ショートストーリィ(フォレストシンガーズ)

フォレストシンガーズストーリィ1-第四話「うん」

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津々井茜の「茜いろの森」メインノヴェルはフォレストシンガーズストーリィです。
七人の主役たちの視点で、順番にショートストーリィを書きました。
第四話は乾隆也(いぬい・たかや)、二十一歳。
できましたら、第一話から順に第七話まで読んでいただけると嬉しいです。


フォレストシンガーズショートストーリィ1-第四話

「うん」

 恋というものの美しい側面だけを見れば、この世でもっとも崇高で綺麗な感情だともいえる。俺たちの仲は美しくなんかないけれど、恋とはちがった意味で、この歌を仲間たちに捧げたかった。

「他にはなにも言わないで
 キミが「うん」って言えたから
 百回好きと言われるより嬉しくなった

 他にはなにも言わないで
 僕も「うん」って言えたから
 ほら世界でいちばん短いI love you」

 大学合唱部の後輩たち、一年下の本庄繁之、小笠原英彦。二年下の三沢幸生を集めて、俺と同い年の本橋真次郎が切り出した。

「俺たちは就職はしない。歌で生きるって決めたんだ。乾と俺と、おまえたちと、五人でやろう。ヴォーカルグループを結成して、プロを目指して歩いていこう。山田美江子も協力してくれるって言ってるよ。あいつはマネージャーになるって決めてるそうだから、六人だな」

 本庄シゲと小笠原ヒデは感激の面持ちでうなずき、やります!! と低く叫んだ。三沢はすこしばかり茶々を入れたものの、結局は人一倍甲高い声で叫んだ。

「俺も歌いたい。プロのシンガーになって、それで生きていけるんだったら、下っ端でも走り使いでも小間使いでも、小姓の雪之丞でもなんでもいい。俺もまぜて下さいっ!!!」
 五人で決めたグループの名前はフォレストシンガーズ。俺は言った。

「おまえは合唱部でもキャプテンだったんだから、フォレストシンガーズでもリーダーだよ。本橋、よろしく。俺たちはおまえについていくから」
「あ、ああ、うん。みんなもそれでいいのか」

 三人の後輩たちは、うんっ!! とうなずき、本橋も俺も、うんっ!! おーし、やろうぜっ!! と口に出しても心でも叫んでいた。

 男が五人のヴォーカルグループ、協力者の女性がひとりいても、恋のように美しくも甘くもないけれど、これはこれで、俺たちのI love you。世界で一番素敵な言葉は「うん」。先の諸々はこれから考えることにして、今は叫ぼう。そうさ、やろうぜ。うんっ!!

5につづく






 
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~ Comment ~

NoTitle

夢あるっていい事だけど、それなりの覚悟も必要だと思うんですね。
自分も自分の描いた人生を歩めたらなあって思い、ブログで物書きを始めました。

先週自分の住んでる市で市議会議員の補欠選挙がありました。それにうちの集落にいる人間が立候補しました。村民みんなで選挙戦を戦う事になり、自分も微力ながら手伝いました。
この事は私のブログに詳しく書いています。候補者は30代後半で新人です。
彼の掲げるスローガンは「若者がチャレンジできる○○市へ」です。
彼らに歌と言う夢があるように、この候補者にも夢があると言う事だと思います。

楓良新さんへ

コメントありがとうございます。
夢や希望や展望は、若者の特権ですよね。
そりゃあ、中年になっても老年になっても自分のしたいことを追いかけてもいいわけですが、年をとればとるほどしがらみが増えて、そうもいかなくなってきますから……ごほごほ。

選挙運動をなさっていたのですね。
それもまた小説を書く参考になるのでしょうか。
いろーんな経験をするのもいいことですよね。
若者がチャレンジできる……そんな社会はいいですよねぇ。

NoTitle

おおっ!いよいよみんなで一斉に声を上げ、結成の時!ですね♪
でも、ちょっと思ったんですが、やっぱり家族の反対とかはあったりしたんでしょうか?そういうのも後から出てきそうですよね。。。

私の好きだったバンドもデビューするときには本当に大反対をされて、それでも頼み込み、最後にはボーカルが歌ったその声でお父さんはようやく行って来いと言ってくれたみたいなエピソードがあったそうです(笑)

夢はとっても素敵だけれどそれが困難な道だと思うと心配する親ごころみたいなのもありますよね。。。
この先そういったところとかも含め楽しみです♪
  • #1960 ぐりーんすぷらうと 
  • URL 
  • 2013.12/01 23:31 
  •  ▲EntryTop 

ぐりーんすぷらうとさんへ

いつもコメント、ありがとうございます。
家族の反対につきましては、長い物語にしっかり出てきています。
ショートストーリィよりも先に長いほうの「NOVEL」を書きましたので、どこまで説明すればいいのかと悩みつつ、ショートストーリィも書いています。

ヒデは「兄ちゃんは馬鹿やないがか」と弟妹に言われ。
シゲは両親にも姉にも反対され。
真次郎も家族全員に反対されて家出し。

章はそもそも、大学を中退した時点で父親に勘当され。
幸生は両親にはがっかりされたものの、妹たちには応援してもらっていましたので、彼がもっとも家族の反対は少なかったのです。

で、隆也は、「五年の猶予をあげます。五年たってもプロになれなかったとしたら、故郷に帰ってお父さまの跡を継ぎなさい」
と、お母さまに厳命されました。

というようなエピソードはどこかに出てくるはずですが、とりあえず、そんなふうだったのですよ。
私は若者には夢を追ってほしいと思いますが、親の立場としては反対しますよねぇ。両方の気持ちがわかります。
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