企画もの

第八部完了「Forest singers on stage」

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フォレストシンガーズストーリィ第八部完了記念

「Forest singers on stage」

 五色のスポットライトが彼らを照らし出す。小笠原英彦の記憶にもある、乾隆也のイメージに沿ったライティングの演出なのだろう。

「俺たちの声を色であらわすと……」

 中央にいるのはリーダーの本橋真次郎、ステージ衣装がシックなグレイのスーツなのは、カラフルなスポットライトを考慮してのものか。

 深海の蒼、英彦にはそう思える色のライトの中で、真次郎が深く腰を折る。
 
 続いて真次郎の向かって右、三沢幸生、甘いピンクのライトに照らされて、幸生は持ち味の愛嬌のある笑みをふりまいて、両手を顔の高さに上げてひらひら動かしていた。

 真次郎の向かって左、木村章。陽光のようなオレンジのライトが彼を照らし、章はスタンドマイクを持ち上げて叫んでみせた。

「みなさまーっ!! ようこそお越し下さいましたーっ!!」

 章のヘヴィメタシャウトってやつだな、と英彦は笑ってしまう。周囲にいる若い女性の聴衆が、きゃーっ、章ーっ!! と嬌声を上げるのにも笑ってしまった。

 そんな中、続いて照らされるのは右端の乾隆也。ピーコックグリーンというのだと隆也に教わった緑のライトに照らされて、隆也は胸に片手を当てて優雅に腰を折る。彼にも女性の歓声が飛んでいて、英彦は思った。乾さんはファンにももてるんだな。

 最後はフォレストシンガーズのベースマン、左端に立つ本庄繁之。深みのある幻想的な紫のライトの中で、彼はにっこりと頭を下げた。
 この色の演出は、彼らの声に基づいているのだそうだ。

 スポットライトとネクタイの色が同じなのが、英彦にはしゃれた演出に思えた。五人がステージに並んで均等にライトが当たると、各自のファッションに微妙な差があるのも見て取れる。長身の真次郎や隆也と、中背で筋肉質の繁之、小柄な幸生や章では似合う服装もまちまちだからだ。

「みなさま、我々のステージにいらっしゃいませ」
 隆也が言い、繁之も言った。
「今宵はごゆるりとお楽しみ下さいませ」

「ユキちゃんのファンだって言って下さる女性のみなさまー、来て下さってありがとう。ええ? 男性のみなさまはって? 忘れてたよ。いやいや、忘れてませんよ。女性も男性も、僕らの歌を聴きにきて下さって、本当にありがとうございまーす」
「幸生、いつまでも喋ってるんじゃねぇっ!!」
「章は挨拶したじゃん」
「いいや。もう一度……あれ? もういいの?」

 真次郎が幸生と章を黙らせ、拍手と歓声が一時止まり、五人が声をそろえた。

「改めまして、フォレストシンガーズです!!」
「本日は我々のライヴにおこしいただきまして、ありがとうございます」

 リーダーの真次郎がしめくくり、五人がそろって礼をする。客席のヴォルテージが高まっていき、否応もなく熱気が空気を支配する。英彦も自然にコンサートホールの空気に身をゆだねていた。

 高校生までの英彦は、特別に音楽が好きではなかった。妹につきあってテレビの音楽番組でヒットソングを聴き、歌よりも歌手の女の子の顔やプロポーションによそ見していたほうだ。

 大学生になって先輩に勧誘され、合唱部に入部し、いつしか歌にのめり込んでいき、隆也と真次郎に誘われて、繁之と幸生もともにフォレストシンガーズを結成した。

 なのに、あのころの恋人との結婚を選んだ英彦はフォレストシンガーズを脱退し、家庭を持って子供も生まれた。なのになのに、家庭を捨てざるを得なくなったのは、フォレストシンガーズに未練がありすぎたからだ。

 妻と離婚して娘も捨て、というよりも捨てられて放浪していたころには、フォレストシンガーズを恨んでいた。プロにはなっても売れずに消えてしまえばいい、俺はただ、あんたたちと一緒に歌っていたという事実を、にも関わらず俺だけがプロのシンガーになれなかったという事実を忘れたいのだから。

 身勝手な理屈をころがしながらも、心のどこかではフォレストシンガーズを応援していた。あのころのおのれを思い出すと、肩を落として吐息をつくしかない。

 忘れたいと願い、二度と会うはずはないと決め込んでいたフォレストシンガーズ。英彦のかわりには章が参加して、いくらかは売れて有名になって、けっこう大きなコンサートホールでライヴをやっている。

 英彦が感慨にふけっている間にも、ステージは進行していく。五人の美しいコーラスワーク、高く低く重なり響くハーモニー。ソロパートの個性豊かな声、声、声、歌、歌、歌。かつて自分が彼らとともに歌っていたという事実はなくても、英彦を涙ぐませそうなライヴだった。

「……あ……この歌は、やめてほしいな」

 彼らと再会してはじめて提供した、小笠原英彦作曲の「時は流れて」のイントロが奏ではじめられる。恥ずかしくて嬉しくて、誇らしくて切なくて、英彦は目を閉じて、ギターが、ベースが、ピアノが紡ぎ出すメロディにまかせて、心ごと身体を揺らせていた。


第九部に続く。


第八部までのご挨拶

このブログを開設した当時は、フォレストシンガーズストーリィは第三部くらいまでの予定だったのです。それでは一年ほどしか保たないだろうから、そのあとはどうしようか、時間はあるんだからゆっくり考えようとのんびり構えていました。

当時は書けない時期で、ストックもあまりなく、時間は素早くすぎていく。

そうこうしているうちに、WEB上で知り合った方々の助言や励ましや感想やご意見などもいただくようになり、すこしずつ書けるようになっていき、フォレストシンガーズストーリィのみならず、昔書いた別キャラ小説を発掘したり、そちらの新作も書いたりして。

気がつくと「茜いろの森」は三年目に突入しています。

愛しい息子たち、フォレストシンガーズになぞらえてみれば、まだ全然売れていないけど、ひとすじの光明は見えてきたかな、って時期です。
私のブログのひとすじの光明は、なんと言ってもご訪問下さるみなさま。コメントや拍手をいただくのはもちろん、アクセスして下さったというだけでも嬉しいです。

インターネットというものは匿名であり、人の表情は見えない。言葉のニュアンスも伝わりにくい。それだけにむずかしい点は多々、多々ありまして、いくつになっても未熟者の私は失敗もしております。いい勉強もさせてもらいました。

フォレストシンガーズストーリィも第八部まで終了しました。第九部は「明日へ」がコンセプト。三十代になった彼らにも、彼らの周囲にもこれからも……ですね。

おことわりしておきますと、現在、最年長の本橋真次郎、三十五歳。でありまして、これ以上は年を取らせたくないなぁ。中年間近のデリケートな年齢のままでいさせたいなぁ、と考えていますので、当分は時間的矛盾もあるかと。寛大にお許し下さいね。

多少はストックもありますし、今日からも新しく書くつもりでいますので、フォレストシンガーズは少なくとも第十部までは続く予定です。グラブダブドリブやらリカやらしおんやら新選組ものやら、その他もちょこちょこ。ショートストーリィももっと書きたい。

津々井茜は「小説を書く」ということが生き甲斐で、ただそれだけの者が書いた拙作をお読みいただければ、そこにご感想などいただければ、天に舞い上がるほどに嬉しいのです。
応援していただくのもご意見いただくのも含めまして、今後ともよろしくお願い申し上げます。
できますればお手柔らかに。てへっ(=^・^=)








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~ Comment ~

NoTitle

やっぱり最初から読まないといけません!!
キャラが全然わからない!!

離婚して~のところとかすごい気になる!!!!

途中だけではいかんとですね。
最初から行ってみます!

ハルさんへ

きゃあ、すみません。
そうですよね。
いきなりこれを読んでいただいても、誰が誰だかわかりませんよね。

「声」についてけっこう書いているのは、これかなぁ、と紹介させていただきましたが、よろしかったら、ショートストーリィのフォレストシンガーズなどお読みいただけますと嬉しいです。

ご質問、疑問点などありましたら、どしどしお寄せ下さいませね。
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