ショートストーリィ(フォレストシンガーズ)

フォレストシンガーズストーリィ1-第二話「友達」

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津々井茜の「茜いろの森」メインノヴェルはフォレストシンガーズストーリィです。
七人の主役たちの視点で、順番にショートストーリィを書きました。
第二話は山田美江子(やまだ・みえこ)、十九歳。
できましたら、第一話から順に第七話まで読んでいただけると嬉しいです。


フォレストシンガーズショートストーリィ1-第二話

「友達」

君がいた夏は遠い夢の中……空に消えてった打ち上げ花火。

 去年の夏、十八歳だった私は、三つ年上の合唱部の先輩に恋をしていた。去年の夏、この浜辺ではじめて彼と抱き合って、私は少女ではなくなった。そして彼は、私を捨てて大学を卒業して、社会人になってしまった。

 簡単にいえばそういうわけで、今年の私はひとりぼっちだ。

 毎年行われる合唱部の夏合宿。十九になったばかりのころに捨てられて、失恋なんて吹っ切ったつもりでいるけれど、星降る夜はつらすぎる。あのひとの名前は、星丈人といった。

「だからさ……」
「だけどさ……」

 どこかから男の子の声がする。聴覚のアンテナを伸ばすと、本橋くんと乾くんの声だった。

「……こういうときには声なんかかけないほうがいいんだよ」
 乾くんが言い、本橋くんも言った。

「しかし、こうやってこそこそしててあいつに見つかったら、石でも投げられるんじゃないのか? なにしろあいつは山田美江子だぜ」
「山田美江子は女の子だから、真夜中にこんなところにいたら危険かもしれないって……」

「おまえがそう言ってたのは知ってる。山田美江子が女なのも俺は知ってるから、だったら内緒で見ててやろうかってなったんだろ」
「だから、黙って見てろよ」

「乾と俺だって言っておいたほうが、痴漢かなんかとまちがえられなくていいんじゃないのか?」
「言ったら内緒じゃなくなるだろ」

 声を低めてぼそぼそぼそぼそ、ふたりして延々もめている。
 そうだった。私には恋人はいなくなってしまったけれど、友達はいる。合宿で同室の女の子たちだって、こうして私の身体を心配して見張っていてくれようとする男友達もいる。

 星さんに捨てられたばかりのころは夜中に布団の中で泣いていた。痴漢には石を投げるんじゃないかと本橋くんには思われている山田美江子なのだから、昨夜は泣いてたの、なんて顔をして学校に行きたくない。

 無理をして濃い目の化粧で顔を繕って、元気なふりをして学校に行って、授業はさぼって部室に顔を出し、本橋くんと乾くんを見つけて三人で歩いた。

 背の高い男の子ふたりにはさまれて、お喋りをしているうちには本当に元気になった美江子が、笑っている姿が絵のように浮かぶ。ポニーテールでジーンズを穿いた、十九歳のぽっちゃり美江子。あれから私は痩せて、体型も少女ではなくなってきていた。

 だけど、本橋くんや乾くんといれば、十八の美江子に戻れる。星さんに恋をする前の私に戻れるから、ぐるっと回ってふたりの背後に回っていって、小さな石を拾ってふたつの背中に軽く投げた。

「……ミエちゃん、やっぱり気づいてたんだね」
 振り向いた乾くんが言い、本橋くんは怒った顔をした。

「俺たちだってわかってても石を投げるんだな。おまえらしいよ」
「なんなのよ、山田なんか女じゃないって言うくせに、そういう心配だけはするんだよね。大きなお世話だよっだ」

 舌を出して走り出す。暗いのに危ないよ、と乾くんの声。こらこら、待てよ、と本橋くんの声。夜空から降り注ぐ星の光を振り払って、私は走っていった。


3につづく




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~ Comment ~

2話読みました。

18と19ってなんか違うような感じですね。18は高校生か大学生。19は大学生か社会人って感じですからね。

誰かに捨てられたら、女の子はきっとショックですね。男でも同じでしょうけど・・。

あかねさんに勧められたキャラの語り手やってみました。キャラになりきって書いて見るのもいいですね。でもキャラは思い通りにできてもできないよな感じがします。

他のキャラの語り手もやるつもりですが、新しい話のプロット作りや自分の忙しさもあってなかなかできないですね。いずれ語らせてもらいます。

楓良新さんへ

コメントありがとうございます。
18歳、19歳、昔だったら大人に憧れて背伸びしたがる年ごろでしたけど、今どきはどうなんでしょうね。
何分にも当方、昔の若者ですので、今どき若者がわかっていないふしが……すみません。

美江子が主役になるとどうしても、ラヴストーリィが多くなってしまいます。やはり女性視点だと著者がわかりやすい、というのがあるのかもしれませんね。

楓さんのキャラクター紹介も楽しみにしています。
ゆっくりぼちぼちがんばって下さいね。

NoTitle

仲がいいんですね♪
仲間想いの感じがいいです!
普段女扱いしてないけど、やっぱり女の子だから夜に一人は危ないだろっ!って男の子ですねぇ。萌えちゃいます♪
そういうときに女の子扱いされるとすごくうれしくなっちゃいますよね!
今は昔・・・そんな思い出があるような、ないような(笑)
  • #1941 ぐりーんすぷらうと 
  • URL 
  • 2013.11/27 13:41 
  •  ▲EntryTop 

ぐりーんすぷらうと さんへ

コメントありがとうございます。
おや、ぐりーんすぷらうとさんにはそんな経験が? いいですねぇ。

私は男みたいだって言われる、性格が男っぽい、と自分で思っている女に限って、実は陰湿でねちこっかったりってありがちみたいですが、美江子はどうなんでしょうね。

本当に強い女というよりも、自分の弱さを自覚して、強くなろうと努力している人間が好きです。
それって書くだけでもむずかしいですけど、私は強くはなれないので、せめて書くだけでも……。

萌え、なんて言っていただけるととーっても嬉しいです。
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