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小説181(サヨナラホームラン)

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野球

フォレストシンガーズストーリィ181

「サヨナラホームラン」


1・彰浩

 京都の寺の住職の長男。姉と弟はいても、俺が生れ落ちたそのときから、跡継ぎはこの子だと決められて、俺もそれを当然だと受け止めて育ってきた。
 父にお経を教えられたり、寺の境内の掃除や雑巾がけをやらされたり、高校生にもなれば檀家回りについていかされたり、寺の息子なんだから、よそとはちがっていてもしゃあないやんけ、だったりの、俺の青春だった。
 しかし、青春はまだ続く。大学は東京に来させてもらい、好きな歌を歌いたくて合唱部に入って、サークル内に友達もできた。
 沖縄出身の知念秀介。ひとりっ子の彼には父親がいなくて、医者である母に育てられ、東京の大学の医学部に入った。彼の将来も俺と同じくほぼ決まっているのだが、医者になるためには踏ん張って努力しなくてはならないだろう。俺よりもしんどいはずだ。
 都内ではない東京出身の椎名雄二。彼は普通のサラリーマン家庭の息子で、次男である。親の跡を継ぐ必要もなくて、でれーっとしていると見えなくもない。
 埼玉出身の岸本稔。彼は雄二と似た境遇だ。姉のいる長男だそうだが、サラリーマン家庭では父親の跡を継げだなんて、親も言わないだろう。うらやましくはないのだが、雄二や岸本には将来をどんなふうにでも選べていいな、とは思う。
 知念は細身で背が高く、雄二と岸本は背も高ければがっしりしていて体格もいい。俺は中背痩せ型なので、彼らの体格はうらやましかった。
 顔立ちは知念が一番、医学部だという先入観を省いても、頭もよさそうで女の子にもてそうな雰囲気を持っている。雄二はやんちゃ坊やみたいで、岸本は強面タイプか。俺は顔立ちにはなんの特色もないというよりも、坊さんになると似合いそうなのっぺり面だろう。
 大学に入ってから一年、去年はいろいろあった。合宿の遠泳のときには、泳げない俺に雄二が遠泳指導をしてくれて、本番ではいっしょに泳いでくれた。雄二は高校生までは水泳部だったのだから、実はトップで泳ぎたかったのであろうに、俺に最後までつきあってくれた。
 五歳年上の兄貴の伊佐雄さんが合唱部にいたからというのもあって、椎名雄二のみは名前で呼ばれている。そこには彼の性格も反映しているのだろう。知念は俺の身体があまり丈夫ではないのを見て取って、さりげない気遣いを見せてくれる。
 関東人や沖縄人は口調が荒く、性格も柔和というほどでもないにしろ、悪い奴らではない。一年間でおよそは見えた。岸本とはこんなことがあった。
「よ、一緒に帰ろうか」
 あの日は知念も雄二も合唱部をさぼっていて、岸本とふたりで帰ろうとしていたら、久保田が声をかけてきたのだ。
 久保田って奴は雄二と高校が同じで、同じ水泳部にいたのだと聞いている。雄二は久保田を嫌っているようだが、理由は知らない。断る理由もないので三人で連れ立って歩き出すと、久保田が言ったのだった。
「おまえらさ、合宿で同室だったからって、友達になる義理はないだろ」
「合宿で同室だったからってだけじゃないよ」
 岸本が言うと、久保田は言った。
「長嶺は椎名に泳ぎを教えてもらったんだよな。それであいつに惚れた?」
「惚れはせんけど、友達ってええなぁ、とは思った」
「……げ、キモっ!! ま、それはいいんだけどさ、おまえらは椎名の本当の姿なんて知らないだろ。あいつは猫をかぶってるんだよ」
「にゃぁごぉにゃあおん」
 当時のキャプテン、猫好き三沢さんの真似をして俺が猫の声で合いの手を入れると、久保田は俺を睨みつけた。
「ふざけるな。関西人ってのはふざけるのが生き甲斐なのかもしれないけど、俺は真面目に話してるんだよ。聞けよ」
「ふざけるのが生き甲斐は大阪人やろ。俺は京都人。一緒にせんといてな。そやから聞いてまっせ。どうぞどうぞ言うて」
「椎名ってのはとんでもない奴なんだぞ。あいつとは水泳部で一緒だったから、俺はあいつについてよくよく知ってるんだ。万引きで補導されたり、カツアゲやったり、ナイフを持って他校の生徒と喧嘩したりってのもあったよ。その原因ってのは、椎名が他校の男の女を横取りしたからっていうんだぜ」
「そんで、雄二は水泳部を退部させられた?」
「そうだよ。学校側には内緒にしておいてやるからって、不良分子を切り捨てたんだ」
「よう学校にばれへんかったな」
 岸本は無言で歩いていて、俺だけが久保田の相手をしてやっていた。
「そこは水泳部の顧問が手を回してくれたんだよ。椎名が悪さをしたのがばれたら、水泳部全体が迷惑をこうむるだろ。高校水泳大会なんかにも出場停止処分を受ける。下手したら水泳部が廃部になっちまうよ」
「ふむふむ」
「だから、椎名を切り捨てたんだ。あいつは運動部がいやになった、変な先輩もいたから、なんて言ってるんだろうけど、嘘だからな」
「そうは言うてなかったけどな。運動部はしんどいとは言うてたけど、変な先輩とは言うてなかったよ。それに、久保田はあいつの先輩とちゃうやろ」
「いや……そうなんだけど、なんにしたって、椎名は最低の高校生だったんだよ。岸本、おまえはさっきからひとことも口をきかないけど、信じてないのか」
「俺が信じようと信じまいと、おまえには関係ねえだろ。好きに言ってろよ」
 怒りのにじんだ語調で言って、岸本は久保田を睨み返した。
「本当なんだから……」
「本当だっていいよ。俺は不良って好きさ。な、長嶺?」
「うん。かっこええやんけ。俺なんか不良になったりしたら、家から叩き出されるからこわぁてようせんかったけど、憧れるなぁ。今からでも遅くないかもな。岸本、ふたりで不良になろか?」
「いいかもな。手始めに、やるか」
「なにすんのん?」
「不良になるなら俺は硬派がいいよ。硬派の不良ったら喧嘩だろ」
「おー、そうや。そやけど、俺は腕力には自信ないねん。岸本くん、ひとりで久保田と闘って勝てる? 死んだら俺がお経をあげたるさかいに」
「お経は久保田にあげてやれ。やるか、久保田」
「おまえらは……おまえらは……年上に向かって……」
 逃げかけている久保田に、岸本が言った。
「おまえって年上?」
「いや、年上では……もういいよ。とにかく、俺が言ったことは全部本当なんだからなっ!!」
 叫んでおいて久保田は逃げていき、岸本が言った。
「長嶺は信じたのか」
「雄二らしゅうないけど、そんなんどうでもええし。なあなあ、岸本、軟派の不良になろか」
「軟派はナンパか。そっちもいいけどさ、俺には好きな子がいるんだよ。おまえにはいないのか?」
「おらへん。ほんなら、おまえの好きな子の話をして。軟派でも硬派でもなくて、中間の大学生としてメシを食いにいこうや」
「そうしましょ」
 そうなって、ナンパも喧嘩もせず、岸本とふたりで食事にいって、彼の好きな女の子、稲木えりかちゃんの話しを聞かされた。
 雄二が不良だったのが本当だったとしても、そこまでやって学校にばれないはずはないのだから、久保田は大げさに言っていたのだろう。そこまでではなくても多少はやっていたのだとしても、それがなんやっちゅうねん、ではあった。
 ちょっとぐらいの不良は、将来は寺の坊主になると決まっている俺には、かっこよく映る。俺なんかはバイクの免許も取らせてもらえず、女の子とつきあっていると話したら、高校生でも父にこういわれる始末だったのだから。
「女の子とつきあうのもええけど、茶髪の子はあかんで。もしもその子が茶髪にしてたら、おまえが説得して黒髪に戻してもらい」
「なんで茶髪はあかんのん?」
「寺の住職の嫁には茶髪はあかんのや」
「あのな、まだ嫁て……そんなんとちゃうわい」
 というような家庭では、不良になんてなれるはずもない。二言目には、寺の坊主になるおまえは……であったのだから。音楽だって、両親が好きだったからよかったものの、音楽嫌いの両親だったとしたら、お経のカセットばかり聴かされていたかもしれない。
 あんな家で育った俺には、茶髪も最新流行の服も似合わない。黒い袈裟が似合いそうな、のっぺり顔に育ってしまった。
「俺ら、アホか?」
 尋ねると、岸本は真顔でうなずいた。
「馬鹿に決まってるじゃん」
「そうやな」
 沖縄ではアホをなんと言うのか、知念に聞いてみよう。知念はアホではないかもしれないが、まあ、根本は俺たちと似たようなものだろう。東京と埼玉は馬鹿。京都はアホ。言い方はちがっても同じ阿呆であるのだから、アホの四人グループは楽しいのだった。


2・秀介

 坊主と医者のどちらが将来的にいいと言えるのか。長嶺にも俺にもまだ答えは出ていないのだが、俺が医者になろうと励んでいるのは事実で、大学二年生になってからは、大きな小児病院にボランティアで手伝いにいくようになった。
 医学部二年生なんて存在にはなにができるわけでもなく、要は雑用夫だ。それはそれでもいいので勉強させてもらっていて、同じボランティアの女の子と知り合った。
「きゃっ、失敗しちゃった。ごめんなさーい。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!!」
 彼女の声である。はっきり言ってドジな彼女は、よく失敗してあやまってばかりいる。彼女もボランティアではあるのだが、あれでナースになれるのだろうかと、他人ごとながら俺は心配になるのだった。
「加納さん、病院の廊下を走ったらいけないよ」
 どたばたと足音を立てて走ってくる加納遥とぶつかりそうになって、俺は声をかけた。
「ああ、ごめんなさい、ごめんなさいっ!!」
「涙が出てる? それしきで泣いてたらナースになんかなれないよ。きみも昼休みだろ。一緒に昼メシ食わない?」
「泣いてません。うん、でも、おなかがすいた」
「俺もおなかがすいたから、食おうよ」
 病院の庭に出ていって、ベンチにすわって昼メシを取り出した。加納遥、看護専門学校の学生、俺よりはひとつ年下、と知ってはいるが、それ以上は彼女については知らない。ボランティアに来てもいつもいつも会うわけでもないのだが、外見はけっこう好みなので気になっていた。
 腕や脚はすんなりしている。俺は背は高いほうなので、俺よりも頭ひとつ分低いのだから、背丈は並だろう。ボランティア学生だから私服で、清楚なブラウスとスカートがよく似合っていた。
「知念さんは沖縄のひとなんだよね」
「うん。きみは?」
「私は金沢」
「金沢なのか。金沢っていうと……俺が東京に出ようって決めたのは、高三の夏に金沢の男と会って話を聞いたからなんだよ。金沢のひとって品がいいよね」
「私はそうでもないでしょ。失敗ばかりしてるんだから」
「今はしようがないだろ。俺も失敗はしてるよ。ただ、ナースにしたって医者にしたって、人の命を預かるんだもんな」
「そうだね。私は粗忽な性格を治さなくちゃ」
 東京に出ようという決意を固めてくれた男、金沢出身の合唱部の大先輩。たったの二度しか会ったこともないのに、強く印象に残った乾隆也。合唱部の仲間には彼の話はしていないのだから、遥にも言うつもりはなかった。
「だけど、ナースって白衣の天使って言うだろ。もちろん、仕事はきちんとできなくちゃいけない。仕事のできないナースなんて無用の長物だ。そこはしっかりとして、それでいて、可愛い笑顔ってのもナースには重要じゃないのかな。きみは泣いたりしないで笑ってなくちゃ。きみの笑顔はとっても可愛いんだから」
「知念さんは医者になるんだよね」
「そうだよ。俺の母は医者で、父はいない。俺は医者になったら沖縄に帰って、母の医院を継ぐんだ。そのために医者になるのが先決なんだよ」
「医者になったら、可愛い笑顔のナースを雇いたい?」
「うちにはおばさんナースがいるけど、彼女が定年退職でもしたら、若くて可愛いナースに取り替えたいな」
「それって不謹慎」
 怖い顔をしたものの、すぐに笑顔に戻って、遥は言った。
「知念さんはお母さんとふたりで暮らすんだね。そうすると、医者だとしても結婚はむずかしいかもしれないよ」
「姑と同居はやだってか? 同居はしなくてもいいんだけど、結婚しても母の近くに住みたいから、マザコンって言われそうだな」
「知念さんはお母さんが好き?」
「好きも嫌いもない。おふくろなんだから」
 真摯な瞳になってうなずく遥を見ていると、尋ねたくなった。
「きみはナースになったら金沢に帰るの?」
「そのつもり。それでね、これは夢で終わるかもしれないけど、僻地や離島に赴任したいの。無医村でもいいな。医者のいない村にナースだけって無意味?」
「ナースだけだっていたほうがいいんじゃないのかな」
 昼休みが終わるまで喋ってから、俺は言った。
「友達になれたと思っていいよね。じゃあ、秀介って呼んで」
「私も遥って呼んでね」
 友達だなんてきれいごとではなく、彼女になってくれ、と言うべきか。高校生じゃあるまいし、友達なんて、そんなものは欲していないのに。
 けれど、俺はいずれは沖縄に帰る。遥も金沢に帰り、夢がかなったとしたら僻地か離島か無医村のナースになる。そんなふたりは、恋人同士になってはいけない。別れるときに泣くのは彼女か、俺か。そう考えると、恋人になろうとは言えなかった。
 けれども、俺は遥に恋をしていた。合唱部の友人たち、長嶺、椎名、岸本も恋をしているのだろう。椎名だけは名前で雄二と呼んでいるのだが、彼の恋人は知っている。同じ大学の華道部の芙美ちゃんだ。岸本は同じ合唱部のえりかちゃんが好きなようで、残るひとりは? 
 長嶺の恋については俺はまったく知らないのだが、二十歳の男は勉学と歌だけではなく、恋だってしたい。女とつきあいたいのがまっとうな感覚だ。が、俺のほうの話しはしたくないのだから、長嶺にだけ質問するのはやりにくい。一般論として尋ねた。
「寺の住職の妻になる女ってのは、条件があるのか?」
「どこの寺でも同じなんかどうかは知らんけど、うちの親父はうるさいで。真面目で清純な女の子がええて言いよるねん。東京の女はちゃらっとしてそうやから、やっぱり京都の娘がええとも言うてたけど、京都かて都会やねんから、都会の女はみんなちゃらっとしてるやろ」
「そうとも限らないだろうけど、遊んでる女が多いのかな」
「妻なんてのは考えるのは早いけど、彼女やったらほしいな。知念にはいてるんやろ」
「いないよ」
「勉強が忙しいからか? おまえは学部に合唱部にボランティアにって、あっちゃこっちゃ飛びまわってるんやもんな。それだけに、女の子と知り合うチャンスも多いんとちゃうんか」
 やはり話がこう流れていくのか。
「言いたないんやったらええけどな。言いたくないってのはおるんや。俺はそうと確認したから話さんでもええで」
 にやにやしている。京都人は根性が悪くて、腹の中が真っ黒け、という俗説を信じたくなってくる表情をしていた。
「恋ってのはええんやろうけど、結婚するとなったらな……あかん、親父の説教を思い出すと、この子やったら住職の嫁になれるかな、って目で見てしまうんや。学生のうちから結婚を意識するつきあいなんて、俺かてしとうない。女の子はよけいにそうなんとちゃうのん?」
「真面目に恋をしたら、学生だって結婚を考えるんじゃないのか」
「おまえは考える?」
「おまえな、俺は一般論として話してるんだよ。俺の気持ちを探ろうとするな」
「おー、さすがに医者の卵はかしこい。なあ、知念、沖縄ではアホはなんと言うのん?」
「ふらぁー、かな」
「ふらふらフラダンス?」
「ふりむん。これは馬鹿者って意味だよ」
「ほぉぉ、日本は広いのぉ」
 こっちがはぐらかしたのではなく、あっちにはぐらかされたのか、長嶺は方言談義をはじめ、沖縄弁と京都弁の教えっこになっていった。


3・雄二

なんだっていいから音楽関係の仕事に就きたくて、業界に新規参入したレコード会社に合格したのはよかったものの、配属されたのは経理部だ。内定した当時から経理部配属は決定事項だったので、覚悟は決めていたのだが。
「やっぱこの仕事って、音楽とはなんの関係もねーよっ!!」
 わかってはいたが愚痴りたくて、メールを四通送った。合唱部の友達の長嶺、知念、岸本、先輩の酒巻さん。
 卒業後は長嶺は京都に帰り、知念は医学部なのでまだ学生で、岸本は東京でサラリーマンになっている。酒巻さんは最近ようやく、念願のDJになったばかりだ。酒巻さんは俺たちよりも二年年上の二十五歳で、あとの四人は二十三歳である。
 坊さん修行中の長嶺も、医者修行中の知念も、DJ修行中の酒巻さんも、サラリーマンとは別世界だろう。「まあ、がんばれよ」みたいな返事をくれた。もっとも俺の気持ちをわかってくれそうな岸本の返事はこうだった。
「俺だって音楽とも歌ともなんの関係もない仕事をしてるよ。ざまあみろ」
 メールの末尾の絵文字が、んべーっと舌を出している。あいつはあいかわらずの馬鹿だ。
 レコード会社勤務とはいっても、会社の金銭的な仕事をしているのだから、音楽関係者と触れ合うこともない。なにもかもわかっていたのに、つまらないと感じるほうがまちがっているのに、なんだか面白くないのは、二年目の壁もあるのだろうか。
「椎名さん、テニスの試合を見にいかない?」
 そんな俺のかすかな光は、同僚の芽衣ちゃんだ。同期で経理部に配属されたのは彼女と俺だけなので、友達としてつきあってくれている。金曜日の夜に芽衣ちゃんが誘ってくれた。
「椎名さんはテニスには興味はないんだっけ?」
「いいや、大好きだよ。行こう」
 本当はテニスなんてなんにも知らないが、芽衣ちゃんは高校でも短大でもテニスをやっていたのだそうだ。就職してからもテニスは続けているのだそうで、テニス大好き女の子。それだけになかなかがっしりした身体つきで、俺の好みではないのだが、性格は好きだ。
 デートでもないのかもしれないが、女の子と出かけられるのは嬉しくて、誘いにうなずいた。同期とはいってもふたつ年下の芽衣ちゃんとふたり、土曜日にテニスの試合を見にいった。
「本庄恭子さんって知ってる?」
「本庄さんっていうと、んんと……あの本庄さんの身内?」
「あの本庄さんって?」
 テニスコートが見える観客席にすわって、芽衣ちゃんと話した。
「俺は大学では合唱部に入ってたって話しただろ。四つ年上だからサークルでは一緒に活動はしていないんだけど、フォレストシンガーズの本庄さんは俺の先輩なんだよ。フォレストシンガーズの三沢さんが、俺が入部した年のキャプテンだったんだ。他のひともみんな、俺の先輩なんだ」
「フォレストシンガーズなんて知らないけど、川上恭子さんが結婚して、本庄恭子さんになったらしいよ。その本庄さんなのかな」
 芽衣ちゃんはフォレストシンガーズを知らなくて、俺は川上恭子というテニス選手を知らない。真相を知る手立てはあるだろうか。本庄という名前の男は何人もいるだろうし。
 本庄繁之さんや三沢幸生さんの連絡先は知らない。となると、酒巻さんか。酒巻さんとも近頃は連絡を取り合っていないのだが、ケータイのメールアドレスは知っている。酒巻さんはフォレストシンガーズとは親しいはずなので、メールしてみた。
「職場の友達とプロのテニスの試合を見にきてるんです。本庄恭子ってプロのテニスプレイヤーは、本庄繁之さんの身内ですか」
 そのメールに、酒巻さんからの返信があった。
「本庄さんの奥さんだよ。友達って女の子?」
 酒巻さんのメールには、末尾にVサインをしている顔文字があった。
「俺は本庄繁之さんをよく知らないけど、本庄恭子さんって繁之さんの奥さんだって」
「ふぅーん」
 あまり興味はなさそうだったので、芽衣ちゃんにはそれだけを報告した。
 ちょうど恭子さんが試合をしている。短いスコートってやつから、たくましい太腿が見える。テニス選手なのだから当たり前なのだろうが、本庄さんはあんな強そうな女性と結婚したんだ。本庄さんも強そうだからお似合いかなと思っていた。
 試合は緊迫の展開で、俺にはルールもよくわからないながら、接戦なのはわかる。芽衣ちゃんは声を枯らして恭子さんの応援をしていた。
「あーっ、勝ったっ!!」
「よかったね。芽衣ちゃんは恭子さんのファン?」
「椎名さんはどうでもいいみたいね」
「だって、よく知らないし……」
「テニスは好きじゃなかったの?」
「好きだよ。大好きだよ。大好きだけどよくは知らないんだ」
「大好きなのに知らないなんて変なの。でもさ」
 疑わしそうに俺を見つめてから、芽衣ちゃんはにこっとした。
「ほんとはそんなにテニス好きでもなさそうなのに、つきあってくれてありがとう」
「いや、そんな……」
「私とデートしたかったの?」
「うん、まあ、そうかな」
「じゃあ、終わったらごはん食べにいく?」
「うんうんうんっ!!」
 そのあとはまったく、テニスの試合なんてどうでもよくなってしまって、楽しそうに観戦している芽衣ちゃんの横顔ばかり見ていた。
「私が高校生の年に、まだプロではなかった川上恭子さんの試合を見たの」
 試合が終わってイタリアンレストランに入ると、芽衣ちゃんが話してくれた。
「恭子さんはあのころは、会社で働きながらテニスをやってたんだよ。それからプロになったみたいね。私はプロの選手になろうとは思ってなかったけど、がんばってるんだなぁ、って思ったら、恭子さんのファンになっちゃった。恭子さんってどことなく、私に似てない?」
「顔までは見えなかったけど、体格は似てるかな」
 あのたくましい恭子さんと体格が似ていると言うと、女の子は嬉しくないかもしれない。言ってしまってから後悔していると、芽衣ちゃんは気にも留めていないそぶりで言った。
「恭子さんはラジオでDJをやってるんだった。午前四時からの番組だから聴けないんだけど、「FSの朝までミュージック」っていうんだよ。FSってフォレストシンガーズ? 椎名さんはフォレストシンガーズの後輩なんだったら、そのラジオ番組を知ってるんじゃないの?」
「知らないな」
「後輩のくせに」
「そう言われてもね、俺だって午前四時からの番組なんて聴けないよ」
「そうだよねぇ」
 その番組についても、酒巻さんに聞いてみよう。もしかしたら恭子さんと本庄さんがペアで、番組を担当しているのかもしれない。そして恋をして結婚したのだとしたら、テニス選手とシンガーの接点というわけになる。
 午前四時か……いつか芽衣ちゃんとふたりで、その番組を聴けないだろうか。そんな時間ということは、ふたりでホテルのベッドでとか? 芽衣ちゃんも俺も自宅通勤だから、互いの部屋に泊まるなんてできないが、ホテルでだったらできる。
 夢というか妄想というか、そんな気分が生じて、そのためには告白しなくてはいけないんだろうか、と考えていると、芽衣ちゃんが言ってくれた。
「私もFSの朝までミュージックって聴きたいな。一度有休でも取って、聴いてみようかな。FSなんだからフォレストシンガーズが出てて、恭子さんも出てるんだよね。インターネットで番組を詳しく調べてみようっと」
「その手があるんだよね」
「椎名さんも有休を取って、一緒に聴く?」
「それって……?」
「やだ、冗談だよ」
 いや、冗談がすべてみたいな顔はしていない。そう思うのも俺の妄想か。
「……芽衣ちゃんと一緒に、恭子さんのラジオを聴きたいよ」
「そうだね。いつかね」
 いつかっていつ? などとガキみたいな質問はできない。俺はもうガキではない。そこで仕事の話をした。
「芽衣ちゃんは経理の仕事は楽しい?」
「楽しいって仕事でもないけど、私は近いうちに税理士の資格を取ろうと思って勉強してるんだよ。そんな気になったのは経理部に配属されたからだよね」
「きみはしっかりしてるんだな」
「椎名さんもしっかりしてね」
「いえ、俺は馬鹿ですから。学生のときから四馬鹿トリオでさ」
「四人でトリオ?」
「あはっ、言い間違えた」
 ころころと声を立てて笑う芽衣ちゃんが可愛い。たくましい恭子さんも、本庄さんから見ると可愛い奥さんなのだろう。プロになろうとがんばって、本当にプロになった恭子さんも、しっかりした女性なのだろう。
 おパカな俺にはしっかりした彼女がいてくれて、しっかりした奥さんになってくれたら……ついつい気の早い想像をしているとにやけてきて、表情を引き締めて言った。
「俺もがんばるよ。芽衣ちゃんも一緒にがんばろう。いや、ほら、同じ部署の同僚として、一緒にがんばろうって意味だよ」
 うんっ、とうなずいてくれる芽衣ちゃんが、いっそう可愛く見えた。
 

4・稔

 同窓会となると卒業生の中では若手が、その中でも合唱部でキャプテンをつとめた人間が幹事になる。当然なのだろう。俺もサークルの仲間たちに会いたいのだから、雄二とふたりで幹事を引き受けた。
 二十六歳になった雄二と俺が合唱部でキャプテンと副キャプテンになったのは、五年も前だ。そろってぶうぶう不平を言っていたものだが、思い出となってしまうと楽しかった。学生時代は気楽で楽しかったのだなぁ、と社会人になると実感する。
 事前の準備は雄二とふたりでやっていたのだが、いざ本番となる前日に、雄二から電話がかかってきた。
「ごめん。仕事の急用が入って明日は行けなくなっちまったんだよ。岸本、頼む」
「……しようがねえな。埋め合わせはしろよ」
 仕事ならばしようがない。俺がひとりで幹事をつとめるとしよう。
 夕刻から開始された合唱部同窓会には、先輩も後輩も同い年の奴らも来てくれた。俺にとってはもっともなつかしい先輩の、酒巻さんも来てくれた。
 若い世代の多い同窓会会場で、最年長だったのは皆実さんと服部さん。皆実さんは男子部のもと副キャプテンで、長身のかっこいい男だ。服部さんはキャプテンでも副キャプテンでもなかったらしいが、長身のかっこいい女性だった。
 皆実さんと服部さんは三十三歳、酒巻さんが二十八歳。年上の先輩たちを囲んで、俺たちの知らない時代のエピソードを聞かせてもらった。
「岸本くん、久しぶり」
 うしろから小声で呼びかける女性がいて、俺は振り向いた。
「……えりかちゃん」
「聞いたよ。今日の幹事は椎名くんと岸本くんだって? 椎名くんは来られなくなったから、岸本くんがひとりでがんばってるんだってね。手伝えることがあったら言って」
「うん。でも、いいよ。ひとりでなんとかなるから。それより、話ししようよ」
「うん」
 初恋のひと、稲木えりか。まともに告白もできないでふられてしまった女の子だった。こっそり彼女とその場を離れ、ふたりきりで向き合った。
「先輩たちでしょ? かまわないの?」
「かまわなくはないのかもしれないけど、他にも話を聞いてる奴らはいるんだから、いいんじゃないのかな」
「あの方、素敵だよね」
「皆実さんか? 服部さんも素敵だよな」
「女性が服部さんで男性が皆実さん?」
「そうだよ。皆実さんはあの金子さんの親友なんだって。金子さんは知ってるだろ?」
「もちろん。フォレストシンガーズと徳永さんと金子さんは、私たちの自慢の先輩だもんね」
 フォレストシンガーズ、金子将一、徳永渉、この三組が合唱部出身のプロのシンガーだ。他にも俳優やパンクロッカーが出ているのだから、我らが大学は芸能方面の才能を輩出することで有名ではあるのだ。
「皆実さんはサラリーマンだそうだけど、金子さんとはつきあいが続いてて、そんな話もしてもらってたんだ。服部さんはブティックの店長さんだってさ。えりかちゃんも服部さんの店に行ったら、社員割引で服を買わせてもらえるかもしれないな。ちなみに、ふたりとも独身だそうだけど、皆実さんはきみのタイプ?」
「タイプだとしてもね……うん、タイプではあるよ」
 タイプだとしても? えりかちゃんは売約済みなのだろうか。左手の薬指にリングはないけれど、そこまでではない彼氏がいるのか。
「金子さんもいらっしゃるって、皆実さんがおっしゃってたよ。えりかちゃんも会いたい?」
「金子さんもかっこいいもんね。そりゃあ、会いたい」
 朗らかに笑っているえりかちゃんに、彼氏がいるの? とは訊けない。さらりと訊けばいいのに。けれど、いないよと言われたとしても、俺は今さら彼女を口説けはしない。
 口説けなくはないだろ? できるだろ? 過去になんかこだわらなければいいのだし、えりかちゃんと俺には過去なんてなんにもありゃしない。子供のころの初恋のひとで、大学で再会して、つきあってほしいと言っても真面目に受け取ってはもらえなくて、他の男とつきあうと知って失恋した、それだけの仲なのだから。
 長嶺がいつだって、俺らは合唱部の四馬鹿、だとか、四アホだとか、沖縄弁だったら四ふらぁー、だとか言っていて、俺もそうだろうと思っていた。
 四馬鹿だか四アホだか四ふらぁだかの一員だから、俺が真面目に口説こうとしても、えりかちゃんはジョークだとしか思わなかったのか。過去にこだわるとしたらその点のみなのだが、今の俺は真面目なサラリーマンだ。
 馬鹿は残っているけれど、しっかり仕事はしている。今の俺にだったら言えるのでは? 今度こそつきあってほしいと言って、そして? 私には彼はいるよ、の答えだったら、立ち直れない。だから、言えない。あいかわらず俺って馬鹿、と思っていると、えりかちゃんが言った。
「服部さん、お帰りかな?」
「そうなのかな。用事でもあるのかもな。えりかちゃんの仕事はどう?」
 言いたいことは言えなくて、近況報告をし合っていた。そうしていると金子さんがやってきて、えりかちゃんの目が輝き、女性たちは全員、金子さんを取り囲んでしまう。俺には店の従業員が近づいてきて言った。
「服部さんは先にお帰りになるとのことで、岸本さんに伝言しておくようにと」
「あ、はい。承知しました」
 従業員が一礼して下がっていくと、皆実さんがやってきた。
「幹事はいろいろと大変だね。お疲れ」
「疲れてはいませんが……」
 会場の真ん中では、金子さんが歌っている。青春時代をなつかしむ歌なのか。皆実さんが教えてくれた。
「青い涙の味がする、ってタイトルだよ。きみたちにはまだ早いかな。金子が歌うとしては珍しいジャンルだな」
「フォークソングですよね」
「古い古い曲だけど、三十すぎると胸にしみる、って、俺もそれほどの年でもないけど……あれ? 服部さん? あれあれ? 柴垣?」
 服部さんが会場に戻ってきた。服部さんはいいのだが、もうひとり、男がいる。背の高い、怖そうに見えなくもないあの男も合唱部か? 服部さんが皆実さんに近寄ってなにやら囁き、皆実さんはうなずいて言った。
「岸本はあいつ、知ってるか?」
「いえ、知りません。合唱部出身って雰囲気ではなさそうな……」
「誰か知っててくれるかな。服部さんは気になるんだよね」
「だーれも知らなかったらかわいそうだし……」
 有名な男なのだろうか。俺が彼に目礼すると、気に食わない顔をして目をそらした。
「柴垣さんっておっしゃるんですよね」
 尋ねると、服部さんが言った。
「柴垣くんにそこで会って、金子くんも来てるって聞いたから戻ってきたの。やっぱり金子くんは、女の子に囲まれて歌ってるんだよね。柴垣くんも歌ったら?」
「俺は歌でメシを食ってるんじゃねえよ」
 無愛想に返事をする柴垣さんは、服部さんや皆実さんと同じくらいの年齢だろうか。服部さんにメモを手渡されて見ると、「柴垣安武を知ってる人は、知ってるよって言ってやって」だった。俺がメモを参加者のひとりに渡すと、手から手へと渡っていった。
「知ってまーす。チキンスキンの柴垣さん!!」
 ひとりの女の子が言い、柴垣さんは服部さんに言った。
「カズハ、おまえ、よけいな真似をしやがって……」
「よけいじゃないでしょ? 嬉しいくせに」
「嬉しくねえんだよ」
 もうひとり、声を上げたのは酒巻さんだった。
「僕も知ってまーす」
「おまえは知ってて当然だろ」
 柴垣さんは小声で悪態をつき、金子さんも言った。
「俺も知ってるよ」
「当然なんだからおまえまでが言うな、馬鹿野郎」
 むこうでは金子さんと酒巻さんが笑っている。チキンスキンと言われても俺は知らなかったのだが、服部さんが耳打ちしてくれた。
「チキンスキンってパンクバンドだよ。柴垣くんはチキンスキンのベーシスト」
「そうなんですか。同じ大学の先輩にパンクロッカーがいるってのは知ってたんですけど、柴垣さんでしたか。失礼しました」
「うるせえんだよ」
 あやまっているのに怒られるとは、パンクロッカーとはひねくれているものであるらしい。柴垣さんは服部さんを睨みつけ、服部さんも睨み返して、ふたりしてにらめっこしている。俺は酒巻さんに尋ねた。
「柴垣さんって合唱部の先輩ではありませんよね?」
「ロック同好会出身だよ。どうしてここにいるのか、僕も知らないんだけど、金子さんが誘ったんだろうね」
「酒巻、俺がここにいちゃいけないんだな。俺は帰るよ」
「柴垣さん、帰らないで下さい。すみませんっ!!」
 頭を下げた酒巻さんは、柴垣さんに小突かれている。金子さんは言った。
「柴垣もミュージシャンなんだから、みんなで歌おう」
「いやだね。俺は歌は専門じゃないんだよ」
「ベースギターは持ってないんだよな」
「そんなもんは持ち歩かねえよ」
 とことん愛想のない柴垣さんであるが、パンクロッカーとはこんなものか。俺にはロッカーの知り合いはいないので、無意識で見つめていると、じろっとやられて逃げ出した。
「……えりかちゃん、帰っちまったのか」
 遅れてやってくる人も、早めに帰ってしまう人もいる。えりかちゃんが帰ってしまっても咎めるようなことではないのだが、途端に寂しくなってきた。
「稲木さん、来てたんだね。岸本くんは……言わないほうがいいんだろ」
「酒巻さんは知ってたんですか」
「なんとなくはね」
 大学一年生の年にキャプテンの三沢さんの提案で、クリスマスコンサートでは下級生も歌わせてもらえると決まった。酒巻さんと雄二と知念と長嶺と俺と、五人で結成したファイブボーイズ。五人ともにばらばらになって、会うこともほとんどなくなった。
 今日だって酒巻さんだけしか来ていない。酒巻さんはラジオのDJになっているので、声を聞く機会もあるけれど、他の奴らとはメールもめったにしなくなった。
 学生時代の恋は雄二の失恋しか知らない。知念や長嶺にもいたのかもしれないが、彼女の話はしてくれなかった。俺の失恋も誰にも話さなかったのだが、酒巻さんは感づいていたのだろう。そういえば、えりかちゃんにふられたときには、酒巻さんが近くにいた。あれは学食だったか。俺の片想い、その果ての失恋だったあの恋を、俺はいまだに吹っ切っていないらしい。馬鹿馬鹿しい。
 社会人になってからは知念や長嶺の恋は知る由もないが、雄二には彼女がいると言っていた。俺も昔の恋に縛られていないで、彼女を見つけなくては。
「学生時代は過去ですもんね」
「そうだね。今は岸本くんは恋は?」
「酒巻さんは?」
 質問し合ってごまかし合っていると、金子さんが言った。
「みんなで歌おうか。最新ヒット曲ってのは合唱向きではないかもしれないけど、若い人に新しい歌を教えてもらいたいな」
「金子、年寄りみたいに言うな」
 皆実さんが言い、金子さんは問い返した。
「おまえは最新ヒットを知ってるのか?」
「知らなくはないよ」
「だったら、なにか歌ってくれよ」
「この歌……けっこう好きなんだ。歌ってる男は若くはないからかな」
 これだったら俺も知っている。皆実さんが歌いはじめた歌は、「サヨナラホームラン」。
 
「何も手につかずに 夜の八時 ぼうっと見てるテレビ
 ”おれ、この先、どうしよう・・・”
 誰かが打ったツーランホームラン
 みんな笑い抱き合って そのシーンが眩しすぎたんだ
 ほんとはぼくだって 誰かを笑顔にしてみたりしたい

 ぼくの部屋は今日も カーテンを閉めたまま
 このままでいいのか? いいわけないだろう・・・

 明日という言葉は どうして明るいって書くんだろう?
 明るい日じゃなかったら 誰も明日を待たないから・・・
 ”本当のぼくはきっと こんなんじゃないはずなんです”
 そう叫ぶぼくはたぶん 間違いなくそーゆー奴

 明日が見えないから カーテンは閉めたまま
 とっくに気づいてるよ このままじゃダメなこと
 9回裏まさかの 逆転サヨナラホームラン
 まだゴールじゃないだろう? カーテンあけた夜

 君と電話きった後 なんだか涙があふれた
 確かな言葉なんて 何一つ君に言えなかった
 誰かじゃないぼくのため 誰かじゃなく君のため
 どこかじゃなくここで いつかじゃなく 今 この時を・・・」
 
 逆転サヨナラホームラン。俺にとってのそれってなんだろう? サヨナラホームランはもっと年を取ってから打つものか? サヨナラではなくても、人生の逆転ホームランを今、どこかじゃなくて、いつかじゃなくて、俺も打てたら。
 そうさ、まだ遅くはない。えりかちゃんではなくても、彼女だってきっとできる。彼女のためと俺のために、近いうちには逆転ホームランを打とう。皆実さんの歌う歌が、俺の人生へのエールに聴こえてくる。
 これだから俺は単純で馬鹿なのか? 自らに問いかけてみたら、だからこそ、おまえには逆転ホームランが打てるんだよ、と俺が答えた。

END





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