ショートストーリィ(フォレストシンガーズ)

フォレストシンガーズストーリィ1-第三話「旅立ち」

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津々井茜の「茜いろの森」メインノヴェルはフォレストシンガーズストーリィです。
七人の主役たちの視点で、順番にショートストーリィを書きました。
第三話は本庄繁之(ほんじょう・しげゆき)、二十歳。
できましたら、第一話から順に第七話まで読んでいただけると嬉しいです。


フォレストシンガーズショートストーリィ1-第三話

「旅立ち」

 失恋したおかげで本橋さんや乾さんと親しくなれたのだから、怪我の功名ってやつなのかもしれない。ものごとはなんだって、よいほうに考えればいいのだ。合唱部一の美少女に恋をして、彼女の兄貴であり、男子部のキャプテンでもあった男に邪魔されて、恋はこわれたけれど、結局は彼女は俺なんか好きではなかったのだと、今になってみれば思う。

 大学三年生も数ヶ月で終わろうとしているのだから、将来を真剣に考えねばならない時期に来ている。好きだな、いいな、と思う程度の女の子にだったら出会っても、彼女いない歴二十年を誇る俺は、恋人だの女だのと考えている場合ではないのだ。

「まあな、それはそうやな。俺だって女よりも……」
「女よりもって、恵さんか?」

 先ごろ、小笠原ヒデに彼女を紹介された。俺よりはもてるだろうけど、乾さんや本橋さんほどにはもてないはずのヒデにも彼女がいて、めでたい気分が半分、顔がひきつりそうな気分が半分だった。

「女は恵しかおらんけど、それよりもな……」
「就職説明会とか、面接とかって、ヒデは行ってるのか」

「うーん……乾さんには、まだ口外するなって言われてるんだよな」
「口外するなと言われたことは言ったらいけないな。そしたら聞かないよ」

「おまえって奴は……シゲにも関係あるんやぞ」
「俺にも? だけど、言ったらいけないんだろ」
「ああ。ほうやきに」

 いい意味でも悪い意味でも興奮しているときには、ヒデは土佐弁を口から出す。今はなにで興奮しているのだろう。ヒデはなんだか焦れたような顔をして言った。

「おまえにもそのうちわかるかもな。うん、わかったらえいんやけんど」
「ヒデ、土佐弁が出てるぞ」
「土佐弁なんかどうでもええんじゃ。アホか、おまえは」

 今度は大阪弁になって、ヒデはそっぽを向いてしまった。
 将来の見通しが立たないから苛立っているのだろうか。そういう意味でだったら俺も苛立つけれど、ヒデの表情や言葉の深い意味がわからなくて問いかけた。

「胸のうちのどこかに、なにかがひっかかって……それがなんなのか、俺には……なんなんだろ、ヒデ。これはなんだ?」
「なあ、シゲは歌手になりたいと思ったことはないのか?」

「歌手? 俺のこの顔で?」
「本橋さんはいつも言ってるだろ。歌は顔じゃないんだ。喉だ、声だよ」
「俺は声だけはいいと言ってもらえるけどさ……」

 歌手? この俺が? ヒデ、本橋さん、乾さん、それから俺をつなぐキーワードは歌手? 胸が高鳴りはじめたときに、ヒデが言った。

「乾さんが呼んでる。行こう」
 乾さんが連れていってくれた場所には、俺たちの旅立ちの前奏が待っていた。


4につづく






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~ Comment ~

NoTitle

フォレストシンガーズ読み始めました!
読みやすくて一話だけのつもりがここまで読んでしまいました。(笑)
音楽好きだし、イケメンだしで読んでて楽しいです(笑)
方言もいいですね。親しみが湧きます。

また続き読みにきます(^-^)

たおるさんへ

わーい、こちらも読んで下さって嬉しいです。
フォレストシンガーズはこのカテゴリ以外にも散らばっていますので、あちこち覗いてみて下さいね。

たおるさんも音楽、お好きですか。
私は好きなだけで知識は乏しいですので、まちがったことを書いていたら教えて下さいね。
方言も、関西弁はネイティヴですので大丈夫なつもりですが、土佐弁はやや冷や汗です。
たおるさんはどちらの方でしょうか。さしつかえなければ教えて下さいね。

フォレストシンガーズの五人は特にはイケメンではありませんが、脇役にはルックスのいい男性もちらほら出てきます。長身細身美形、見ている分にはいいですよね(^^

ぜひぜひまた読みにいらして下さいね。

NoTitle

今度はヒデさんの話ですね。土佐出身のキャラですね。ヒデの話し方、こちらの話し方に若干似てる感じです。

そちらは完全に音楽の話ですが、こちらは音楽的タイトルをつけても音楽とはあまり関係ない感じです(笑)。4話目のタイトルはそれらしいタイトルをつけてますが、別の意味があってつけてます。

それとヤングマガジン連載中の「みんなエスパーだよ」と言う漫画があります。テレビドラマにもなった作品です。原作の舞台はなんと自分の住んでる県で、なんと方言も出て来るから、自分の住んでる県が漫画とかの舞台になったら嬉しいものですね。自分のところは変哲もない田舎ですからね。

またもキャラの挨拶をやりました。気が向いた時に来てくださいね。

楓良新さんへ

コメントありがとうございます。
シゲとヒデはこのころはふたりでひとつ(気持ち悪いからやめんかっ、とヒデが怒ってますが)ですので、たびたびペアで出てきますね。

楓さんは九州のどちらなのかな? 土佐弁のイントネーションは和歌山弁に近いそうですから、関西弁と似たところはあるのですが、九州弁にも似てるんですね。

フォレストシンガーズは一応、ヴォーカルグループではありますが、私の音楽の知識はきわめて乏しいですので、それっぽい感じが出せたらいいなぁ、程度です。

「みんなエスパーだよ」って知らなかったのですけど、その舞台が楓さんがお住まいの県なのですね。あとで探してみます。
九州は全部旅行で行っていますから、ちょっとぐらいはなじみがあるはずですよ。

楓さんのブログにもまたお邪魔させてもらいますね。

NoTitle

>俺たちの旅立ちの前奏が待っていた。
まさにプロのシンガーを目指すにふさわしい表現ですね♪
ヒデ君の土佐弁とっても好きです♪
たまりませんね!いいわぁ。

シゲ君はよっぽど顔にコンプレックスがあるんですね。
どこかでも読んだような気がするんですが、今探してみたんですが、どこで読んだのやら??(笑)

友達のヒデ君にも彼女が!
>顔がひきつりそうな気分
これすっごく気持ちが出てておもしろかったです♪
おめでとうと言ってあげたいけど顔が思わず・・・って感じでしょうか?
可哀想に(涙)
シゲ君に彼女ができる日を楽しみに読んでいきます♪
  • #1953 ぐりーんすぷらうと 
  • URL 
  • 2013.11/29 19:57 
  •  ▲EntryTop 

ぐりーんすぷらうと さんへ

コメントありがとうございます。

シゲは自分の顔を含めたすべてに自信がなくて、俺の長所は声と力持ちなところだけ、と思っているふしがあります。
シゲが主人公になっているストーリィでは、たぶんそればっかり書いてますよね。

男性の方言って、広島弁や博多弁が人気あるようですが、私も土佐弁はけっこう好きです。
幕末好きですので、坂本龍馬や中岡慎太郎り言葉で覚えましたので、古いかもしれません。

あいつはあんまりもてないはず、だと思っていた友人に彼女がいたというのは、けっこうショックなものですよね。
この調子でシゲはずーっともてませんが、しかし、そのかわり……ということが将来に待っていますので、気長におつきあい下さいませね。
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