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小説260(バラードまでそばにいて)

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フォレストシンガーズストーリィ260

「バラードまでそばにいて」


1・渉

 
 先だっては俺の母校で働く乃里子と、母校の大学院生になっているタイガーとが、徳永渉のメジャーデビューを祝う会をやってくれた。料理のうまい乃里子の手料理で、乃里子の部屋で三人で楽しくやった。
 その後には先輩の金子将一さんが、大々的に俺のデビューを祝う会を催してくれた。発案者は後輩の酒巻國友だと聞かされていたが、金子さんに決まっている。
 友人の温情やら先輩の心遣いやらに感謝しているのだから、ひねくれ者の俺も、念願のプロのシンガーになれたという事実には殊勝な気持ちになっているのだろう。すべてははじまったばかり。これからが本物だ。
 休みとなると暇を持て余す。ジムに行ってから夜には酒か。俺にはそれしかないのか? そうだ、髪を切りに行こう。今までの行きつけの店ではなく、新規のヘアサロンを開拓しよう。遅めに起きて外で朝メシを食ってから、電車に乗る。
 電車の窓からもヘアサロンってのはいくつも見える。それらの中から直感で選んだ、シンプルな外装の店に決めて最寄の駅で降りた。
 「カンタービレ」という名の簡素な小さな店だ。中で働く美容師は女がふたり。俺は男の美容師は嫌いなので、おばさんであっても髪は女に切ってほしい。「カンタービレ」の美容師は二名ともに中年だったが、そのほうがキャリアが長くて腕もいいだろうと思えた。
「いらっしゃいませ」
 背の高い、中年にすればプロポーションのいい女が出迎えてくれた。
「当店ははじめてでいらっしゃいますか」
「そうです」
「お名前、伺ってもよろしいでしょうか」
「切ってもらって気に入ったら、次もあるだろうから、名前はそのときに」
「……かしこまりました。ご指名は?」
「若い美容師さんっていないんですか」
 半分はジョークで言ってみると、彼女は奥に声をかけた。
「メイカちゃん、出てきて」
 奥が住居か控え室になっているのか、呼ばれて出てきたのは、二十歳くらいに見える細くて小柄な女だった。
「若いだけに未熟ですけど、よろしい?」
「指名したのは俺ですから、やってもらいましょうか」
「では、こちらへ」
 シャンプーをしてもらってから、椅子へと導かれる。鏡の中の俺にぺこっと頭を下げた彼女に質問した。
「メイカってどんな字を書くの?」
「明るい花です」
「そうか。じゃ、よろしくお願いします」
「はい、こちらこそ」
 緊張しているらしく、態度が堅い。美容師ってやつはなれなれしく話しかけてくる場合が多いのだが、彼女は新米のせいか、無駄話をしている余裕もないのかもしれない。俺も別に無駄な話はしたくないので、俺の髪をカットしているメイカを観察していた。
 特に注文もつけず、長さはこのくらいで、基本はこのまんまで、と言っただけなので、メイカは一生懸命にやっていた。カットを終え、鏡で俺に仕上がりを確認させ、こんなもんだろ、とうなずくと、メイカは鋏を持ち直した。
「襟足がすこし、もうすこしカットしますね」
「ああ、お願いします」
 顔を俺のうなじに近づけてきて、必死になって細かいところを修整しているメイカが鏡に映る。身体が密着する。脚で彼女の脚に触れると、メイカは小さく悲鳴をあげ、そのはずみに鋏が俺のうなじをちくっとつついた。
「……ん」
「うわっ!! 失礼しましたっ!! 血が……」
「ほんのちょっとつついただけだろ。首なんて平気だよ」
「先生、バンドエイドをっ!!」
 メイカが騒いだものだから、俺を迎えてくれた中年女性までが大騒ぎして、絆創膏だ薬だと言う。俺が店に入ったときにはいた客は帰っていき、もうひとりの美容師もきゃあきゃあうるさい。俺は辟易して言った。
「首にバンドエイドなんか貼られたら、むしろ目立つでしょ。いりませんよ。血も止まったんだろうし、平気です」
「すみません。すみませんっ!!」
「申し訳ございませんっ!!」
「お客さまっ、すみませんっ!!」
 三人そろってあやまりすぎだ。うるさくなってきたので、俺は椅子から降りた。
「いいんですよ。これで完成でしょ。おいくらですか」
「とんでもございません。料金はいただきませんので……」
「これしきで? 払わないと俺が恐喝でもやったみたいで気分が悪いんですよ。支払います」
「……でも……」
「申し訳ないと思うんだったら、メイカさん、俺とデートしましょうよ」
 むろんジョークだったのだが、本気に受け取ったようで、中年美容師ふたりが固まってメイカを凝視する。当のメイカは自分の鼻を自分で指差し、ややあってから真っ赤になってうなずいた。
 そんな経緯でメイカとデートする羽目になってしまった。善は急げとばかりに、今夜、メイカの仕事が終わってからの約束ができる。今日は「カンタービレ」は七時までだそうだから、店から近い駅から近い繁華街で、八時に待ち合わせた。
 トレーニングジムで汗を流し、シャワーを浴びているとちょうどいい時刻になる。待ち合わせ場所に行くと、ワンピースにジャケット姿のメイカが先に来ていた。
「ジーンズは仕事着なんだね。男っぽいのも女っぽいのも似合うよ。メシにする?」
「あのあの、お客さま……」
「デートでお客さまなんて呼ばれると、デリヘルかなんかみたいだな。俺は渉」
「渉さん……」
「そうだよ。メシ、行こう」
「は、はい」
 無名であるのはデビューしたからといってただちに変わるものでもなく、世間に名前を知られていないのは自由があるってわけで、そんなには売れなくてもいいかなぁ、と思わなくもなく、しかし、フォレストシンガーズよりは上に行きたいとも思う。
 メイカも俺を知らないのだろう。歌手だと言う必要もないが、無職では怪しい奴だと思われるだろうから、大学時代の後輩の職業を借りて、デパート勤務だと言っておいた。デパートだったら平日が休日でも不自然ではない。
「若い男性向けのカジュアルショップ? それで渉さんっておしゃれなんですね」
「まあ、本橋よりはおしゃれだろうけど……」
「本橋さんって?」
「俺の嫌いな奴だよ。本橋はどうでもいいんだけど、うん、ここにしようか」
 おしゃれだとか言われるのも好きではないので、飲み屋兼飯屋のような安っぽい店にした。
 美容専門学校を出て、知り合いのおばさんが経営している「カンタービレ」で働きはじめたのは今年の春。するとまだ美容師歴は半年だ。俺の首に傷をつけたとしきりに恐縮しているメイカに、俺は言った。
「うん。実はずきずき痛むんだよ。傷は小さかったけど、俺は化膿しやすい体質なんだよな。首が化膿したら切り落とすのか。首を切ったら生きていられないよな」
「そ、そんな……」
 たちまち青ざめるメイカが可愛く見えて、隣にすわっている彼女の首を抱き寄せた。
「嘘だ。なんともないんだから小さな失敗なんか忘れろ」
「嘘なの? ひどい」
「なんだよ。べそかいてんのか? そんなに恐縮するんだったら罪ほろぼしに、俺に抱かれるか? おまえ、可愛いな」
「それも嘘でしょ」
「いやなんだったらいいよ」
「そんな、急すぎて……」
「何度かデートしてからだったらいいのか? 俺はどっちでもいいから、おまえが決めろ」
「あたしを好きになったの?」
「嫌いだったら抱きたくはないんだから、好きなんだろうな」
 好きってほどでもなくても、可愛い。俺が女を抱きたくなる理由としてはそれで十分だ。性急にすぎると女が言うのだったら、デートを重ねてからでもいい。デートなんて面倒だとは思わないのだから、俺はメイカに惹かれていたのだろう。


2・明花

 どこのデパートで働いているの? などと細かい質問をしたら、嫌われてしまうかもしれない。二十七歳だという渉さんは、徳永渉と名前を教えてくれた程度で、あとはふざけてばかりいた。
 カット料金は払うからデートしようと言われたときには、驚いてしまった。ヘアサロンの先生も先輩もびっくりしていて、いやだったら断っていいのよ、と囁かれたのだが、うなずいたのはいやではなかったから。
 待ち合わせの時間と場所を勝手に決めて、その時点では名前も教えてくれないままに彼が帰っていってからも、先生も先輩も言った。
「いやなんだったら行かなくてもいいのよ」
「私が行って断ってきてあげてもいいのよ」
「いえ……行きます」
 おそらくは見抜かれていただろう。渉さんは背が高くておしゃれでかっこいい。皮肉っぽい目つきをしているものの、彼の低い声や整った容貌や締まった筋肉質の体格を損なうような欠点だとは思えなかった。
「メイカちゃんがその気だったらいいけどね」
「気をつけてね」
 先生と先輩は心配そうに言っていたけれど、若い女ってのは馬鹿だね、と言いたいのではないかとも思った。どこの誰かも知らない、ルックスがいいだけの男についていくなんて、ナンパされてついていく軽薄女と変わらない。
 実は私もそう思わなくもない。デートしようだの罪ほろぼしだったら抱かれろだの、軽い口調で重たい台詞を口にしては、くわえ煙草で冷笑している。いいよ、と答えたりしたら、バーカと言われそうだった。
「明日から一週間、おまえの店のある隣の駅前にあるライヴハウスで、俺の好きなブルースシンガーがライヴをやるんだ。行くか?」 
 からかっているような、遊んでいるような言葉ばかりを言ったあとで、彼が誘ってくれた。
「ブルース?」
「ブルースってなんだか知らないわけじゃないだろ」
「知らなくはないけど、ブルーな曲とか歌とか?」
「まちがってはいないよ。おまえは若いんだから、音楽には興味あるだろ? どういったジャンルが好き? だなんてのはありふれすぎてるけど、どんな音楽が好き?」
「えーとねー」
 ブルースだなどと言われると、「crown to the head」のヘースケくんの歌が好き、とは言えなくなってしまう。逆に私が質問した。
「渉さんはブルースが好きなの?」
「ブルースやジャズが好きだな。学生時代の先輩にクラシックを教わったりもしたし、音楽だったらたいていは好きだよ。おまえは音楽嫌いなのか?」
「嫌いではないけど……」
「ひとり暮らしだろ。部屋にはCDだってあるんだろ」
「あるけどね」
「そのうちには見せてもらいにいくよ」
 またからかってる。聞き流そうと思うのに頬や耳が熱くなって、渉さんをまっすぐに見られなくなった。
「三日後の夜だったら俺には時間があるよ。「ハーフビター」ってライヴハウスはおまえが働いてる店から近いんだから、八時だったら行けるだろ。店の前で待ってろ」
「行くって言ってないのに……」
「行かないのか? いやだったらいいよ。で、今夜も行かないのか?」
「どこへ?」
 返事はしてくれずに、渉さんは出ようと言った。
「近いうちには……ってのも楽しいんだよ。俺は女を口説くのは好きだから、おまえだって……」
「なに?」
 声は出さずに口が動く。私は読唇術なんてできないけど、「オトシテミセルサ」と動いたような気がした。
「ここは私が払います」
「バーカ」
 やっぱりバーカって言うのね? すこし悔しくなって頬をふくらませる私を見て笑う。このひとは私なんかはからかいの相手だとしか思っていないのだろう。なのに、そんな態度が不快ではないなんて、私って本当にバーカなのだろうか。
「ブルースってどんな音楽ですか?」
 翌日、先生に尋ねると、CDを貸してくれた。ビリー・ホリディという名の黒人女性の歌を帰ってから聴いた。
「上手なんだろうけど……趣味じゃないなぁ。私はヘイスケくんの歌のほうが好き」
 けれども、ブルースってブルーな歌? などと子供っぽく応じるよりは、ビリー・ホリディを聴いたと言えるほうがまだしもだろう。その夜はビリー・ホリディのアルバムをリピートでかけて眠った。
「奇妙な果実ってどんな果実?」
 ライヴは八時から行われると言う。私が七時半にライヴハウスの前で待っていると、渉さんもやってきた。よっ、とだけ言って私の背中を抱く渉さんに問いかけてみた。
「そんなタイトルのアルバムを聴いたの」
「Strange Fruit、ビリー・ホリディか?」
「……それだけでわかるの?」
「誰だってわかるんじゃないのか? おまえのイメージでは奇妙な果実ってどんなのだ?」
 奇妙なタイトルのせいか、英語の歌の意味はさっぱりわからなかったくせに、奇妙な夢を見た。
 果実は私だったのかしら。好きなひとに食べられる果物。好きなひとは……あなただったなんて言えるはずもなくてうつむいていると、渉さんは言った。
「今夜も歌うんじゃないかな。奇妙な果実はブルースシンガーの定番というか、古い曲だけど、好きなひとは多いんだ。歌ったとしても歌わなかったとしても、あとで説明してやるよ。おまえ、酒は弱いだろ。俺が選んでやるよ」
 ジントニックとジンフィズをオーダーして、渉さんと一緒に歌を聴く。ブルースシンガーは日本人のおばさんで、しわがれた声で「奇妙な果実」も歌った。
 
「Southern trees bear strange fruit 
 Blood on the leaves and blood at the root 
 Black bodies swinging in the southern breeze 

 Strange fruit hanging from the poplar trees. 
 Pastoral scene of the gallant south 
 The bulging eyes and the twisted mouth 

 Scent of magnolias sweet and fresh 
 Then the sudden smell of burning flesh.
 Here is a fruit for the crows to pluck 

 For the rain to gather for the wind to suck 
 For the sun to rot for the trees to drop 
 Here is a strange and bitter crop.」

 この歌は知っているからいいのだが、他は知らない歌ばかり、日本語の歌は退屈であくびが出そうだし、英語となるといっそう眠りそうになる。ブルースなんて私にはクラシックと同じで、睡眠薬みたいなものだった。
「好きにはなれなかったか」
 帰り道で渉さんは言った。
「英語は苦手か?」
「苦手」
「俺も苦手だけど、あの歌詞の大意だったら知ってるよ。奇妙な果実ってのは、黒人差別の果てに木に吊るされた黒人の死体だよ」
「……」
「ブルースのルーツってのは黒人音楽だから、そういうのも多いんだ。どうした、青くなって……」
 あなたに食べられる果物……だなんて言わなくてよかった。
「今夜もまだ早いのか。近いうちにだな」
「あの……チケットやお酒の代金は……」
「そんなことをいちいち言わなくていいんだよ」
「でも、おごってもらうなんて……」
「下心があるんだからいいんだ」
 なんて露骨に言うんだろ。私はどんな顔をしていいのかわからなくなって、じきにうつむいてしまう。駅への道を歩いていて黙りこむと、顎をつかまれて彼のほうへ顔を向けられた。
「代金がどうこうじゃなくて、ごちそうさま、だろ?」
「……ごちそうさま」
「素直だな、おまえ」
 小声でわははっと笑っている。どうして笑われているのかもわからなくて、私はもう一度うつむくしかなかった。


3・渉

 強引にやってしまえばやれなかったのでもないだろうし、今後もそのチャンスはあるかもしれないが、抱かなかった女はいる。晴海、ミコ、ひな乃。
 抱いた女は数知れずいる。名前は覚えている場合もあれば、知らなかった場合もあり、忘れてしまった場合もある。最近では乃里子、絹子。それから、抱きたくない女もいる。そのひとりは俺の前にすわっているこいつだ。
「渉くん、デビューおめでとう」
「ありがとうございます」
「考え直してくれないの?」
 溝渕奈々子。学生時代からの先輩の金子将一の恩人なのだそうだ。
 大学では合唱部の二年先輩で、まがりくねった性格同士のせいか金子さんとは気が合った。彼も俺もシンガー志望で、志望していても望みがかなわないのも同じ。プロにはなれないのに音楽業界の片隅で長らく逼塞していたのも同じだった。
 プロではなくても歌の仕事がないわけでもなく、金子さんが紹介してくれたりもして、俺もどうにか歌で食っていかれていた。
 二年ほど前に金子さんは、ラジオ局のプロデューサーである溝渕奈々子と知り合った。金子さんが学生時代から可愛がっていた後輩の沢田愛理がラジオ局アナウンサーになっていて、彼女との関係からだったらしい。
 沢田さんは溝渕さんの部下。それが縁で金子さんと知り合った溝渕さんは、彼女の姉が社長をしている音楽事務所に彼を紹介し、そのために金子さんのデビューが決まった。そのあたりのいきさつは、俺も金子さんに聞いておよそは知っている。
 金子さんが俺に溝渕さんを紹介してくれたのは、徳永も彼女の引きでデビューできたら、との意図があったのだろうが、溝渕さんは俺に別の興味を持った。
「渉くんっていい男ね。ねぇ、寝ない?」
「ご冗談を」
 聞いていた通り、色気過多といっていいほどの女だ。背は高めで、「私は仕事のできる女」オーラをふりまいて歩いている。化粧は濃くてもそうは感じさせないのだから、メイク上手ともいえる。服装も働く女らしいものをまとっていて、さりげなく高級でセンスがいい。
 年齢は四十歳くらいなのか? 尋ねる気にもならないのでどうでもいいし、彼女は金子さんにも言ったのだそうだから、そんなものを餌に釣られたくはなかった。
「私と寝たら仕事をあげるわよ」
 それはそれでひとつの手段だとも思うのだが、俺は女に口説かれるのは大嫌いだ。それからも幾度かは会い、会うたびに口説かれてははぐらかしていた。
「彼女は男を口説くのが趣味なんだよ」
 たぶん、金子さんが言っていた通りなのだろう。今夜は彼女とラジオ局で会い、飲みにいこうと誘われてついていったら、ベッドにも行こうと誘われているのだった。
「将一くんでもあなたでもいいのよ。落ちない男って燃えるわぁ」
「俺も落ちにくい汚れには燃えますよ」
「汚れ?」
「ほら、あるでしょ。これを使えば頑固な汚れが一発で落ちるとかって洗剤。ああいうのを使って部屋の掃除をしていても、落ちない汚れはあるんですよね。ムキになって一時間もこすっていたりします。人間は落ちないものには燃えるんだ」
「落ちない女にも燃えるの?」
「落ちない女だったら諦めますが、女に落とされる趣味はないんですよ」
「そうだろうとは思うんだけど、そしたらどうすればいいの?」
 手段変更だろうか。こう言うと怒るのかと思いつつ言ってみた。
「あなたが好き、抱いて、って言ってみな」
「……そういう態度の女が好きなの?」
「そういう態度に出るんだったら抱いてやってもいいよ。あんたは美人なんだから、嫌いなタイプではない。可愛いおねだりってのをしてみろよ。上目遣いで俺を見上げ、そっと目を閉じてキスをせがむ。抱きしめてキスしてやるから、抱いて、って囁いてみろよ。出ようか?」
 目の中に怒りの炎がかすめ、溝渕さんがウィスキーグラスを手にした。その手がどう動くのかは見える気がしたので、素早く身をかわす。彼女が俺の顔にぶっかけようとしたグラスの中身は、俺のうしろにいた客の背中にかかった。
「冷たいっ!!」
 その客が振り向く。ウェイターがその客に走り寄る。溝渕さんがきゅっと肩をすぼめ、憤怒のまなざしで俺を睨んだ。
「うまい言葉でかわせないって、そんなんでよくもそんな仕事をやってますね。彼女のドレスにウィスキーがかかったようですよ。クリーニング代でも弁償してきましょうか」
「あなたってつくづく腹立たしい男ね。帰ってよ」
「そうですか。では、あとはあなたにおまかせします。今夜はごちそうさまでした」
 むっとした顔になって口をきいてくれなくなった溝渕さんに、慇懃無礼に頭を下げて外に出た。怒ると発散してすっきりするのか。あれしきで怒ってしまったおのれを悔いているのか。溝渕奈々子の心は読めないが、俺が関知するのはここまででいい。
 溝渕さんと飲んでいた店からは、絹子の部屋も乃里子の部屋もメイカの部屋も遠くはない。乃里子とは一度きり、メイカとはまだなのだから、絹子の部屋に行こうか。いなかったら帰ればいいのだから、電話もせずにタクシーに乗って絹子の住所を告げた。
 アマチュアシンガーとして俺と同じような仕事をしている絹子とは、つきあいは長いほうだ。小さなマンションの前でタクシーを降りて、エレベータに乗る。セキュリティは万全ではないマンションなので、誰何もされずに絹子の部屋の前まで行けた。
「渉さん? びっくりしたぁ。だけど、来てくれて嬉しい」
「入っていい?」
「もちろんよ。入って、入って」
 部屋の中には炬燵テーブルがあって、テーブルの上には灰皿が乗っている。絹子も煙草を吸うので灰皿があるのは当然なのだが、吸い殻がやけに多かった。
「弟が来てたんだ」
 尋ねてもいないのに言うとは、怪しいのかもしれないが、信じている顔をしておいた。
「お酒の匂いがするね」
「仕事の関係者と酒を飲んだんだよ」
「女のひと?」
「女だ。おまえの仕事の関係者にだって、男も女もいるだろ」
「私は男のひととなんかお酒は飲まないよ。ふたりっきりだったの?」
「そうだよ」
「男女がふたりっきりでお酒を飲むって、浮気に近いんじゃない?」
「へええ、そうなのか」
「夕食だって、ふたりっきりだったら浮気に近いよ」
「弟とは浮気はしないよな」
「当たり前じゃないの。疑ってるの? あのね、渉さん……あ、あん」
 キスをすると途端にふらっともたれかかってくる。抱え上げてベッドに降ろして、服を脱がせて抱いて、行為がすむと絹子は言った。
「私は渉さんに愛されてるのを誇りに……」
「前にもそれ、言っただろ。そう言われて俺が感激するとでも思うのか」
「嬉しくないの?」
「顔にウィスキーをぶっかけられる以上に、ぞーっとするんだよ。二度と言うな。言ったら……」
「別れるって? いやだ」
「別れたって男は他にもいるんだろ」
「妬いてくれてるの?」
 下らねぇ。おまえに男がいるんだったら好都合だから、即座に別れるよ。そう言ってやってもいいのだが、言わずにベッドサイドテーブルに手を伸ばす、煙草をくわえて天井に向かって煙を吐く。胸に顔を乗せてきた絹子の髪をおざなりに撫でた。
 別れの潮時が近づいてきているのかもしれないけれど、俺にとってのおまえは都合のいい女だ。女と眠りたい夜にはここに来ればいい。おまえにとっての俺もそれだけの男だったらいいのに。人はなぜ、こういったことがらを重く考えるのだろう。
「おまえって女は何人もいるのか」
 十八歳の年に知り合ったのだから、彼とは十年もつきあっているのか。二歳年上の金子将一とは、合唱部時代から途切れ目もなく続いている。近頃ではもっとも近しいといっていい先輩の、金子さんが尋ねた。
「そういうのって体力がいるだろ」
「金子さんにはその体力はないんですか」
「ないよ。精神力もないよ。おまえだったらハレムなんてほしいか?」
「ハレムは訪ねていく手間が少なくていいかもしれませんね。しかし、ガキができるんでしょ。何人もの女が何人もの子供を産み、それがすべて俺の子? 俺の遺伝子? 寒気がしますから、ハレムはいりません」
「おまえはわが子がほしくないのか」
「いりません。絶対にいりません」
「ふーん」
「病んでますか」
「いや。俺は子供はほしいからさ……そうそう、リリヤの三人目の話、したっけ?」
「聞きましたよ」
 金子将一の妹、金子リリヤは、十九歳で結婚して母になった。俺よりもひとつ下の彼女は二十六歳にして三人の娘の母だ。ユリカ、マリン、サリナの名は金子さんの口から頻繁に出てくる。
 学生時代からもてにもてていた金子さんには、彼女ってのはいないのか? 俺と同じでセックスフレンドならいるのかと思われるが、ともに女の話を具体的にはしない。金子さんには妹がいて、妹の子も女ばっかりなのだから、生まれついて女に囲まれる運命だったのだろう。
「おまえには甥や姪っていないのか」
 生まれた家には寄り付かないけれど、両親とは絶縁したわけでもないのだから電話で話したりはする。俺が妹のように思っていた我が家の家政婦の娘は、俺が大嫌いだった俺の実兄と結婚して、俺の義姉となった。
 兄夫婦には子供がふたりいると聞いている。男の子がふたり。出産祝い金は送ったものの、顔を見てもいない。名前は聞いたけれど覚えていない。兄の妻にこだわっているのではなく、兄が大嫌いだからだ。
 あの甥たちには俺の遺伝子が息づいているのか。それで十分だろう。俺は子供なんぞはほしくない。結婚もしたくなかった。
「甥がふたり、いるんですよ。話してませんでしたか」
「聞いてないと思うけど、そうだったんだな」
「金子さんは結婚はしたいんですか」
「それより先に恋を……俺は恋のできない体質なんだろうか」
「俺もきっとそうですね」
 音楽スタジオの喫煙場所で、煙草は吸わない金子さんにつきあわせて喫煙しつつ、話していた。すると、横にいた小太りの若い男が大きな大きなため息をついた。
「もてるってのと恋をするってのは別ですか」
 誰に言ってるんだ? とそいつを見返すと、金子さんが応じた。
「別だと思いますよ」
「でも、あなたたちってもてるんでしょ。失礼ですが、金子将一さんと徳永渉さん?」
「そうです。あなたはスタッフの方ですか」
「はい。ミキシングルームで働いています。こんなのって歌手とは比べものにならない地味な仕事ですし、僕はこのルックスですから、もてるに決まってる金子さんや徳永さんのそんな話を聞いてると、むかついてくるんですよ」
「むかついてるんだったらやるか?」
 おい、こら、徳永、と金子さんは俺を目で咎め、小太りの男は言った。
「金子さんも徳永さんも身体も大きくて強そうだし、僕は喧嘩なんかやったこともないんだから、やりませんよ。ただね、そんな話は僕みたいなもてない奴のそばでしないで下さい」
「目障りだとでも言うんだったら、おまえがどこかに行けよ」
「こら、徳永」
「……わかりました。あああ、あああ、ううう、うう……」
 意味不明の唸り声を上げて、彼は灰皿に煙草をぎゅっともみ消して行ってしまった。
「もてない男の人生ってどんなものなんでしょうね。経験してみたいですね」
「うん、そういう人生ってさっぱりしていいのかもしれないな」
 会話が聞こえたのか、彼がやや離れた場所から俺たちを見つめた。その目の色は、もてる男であるはずの俺にはまったく読み取れなかったのだが、悲哀だったのか、ひがみだったのか。


4・明花


 デートをするたびにふざけた台詞を言ってからかって、そうしているのが楽しいから私と会おうとするのか。私にはそうとしか考えられなかった。
「あ、髪、よそでカットした?」
「おまえは店のおばさんたちには、俺とデートしてるって言ってないんだろ。行けないじゃないか」
「お客さんにはなってくれないんだ」
 はじめて会ってから一ヶ月ほどになるのか。渉さんは私にいろんなジャンルの音楽を聴かせようとしているようで、ライヴハウスに何度も連れていってくれた。
 ブルース、ジャズ、ロック、民族音楽、これからも他のジャンルのライヴを聴こうと言う。どうしてそんなに熱心に、私に音楽を教えようとするの? 私は渉さんに連れていかれたライヴのどれにも興味は持てなくて、好きなのは「crown to the head」のヘースケくんの歌なのに。
 美容院のお客さんにはなってくれなくても、恋人になってほしい? つきあってくれ、とも言わないで、キスもしないで、俺に抱かれろ、とだけ言う意味は? 恋人でもないの? 抱きたいだけだ、なんて言われるのが怖くて、確認もできないでいた。
「クラシックだったらどうなんだ? アマチュアの室内楽なんだけど、デパートの中にある小さな会場でコンサートをやるんだよ。行くか?」
「渉さんの働くデパート?」
「あ? そか、言ってなかったよな。俺、デパートマンじゃないんだ。察しろよ」
 だったらなに? 思いついたのはこれだった。
「ホスト?」
「そうか。そう見えるか」
「ちがうの? そしたらなんだろ。バーテンだとか、お酒を飲ませる店のウェイターとか?」
「水商売か。近いな」
「近いの? んんと……ソープの従業員?」
「おまえな……いやいや、近いのかもしれないぜ」
 風俗関係にまちがいないのだろうけど、私には他には思いつかない。必死になって頭をひねっていると、渉さんがぼそっと言った。
「デビュー間もない歌手だよ」
「クラブとかで歌う歌手?」
「クラブだとかライヴハウスだとかでも歌うよ」
「テレビにも出るの?」
「テレビには一、二度出たかな。ラジオではレギュラー番組があるんだ。おまえには俺が歌手だって言ってなかったから、ラジオの話もしなかったけどさ」
「……」
 嘘つきなのではなく、言わなかっただけなのだろう。私には風俗と歌手のどこがどう近いのかもわからないけれど、私から見れば遠い世界なのは同じだ。
「クラシックの歌手ではないんでしょ?」
「俺はブルース、ジャズ系のシンガーだよ。だからさ、そういうのって売れ筋でもないだろうから、大ヒットなんて出ない。メジャーにはなれない。それでもいいって言って引き受けてくれた社長のやってる、VAN音楽事務所ってプロダクションに所属してるんだ」
「プロダクションなんて全然知らないけど……「crown to the head」は?」
「なんだ、それは?」
「ううん。いいの」
 知らないのだったら、同じ事務所ではないのだろう。「crown to the head」は若い女性には人気があるが、男性は知らないかもしれない。
「正直に言わないとやりにくいからさ、メイカ、ごめんな」
「ううん、そんなのいいんだけど……」
「俺も正直に言ったんだから、って、交換条件でもないけど、おまえも正直に言えよ。おまえは音楽嫌いか。どんなライヴを聴かせてもつまらなそうな顔をしてるだろ」
「つまらなくはないんだけど、むずかしいんだもの」
「音楽にむずかしいなんてないよ」
「好きな音楽はあるの。ええとね……ええとね……」
 ジャズやブルースを私に聴かせたのは、渉さんが歌手だから。自分の職業を私に教えたいからか。私も彼に、私の好きな音楽を教えてあげたかった。
「うちに来る?」
「やっと招いてくれるのか。俺がおまえの部屋に行くってことは、覚悟を決めたってわけかな」
「なんの覚悟?」
「ウブぶりっ子なのか、実際ウブなのか。俺には女を見る目はあるつもりだったけど、おまえだけはわからないよ。おまえがいいんだったら行こう」
「うん、来て」
 なんの覚悟なのかは知っている。知らないふりをしてみても、胸がどきどきどきどきする。渉さんと待ち合わせたのは私が働く美容院から、ふたつむこうの駅。先生は美容院の二階にある住まいで暮らしているのだし、先輩も店へは自転車で通える場所に住まいがあって、ここらへんには来ないはずだ。
 だから渉さんと会うのは、このあたりが多い。ライヴハウスもたくさんある場所で、渉さんがあちこちに連れていってくれた。
 私が暮らしているハイツは、美容院から電車で五つ。職住近接の便利なところではあるけれど、小さくてみすぼらしい建物だ。けれども、私の好きな音楽を聴かせてあげたいのだから、渉さんを伴って電車に乗った。
「綺麗に片付けてるんだな。女らしい部屋じゃないか」
「古くて狭くて、ごめんなさい」
「おまえが悪いんじゃないだろ」
「あ、あ、ちょっと待って。コーヒーを淹れるから」
「インスタントなんだったらいらないぜ。おまえの唾液を飲むほうがいいよ」
 ううっ、私、真っ赤になってるんじゃない? ロマンティックとも言えない台詞に赤面して、抱き寄せようとする腕から抜け出して、CDラジカセに「crown to the head」のアルバムをセットした。
「なんだ、これは? アイドルソングか。これがおまえの好きな歌か?」
「この曲はパピくんってのが歌ってるんだけど、次はヘースケくんなんだよ。パピくんよりもヘースケくんのほうが歌はうまいの」
「ヘースケってのがおまえの好み? そしたら飛ばそうか」
 一曲飛ばして次の曲。私の大好きな甘いラヴソングだ。ヘースケくんの甘い声が、甘い甘い歌を歌う。なのに渉さんはその曲も途中で飛ばし、三曲目を聴き、その曲も飛ばして四曲目を聴いた。
 「僕の気持ちを君に」。私のお気に入りの「crown to the head」のアルバムは、途切れ途切れに十二曲全部がかかり、最後の曲も渉さんの手で止められてしまった。
「こいつらは売れてるのか?」
「まあまあだけど、私は大好きなの。顔はパピくんが一番で、ダンスと歌はヘースケくんが一番。アルバムのジャケットを見て。これがヘースケ……あん、なにすんの」
「顔はどうでもいいって、ファンはそうは思えないんだろうけど、これは音楽ではない、こんなものを聴いてるから、ジャズやブルースはむずかしいと感じるんだ」
「音楽だよ、これだって」
「俺とは音楽的趣味が決定的に合わないんだな。フォレストシンガーズって知ってるか」
「知らない」
「金子将一は?」
「誰なの、それ?」
「わかったよ」
「……ヘースケくんのサイン、ほしいな」
「俺はこんな奴らとは接点はないんだけど、会う機会があったら頼んでやるよ」
 彼の瞳に諦めの色が見えたような気がして、言ってみた。
「じゃあ……渉さんの歌は?」
 歌手なのだから、歌ってほしいと思うのがまっとうな感覚なのか。むずかしい歌なのか、聴いていて退屈するのかと危ぶみながらも言うと、渉さんは目を閉じた。

「どんな時もふたり
 肩を寄せてきたから
 今、愛が終わるときも
 そうさふたりで見送ろう

 恋を夢を語り明かした
 燃えるようなくちびるに
 さよならだけ残るなんて
 それはつらいことだよ」

 これはジャズ? ブルース? 渉さんの持ち歌? はじめて聴いた渉さんの歌は、すこしかすれて高く低く、私の心の奥深くに響いていった。

「Happy days and bluedays 遠く
 ふたり歩いてきたから
 今、愛が終わるときも
 バラードまでそばにいて」

 渉さんは言った。
「愛ってのははじまってもいないんだから、終わるってこともないんだよな」
「……渉さんの歌?」
「俺の歌だとおまえがむずかしいって言いそうだから、わかりやすい歌にしたんだよ。既成の曲だ」
「渉さんの歌は……うん、私は音楽ってやっぱり……むずかしいのは駄目だから、歌ってくれなくてもいい。今のは素敵だったけど……ジャンルがどうとかって大切なの?」
「大切ではないけど、こだわる奴もいるんだよ」
 なんだかよく、私にはわからない。渉さんは立ち上がり、おやすみ、メイカ、とだけ呟いて、私の部屋から出ていった。


 今になっても私にはよくわからない。音楽の趣味が決定的に合わないからといって、口説いていたはずの、抱きたかったはずの私の前にはあれっきりあらわれなかったとは、徳永渉とはそんなにも気難しい男だったのだろうか。

「なにがふたり駄目にしたのさ
 かける優しい言葉さえも
 お互いを傷つけるなんて
 それはつらいことだよ」

 深夜にラジオをつけると、たった一度、渉さんが私に歌ってくれた歌が聞こえてきた。声は渉さんではないようだが、ハスキーヴォイスが若干似ていた。
「私が子供っぽすぎたのかな」
「ラジオなんか消せよ」
 苛立ったような声が言い、私は黙った。
 あのころの私は渉さんが好きだったのか。嫌いではなかったけれど、私に音楽を教えたがり、ただ、抱きたいと考えていただけのひとと、つきあわなくてよかった。なにがふたりを駄目にしたのか、駄目になるもなにもない関係だったけれど、あの夜で渉さんとはおしまいだった。
 それから私は美容師と恋をして結婚して、ふたりして店を借りて独立した。夫婦で働いて自分たちの店を持とうと、それまでは子供もお預けにしてがんばってきた。なのに、今度は本当に駄目になって、別れる相談をして、口論になりそうな雰囲気にも倦んでラジオをつけたら、あのときの歌。
 
「Happy days and bluedays 遠く
 ふたり歩いてきたから
 今、愛が終わるときも
 バラードまでそばにいて」

 もう私は、夫にそばにいてほしくなどない。早く消えてほしい。
 好きだったのかどうかもわからなかった渉さんには、もっとそばにいてほしかった。キスぐらいだったらされたかった。会いにきてもくれなくなってからは、私が悪かったの? どうして? だなんて考えて、ひとりで夜中に泣いたりもした。
 けれども、夫となった人とは別れたいとしか考えない。愛も暮らしも終わる今こそが、ブルースなんだろうか。渉さんが好きだった、私に教えたがったブルースってものを思い出して、渉さんに会いたくなった。
「会いにいったって、渉さんは有名になっただろうし、私なんか忘れただろうし、会わせてももらえないだろうな」
「渉って誰だ?」
「歌手の徳永渉。私の昔の彼よ」
「ふーん。あんなかっこいい男とつきあってたのか」
 嫉妬の色などはかけらも見せないのは、夫の愛も醒めた証拠だろう。はじまった愛が終わるのは瞬間ではなく、ひとときひとときの積み重ね。そんな事実を知ったのは、大人になった証拠。
 大人になんかなりたくなかった。アイドルに熱を上げ、将来は美容師として独り立ちしたい、素敵な恋もしたい、なんて夢見ていた、あのころにはもう戻れない。そうと知るのも大人になった証拠。渉さんはあのころから大人だった? 今はどんな三十代になっているのか、会いにいきたいけれど、歌手となど会えるわけもないと、大人になった私は知っていた。


END
 
 






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~ Comment ~

ぐっと来ました。

これはひびいた~;;私の心に。
超共感しました。 そして、このタイミング!というばかりに歌。

この話は結の心にびびっと来ました。
まだアカネさんの話をすべて読み終えて居ないのですが、ここらで感想をば。

くるたびおっそいですが読ませてもらってます。
ここまで歌一つ一つにその言葉の重さや気持ちを共感して一体にできるのってどれも、凄いなぁとおもいます。どれをとっても話がぶれないし、読んでいて染み渡るところもあります。
アーティストの世界観は想像の行き届かない部分も多いですが、いつも言葉を大事にするあかねさんの物語は素敵です。

また来ますので、相手してやってください^^

やはり女性のほうに?

結 麻月さま

ありがとうございます。
メイカに共感して下さったのですよね。
渉には共感しにくいですよね。うふふv-266
こいつはこういう奴ですが、こういう奴が私はけっこう好きだったりします。
あ、でも、徳永渉が身近にいたら喧嘩を売りますが。

自分で言うのはなんですけど、
私も自分でけっこう、このストーリィは好きです。
結さんがそう言って下さってとても嬉しかったです。

先だっていただいた詩を使わせてもらってのストーリィも、
近いうちにはアップさせてもらいますね。

読んでいただくのが怖いような、
読んでいただきたいような、の短編がふたつ、できています。
アップしたらお知らせしますね。
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