ショートストーリィ

'Xマスストーリィ「天使の羽根」

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「天使の羽根」

   ☆☆☆☆☆ fateさんとリカちゃんに捧ぐ。


 いずれはおまえを俺の妻にする、とお兄ちゃまが言ってくれてからはじめてのクリスマスが、もうじきやってくる。お兄ちゃまとはいっても実の兄ではなくて、家族を亡くしてひとりぼっちになったあたしを、五歳のときから育ててくれているひとだ。

 大学教授だったあたしのおばあちゃまの教え子だったから、おばあちゃまにもパパにもママにも親切にしてもらったから、そんな理由でみなしごになったあたしを引き取って育ててくれた。

「お兄ちゃま、クリスマスにほしいものがあるんだけどな」
「なにがほしい?」
「なんでも買ってくれる?」

「俺の財力が許すものならば」
「宝石がいっぱいの金のティアラでも?」
「それは結婚式の日にオーダーしようか」

 結婚式だなんて言われると恥ずかしくなって、お兄ちゃまの腕を叩いた。その腕があたしを抱き寄せて、お兄ちゃまの胸の中。

「猫がほしいの」
「猫ってのは高いのか」
「高いのもただのもいるよ」

「そうだな。俺はおまえを育てるのに精一杯で、ペットまでは頭が回らなかった。けれど、子供の情操教育のためにはペットってのはいいと言う。幼いものへの思いやりを教えるためには、おまえが小さいころから動物と一緒に育てればよかったかな。手遅れでもないかな」

「情操教育なんてどうでもいいから」
「わかったよ。今夜、買いにいこうか」

 そう言ってお兄ちゃまが出かけていき、あたしも学校に行った。その夜。

「リカ、はい、早めのプレゼント」
 お兄ちゃまのコートの中に、淡いグレイの子猫がいた。

「えー? 一緒に買いにいきたかったな」
「猫ってのは買うものとも限らないんだ。こいつはそこらへんに落っこちてて無料だったから、クリスマスプレゼントはまた別に買ってやるよ」
「拾ったの? そしたら、獣医さんに連れていかなくちゃ」

 正直、拾った猫なんて、って、あたしとしては不満だった。だけど、小さな猫を持ち上げて顔を見たら胸がきゅーっとなって、ぎゅーっと抱きしめたくなった。

「子猫を強く抱いたらこわしてしまうぞ。今夜は箱にでも入れて寝かせて、明日、獣医に連れていって健康診断をしてもらおうか。あったかくしてやらないとな」

 周到にもお兄ちゃまは子猫用キャットフードと子猫用ミルクを買ってきていたから、それを食べさせて、箱に小型の毛布を入れて、そこに猫を入れる。あたしは箱のそばにすわって、なんて名前にしようかな、なんて考えながら、可愛い寝顔を見ていた。

「リカ、そんなところで寝たら風邪を引くぞ」
「じゃあ、この子とリカのベッドで寝ていい?」

「おまえは寝相はよくないんだから、こんなちっちゃいの、潰してしまうんじゃないかな」
「リカは寝相はよくなくないけど、この子は小さすぎるよね。そしたらリカもここで寝る」
「箱ごと、おまえの部屋に連れていけばいいよ」

 箱を抱えたあたしを、お兄ちゃまが抱き上げる。丸くなって眠っている小さい猫の背中が見えた。

「……全部がグレイじゃないんだね。こんなところに模様があるよ」
「そうだな。俺も気づかなかったけど、なんだろ。羽根みたいな模様だな」

 片手で箱を支えて、片手で猫の背中の模様に触れてみた。淡いグレイの猫に白い模様だからわかりにくくて、今になって気がついたのだろうか。羽根のような模様に触れていると、心の中になにかが流れ込んできた。

 これはなに? 誰かが話しているの?

 お空の上には猫の国があるんだよ。
 生まれる前の猫と、生命を終えてしまった猫のいる国。ボクも生まれる前にはそこにいたんだ。そしたらね、ふわーっと昇ってきた猫の魂がいた。

 ちっちゃなまんまで死んでしまった猫だった。名前もないその子は言ってたんだ。ボクには聞こえたんだよ。

「優しい人間の女の子が、死にかけていたわたしを包んでくれたの。愛してくれたの。
 その女の子はわたしを家に連れて帰ってはくれなかったけど、あっためてくれた。
 心をあったかくしてくれた。わたしの心が溶けてひらひらと……」

 ひらひらと舞っていたのは、白い雪の花びらだったのかな。そのひとひらは、ボクの背中にも舞い降りてきたんだよ。あの日は人間の国にも雪が降ったんでしょう?

「え?」
「どうした、リカ?」

 なんだかぼんやりとしていたみたい? あたしは言った。

「お兄ちゃま、リカはあんまり優しくないかもしれないけど、この子が情操教育してくれたら優しくなれるよね。クリスマスプレゼントありがとう。他のものはいらないから」
「近頃は不景気だから、助かるよ。無料のプレゼントくん、ありがとう」

 冗談みたいにお兄ちゃまが言って、小猫の頭に指一本で触れた。
 この子の名前は「天使の羽根」にしようかな。長すぎるから省略して「ハネちゃん」って、可愛いかもしれないね。

おしまい 



あとがき

http://alicefreeman.blog61.fc2.com/blog-entry-1060.html#end

fateさんのクリスマスストーリィ「天使が凍えた街」のオマージュのつもりで書きました。
人間の女の子のほうは、「潮騒」(別小説カテゴリにあります)の主役のリカです。
時間的矛盾があるかもしれませんが、お許しのほどを。

fateさん、リカちゃん、ありがとうございました。




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~ Comment ~

ありがとうございます。

奈緒ちゃんの心が報われた気がしました。
いや、自分の物語では泣けないけど、こちらでは思い切り泣けました(^^;

そんな風に旅立ってくれたら、そして、こんな風に優しさがつながってくれたら、こんな素敵なことはありません!!!

なんか分からないけど、あの世界を描いて良かった、という気にさせてくれました。
本当に本当に心より感謝です。
鼻水かみながら返信で失礼いたしました(--;

リカちゃん、お会いしてみたくなりました。

素敵なクリスマスプレゼントをありがとうございます

茜さんに、理想の恋愛論をお話しして、おねだりして書いてもらったおかげで、こんなに素敵なクリスマスプレゼントをいただけて、幸せです。(⌒^⌒)b♪♪

ただ、問題は、茜さんが、リカを『茜さんと出会うことができたころ・・・』の時間軸の(及び、小説の世界感から、容姿の良いなど)かなり違う設定になさったことで・・・(^_^;)
小生意気なことを言うときや、将一さんに甘える性格は、本当に苦笑いするほど、私ですが・・・

なんか、まとまりがなくなりましたが、子猫を飼いたくなりました( ̄ー+ ̄)!
そんでもって、本当にありがとうございましたm(_ _)m

fateさん、ありがとうございます

クリスマスに間に合わないといけないから推敲もあまりできなくて、こんなんでいいんだろうか……でしたから、そう言っていただいてとても嬉しいです。

私も猫好きですから、猫の国のくだりを書いていて自分でちょこっと泣いたという、これもナルシストですかね。

我が家にはただいま、猫が二匹。
おばばのほうはこのままでは捨てられるというのを救出してきた子で、若いほうは捨てられていた病気の子猫でした。

猫は拾うかもらうかするもの、と私は認識しています。
にゃーご。

乃梨香ちゃん、いっぱいありがとう

このような粗末なものを、クリスマスプレゼントだと言っていただいてありがとうございます。
拍手コメントもありがとう。

私の中では乃梨香ちゃんは十五歳で止まってるようなところもあるし、大人の女性が「甘える」というのは書けない体質ですので、こうなっちゃうんですよね。

ご不満もおありでしょうが、ファンタジーと思し召して、楽しんでやっていただけたら嬉しいです。

リレーもまたよろしくね。

素敵なクリスマスストーリーでした!

fateさんのところでも「ああ、いい話だな~」と思って泣けてきて、こちらでも「ああ、心があったまるな~」と思って泣けてきました。

うちも以前ネコを飼ってまして、もう亡くなったんですが、その子がちっちゃかった頃を思い出してまたまた泣けてきました(笑)

グレーの子猫の背中に白い羽のような模様。ああ~素敵です。さわりたい!

これからは、メールにしますm(_ _)m… 

なんか、誤解を受けるコメントをしちゃって・・・(^_^;)
せっかくの美しい世界感を壊してしまって、すみませんm(_ _)m… 

良いお話だなぁ・・・って思って、
コメント欄を見たら、
「リカちゃんに会いたくなりました」のお言葉・・v-12
パニクってしまい・・・
不躾なコメントで・・・・本当にすみませんm(_ _)m… 

夫に(私の)情操教育が必要だから、子猫を飼っても良い?
と聞くと
「手遅れや・・・」
と言われてしまいました(ノ△・。)

響子さん、ありがとうございます

響子さんのブログの四コマ漫画を見せていただいて、響子さんも猫がお好きなんだろうなと思っていました。

猫ってほんとに、ただそこにいるだけで、少々ブサイクな子でも可愛いですよねぇ。

来年の「猫めくり」を見ていたら、白い背中に黒いハート模様のある猫がいたのですよ。その子を見て、ああ、fateさんのストーリィの天使の羽根……ってつながって、この物語ができました。

響子さんにもそう言っていただけて嬉しいです。
いつもありがとうございます。

乃梨香ちゃんへ

メールも嬉しいけど、コメントも拍手も嬉しいから、どっちもよろしくお願いしますね。

えーと、乃梨香ちゃんが言いたかったのは、「別に不満を言ったわけじゃないよ」ですよね?
ごめんなさい、私も書き方が悪かったようです。

不躾なんかでは全然ありませんので、これからもどんどん書いて下さいね。

「リカちゃんに会いたい」っておっしゃってるのはたぶん、フィクションのリカちゃんだと思うんですけど……ちがうのかなぁ。

あと、リレーが乃梨香ちゃんで止まってるのはたまたまで、みなさん、お忙しいからだと思いますよ。

私もあんまりたくさん書くのもなんだかなぁ、ですので、気長に待ちましょう。みなさま、リレーもよろしくお願いしまーす。

って、ここに書いても見てもらえないかな。

「スクラップブック」のお返事はそちらに書きますので、見て下さいね。

私のブログの方にお越しいただき、ありがとうございました。

早速お邪魔いたしましたら、こんなに素敵なお話に出会えてあったか気分です。

また遊びに来させてくださいね。

良いお年を。

こんばんは。「三流自作小説劇場』のヒロハルと申します。
ずいぶん前、10月頃、「かつての我が家に少年と」という作品に感想を貰いました。その切はありがとうございました。
で、こちらで作品をさせてもらおうと思いつつ、次の日に予想外の入院で、そのまま遠ざかってしまっていました。ゴメンなさい。

今日はこちらの作品を読ませてもらいました。
fateさんのクリスマス企画は読んでいたので、途中で「そういうことか」と気がつきました。
「他の物はいらない」っていうのがとても素敵で、いい言葉でした。

また良かったらこれからよろしくお願いします。

けいさんへ

ようこそいらっしゃいませ。
ありがとうございます。

いつでも何度でもいらして下さいね。
私もまたお邪魔させていただきます。

今度は新年特別企画もやるつもりでいますので、よろしくお願いします。

ヒロハルさんへ

ようこそいらっしゃいませ。
ヒロハルさんの作品、覚えています。
そうですか。入院なさってたのですね。もう大丈夫ですか?

ヒロハルさんのブログはコメントも多くて、なんとなくコメントするのに気後れしてしまっていたのですが、この次に読ませていただいたらコメントもさせてもらいますね。

fateさんのクリスマスストーリィを読ませてもらい、黒いハート模様の白猫の写真を見て書いた、この物語。

こんなふうにみなさまに読んでいただいて、コメントも書いて下さって嬉しいです。

ありがとうございました。
今後ともよろしくお願いします。

いまごろですが、こちらにおじゃましました^^
(本編も、少しずつ読ませてもらっています)

fateさんや、ほかの方の作品世界のコラボという感じなのですね?
(いや、コラボじゃなくて、なんでしたっけ。専門用語に疎くて)
fateさんのお話は読んでいたので、「ああ、あの猫ちゃん」と、ほっこりしました。

何度も「無料」だというお兄ちゃまに、にんまり。
そう、拾ってあげることが、何よりの情操教育で、優しさですよね。
私も、猫ちゃんは、拾ってあげるものだと思います^^
本当はこの世から、捨て猫が居なくなる事が望ましいのですが・・・。

野良猫って、本人には何も責任がないのに、害虫のように嫌われて、本当に気の毒です。
確かにゴミを荒らしたり、大変なんですが、全部人間の罪ですもんね。

そんな理不尽な理由で猫を嫌う大人って、どんな偉い人でも、好きになれないなあ~って思います。
(身近に居るんだな~~涙)

あ、話が脱線しちゃいました。
可愛いお話、ありがとうございます^^

limeさんへ

はい、fateさんのあのクリスマスストーリィと、私の小説の「リクエスト小説」の中にあります「潮騒」の主人公、リカとをからませた短篇です。

リカにはモデルというかなんというか、こんなの書いて、と言ってくれた友人がいまして、というようないきさつもあったのです。

人間の身勝手で捨てられた猫なのに、食べものを与えると迷惑だからやるなと言ったり、人間ってほんと、勝手ですよねぇ。

野良猫、捨て猫につきましては、limeさんのご意見に大賛成です。
こちらこそ、ありがとうございました。
今後ともよろしくお願いします。(=^・^=)

NoTitle

あかね様、こんにちは♪
少しご無沙汰してしまいました><

今回はこちらを手に取らせていただきました(*´ω`*)テレ
クリスマスに読みたかった~。
とっても素敵なお話です!

勝手に、ホワイトクリスマスを想像しました。
天使の羽根で、ハネちゃん。
可愛いお名前ですね。
このお話に登場するキャラクタについて、私は前情報を知らないのですが、とっても楽しく拝読させていただきました♪
お兄さんの口調がカタイところが何かツボでした(笑)

薄暗い図書室のリンクの件、とても遅くなってしまって本当に申し訳ありません><
コメント返信にてお返事させてもらいましたが、こちらにも^^;
拙いホラーを気に入って下さって、感謝!の一言です。
とても嬉しいです(ノ´∀`*)
私からも、あかね様のブログをリンクさせてもらっても構いませんでしょうか?
お暇な時にでもお返事下さいませ。

土屋マルさんへ

またまたこれもコラボですが、もとの作品をごぞんじなくてもわかっていただけたと知って、ほっとしました。

お兄ちゃまの口調、カタいですか?
彼、ちょっと照れてるのかもしれませんね。
いえ、そのあたり、お兄ちゃまとリカには事情がありますので。
というようなことは関係なく、楽しんでいただけたのでしたらとっても嬉しいです。

土屋さんの書かれるホラーは、わくわく、どきどき、ぞくぞくで、大好きです。
リンクの件、ありがとうございます。
こちらからもリンクさせていただきますね。
私のほうも、リンクしていただければ大喜びです。どうぞよろしくお願いします。
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