっていっている気がします。

私も妄想ストーリィみたいなものも書くのですけど、
なにしろイマジネーションが貧困でして、
ファンタジックなものが書きたいと思って書いてみても、
いつも中途半端になってしまいます。

NoTitle

迷ったんですが、やはり最初からずっと辿っていく読み方をすることにしました。どうも性格的に、最初から読まないと気がすまないというか ^^;

やっぱり本橋くんは女の子が苦手みたいですね~。
でも彼の性格がだいぶわかってきました。おもしろい…。

なんとなく「ふぞろいの林檎たち」を思い出しました。あのドラマと雰囲気が似てるかなーっと。

シンちゃんはね

うちの真次郎は女は好きなんですけど、「恋よりも仕事だ」という主義を持つように成長していく。その片鱗は学生時代からあるってわけなんですよね。

「不ぞろいの林檎たち」、ごらんになってました? 私も大好きでした。
意識はしていなかったのですけど、言われてみますと、影響を受けているかもしれませんね。指摘していただいてはじめて気づきました。

おはようございます。

シンちゃん、硬派ですねー。
女の子よりも歌!勉学!なんですね。
変にベタベタした愛嬌があるより、いっそ清々しいです。

作中に出てきた歌は「ドラマ飛んだカップル」の歌ですね。
懐かしく思い出しました。

飛んだカップルですか

有村さん、ありがとうございます。

「♪飛んで飛んで上の空~」

H2Oのこの歌、ドラマの主題歌だったのですね。
それでこんな歌詞なのですね。
この歌は好きですけど、ドラマのことはなんにも知らなかったので、
教えていただいてありがとうございます。

まー、勉学はともかくとしましてね、女の子も好きなんですけど、「俺にとっての一番大切なものは歌だ。将来への展望だ」だったりするので、まー、シンちゃんは硬派なのでしょうね。

「清々しいと言っていただけて嬉しいです」
と真次郎も申しております。
(=^・^=)

山田さん、男が女を軽視してるかが、とっても気になるんですねぇ。
乾くんの考え方、私好きです^^
やっぱり女に暴力振るう男はダメですもんね。
言葉の暴力ならいいだろう、とか思ってる男も多いけど、それもヤですねえ。
まあ・・・女も、暴力はダメですが^^;

男同士?・・・これは、時にはいいのかも。(単なる私の好みだろうってw)

しかし、本橋くんって、ちょっと強面?
いや、単に愛想を振りまくことをしない、硬派なんですよね。
双子のお兄さんとは別な意味で、「男」なのかな?

彼らのこれからが、楽しみです。
このお話の中で、フォレストシンガーズは結成されるんでしょうか。
早く、かれらの活躍を見たいです^^

本橋君……勿体ない。
せっかく女性ファンが来たのに。
俺だったら、自分から握手しちゃうね。
(↑いや、絶対引かれるだろ)
嘘です。私もシャイな人間なんできっとガチガチになると思います。

本橋君は女嫌いとかじゃないんでしょうけど、
不器用なんでしょうね。きっと。

limeさん、あけましておめでとうございます。

今年もコメントをありがとうございます。
フォレストシンガーズストーリィでは一番重要な女性キャラの美江子には、どうしても私が濃く反映してしまいます。

趣味っていうのも出てきますよね。
私は対等の男同士の取っ組み合いだとか、程度をわきまえての体罰とかだったら可かな、なんて思ってます。

フォレストシンガーズ結成はもうちょっと後ですので、よろしけれぱ小説14くらいまで飛ばしていただいても、大丈夫だと思いますよ。

ほんとにもう、お好きな物語から読んでやっていただければ。

では、今年もよろしくお願いします。


ヒロハルさん、あけましておめでとうございます。

コメントありがとうございます。

本橋くんは鈍感で不器用で、優しさを表現するのが下手、著者はそのつもりで書いております。

彼は顔が怖いので、こういう男の子ってもてるのかな? と悩みつつ書いたりもしているのですが、勝手にけっこうもてているようでもあります。

それでは、今年もなにとぞよろしくお願いします。

NoTitle

本橋シンくんは、宇宙科学を勉強している(?)のですか。ほう。
きっと競争率高かったでしょうね。
けど、今は部活の方に熱中しているのですね。

美江ちゃんと乾くんとは絆の強いお友達という感じがします。
乾くんとのデュオ、聴きたいですね。

周りが喋ると自分は黙るっていうの、よくわかります。私もそう。
で、相手が喋らないと、喋らないかんの? って思うところも。

けど、怖い顔してないで、笑顔笑顔^^

けいさんへ

今夜もコメント、ありがとうございます。

この大学は医学部と法学部、理学部の偏差値が高いという設定にしてますので、シンちゃんはまあ、勉強はできるほうだったのかな。
でも、この時点では歌ばっかりで、勉強していません。

それにしてもこんな大きな大学が都心にどーんとあるなんて、今どき、ちょっと変ですよね。
まあ、そこらへんは小説ですから……むにゃむにゃ。

シンちゃんが無理に笑顔を作ると、それはそれで怖かったりして……かもしれませんね。

NoTitle

あぁっ!!お兄ちゃんたちが結婚!!
なぜか微妙なショック・・・・・なぜ?!

本橋くんのつっけんどんな態度や口調が気に入っているこのごろです。
根はすっっごく優しいんだろうって思うと、ギャップがいいなぁぁぁと。

妄想してスミマセン。。

ハルさんへ

きゃああ、妄想してもらえると嬉しいです。
本橋栄太郎と敬一郎が結婚したからショックだなんて、微妙とおっしゃられていても嬉しいです。
お、俺たちのファンになってくれたひとがいるのか?
とかって、お兄ちゃんたちも誤解して喜んでいます。

つっけんどんな態度や口調。
そうですねぇ。実はね……ってところはあると思います。
そういう部分をもっともっと上手に表現したいと切実に望む今日このごろ。

ありがとうございました~v-275

人は顔じゃないといいつつも、結局案外顔だったりするんですよね。
まあ、顔の好みの問題はありまるので、その辺はアレなのですが。
顔の問題もありますが、顔と付属する雰囲気的なものも
あるのかな・・・と言うことも感じますが。

LandMさんへ

ありがとうございます。

顔を中心とするルックスというものは、やはり人対人の印象の中では大切な要素ですよね。
フォレストシンガーズストーリィは極力、ルックスの描写はせずに歌や声の魅力を全面的に押し出すつもりだったのですが。

声や歌の描写はむずかしいですよね。
これからもせいぜい精進してまいります。

NoTitle

おもしろーい♪シンちゃん楽しいですね!
でも毎回思うんですが、本当にそれぞれが自分の考え方を明確に持っててそれが何よりもすごいなぁといつも感心してしまいます(汗)
毎度同じ事を言ってすみません(汗)
キャラクター独自の考え方ってある程度は性格の差異で現れるのは当然だと思うんですけど、なんかここまで掘り下げて違いを出してるのってあんまり読んだ事がないのですごいなぁとただただ感心(笑)

でもシンちゃんは本当に女の子に対して不器用極まりないですね。
デビューしてファンの子にそんな事をしていたら嫌われちゃうぞっ!と思わず心配になってしまいます(笑)

でも何にしろとりあえず順風な感じの大学生活!いいですね♪
そうそう、あとお兄ちゃん’s結婚おめでとうございます!!(遅っ
かわいらしいお義姉さんで良かったね、シンちゃん♪
そして見分けもできそうで、本当に(笑)
  • #2067 ぐりーんすぷらうと 
  • URL 
  • 2014.01/07 13:27 
  •  ▲EntryTop 

ぐりーんすぷらうと さんへ

いつもありがとうございます。

私の中に章が出てきたのは、七年くらい前だったでしょうか。
そのあとで大学の先輩後輩関係のヴォーカルグループを書きたくなったのです。以前からグループというのはよく書いていたのですが、たいていが全員同い年のロックバンドでしたので。

で、あ、章が使える、となりまして、フォレストシンガーズストーリィの原型ができました。
それが六年近く前です。
それからずーっとしつこく書き続けていますので、最初は私の中でも区別がつきにくかった幸生と章も完全に別人格になりました。
今ではもう、彼らが勝手に動いてくれないと書けませんので、彼らの行動や考え方も彼らの言う通り、って感じですかね。
彼らがなにか教えてくれても、私がうまく書けない場合もありますが。

シンちゃん、ほんと、プロになってファンに怖い顔を向けたら、嫌われてしまいますよね。
ファンは財産、章以外はその精神がしみこんでいますので、大丈夫なはずです(^^ゞ大丈夫よね、シンちゃん?

お兄ちゃんたちの結婚も祝ってもらいまして、ありがとうございます。
大人になってからのシンちゃんも、兄貴たちが家族連れでいたら区別がつく、などと思っています。

お兄ちゃんたちの息子や娘も、お父さんとおじさんが同じ服を着ていたらどっちかわからなーい、ま、どっちでもいいけど、などと考えています。困ったものです(^^♪
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【小説1-2】へ
  • 【小説1-4(1完結)】へ