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第五部完了・特別番外編(短編小説)

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温度はお好みで&フォレストシンガーズ

  「特別番外編・短編小説」


 こういうのって俺はけっこう好きかな、と思うと、人にも読ませたくなる。俺はその小説を仲間たちに読んでもらい、感想を聞いた。
「この男たち、達也も誠二も私は嫌い」
 ばっさり斬り捨ててくれたのは本橋美江子さんで、それから付け加えた。
「美穂はお馬鹿だし、小夜も理解不能だけど、聡子はけなげでいいよね。だけど、このひともこの性格では人生がつらそう。聡子は私にちょっと似てる?」
「似てるかもしれませんが、美江子さんは美人だから、そこが決定的にちがうよね」
 美江子さんとはそのような会話をし、沢田愛理さんは複雑そうな表情で言った。
「なんだかすこし、ほんのすこし、金子さんと私の関係に……」
「ええ? どっちが? 美穂と達也? 小夜と誠二? いずれが金子さんと沢田さんに似てるんですかっ」
「似てるなんて言ってないでしょ。先走らないで」
 沢田さんには叱られたので、その先は聞けなかった。
「うん、まあな。この程度だったらいいんじゃないのかな。美穂はわがまま娘なんだから、大人の男である達也が躾をしようというのは正しい姿勢だと思えるよ。これ以上ひどいことをして、暴力にはならないように願いたいもんだね」
「躾っていうか、これってSMテイストストーリィなんでしょ? 著者はそのつもりで書いてるんでしょ? 乾さんはそう読むんですか」
「男が女に手を上げるとなると、そっちに意識が向くんだよ」
 乾さんらしい感想なのかもしれない。シゲさんはこう言った。
「この程度って、俺はこの程度でもいやだ。SMなんてのは理解したくもないけど、ちょっとだけだって、たとえ尻だって、男は女を叩いてはいけないんだよ。俺は達也に意見してやりたいぞ」
「誠二には?」
「プレイっぽいのは……そんな話はしたくない」
 この意見もまたシゲさんらしいもので、リーダー、本橋さんは言った。
「俺はノーマルだよ。こんなの読むとつくづくそう思う。俺はこんな小説って苦手だな。章はどうだったんだ?」
「俺もこういうのって苦手ですよ。乾さんやシゲさんとは俺は見る目がちがうな。男が女に手を上げる云々って話しじゃねえだろ、どうなんだ?」
 著者の意図は俺にはわからない。乾さんに言わせると、小説というものは著者の意図がどうあれ、書いた人間の手を離れたら読者の解釈にゆだねられるのだそうだ。であるから、乾さんやシゲさんのような読み方をするのも、章や本橋さんのような読み方をするのも、美江子さんのように嫌いだと斬り捨てるのも、読者サイドからすればなんでもアリなのだ。
「で、おまえは?」
 章に訊かれ、うふうふっと笑うな、とリーダーに殴られそうになって逃げて、俺は乾さんを上目遣いで見た。達也と隆也、名前が似ている。性格も似てるんだろうか、山寺達也と乾隆也は。
 俺が二十歳の女の子、小悪魔的美少女の美穂だったら……なんて想像をしてしまうから、おまえは変態だと言われるのだが、してしまうものはしてしまう。美穂のルックスは俺好みだから容易に脳裏に浮かび、そうすると達也は、とも想像する。
 長身でがっしり型の達也は本橋さんタイプか。乾さんよりもたくましいのだろうけど、名前が似ているのだから、達也を隆也に変えて想像したくなる。俺は美穂で、恋人は隆也さん。SMチックもこのぐらいならいやではないなぁ、なんて。
 でも、口に出しては言わない。隆也さんにも引かれそうだし、他の三人にはド変態呼ばわりされそうだから、むふふっと笑っておくにとどめた。章にはそれだけで、この変態、という目で見られていた。
 なんにしたって、読んでほしいと頼んだら読んでくれて、真面目に感想を述べてくれたのだから、俺は仲間たちに著者になりかわって礼を言う。小説から頭を切り替えて仕事に励み、レコーディングをすませてスタジオから出て、ひとりになって歩き出した。
 オープンカフェの店先でひと休み。コーヒーを飲んで煙草を吸っていると、隣の席にカップルがすわった。小柄で愛らしい小悪魔みたいな美少女と、がっしりと背の高い、本橋さんを美形にしたような男だった。
「晩メシ前だってのにシュークリームなんか食うのか」
「ここの、おいしいんだよ」
 低くて渋い、俺にはうらやましい男の声。高くて可愛い声の美人の彼女がいるのもうらやましい。年齢差はけっこうありそうで、彼は彼女よりも十歳ほど年上に見える。甘えた声で彼女は言っていた。
「今夜はどこに連れていってくれるの?」
「シュークリーム食ったら、食事なんかいらないだろ。ホテルに直行しようか」
「……もうっ、そればっか。でもね、いつも連れていってくれるような店は高いでしょ。そんなところばかりじゃなくて、庶民的な居酒屋なんかもいいな」
「酒を飲むと酔ってからむだろ」
「からまないよ。美穂はそんなに子供じゃないもん」
「子供だろうが。からんでもいいけどな……うん、いいよ。おまえが駄々をこねたら、黙らせておとなしくさせて、俺の言うことを聞かせる手段はあるんだから」
「やだぁ、ぶったらやだよ」
「いい子にしてたらな」
 美穂? ルックスも小説に出てきた美穂にあてはまる。けれど、美穂なんて女の子はどこにでもいるだろう。ふたりの会話も小説に出てきた達也と美穂のものに似ていて、あんたの名前は? と男に尋ねたくなってくる。
 そんなはずはないじゃないか。美穂と達也は小説の登場人物だ。ここにいるカップルの名がもしや美穂と達也だとしても、偶然の一致だろう。
 それにしてもルックス的にはぴったりで、俺はついついふたりに目を奪われてしまう。会話に聞き耳も立てたくなってくる。ちらちらと視線をやっていたせいで、男に睨まれた。こわっ。でかい男は迫力があって、睨まれただけでぶるってしまいそうだ。
「いえ、あの、ごめんなさい」
 口の中で小声で詫びて、俺は席を立った。リアル世界の美穂ちゃんは俺なんかは意識の端にも留めていない様子で、口の回りにクリームをつけて、可愛い可愛い声で、達也ではないはずの男に甘えた口調で喋り続けていた。


END

自分の別々の小説のキャラたちを出会わせたい、という趣味がありまして、ふたつの小説をドッキングさせたくてうずうずしてました。フォレストシンガーズストーリィ第五部完了記念ってことで。



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