ショートストーリィ(しりとり小説)

17「たんたんたぬき」

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しりとり小説17

「たんたんたぬき」


 でっかいおじさんが三人、そのうちのひとりは展希の父親だ。ノブキの父の敬一郎にそっくりなのが、栄太郎おじさん。敬一郎と栄太郎は双生児で、その下にもうひとり、真次郎おじさんがいる。

 おじさんたちの奥さんが三人、真次郎と美江子の夫婦には子どもはいなくて、敬一郎と栄太郎にはふたりずつ。男の子と女の子が合計四人。おじいちゃんとおばあちゃんの家で、合計十二人の食事会は、おじいちゃんとおばあちゃんの結婚記念日のためなのだった。

 小学生の欧太から年寄りのおじいちゃんまで、年齢層もバラエティに富んでいるので、お母さんとお父さんたちが作った料理も子どもから年寄りにまで好まれそうないろいろ。品数も多く、ノブキとしても料理はうまいと思うのだが、いかんせん、この場の雰囲気はメンドーだった。

「栄太郎と敬一郎はスポーツマンだったんだよな。文恵さんと幾子さんはOL時代には同じ料理サークルに所属してたんだろ。それで仲良くなったんだよな。美江子さんも高校のころには料理クラブに入っていたと聞いた。奥さんたちがみんな料理上手で、おまえたち、幸せだよな。その点、お父さんは……」

「なんなのよ、お母さんは料理下手だって? 悪かったわね」
「そうは言ってないだろ」

 おじいちゃんとおばあちゃんが夫婦喧嘩っぽい口争いをはじめ、まあまあ、まあまあ、とおじさんたちがなだめている。おばあちゃんは孫たちに尋ねた。

「真次郎は音楽が好きで、美江子さんだってそうなのよね。あんたたちもみんなティーンエイジャーになったんだし、趣味ってあるでしょ。柚羽は?」
 最年長だからなのか、栄太郎おじさんの長女であるユズハが質問を振られ、彼女は応えた。

「あたしはいっつも欧太と一緒にゲームやってるから、あたしたちの趣味はゲームだよ。ノブキも麻衣香もゲームは好きでしょ? ゲーム好きって多いよね」

「ゲームって趣味なのか? 俺も暇なときにはやったけど、あれは趣味ってのとはちょっとちがう気がするよ。スポーツはやってないのか?」
 真次郎も尋ね、四人の子どもたちは全員、特にはやってないと答えた。

「おまえたちの親父がこれだから、俺と同じでスポーツ嫌いになったのかな。オウタやノブキはお父さんにぶん投げられたりしたんだろ」
「ふざけてだったらあるけどね」
「僕もあるよ。あれ、面白いけど、僕は空手なんかやりたくないな」
「真次郎、おまえが訊きたいのはこっちだろ」

 なぜか同じ服を着ているので、場所を移られたらどっちだかわからなくなりそうな、栄太郎が言いかけ、おじいちゃんも言った。

「歌の話しだよな。おまえたち、こんな歌、知ってるか」
 たんたんたぬきの金……までおじいちゃんが歌いかけ、おばあちゃんが割り込んだ。

「たんたんたぬきの 金の鈴
 風もないのに ぶ~らぶら
 そ~れをみていた 子ダヌキも
 親のまねして ぶ~らぶら」

 邪魔するな、子どもには真実を教えるべきだ、とおじいちゃん。下品な真実は教えなくていいんです、とおばあちゃん。お母さんたちは肩をすくめたり目配せし合ったりしていて、お父さんたちは苦笑していた。

「そんな歌、知らないよ」
「僕も知らない。真実ってなに?」
「たぬきの金って……ねぇ、あたしも知らない。教えてよ」
「あんまり知りたくないような……」

 ユズハだけはそう言ったのだが、子どもたち三人は知りたくてもやもやする。すると、真次郎が言った。

「原曲はこうなんだよ」
 空手家である兄たちとは中身がちがうのか、歌手である真次郎が歌った。ノブキにはなんと言い表せばいいのかもわからない、素晴らしい歌声だった。

「Shall we gather at the river,
 Where bright angel feet have trod,
 With its crystal tide forever
 Flowing by the throne of God?」

 へっ、そうなのかっ、と呟いたのはおじいちゃんで、敬一郎も言った。

「曲は同じだな、なんだ、それ?」
「親父の葬式にも俺が歌おうか」
「葬式の歌? 賛美歌か」

「賛美歌っていうよりも、聖歌だな。天国の美しい川のほとりで再会を喜び合う、「まもなくかなたの」という歌だよ」
「賛美歌と聖歌ってどうちがうんだ?」
「それはだな……」

 真次郎と敬一郎がその話題に移り、他の者は食事に戻る。マイカとユズハとオウタは人気のあるゲームの話をはじめ、ノブキは栄太郎に小声で質問した。

「おばあちゃんが歌った歌の真実ってのがあるんでしょ、おじさん? オレはそっちを知りたいよ」
「金の鈴じゃなくてさ……うん、推理しろよ」
「推理?」

「女がいるところでは歌ってはいけない、ってほどでもないんだけど、品がないったらないんだよな。真次郎はうまくごまかしたもんだよ」

 ってことは……? ノブキの推理は当たっていたようで、栄太郎がにやっとした。ノブキの父にも聞こえていたのか、さすがは双生児なのか、敬一郎もノブキを見てにやっとし、真次郎までがにやりとしてみせた。

次は「き」です。


「主人公について」

蛇足ながら、小さなストーリィの各主人公について補記しておきます。
17はフォレストシンガーズの本橋真次郎の兄の息子、本橋ノブキくんです。



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