ショートストーリィ(しりとり小説)

2「ズッキーニ」

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しりとり小説2

「ズッキーニ」

ただいまー、とキッチンに足を踏み入れると、妻が人見に尋ねた。

「ライフイズミネストローネって歌があるでしょ」
「あ、ああ、ただいま」
「お帰りなさい、旦那さま」

 新婚の夫の帰宅よりも、きみは歌が大切なのかね? と尋ねたくもなっていたのだが、玲奈がいつものように「旦那さま」と呼んでくれてキスしてくれると、わずかにむっとしていたのも消えていった。

「人生は野菜スープっていう邦題がついてるって、木村さんが教えてくれたのよ」
 玲奈はフォレストシンガーズというヴォーカルグループが所属している音楽事務所で、事務員をしている。木村とはフォレストシンガーズの一員だ。

「そうだね。僕も知ってるよ」
「訳してみて」
「こんな感じかな」

「人生ってミネストローネだよね
 パルメザン・チーズをたっぷりふりかけて食べるんだよ
 死はつめたいラザーニャみたいなものさ
 いつも凍えるフリーザーの中にある」

 古い歌だから、当時の日本人はミネストローネを知らなかったのか。ミネストローネは単なる野菜スープとはややちがうが、「人生は野菜スープ」という邦題のほうが、日本人にはわかりやすかったのだろう。

「死がラザーニャって変だよね」
「うーん、歌詞の解釈はむずかしいからね。今夜はラザーニャとミネストローネ? 人生にはこのごった煮スープのように、いろんな具が浮き沈みしていると解釈しておいたらいいんだよ」

「私はマカロニが大好きだから、これは人生の中の素敵なできごとだよね」
「素敵じゃない出来事も人生にはあるけど、僕は玲奈が作ってくれたミネストローネは大好きだから、これはすべてが素敵なスープだね」

「これも好き?」
「なんだ、これは?」

 ミネストローネの中に、緑いろの野菜が入っている。人見の知識にはない野菜のようだったので、スープの味見がてら食べてみた。

「不思議な食感だね。太いきゅうりのようでいて、茄子のような噛み心地もあるよ。これはなんていう野菜?」
「あなたはひとり暮らしだったんだものね。ひとり暮らしの男性は、珍しい野菜なんて食べないんだよね。ズッキーニっていうのよ」

「ズッキーニか」
「あなたにとってのズッキーニは、人生のうちのなに?」

「きみが日常生活で僕に与えてくれる、小さなびっくりかもな」
 うふっと笑って見上げる小柄な妻を軽く抱きしめて、キスをした。

次は「に」です。


「主人公について」

蛇足ながら、小さなストーリィの各主人公について補記しておきます。
2はフォレストシンガーズ所属事務所の事務員、玲奈とその夫、人見(彼にはまだファーストネームがありません)。
人見さんと玲奈ちゃんの新婚時代のある日です。



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~ Comment ~

うわおっ

超! 素敵です!!
フォレストシンガーズの舞台裏にこんな可愛い世界があったとはっ!!

いいなぁ、このほっこり感。
ものすごく良い空間でした。

かなりほっとしました。
う~ん、珍しくfateくんはお疲れモードです。
はははは。

しりとり小説の意味を、今、理解しました。
これ、面白いっすね!!!

fateさんへ

お疲れなんですか?
うちの玲奈ちゃんと人見さんの夫婦が、お疲れをすこしでも癒せたのでしたら嬉しいです。

これは単にタイトルしりとりなんですけど、シチュエーションしりとりだったとしても面白いでしょうね。
むずかしそうではありますが。

最近、フォレストシンガーズストーリィの在庫が少なくなってきましたので、別もののこころみもやっております。
そんなのも読んでいただいてありがとうございまーす。

http://quianquian.cocolog-nifty.com/blog/

こっちの最新記事にも「fateさん、ありがとうございます」と書かせていただきました。

お邪魔してきました(^^)

あちらは、ダイアリー的なブログだったんですね~
ちょこっと別の記事にも入って、お母様のこととか。
ううむ、大変だよな~
等と。

乃梨香さんが、一日一行でも日記をつけること、今日が何月何日なのかを自覚するだけでも違う! とコメントされていることに「おお!」と頷いてきました。

ヤバい。
すでに、fateは今日がいつなのかよく分かってない…

fateさんへ

あちらのほうにもお越し、ありがとうございます。
小説ブログにはあまり現実は書かず、現実逃避の手段にしようとたくらんでいるものですから。
書いているときだけはいやなことは忘れられますからね。

私もランダム休日のバイトをしていますので、今日が何曜日なのか混乱してます。
ヤバイかなぁ。。。

NoTitle

しりとり小説、グッドアイデアですね。

自作キャラを使って、紡がれたタイトルの物語をつなげていく。
たのしそう。

1は、フォレストの面々ですもんね。よかった、まだわかる!w
ズッキーニも、ちょっと妬いてしまいそうな、可愛らしいおはなしでした。

私SSって、書いたことがないんですが、一回挑戦してみようかな。
でも、きっと膨大な長さのSSになりそうで怖い・・・。

いつか私が「しりとり小説」書いたら、アイデア取ったな,と、怒ってくださいw

中島らもさんのしりとりえっせい、そういえば記憶にあります。
ちょいとワイ談も挟みながらの、ユニークなエッセイだったような。
らもさんのさくひん、何気に好きで、全部よんでいました。

limeさんへ

らもさん、お好きですか。
私もらもさんの本の、文庫本になっている分は全部読みました。
リリパットアーミーのお芝居も、一度観にいったことがあります。

limeさんとは読書の趣味は、似たところがありますよね。

私は長いものを書くほうが好きですし、ブログにアップしたときにも充足感があるのですが、長いのは連載にしないと、あまり読んで下さる方がいないなぁと、今さらながら気がつきまして。

それで短いのも書き始めたわけですが、長いのも短いのもむずかしいですよね。

limeさんの小説のキャラが出てくるショートストーリィ、ぜひ読んでみたいです。
limeさんもどうぞどうぞ、しりとり小説、書いてみて下さいな。
楽しみに待ってますねー。

私のほうの「しりとり」は、フォレストシンガーズとは無関係の人も出てきますが、またお読みいただけたら嬉しいです。
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