ショートストーリィ(しりとり小説)

11「未確認MY感情」 

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しりとり小説11

「未確認MY感情」


「Mちゃんがお休みやった日。
「日野くん、Mちゃんのおうちへこのプリント、届けてあげて」
 先生にそう言われて、ぼくはいややて言うた。

「なんで? Mちゃんのおうちに一番近いのは日野くんのおうちでしょ。行ってあげてよ」
「お小遣いくれる?」
「日野くんっ!!」

 お母ちゃんに言うように言うたらあかんのやな。しようがないから、はい、わかりました、って先生には言うたんやけど、行きたくなかった。

 プリントは一週間後の家庭訪問のお知らせ。そんなん、Mちゃんは明日には学校に来るんやから届けんでもええやん。風邪を引いたって言うんやから、そんなにいつまでも学校は休めへんはずやもんな。

 ちっちゃいころには一緒に遊んでたMちゃんやけど、このごろは遊んだりせえへん。女の子と遊んだりしゃべったりしたら、男のやつらにバカにされるもん。けど、Mちゃんのうちの近くには同じクラスの女の子はおらんのか。

 それでもいやや。ぼくは行きたくない。先生からあずかったプリントは破って捨てて、知らん顔をしているつもりやった。

 けど、次の日になってもMちゃんは学校には来えへんかった。その次の日も次の日も来えへん。Mちゃんの家に先生が家庭訪問する日が近づいてきて、ぼくは心配になってきた。

「Mちゃん、風邪をこじらせたらしくてね、入院したらしいんよ。一ヶ月くらいは学校をお休みするそうです」

 先生が発表してくれたのは、明日はMちゃんの家に先生が家庭訪問するはずの日やった。
 そしたら家庭訪問どころとちゃうんやな。そしたらプリントなんか届けんでもよかったんやな。安心したような気もするけど、入院て……どんな病気なんやろ、とも思った。

 ぼくはMちゃんなんか嫌いや。あいつは口がよう回るって言われてるぼく以上におしゃべりで、ちょっと話しかけると十倍は返ってきて、ばばばーっとしゃべられてぼくの口が回らんようになる。女の子ってのはみんなめんどくさいけど、Mちゃんは特にめんどくさい。

 そやから、一ヶ月も学校を休んでくれたらほっとする。そやのに、なんでこんな気持ちになるんかな。さぴしい? そうでもないのにな。自分の気持ちがようわからん。なんやねんやろ、これは」

 宿題の作文を書き上げて読み返し、日野創始は原稿用紙をびりびりに破り捨てた。
「作文は標準語で書きましょうね」

 先生にそう言われ、東京弁で? と問い返し、標準語です、と言い直されたのを思い出したから。
 それだけではなくて、先生に頼まれた美織ちゃんへの届けものを捨ててしまった言い訳をしているから。先生は美織ちゃんの入院で頭がいっぱいになってしまったようで、家庭訪問のことなど言い出しもしなかった。

 美織ちゃんと名前を書くのもやりづらくて、Mちゃんだなんて書いて、こんな作文、提出できるはずがない。

 ただ、自分の気持ちを見つめたかったから書いたのか。小学生にはそんな自己分析はむずかしくて、創始は作文を書き直すことにした。テーマは「ぼくの(わたしの)気になっていること」だから、大好きなゲームかアニメの話でも……。

 いや、そんなのを書くとおたくだと言われる。先生にも変な目で見られる。そしたらなにを書こうかな。新しい原稿用紙を睨んでいても、創始の心には、美織ちゃん、大丈夫かな? みんなでお見舞いにいこう、とか提案されたら、ぼくはどうしようか? そんな感情がひっかかっていた。

次は「う」です。

「主人公について」

蛇足ながら、小さなストーリィの各主人公について補記しておきます。
11はフォレストシンガーズのもとメンバー、小笠原英彦の勤務先の社長の息子、神戸の小学生の日野創始くんが主役です。



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