番外編

番外編76(熱い愛もオッケイ!)《特殊編1・三田畳さん》

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特殊バージョン番外編part1

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回文師・三田畳さん。みた・たたみさんとお読みするのだそうです。
ひょんなきっかけからたたみさんの回文サイト「素晴らしき回文の世界 ~回文詩・回文短歌・回文歌~」を知りまして、感動してコメントさせてもらいました。
私が勝手にたたみ師匠と呼んで、鷹揚に受け止めていただいて、で、見知らぬ人のサイトかと思って師匠を紹介しようとしたら、ご本人のサイトだったという……恥ずかしい出来事もありました。
師匠は別ペンネームで別サイトもやっておられるんですよね。

ほんのひとこと、言葉をかわしただけの私が図々しくも、「フォレストシンガーズの歌詞を回文で作って下さい」とお願いしたところ、快諾して下さいました。
頼んだのは本当は私なのですけど、小説の中では小笠原英彦になっています。
それ以外にもフィクションはまじっていますが、たたみ師匠についてはノンフィクションのはずです。
もしもまちがったことを書いていたら、ご指摘下さいね。

素敵な回文詩をいただいて、小説にするにはプレッシャーを感じていたのですが、どうにか書いてみました。師匠も読んで下さったみなさまも、ご笑覧下さいませ。

なお、歌の詞は不定形ポエムとはちがうのは承知しております。
以前から時々、噴飯ものの自作の詩をフォレストシンガーズの歌だとして設定しておりますが、これは歌としてはなりたたないともわかっているつもりです。
でもでも、韻を踏んでメロディに乗せて、といった歌詞は私には書くのは不可能ですので、こんなもので……気になる方もいらっしゃるかもしれませんが、ごめんなさい。

師匠の回文詩にしましても、私が「厳密に「歌詞」でなくてもいいですから」とお願いしたのです。そこのところもどうか、よろしくお願いします。

ではでは、笑ってやって下さいませ~。


フォレストシンガーズ

番外編76


「熱い愛もオッケイ!」(特殊バージョン1)


1

 不思議な歌詞だ。これってヒデさんの語彙?
 我々、フォレストシンガーズは五人のメンバーが全員、大学生だったころに結成された。当時はリーダーの本橋真次郎とサブリーダーの乾隆也が四年生、本庄繁之と小笠原英彦が三年生で、俺、三沢幸生は二年生だった。
 メジャーデビューを果たしたのは、俺が大学を卒業した年の初秋。そのころには小笠原のヒデさんは脱退して、かわりに俺と同い年の木村章が加わっていた。章は大学は一年で中退したものの、俺とは学生時代の友人だったといっていい。
 同じ大学、同じ合唱部のメンバーで、一年ほどは親しくしていたヒデさんと章は、フォレストシンガーズではすれちがっていた。
 そのふたり、章とヒデさんには共通点がある。ふたりともに作曲が得意なのだ。章は作詞もするものの、ヒデさんは作曲専門で、作詞はしなかったはず。行方不明になっていたヒデさんと昔のように会えるようになって、曲を提供してもらうようになって、曲に乗せる歌詞を書くのは乾さんか俺の役目だったのだが……。
「この歌詞……これ……ああっ!!」
 にやにやしていたヒデさんが、がははっと笑った。

「行けッ! 想い アイツ赤い糸
「あの娘誰?」 すぐムカつき冷たい瞳
 やっぱり零す ラテを換える
 トキめく 繋ぐよ軽く手
 隙はきっと経験可能
 瞑る片目 共に行こう
 勝ち気? 強いが泣いたり
 胸にも届け 今
 あと好み聞いたり 知りたいキミのこと
 甘いけど 共に眠りたい長い夜
 月誓う恋に 求めたがる普通の関係
 けど次はキスで来るか?
 良く懐く瞳 気取る笑顔照らす
 誇りは艶めいた瞳
 月掴む 崩れた
「この後いいか?」 熱い愛もオッケイ!」

 回文じゃん。俺が事務所の後輩デュオ、モモクリのために書こうとこころみて、ギブアップして仲間に助けを求め、乾さんや本橋さんや章の協力を得て、どうにかこうにか書いたものの、ひどっ、これでいいの? だった歌詞とはレベルがちがう。
 「ラヴラヴヴラヴラ」だなんてタイトルをつけたあの歌は、歌詞は言葉遊びにすぎなかった。意味ナシフレーズの羅列だった歌が売れてモモクリが一躍有名になったのは、章の曲がよかったからだ。
 それにしたって、一躍有名ってほどでもないし、中心になって回文ソングを作詞した身の三沢幸生としましては、忘れたい。あんな詩を書いたのは、ソングライターとして依頼された詞を提供している俺の恥部である。
 ってね、まあね、「恥知らずのユキ」ってふたつ名を持つ俺なんだから、まぁね、いいんだけどね、と考えつつ、ヒデさんに渡された譜面をまじまじまじまじ、マジに見つめる。作詞は苦手なはずのヒデさんがこんなに見事な回文ソング……俺、消えてしまいたいわ。
「いや、それはさ、曲は俺だけど詩は俺じゃないんだよ」
「誰? 乾さんが書いたの?」
「ちがうよ。インターネットには回文サイトってのがあるんだ。知らないか」
「ああ、あっても不思議はないよね」
 「HIDEブログ」という味もそっけもないタイトルのサイトを持ち、フォレストシンガーズネタをやっているからこそもあって、人気ブロガーでもあるヒデさんは、インターネットには詳しくなっている。
「詩のサイトって俺は見ないな」
「素人さんがプロのおまえよりも上手な詩を書いていたりしたら、癪だからだろ」
「歌詞は詩とはちがって……」
「知っとう、知っとう。言い訳はえいきに」
 高知出身、神戸在住のヒデさんは、神戸弁と土佐弁まじりで俺を軽くうっちゃった。
「俺は休みの日なんかにはネットサーフィン……って言い方は古いのかな。古いのかもしれないけどそういうのをやって、見知らぬ人のブログを読むんだよ。フォレストシンガーズのファンサイトなんかもたくさんあるんだ」
「知ってるよ。ありがたいよね」
「ありがたいのもあれば、ありがた迷惑のもあるけど、フォレストシンガーズの当事者としてはファンの方はありがたいよな」
 うんうん、とうなずいてから意味ありげな笑みを浮かべているのは、二次小説とやらか? 俺たちがBLになっていたり……俺はそういうのも嫌いではないが、脱線すると際限もないだろうから、ヒデさんに本題を促した。
「でな、知らない人のサイトを見たってコメントまではまずしないんだけど、これは感心してコメントしたくなったんだよ。見るか」
 昨夜、ヒデさんは東京にやってきた。彼には東京に恋人がいるので、彼女に会うついでだったのだろう。漫画家である彼女は締め切りが押し迫っているとかで、俺の部屋がヒデさんの宿泊所にされたのだった。
「明日、ええもん見せたるからな」
 約束して寝て起きて、ヒデさん、早く見せてよぉっ、とせがんだら見せてくれたのが、回文詩だったわけだ。どうやらこの詩を書いたのはブログをやっている人らしく、俺のパソコンを起動してそのサイトを呼び出した。
「素晴らしき回文の世界」。十二単の平安時代美女できらびやかに飾られた和風のサイトだった。
「たたみさんっていうの? 畳?」
「そのようだな。回文師なんていう人種がいるんだ」
「マニアックな世界は奥が深いよねぇ」
 サイトのコメント欄に、ヒデという名前がある。ヒデさんがたたみさんに回文ソングを書いてほしいと頼み、たたみさんが快諾してくれて完成したのが、この詞だ。
 これはこれで一種のおたく? でもでも、素晴らしいおたくではないか。おたく万歳!! である。俺なんかはあっちこっちかじっては、ものになったのは作詞と歌だけで、それもやっぱりおたくなんだろうか。
 人さまのお役にほんのぽっちりでも立てていたら、おたくもいいものだ。そうだそうだ、たたみさん、ありがとうございます。
「で、これ、誰が歌うの?」
「曲調はロックタッチだろ」
「すると、章か」
 フォレストシンガーズではロックといえば章だ。歌詞も若々しくて章には似合いだろう。章は決して若くはないのだが、精神年齢がガキなのと小柄なのとで若く見えるという、俺に酷似した男なのだ。
「俺も回文ソング、歌いたいな」
「自分で書くか」
「俺にはそんな才能、ないんだもん。たたみさんにお願いして下さい、ヒデさん、先輩、よろしく」
「何度も頼むってのはなぁ……うん、そやけど、頼んでみたるわ」
「だからヒデさんって好き。キスしていい?」
 アホ!! と怒られて突き飛ばされてフロアに倒れ、俺は「熱い愛もオッケイ!」とタイトルのついた回文ソングを歌ってみた。
「おまえは歌を覚えるのが早いよな」
 それだけは俺の誇りだ。
 歌いながら歌詞を噛みしめる。すぐにむかつく冷たい瞳のあの娘に、赤い糸を感じている男の歌か。キミのことが知りたくて、冷たい瞳を俺になつく瞳に変えたいと願う。回文でここまであらわせるなんて、尊敬してしまう。
「俺も熱い愛を誰かに捧げたいけど、相手がいませんから、ヒデさん、受け取って」
 返事もしたくないと言いたげに、飛んできたキックから身をかわしてフロアをころがる。そうだ、俺には特技があったのだった。

「好きよ好きよキャプテン、テニス焼けの笑顔
 おがえのけやすにてんてぷやき、よきすよきす」

 昔のヒット曲を歌ってみせると、ヒデさんが首をかしげた。
「なんや、それ?」
「もう一度よく聴いてね」
 前半と後半を別々に歌っても、ヒデさんはきょとんとしていた。
「リーダーだったらじきにわかってくれたよ。耳はリーダーのほうがいいんだね」
「……もういっぺん歌え」
 リクエストにお応えすると、ヒデさんはようやく手を打った。
「逆回しか。それは回文にはなってないってのか、うしろは意味がないから歌詞の形をなしてないんだろうけど、メロディも逆に歌ったんだよな」
「ご明察」
「本橋さんにもできるのか?」
「できないらしいけど、他にもできるひとはいるんじゃないのかな」
「そんなの、いるんだろうか」
 うーんうーん、と悩みはじめたヒデさんを見て、俺は身を起こした。これでヒデさんの暴力は一時回避できる。それに、これで一応はちょっとだけ回文ソングに対抗。俺はシンガーだもーん。作詞よりも歌が本分なんだもーん。
 なんてね、自己弁護のような強がりのようなひとりごとを呟いて、たたみさんのサイトを改めてじっくり見た。ちょっとえっちな回文なんかもありそう? 秋の夜長の楽しみが増えたみたいだ。むふふ。


2

「参るわ 想い 答え断つため
 あたし「逢いたい」 脆いメル友と恋仲
 繋がる手 泣きたい気がした
 「あの娘誰?」 
 ふやけた胸に熱は棚上げ
 あなたは常に眠たげ
 破れたこのあたし 掻き抱き撫でるが
 「懐かない子」と 戻る迷路も痛い
 明日雨だ 伝えた恋も終わる今」

 すこぶる仕事の速いたたみさんは、ヒデさんのお願いに応じてただちに失恋ソングを書いてくれた。
 
(いけっおもい あいつあかいいと
 あのこだれ すぐむかつきつめたいめ
 やっぱりこぼす らてをかえる
 ときめく つなぐよかるくて
 すきはきっとけいけんかのう
 つぶるかため ともにいこう
 かちき つよいがないたり
 むねにもとどけ いま
 あとこのみきいたり しりたいきみのこと
 あまいけど ともにねむりたいながいよ
 つきちかうこいに もとめたがるふつうのかんけい
 けどつぎはきすでくるか
 よくなつくめ きどるえがおてらす
 ほこりはつやめいため
 つきつかむ くずれた
 このあといいか あついあいもおっけい)

(まいるわ おもい こたえたつため
 あたしあいたい もろいめるともとこいなか
 つながるて なきたいきがした
 あのこだれ
 ふやけたむねにねつはたなあげ
 あなたはつねにねむたげ
 やぶれたこのあたし かきいだきなでるが
 なつかないこと もどるめいろもいたい
 あしたあめだ つたえたこいもおわるいま)

 解説によると、最初のほうは少年目線、ふたつ目は少女目線で、「熱い愛もオッケー!」のアンサーソングになっているのだそうだ。参るわ、ってのは俺が言いたい。師匠、降参。
「すごいなぁ。俺もやってみたいなぁ。でも、無理だろうな。頭の構造がちがうんだもんね」
 ぶちぶちぼやくと、ヒデさんが言った。
「おまえの頭は作曲もできるんだろ。失恋ソングのほうにはおまえが曲をつけろよ」
「前のはたたみさんの詩をもらって、ヒデさんが曲を書いたの?」
「ああ、そうや」
「そっちだったらできるかな。ねぇ、たたみさんって曲は書かないんだろか」
「そこまでは質問してないけど、訊いてみようか」
「やめて」
「……そうか」
 おまえの気持ちはお見通し、みたいな顔をしているヒデさんの推理は当たっているはずだ。この上にたたみさんが作曲までできたら、俺の立つ瀬がないんだよぉ。ただでさえ背が低くて水深一メートル五十センチ以上にもなれば立つ背がないんだから、立つ瀬は残しておいて。
 今日は俺はオフだったので、ヒデさんとうだうだ喋りながら部屋でぐうたらしていたら、たたみさんからのメールが届いたのだ。感心して尊敬してしまうけど、そればかりではいけない。俺は俺の特技を発揮しよう。

「かげとなり
 いえないかるま
 よったはだ
 つよまるかいな
 えいりなとげか」

 んん? それはなんだ? 歌っている俺に、ヒデさんが不審そうな目を向ける。この歌詞はくっきり前半と後半には分割できないので適当なところはあるけれど、歌詞もメロディも逆回しで歌った。
「そんな歌詞は知らんな。おまえの作詞作曲か」
「作曲はね」
「もう一回歌え」
 先輩命令に従うと、目を閉じて聴いていたヒデさんがパソコンを覗いた。ばれないうちに逃げようとしたのも遅く、襟首を引き戻されて頭をごつん。
「いででぇ……頭蓋骨が折れるじゃん」
「これだろ」
 たたみさんのサイトの中の短歌を、をヒデさんが読み上げた。

「影となり 言えないカルマ 酔った肌 
 強まる腕 鋭利な棘か」

 またまたご明察。ま、ヒデさんだったらわかるだろうけどね。
「まずはウォーミングアップだよ。短い曲を作ってから、失恋ソングの曲も作るんだ。俺の熱い想いを届けるから、ライヴで歌って好評だったらCDにもするから、たたみさん、待ってて下さいね」
「たたみさんって男やぞ」
「熱い歌心だったら、男にだって捧げます。俺たちフォレストシンガーズのファンになってねぇ」
 熱い愛は男性には届かなくていいけど、歌心よ届け。たたみさん、俺の想いを受け止めてね。


END

おわび
師匠、短歌まで勝手に使わせていただいて、申し訳ありません



 


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~ Comment ~

オッケイです☆

どもども☆ 回文ヲタことたたみです。
作品じっくりねっちょりと読ませていただきましたよー!
なんか超恥ずかしかったw
熱烈らぶれたーいただいたみたいな感覚……。
(これはもしや「告白でラブソングを聴かされた心境」なのではなかろーか。ドキドキ……)

短歌採用もあざーす☆
数あるなかからアレを選ばれるとは、さすがであります。
アレは大人のエロース系で、なかなかのお気に入り作品でした。
他にはそんなにエロい回文が無くて申し訳ねー。
ちょっと増やそうかぬ……ストックあるんだけど自重してたのだ。(*回┏Д┓回*)ゞ

PS 「ラヴラヴヴラヴラ」見てみたいwww

okをいただいて安心しました

超恥ずかしいのは私のほうですが、
読んでいただいて、コメントもいただいてありがとうございます。

ユキの愛と歌心を受け取っていただけましたか?

私の小説はひとつずつが長いので(短編ですけど、ブログに一度にアップするとしては一編が長いのですよね)、お時間を取らせてしまって申し訳ないですけど、フォレストシンガーズ回文、書いていただけると嬉しいです。

フォレストシンガーズのテーマソングふう、だとなお嬉しいです。
よろしくお願いします。
気長に待ってますのでv-242

宿題完了のご報告

ヘタレ回文ヲタたたみでござーい。
長らく宿題にさせていただきました、フォレストシンガーズ回文を納品に参上しました。

今回はアメブロ更新分のイメージで作らせていただいました。
キャラは皆若い! 青い! 萌えキュン☆ みたいな?(←テキトー
お口に合うと良いのですが……。

ではまたのご依頼お待ちしておりまする。ニンニン☆(*回┏Д┓回*)ゞ

師匠!!

ありがとうございまーす。

いただいた回文、どう使わせてもらおうかと、楽しい悩みが増えました。

頭をひねってみて、アップしたらお知らせしますので、また見にいらして下さいね。
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