ショートストーリィ

猫ストーリィ「子猫のしっぽ」①

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高校生のサトルと中学生のミカの出会いストーリィです。

「子猫のしっぽ」 ①



 我が家のミニャに子猫が生まれた。五匹の子猫は全部がもらわれていく先が決まっていて、僕もひと安心だ。

 一ヶ月ほど前に母が拾ってきたミニャを獣医に連れていくと、妊娠していると言われた。びっくり仰天はしたものの、拾った以上は面倒を見るのだと張り切った母が、子猫たちの里親も探してきた。

 僕の母親ながら、行動力はすげえよな、と感心するしかない。

 もとは野良だったのかもしれないが、意外にも人なつっこいミニャは我が家の庭で出産して育児をしている。子猫たちも猫らしくなってきて、ぴいぴいにゃあにゃあ大騒ぎ。いたずらっ子が寝床から飛び出しては、ミニャに首筋をくわえて連れ戻されるようにもなってきたから、大きくなってきているのだろう。

 今日は庭先にごろっと寝そべったミニャは、子猫たちに授乳中。僕はしばらくそんな風景を見てから、部屋に入っていった。宿題をしなくてはならない。僕の部屋からは庭が見えるので、なにかあったとしても大丈夫だろうと、机に向かった。

 しばらくは英文和訳なんていう難題に頭をシェイクされていて、ミニャを忘れていた。思い出したのは、子猫の悲鳴でだった。

「ええ?」

 見ると、庭には見知らぬ女の子がいる。女の子がミニャの子供の一匹のしっぽをぶらさげている。ミニャは怒ってしゃーしゃーと女の子を威嚇してるってのに、女の子は怖がってもいない。ガキのくせして、なのか、ガキだからこそなのか、母親猫の怖さを知らないと見える。

「やめろよ」

 部屋の窓から僕が言っても、女の子は知らん顔をする。生意気なその子に腹を立てたのも、このまま放置するとミニャがこの子に飛びかかるのではないかと思ったのもあって、僕は窓から庭へと飛び出した。

「こんなちっちゃいのになにをするんだよ」

 庭に着地して走り寄り、女の子の手からちびを取り戻したのと、怒り狂ったミニャが女の子に飛びかかろうとしたのが同時だった。子猫たちは母猫の怒りで跳ね飛ばされ、僕は咄嗟に女の子の前に立ちふさがった。

 暑い日で僕はショートパンツを穿いていた。だもんだから、裸の脛にモロにミニャの爪と牙攻撃を受けたのだ。僕はさっきの子猫の百倍くらいの音響の悲鳴を上げた。

「いてーっっっっっ!!」

 その声にミニャがはじき飛ばされたようになり、女の子も目を見開いて飛び上がった。ミニャの威嚇は怖くなかったにしても、高校生のお兄さんの悲鳴と、脛から流れる血は怖かったのか、女の子は猛スピードで走って逃げていった。

* * *


「サトル、お医者に行けば?」
「平気だよ。こんなもんは舐めたら治る」
「ミニャに舐めてもらう?」
「自分で舐めるよ」

 母とアホな話をしている僕を、ミニャが不思議そうに見ている。子猫たちは大きな毛糸玉みたいに固まって眠り、母は救急箱を持ってきて僕の怪我の手当てをしてくれた。

「そうだったのね。サトルは知らない女の子が、ちびのうちの一匹のしっぽをつかんでぶらさげて、止めようとしたサトルにミニャが負傷させたんだ」

「負傷ってほどでもないけど、そうだよ。噛まれたんだしひっかかれたんだから痛かったけど、それほど深い傷でもないだろ」
「死にはしないよね」

 軽く言ったものの、母は僕の傷を消毒して包帯を巻いてくれた。

「……子猫は体重が少ないから、しっぽをぶらさげられても意外と平気みたいよ。大人の猫のしっぽは延髄につながってるんだから、そんなことをされたら死んじゃうかもしれなくて、だから猫はしっぽをつかむとものすごく怒るのよ」

 子供のころから猫好きで、けれど、親が猫嫌いだった。結婚してからも小さいマンション住まいで、母は猫と暮らせなかったらしい。小さいころには捨て猫を拾ったこともあるけど、もう一度捨ててきなさい、ってお母さんに言われたわ、と言っていた。

 最近になってようやく一軒家に引っ越してミニャを拾って、子猫も生まれて満足している母は猫には詳しい。僕の傷の手当をしながら、そんな話をした。

「だけど、その子、どうして子猫のしっぽを……」
「知らないよ。僕だって聞きたかったけど、逃げていっちまったんだから」

「小学生か中学生ってところ?」
「そんなものかな。男の子っぽい、おしゃれなんかに興味なさそうな格好をしてた」

 女の子の服装なんかは注意して見なかったけれど、男の子みたいなパンツルックで、男の子みたいに髪が短くて、けれど、可愛い顔をしていたのは覚えていた。

「可愛いったって、子猫のしっぽをぶらさげる奴は性格は可愛くねーよな」
「そうなのかなぁ。どうしてそんなことをしたのかなぁ」
「性格が悪いからだろ」

 単なる苛めっ子だ。僕にはそうとしか考えられなかったけど、母は悩ましそうな顔をして首をひねっていた。

②につづく




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~ Comment ~

こんばんは。
こちらのほう読ませてもらうことにしました。
私も子供の頃は、自宅でよく猫を飼っていて、何度か仔猫ができる場面にも立ち会いました。

ちゃんと大きくなる子もいれば、途中で死んでしまう子もいました。
子供ながらに切なくてやりきれなかったのを覚えています。

温かいお話だったら良いのですが……。

ヒロハルさん、ありがとうございます

ヒロハルさんも猫好きでいらっしゃいますか。
やはりもの書きさんは猫派が多いようですね。
私も猫を見るとかまいたがって、たいていは嫌われていますが。

このストーリィは猫好き友達のサトルくんの名前を借りて書きましたので、バッドエンドにしたらその彼に泣かれるかも。

ってことで、続きも読んでやって下さいませね。

本編も読みながら、こちらにも寄り道させていただきました。

私も猫好きなもので、なんか、この女の子の行動は気になりますね。
小さい子だったら、生き物の反応を見たいがために、荒っほいことをしてしまうけど、そんな感じなのでしょうか。

助けた猫にひっかかれ・・・って、なんかよく分かります^^
私も小さい頃、可愛がってあげてた野良猫に噛みつかれ、菌にやられて手がグローブみたいに腫れたことがあります。
それでも、ネコ好きはやめられませんでした^^;

limeさんへ

主人公のサトルくんは実在の友人がモデルで、このミニャの行動も実体験です。

子供のころに近所の家で生まれた子猫を見せてもらいにいったら、母猫が怒って私に飛びかかってきたのですね。

そのおうちのおばさんが私をかばって、前に立ちふさがってくれました。
で、おばさんの脛には猫の牙と爪がぐっさり。

なんて経験があって、そのせいで私は子供のころは、猫が怖かったのですよ。
今ではすっかり猫好きですが。

続きも読んで下さいませね。
ありがとうございました。

あかね様、こんにちは(*´ω`*)ワーイ

私も大の猫好きなもので、今度はこちらを手にとらせていただきました♪

授乳期の母猫の威嚇って、本当にすごいですよね@@;
顔つきがまるで違うのですもの、私も昔、子猫のあまりの可愛さについつい気軽に近づいて、洗礼を食らいました(苦笑)
右腕をざっくりと‥‥Σ(´Д`lll)

サトルくんの傷は、大丈夫でしょうか?
そして乱暴な女の子。気になります。
尻尾を掴んで持ち上げるなんて、どうしてそんなことを?

でもきっと、最後には心ほっこりするような、素敵な読書の時間になること、期待しています♪
流れるように自然な文章が、とても素敵。読みやすくて、入りやすくていいです(*´ω`*)

また明日お邪魔しますっ。

土屋マルさんへ

猫好き仲間さんでいらっしゃいますかー。
お仲間が増えるのもとっても嬉しいです。

我が家でも女の子猫が子供を産んだことはありますが、ああいうときは怖くて近づけませんでしたね、そういえば。
今はうちにいる猫たちは避妊手術をしていますので、出産なんてこともなくなりましたが。

ハッピィエンドってなんなのかな、なんて考えつつ、試行錯誤しています。
またいらして下さるの、お待ちしていますね。

NoTitle

次はこちらから読ませていただこうと思います。
引越は一段落した感じです。
そしてやっとパソコンをいじる時間が出来た感じです。

猫大好きです!!
実家では親が「ダメ!」と・・・そして今はアパートなので無理なのです。
家をあけることが多いので、親もそこを考えてのことだと思います。
猫を見かければ声をかける、ペットショップの猫のスペースの少なさに苛立ちを覚える、など、身勝手すぎるほど猫が好きです。

リンクはこちこそ宜しくお願いします!

ハルさんへ

ご訪問ありがとうございます。
またいらして下さって嬉しいです。

私も猫を見ると遠くからでも声をかけて、おーい、ミケちゃーん、遊ぼうよー、だとか言って逃げられています。

留守がちのおうちだと猫がかわいそう、だから駄目、っていうのはありますよねー。
我が家では子猫を拾ったときには、昼間はケージに入れていて、かわいそうだったなと思います。
いつかはハルさんも猫と暮らせたらいいですね。

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鍵コメSさんへ

コメントありがとうございます。
はい、猫にひっかかれると痛いです(^o^)

先日の地震は真夜中で、私はまだ寝ついてはいなかったので、あ、揺れてる、揺れてる、どこかで大地震でも? と怯えていました。大阪はたいしたことはなかったのですけどね。

Sさんは怖い思いをされたのですね。
東北の震災からちょうど三年、神戸の震災だって関西人にはまだ記憶に新しい。そんなときにあまり地震があったとは聞いたことのない地方に……ですものね。
地震ばかりは突然すぎて、気のつけようもないですし。

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