内容紹介

國友と弾と繁之の思い出話

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繁之と國友と弾

「またまたまーた、俺はあぶれてしまいました。メンバーが五人、奇数であるというのは、こういうことが間々起きるのであります。そのおかげでよいこともなくはないのですが……それはいいのですが、本庄繁之です。俺の対談相手は美江子さんがつとめて下さるのかな。あれ? おまえかよ」
「ごめんなさい、シゲさん。僕です。酒巻國友です。ご不満でしょうか」
「俺も仲間入りさしてーや。大阪弁の実松です。下の名前は呼ばんといてな」
「弾さん、お久し振りでございます」
「呼ぶなっちゅうとんのに。酒巻は黙ってぇ。なあなあ、シゲ、おまえには長年、心の片隅にひっかかってる疑問があるやろ」
「どれ?」
「これや」
「どれですか? 弾さんが再現して下さるそうです。シゲさんはその場にはいらっしゃらなかったんですよね」
「うん、ヒデと三沢幸生と俺が部室で喋ってたときの話や。俺が四年で三沢は三年やったな。副キャプテンの安斉が風邪で休んでて、ヒデと三沢を引っ張り込んでコンサートの打ち合わせをしてたときの話や」
「実松さんはキャプテンだったんですよ」
「それはヒデとシゲが……うん、まあええわ。こんなんやった。三沢が言い出したんや」

「ヒデさんには彼女はいるんですか」
「俺はもてない男に見えるか」
「ヒデはシゲよりはもてるんちゃうかて、女の子らも噂しとったぞ。どうなんや、もてるんか」
「そんな噂してるのか、女の子が? 誰と誰が噂してたんだ。実名を出せよ」
「実名は忘れたけど、俺はたしかに聞いたぞ。彼女はおるんか」
「その顔はいるんだ。女のひとたちの噂は当たってるんじゃないんですか。シゲさんほどもてないってのもね……ああいうのってあんまりいないんじゃない?」
「幸生、シゲに言いつけていいのか」
「きゃああ、いやいや。言いつけたらいや」
「そういうおまえはどうなんや、三沢?」
「僕はまあそれなりに、ですよ。実松さんったら、聞きたい?」
「聞いたってもええで」
「俺の初体験は十六歳ですからね。もてない男にはそんなに早い経験はできないでしょ」
「十六? 相手はいくつやったんや?」
「二十二」
「……ませとるのぉ、おまえ」
「実松さんは?」
「二十歳ぐらいやったかな。ヒデは?」
「十七歳だったな。初体験は高校のときにすませたよ。幸生、おまえの相手って教師か?」
「女子大生ですよ。ヒデさんの相手は教師?」
「……聞きたいか」
「聞きたいでーす」
「俺の高校に美人教師がいたんだ。大学出たての可愛いひとだったよ。二十二、三歳だったんだろうな。俺は彼女に恋をして、年の差なんかものともせずに口説いた。口説いて口説いて口説き倒した。高校生男子と女性教諭なんてのは、スキャンダルと言っても過言ではないよな。しかし、恋の障壁は恋心を燃え盛らせる。たぎり立つ活火山と化した互いの恋心は止めようもなくなり、彼女と俺は駆け落ちを決めたんだ。俺たちは夜明けの駅のプラットホームで待ち合わせして、誰にも知られないところへ行こうと言い合った。ふたりの恋の新天地を求めて旅立ったんだよ」
「ちょっと待って、ヒデさん」
「なんで待つんだよ」
「恋したあの娘とふたりして、街を出ようと決めたのさ。駅のホームでつかまって、力まかせに殴られた、って歌がありますね。それをアレンジしたんじゃない?」
「ああ~わかってくれとは言わないが、そんなに俺が悪いのか」
「ララバイララバイおやすみよ、ギザギザハートの子守歌~~」
「うう……コーラスで攻めるんか」
「でしょでしょ?」
「幸生の察しは早すぎるけど、シゲが遅すぎるんだよな。そうだよ。美人教師に恋をしたのは本当だけど、ハナもひっかけてもらえなかった。告白もできなかったよ。なのに幸生は二十二歳の女子大生とだと? 詳しく話せ」
「もったいなくて話せません。実松さん、ヒデさん、こんな話をしてる場合じゃありませんよ。本日の議題に戻りましょう」
「おまえが言い出してんやんけ」
「続きはまたいつかね。ヒデさん、彼女の話も聞かせて下さいね」
「いるとは言うてないやろが」
「言うてないやろが? ヒデさん、大阪弁がうつってる。実松さんにも土佐弁がうつるんですか」
「土佐弁はむずかしい。大阪弁はうつりやすいらしいけど……てなぁ、三沢、脱線はええ加減にせえよ」
「はい、すみません」
「議題に移ろう」
「ありゃりゃんこりゃりゃん、大阪弁と土佐弁が、僕の頭の中でミックスジュース。ねえ、ミックスジュースって関東にはないけど、西の喫茶店にはあるんですってね? 大阪にはあるんでしょ。高知には?」
「そんなんどうでもええやろ。じゃかましいんや、おまえは」
「そうやきに。三沢、黙れ」

「と、こういうことがあったんや」
「ちっちゃなころから悪ガキで……か。そうか、そうだったのか」
「僕には話しがよく見えませんが、つまりはヒデさんの願望といいますか、こんな想い出があったらいいなぁ、という? その話を聞いてシゲさんは頭から信じ込み、三沢さんは素早く見抜いた。さすが」
「どっちがさすがやねん?」
「両方です。シゲさん、睨まないで下さい。僕、ちびりそう……」
「下品な台詞はやめろ。ああああ、ああああ、どうせ俺はさすがだよ」
「……実松さんったら、シゲさんがいじけちゃったじゃないですか」
「いじけさしといたらええねん。それよか、ヒデはどうしてるんかな」
「どうなさってるんでしょうねぇ」
「……ヒデ……どこでどうしてるんだ」
「シゲもなぁ……そうやなぁ」
「なんだか暗くなってきましたね。ヒデさん、どこかで僕の放送を聴いて下さっていたとしたら、連絡をお待ちしております。僕はいったいなんのためにここに出てきたのかわからないのですが、実松さんがいらしたら僕の出る幕はありません。よろしいのですよ。締めくくりだけは僕がつとめさせていただきます。僕はDJですからね。フォレストシンガーズの他の先輩方は音楽の話やペンネームの話でしたが、僕たちは思い出話でした。ではでは、みなさま、またお耳にかかりましょうね。パーソナリティは酒巻國友でした」
「これ、ラジオとちゃうで。酒巻もよう喋るようになったもんや。シゲ、おまえもなんか言えや」
「はい。主役のはずが酒巻と実松にその座を奪われてしまいましたが、それも俺の宿命です。ヒデ、ほんとにラジオを聴いたら連絡してこいよ」
「待ってるで、ヒデ。ほんならみなさん、おあとがよろしいようで」
「実松……おまえは落語家か」
「ちゃいまっせ。営業マンです。俺も昔はなぁ……まあええわ。そのうち俺が主役になる物語も出てくるかもしれませんので、お楽しみに」
「楽しみにして下さる方もいらっしゃるかもしれませんね。それでは、おあとがよろしいようで、って、僕にまでうつってしまいました。おあとがよろしいようで」
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