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小説134(Tomorrow)

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灰色の海

フォレストシンガーズストーリィ134

「Tomorrow」

1

「時間のながれ いつでも
 駆けぬけて 行くから
 やさしさだけ わすれずに
 抱きしめて いよう

 大空を 自由に 鳥たちが
 光りの中 飛びかうように
 夜空から こぼれた星屑が
 波の上を すべるだろう

 Tomorrow Tomorrow
 また明日が すばらしい夢と
 すてきな メロディー
 運んできて くれるだろう

 Tomorrow Tomorrow
 明日を信じて
 翼ひろげ 翔んでみよう」

 大きなバッグをぶらさげて、海辺をのろのろと歩いていると、歌が聴こえてきた。
 夏休みだというのに、なんの祟りでこんなところに来なくてはいけなくて、なんの祟りであんな奴らとつきあわなくてはいけないのだろう。あいつらとはじめて会ったのは俺が中学生のころだが、それからも会ってはいる。会うたびにあいつらは俺を子供扱いした。特に乾隆也、俺はあいつが大嫌いだ。
 こんなところに来なくてはならなくなったのは、親父のせいだ。高校生になったのだから、夏休みにはアルバイトがしたいと、親父に言ってみた。すると、親父はこう言った。
「おまえには小遣いに不自由はさせてないだろ。ほしいものでもあるのか」
「バイクがほしい。バイクの免許が取りたい」
「おまえの学校はバイクもアルバイトも禁止だろ」
「バイクは免許を取るだけでもいいんだけど、それだって金がかかるだろ。バイトはみんなやってるよ。パパの知ってる会社だとかでもいいんだから、やらしてよ」
「小遣い以上に金がほしいからアルバイトしたいっていうのは、悪いことではないんだよな。うーん……そうだな、うーん」
 しばらく考えていた親父は、うん、こうしよう、と言った。
 フォレストシンガーズが五人で一週間ほど合宿をする。海だから泳げる。合宿の手伝いをしてこい、なのだそうだ。俺の親父は音楽事務所の社長で、フォレストシンガーズは親父の事務所に所属しているヴォーカルグループ。親父としては、俺にアルバイトを見つけてくれたつもりなのだろうか。
 抵抗したかったのだが、アルバイトなんてはじめてするのだから、まったく知らない店や会社で働くのは不安でもある。フォレストシンガーズの奴らは大嫌いだが、合宿というものに興味はあったので、渋々引き受けてやった。
 砂浜よりも一段高くなっているところに、生垣のようなものがある。うちの庭にも咲いている朝顔の花が植わっている。時刻は昼前なので、朝顔はしなびている。そこから背伸びして覗いてみると、大嫌いな奴らが五人で歌っていた。
 だっせえTシャツにジーンズの半パンやらなんやら、いつだってだっせえおっさんファッションのフォレストシンガーズが、歌の練習をしているらしい。あいつらは暇があると練習をしている。親父に言わせると、シンガーは練習を積んでこそ大きくなれるんだ、なのだそうだが、暇だったら遊べばいいのに。泳げばいいのに。
「彼らはおまえの倍ほどの年だぞ。おまえにできる範囲で敬意を払え。いつだったか、おまえは乾にきびしく叱られたんだろ。その限りでもない奴もいそうな気がするが、彼らは一本筋の通った、ちゃんとした男たちだ。私は少々心配でもあるんだが、彼らと一週間すごしたら、おまえもいくらかは教育してもらえるだろ。親父の教育がなっちゃいないって……ああ、そうだよ。本橋に頼んでおくから、おまえも鍛えてもらえ」
 親父はそう言っていた。鍛えられるなんてやーだよ、ではあるのだが、アルバイトに来たのだから、ちっとはあいつらの命令なんかも聞かなくてはいけないのか。いやだけどしようがない。パイクの免許のためだ。
 歌っている奴らを見ていると、本橋さんがシャツを脱いだ。脱いだシャツをぽいっと生垣に放り投げたものだから、俺と目が合った。
「遅いじゃないか、数馬。初日から遅刻とはいい度胸だな。下りてこい」
 本橋真次郎って男は、黙って立っているだけでも迫力がある。低い声で命令されて睨まれるとびびりそうになるのだが、初日からなめられてはいけないので、俺は反抗した。
「一週間も泊まるんだから、服だって何枚もいるだろ。荷物をバッグに詰めてたら遅くなっちゃったんだよ。俺の親父はあんたたちのなに? あんまりいばんなよ」
「おい、本橋、初日からそれってのは……」
 乾隆也が言い、木村章はにやにやしている。三沢幸生は小さな声で、きゃきゃきゃっとか言っている。本橋さんは俺になにをするつもりなのだろう。やっぱりびびってしまってあとずさりしていると、本庄繁之が本橋さんを止めた。
「話せばわかりますよ。数馬だって高校生になったんでしょ。本橋さん、やめましょうね」
「俺はなんにもしてねえだろ」
「しようとしたんじゃないんですか?」
「あいつがあんな態度だったら、するかもしれない。乾、おまえだっていつも言ってるじゃないか。ガキには体罰は必要なんだろ」
「まあね。言い聞かせてもわからないんだったら、体罰は必要だな。そうなったら止めないけど、口より先に手を出すのはやめようね」
「言い聞かすなんて面倒なんだよ。あんなガキは手荒に教育すればいいんだ。下りてこい、数馬」
「乱暴するんだったら下りていかない。さっきも言っただろ。俺の親父はあんたらの……な、な、なんだよぉ」
「その態度だ。逃げるなよ」
 大股で歩み寄ってきた本橋さんが、生垣を飛び越えて俺の前に立った。上半身裸の本橋さんは特別な長身でもないのだが、俺よりはずっと背が高い。倍の年のおっさんと較べれば、俺の身体つきが子供じみているのは当然なのだろうが、思わず見とれてしまった。
 かっこいい……え? かっこいい? どこが? そりゃあまあ、本橋さんはまあまあマッチョだし、顔を見なかったらかっこいいだろう。しかし、こいつはどうしようもない顔をしていると思っていたのだが、こうしてきびしい表情で俺を見下ろしている顔は、それほどには不細工でもないと思えてきた。
「そっか……服を着てないからだな」
「なにがだ?」
「あんたって服を着てないほうがちょっとはましだよ」
「服なんかどうでもいいだろ。おまえは俺たちの合宿所に働きにきたんじゃないのか。社長にも頼まれたんだ。しっかりこき使って、しっかり鍛えてやってくれってな。俺が鍛えるってのはこうするんだよ。その態度を改めなかったらぶん殴るぞ。わかったのか」
「わかんねえよ」
「生意気なガキが。乾、いいか」
「どうして俺の許可が必要なわけ?」
 フォレストシンガーズのリーダー、本橋真次郎はただ、迫力があっておっかなくてびびりそうになるのだが、乾隆也は「ただ」ではない。「ただ」ではなかったらなんなのかがわからないから、俺はこいつが一番嫌いなのだろうか。
「おまえの親父は俺たちの社長だよ。俺たちはおまえの親父には言葉では言い尽くせないほどの恩を受けている。だからって、親父の威を借る倅だなんて、自分で言ってて恥ずかしくないのか。前にも言っただろ。おまえはあの親父さんがいなかったら、いいや、いなかったらじゃない。いたって同じだ。おまえは生意気なガキだよ。悔しかったらかかってこい」
「やだよ。負けるもん」
 いてぇ、耳がいてぇっ!! と三沢さんが叫び、うるせぇっ!! と木村さんも叫び返し、いい年したおっさんがふたりして、砂浜を取っ組み合ってころがっている。そこで俺は言った。
「あいつら、喧嘩してるじゃん。あっちを止めたら?」
「あいつらはやらせておけばいいんだよ。おまえはどうするんだ?」
 乾さんが言い、本庄さんも言った。
「反抗したい年頃なんだろ。気持ちはわかるけど、乾さんにかかっていったってかないっこないって、おまえだってわかってるんだろ。あやまれ」
「俺は悪くないもん」
「なんでこうやって、本橋さんと乾さんに叱られてるのか、わかってないのか? 俺にだってわかるよ。ここにいるおまえはうちの社長の息子である前に、合宿所にアルバイトに来た坊やなんだ。そんな高校生がその態度だったら、叱られるのが当たり前だろ」
「叱る叱るって、その上から目線がむかつくんだよっ」
「俺たちは全員、おまえよりも背が高いんだから、見下ろすのは当たり前だな。不意打ちでもいいから、そのうちにはかかってこいよ。楽しみにしてるから」
「その余裕の態度もむかつく。乾隆也、俺はあんたが大嫌いだ」
「知ってるけどね」
 本橋さんは怒っていて、本庄さんは困っているように見えるのだが、乾さんはなんなのだろう。微笑んでいるくせに、やたらに……やたらに、怖いというのともちがう。なんと言えばいいのか、俺にはわからない。表現できなかった。
「ガキったって高校生だよな。だけど、おまえは頭の一部ってのか、性格の一部ってのか、そのあたりが小学生並なんだから、小学生からやり直すか」
「どういう意味?」
「一度は言う。二度目はないぞ」
 本庄さんと本橋さんは黙って乾さんと俺を見ていて、木村さんと三沢さんは取っ組み合いをやめて、砂浜で高い声で喋っている。だからさ、耳が痛いでしょ、章ちゃん、との三沢さんの声が聞こえたが、俺には意味がわからないので、俺に向かって喋っている乾さんを見上げた。
「大人を呼び捨てにするな」
「……だって……」
「だってだって、ってのは小学生だな。おまえがずっとそんな態度だったら、小学生、いや、幼児扱いしてやるよ」
「幼稚園だったら仕事はしなくていいんじゃないの?」
「懲りない奴なんだな。ま、今のところはいい。本橋、些細な理由で数馬を殴るなよ。体罰は効果的に用いよう」
「ああ、おまえがそう言うんだったら……」
「乾さん、乾さんらしくもなく、荒っぽいのはやめましょうね」
「大丈夫だよ、シゲ」
 大丈夫だということは、脅しか。だったらいいや、とは思ったのだが、やっぱりちょっと怖かった。地面に置いていた大きな荷物を持ち上げて、俺は言った。
「重いんだけど……大人って力持ちでしょ。持ってよ」
 本橋さんの手が振り上げられ、ぎゅっと目を閉じたのだが、拳骨は飛んでこない。目を開けると、本庄さんが本橋さんの手を押さえていて、乾さんは言った。
「言った矢先からそれだ。殴るな」
「あ、ああ、わかったけど……おまえの意図ってやつが……」
「おいおいわかるよ。数馬、ついてこい、こっちだ」
「くそくそ。なんだってそういばるんだよぉ」
「当たり前だ。ついてこい」
 そんなんだったら帰る、と言ってやりたいのだが、逃げたと思われるのも悔しい。俺は実はびくついていたのだが、表面は平気な顔をして、乾さんについていった。連れていかれた合宿所は、海を見下ろす高台の、小さな家だ。
 ここだってうちの親父が、知り合いに頼んで貸してもらったというのに、息子の俺にはいばってばっかり。前にも乾さんはなんだかんだと言っていたが、そんなのは忘れた。俺はあんたらの恩人の息子なんだから、いばらずに大事にしろよ、と言いたい。
 さっきは近いことを言ったが、そのせいで……わかりたくない。俺はまちがっていない。絶対にまちがってなんかいないはずだ。


 荷物の整理をして、掃除をしろと乾さんに言われて、いやいや掃除していると、丸い目をして俺を見ている男がいた。
「あんた、誰?」
「ああっと、ええっと、あなたこそどなたでしょうか」
「俺は山崎和馬」
「山崎社長の息子さんですか」
「そうだよ。あんたは誰なんだよ」
「酒巻と申します。掃除だったら僕がしますよ」
「そう? じゃあ、やって」
 どこかで聞いたことのある名前だ。掃除機を酒巻に押しつけて、俺は彼を見ていた。
 三沢さんや木村さんよりも背が低いが、俺よりは高い。俺は高校生としてはかなりちびの部類なので、大人にだったら身長で負けるのはしようがない。にしても、こいつは大人だろうか。酒巻、酒巻……誰だっけ?
「僕のことは知りませんか。僕はフォレストシンガーズのみなさんの大学の後輩なんです。三沢さんや木村さんよりも一年下です」
「だったら大人じゃん」
「大人ですよ」
「嘘だぁ。ああ、思い出したよ。DJの酒巻」
「そうです。和馬くんはここにはなにを?」
「あんたはなにをしにきたの?」
「僕は今日一日だけなんですけど、休みなんですよ。フォレストシンガーズのみなさんが合宿すると聞きまして、お土産を持って遊びにきました。和馬くんも遊びにきたんですね」
 勝手に納得しているので、勝手にさせておいた。
「なのに、掃除してたんですか。えらいな。社長の息子さんは働かなくてもいいじゃありませんか。仕事は僕がしますから」
「うん、そうして」
「はい」
 けどさ、そうするとあのうるせえ奴が……と考えていたら、そのうるせえ奴が合宿所に入ってきた。酒巻は乾さんに丁寧に挨拶し、乾さんは言った。
「ああ、来てくれてありがとう。しかし、酒巻、どうしておまえが掃除してるんだ」
「いけないんですか? だって、遊びにきている社長の息子さんを働かせるなんて……社長に叱られません?」
「和馬は遊びにきているのではない。社長に頼まれてアルバイトさせてるんだ。おまえこそ客だろ。和馬にやらせろ」
「でも……そんなのって……」
「いいからやらせろ」
「はい」
 ちぇっ、なんで帰ってくるんだよ。俺がぶつぶつ言っていると、酒巻は掃除機を俺によこし、自分はモップを持ってきた。
「和馬くん、手伝いますからね」
「うん、じゃあさ、台所の掃除して。俺は掃除機担当。酒巻さんはモップ担当だね」
「承知しました。アルバイトなんですか。高校生でしょ? お金持ちの息子さんなのに、働くってえらいですよね」
「酒巻……和馬……」
 なんだよ、と俺は乾さんを睨み返し、酒巻さんはびくっとした様子で乾さんを見上げた。
「おまえたちの言葉遣いはあべこべだ。和馬に敬語を遣えだなんて言っても無駄だから言わないけど、酒巻が和馬に丁寧語で喋る必要はないんだよ」
「でも、僕もお世話になっている山崎社長の息子さんなんですから」
「それだから和馬がつけあがるんだ。おまえは掃除なんかしなくていい。酒巻、来い」
「そうですか。では、和馬くん、あとでね」
「あとでもしなくていい。酒巻、来いと言ってるだろ」
「はい」
 あいつはあんなに誰にでもいばっているのだろうか。俺は高校ではクラブ活動はしていないのだが、運動部の奴らは先輩にはへりくだっているので、運動部がそういうものだとは知っている。しかし、あいつらは合唱部出身のはず。合唱部って運動部なのか?
 どうでもいいので適当に掃除をしていると、本橋さんも帰ってきて、黙ってソファにすわった。こっちはこっちで俺の見張りをするつもりか。俺は早くも疲れて、掃除なんていやでたまらない。ものすごく腹も立ってきたので、言った。
「こんなだったら、ファストフードの店ででもバイトしてるほうがいいよ。そしたら、いばられないしさ」
「俺も学生のころにはファストフードの店でバイトしたよ。店長はいばってたぜ」
「あんたらよりはましだろ。あんたらはなんにもしないのかよ。俺にばっか働かせるのかよ」
「幸生と章は食料品の買出しにいった。シゲは風呂の掃除をしてる。おまえは家の中の掃除だろ。メシの支度は乾がやるって言ってるよ。俺は庭掃除でもしようかな。全部の仕事をおまえにさせようってんじゃないけど、それがすんだら洗濯しろよ」
「やだよ。帰る」
 掃除機を投げ出した俺に、本橋さんは静かに言った。
「もう逃げるのか」
「逃げるんじゃないよ。帰るんだ」
「アルバイトにきたんだから、昼間は働くのが当然じゃないか。遊びにきたつもりだったのか? 甘えるな」
「甘えてねえよ。帰るったら帰るんだ」
「そうか。なら、勝手にしろ」
「勝手にするよ」
「おまえみたいのを負け犬っていうんだぞ。これしきで音を上げて逃げてるようじゃ、今後の人生でなにかあるたびに逃げるんだろうな。おまえも男だろ。困難に……ってほどの困難でもないけど、困難から逃げ出す男なんて、男じゃねえんだよ。おまえは男をやめちまえ」
「やめられるものならやめたいよ」
「ほお、そうなのか?」
 好きにしろ、と呟いて、本橋さんは部屋から出ていった。掃除機を蹴飛ばしていると、本庄さんの声が聞こえた。
「逃げるには早すぎるだろ」
「むかつくんだよっ」
「おまえも短気だな。逃げ出すなんて情けないとは思わないのか?」
「……だって……」
「おまえくらいの年ってさ、心余って言葉足らずって言うんだよな。俺も口はうまくないから、乾さんにあの調子でやられたら、むかつくのはわかるよ」
「本庄さんもむかつく?」
「むかつかないよ。俺だって乾さんに叱られるけど、あれは俺のためを思って言ってくれてるんだ。高校生にはそこまでは読み取れないだろうけど、バイトだろ。金がほしいんだろ。金のためだけでもいい。がんばってみろよ」
「あんたも説教するんだね」
「説教ってほどでもないだろ。本橋さんも……うん、いいよ。がんばれ、数馬」
「やだ」
「困ったな。俺ではこれ以上言えないよ。精神年齢が近いからだって本人も言ってたような気がするんだけど、幸生とはちょっとは親しんでるんだろ。幸生が戻ってくるまで待てよ」
「……三沢さんだって嫌いだけど、うん、待つ」
「手伝ってやるよ」
「乾さんが怒るよ」
「乾さんは怒らない」
 怒ってたじゃん、と言っても、怒ってるんじゃない、と言う。おっさんなんてのは意味のわからないことばかり言うんだな、親父だってそうだもんな、と思って、俺は本庄さんと一緒に掃除をした。


2

 掃除をしていると三沢さんと木村さんが帰ってきた。木村さんは俺には話しかけもしなかったのだが、本庄さんが三沢さんに耳打ちをし、三沢さんはうなずいて言った。
「数馬、こっちおいで。おまえは甘いのも好きだろ。スーパーマーケットでおやつを買ってきてやったよ。アイスコーヒーも買ってきたから、シゲさんはキッチンで章の手伝いをしてやってね」
「了解。幸生、頼んだぞ」
 だいたいは掃除はすんでいたので、俺は三沢さんについて彼の部屋に行った。
「ビールを飲みたいんだけど、陽の高いうちから酒ってのもね。酒は夕食のときの楽しみにしよう。ほい、食えよ」
 ミルク味のカキ氷だった。
「ねえ、さっきさ、木村さんに言ってたでしょ? 耳が痛いってなんなの?」
「いやいや。それはいいんだけどさ。のっけっからリーダーにも乾さんにも叱られっぱなしじゃん。俺まで説教するとおまえの耳が痛いだろうから言わないけど、バイクの免許のためだろ。まあまあ、数馬くん、がんばってみたまえ」
「俺、乾さんも本橋さんも大嫌いだ。大嫌いな奴らにいばられても、我慢して働かないといけないのかよ?」
「労働とはそういうものです」
「あんたらなんか歌ってるだけじゃん。あんたらも労働してるの?」
「世の中の過酷なる労働に従事している方々から見れば、おまえらなんか遊んでるんだろ、って言われても仕方ないんだろうね。高校生にはまだまだ実感は無理だよ。掃除はすんだ? じゃあさ、それを食ったら散歩でもして、健康的なる真夏の太陽のもとで、つらつらと考えてみなさい」
「本橋さんは、洗濯しろって言ってたよ。あんたらのパンツ洗うの? うげ、気色悪い」
 真面目な顔になって、三沢さんは言った。
「洗濯は洗濯機がやってくれるけど、干すときにはパンツに触れるよね。乾燥機はないんだもんな。気持ち悪いのに耐えて働いて、おまえはすこし大きくなるんだよ」
「三沢さんも説教してるじゃん」
 顔は真面目だが、言っていることは真面目ではない。けれど、俺はフォレストシンガーズの中では一番、三沢さんといるときがくつろげる。精神年齢が近いからなのか。
 精神年齢は俺のほうが高いような気もするが、実年齢は三沢さんだっておっさんだ。十歳ほど年上だったら俺にはおっさんに見えるのだから、もっと年上の男はみんなおっさんだ。酒巻さんはおっさんには見えなかったが、年はおっさんなのだろう。
 おっさんに囲まれて一週間か。俺、殺されるかも、とは思うのだが、とりあえず休憩してもいいようなので、外に出ていった。
 ここに到着したときにはフォレストシンガーズが練習していた浜には、他の人間はいなかった。別の砂浜もあるので、そっちへと歩いていってみると、ちらほらと人の姿が見える。俺も仕事をやったら泳げるんだから、洗濯くらいだったらやろう。洗濯機なんて使ったこともないけれど、使い方はどうするんだろう?
 合宿所では俺はお手伝いさんみたいなものなのだから、家ではママがやってる仕事をするのだろう。おばさんにできる仕事なんだから、俺にだってできるさ。
 できるさ、と思うと気が軽くなって、俺は浜に下りていった。大勢の人がいるのでもないのは、今日はウィークディだからか。このあたりは人気のない海岸なのか。人が多すぎるとうっとうしいので、このくらいがちょうどいい。
「こんにちは」
 白い帽子に白いワンピースの女の子が、俺に話しかけてきた。
「ひとり?」
「おまえさ、俺をナンパしてんの?」
「挨拶しただけじゃない。ナンパなんかしないよ」
「俺にナンパしてほしいの? してやんねえよーだ、おまえみたいなブス」
 ブスではなく、小柄な可愛い女の子なのだが、俺はわざとそう言った。女の子がむかつき顔になるのが面白かったからだ。
「なんなのよ、あんた。信じられない」
 むくれた顔になって、女の子は行ってしまった。俺は女は嫌いだ。学校も男子校で、女となんか友達になったこともない。初恋ってのも記憶にない。女となんかどんな話をしたらいいのかもわからないので、行ってしまってもかまわないのだ。
 なのになんとなく、俺は女の子が走っていったほうへと歩き出した。女の子は怒っているらしく、だだっと走っていき、どこかの男に突き当たりそうになって止まった。
「ごめんなさい」
「なにをそんなに急いでるの? 彼氏とデートの約束?」
「ちがいますよ。彼氏なんかいません」
「じゃあ、俺とつきあわない?」
 ナンパなんてものも俺はしたことがないが、こうやってやるのか。いつかしたくなったときのために参考にしよう。女の子は俺と同じくらいの年に見えたが、男は大学生くらいだろうか。背の高い、にやけ面の男だった。
 とばっちりを食ってはいけないので、俺はそのふたりからはなるだけ離れて、会話を聞いていた。男はしつこく女の子を口説き、女の子はいやがっている。逃げようとした女の子の手をつかんで引き戻した男を、女の子が蹴飛ばした。
「いてっ。足を骨折したぞ。どうしてくれるんだよ」
「そんなに強く蹴ってない……」
「ちっちゃいのに力が強いんだな。俺、歩けなくなったよ。おんぶして」
「えーっ、無理」
「きみは力があるじゃないか。できるよ。おんぶしてよ」
「そんな……そんな……」
 男は女の子の背中におぶさり、女の子が潰れた。俺はふたりからは逆方向へと走り出し、俺も誰かにぶつかった。
「数馬、どうかしたか?」
 木村さんだった。
「あっちでさ……見えるだろ」
「うん? 男と女がもつれ合ってるな。あんなところであいつらは、なにをしようってんだ。おまえは見ないほうがいいな。うん、賢明な判断だ」
「だろ。巻き添え食ったら困るもん」
「巻き添えなんか食わねえだろ。ラヴシーンなんだろうが」
「ちがう」
 近くの岩陰に木村さんを引っ張っていき、さっき俺が目撃したシーンを話した。
「男が女をナンパしようとして、しつこくされた女の子が怒って、男を蹴った? そんでああなってんのか。ラヴシーンじゃないだろ」
「そうだよね」
 ふたりして岩から顔を出して覗いてみると、男が女の子を別の岩陰に引きずりこもうとしていた。
「数馬、おまえ、女の子に加勢して助けてやろうって気はないのか」
「いやだ。木村さんが行けば?」
「俺にも……数馬、おまえに引き止めておけって言ったって……かといって俺では……そだ。ケータイだ。俺はケータイを持ってるのをじきに忘れるんだ。数馬、あの野郎が女の子に変なことをしそうになったら、大声出せよ」
「俺には関係ないじゃん」
「ないにしたって……いいから待ってろ」
 全体的に人の少ない海岸なのだが、このあたりには見回しても人間は四人しかいない。他の人間がいたとしても、岩陰でいちゃついているお馬鹿カップルだと思って、見て見ぬふりをするだろう。女の子が声を出さないのは、口を押さえられているのだろうか。
 あんなシーンは俺にはまったく関係ないのだが、覗きだったらやってみたい。しかし、覗きってのはいくらなんでも、であろうから、俺はそっちを窺いながらも、木村さんが誰かに電話しているのを聞いていた。
「女の子が襲われかかってるんですよ。俺にはどうしようもないんですよ。数馬はいるけど、こいつはさらにどうしようもないんです。リーダー、来て下さいよ。ここは……目印としては……」
 ほっとけばいいのに、と言いかけたのだが、放っておいてはいけないのだろうか。本橋さんが来るようだから、どうにかなるのだろう。木村さんは電話を切り、恐る恐るの様子でむこうの岩に歩み寄っていった。俺もあとをついていった。
「木村さん、どうすんの? 邪魔するの?」
「邪魔くらいはしてやるよ。俺が死んだら、社長によろしく言っておいてくれよな」
「死なないでしょ。本橋さんはすぐに来るの?」
「かなり近くにいるみたいだから、すっ飛んできてくれるよ。数馬、ああ、俺は……いやいや、俺だって男だ」
「なにを言ってんだよ。やめたほうがよくない?」
「うるせえっ!!」
 フォレストシンガーズを知っている人々の間では有名な、木村章のヘヴィメタシャウトが炸裂し、女の子を砂浜に押しつけていた男が顔を上げた。
「やめろーっ!! リーダー、ここですよーっ!!」
「なんだ? てめえ?」
 そのとき、ものすごいスピードで走ってきた本橋さんが、俺たちの背中のほうから声を出した。
「章、数馬とふたりがかりでそいつをつかまえろ。いや、おまえたちには女の子をまかせる。俺はこいつをとっつかまえて警察に突き出す」
「警察って……俺、なんにもやってないよ」
「やってたじゃねえか。俺もたった今、この目で見たよ。つべこべ言ってるんだったらかかってこい。俺が相手になってやる。数馬、章、女の子を助け起こしてやれ」
「やだよ」
 俺は言ったのだが、本橋さんは男を持ち上げて肩にかつぎ上げ、木村さんは女の子に近づいていった。
「うぎゃあーっ!! 降ろせっ!!」
「やかましい。騒ぐと気絶させるぞ。警察までかついでいってやろうか。数馬、このあたりに派出所ってのはあるのか?」
「知らないよ、俺は」
「おまえも知らないだろうな。数馬、このうるさい男の口を押さえろ」
「いやだ、噛まれる」
「おまえはなんでもかんでも、いやだとしか言えないのか。うん、こうしよう」
 肩にかつがれた男がぎゃあぎゃあ騒いでいても、誰も近寄ってもこない。誰だって関わりにはなりたくないのだから当たり前だろう。本橋さんは男を砂浜に放り出し、そいつの腹にでっかい足を乗っけて脅迫した。
「黙れ。騒ぐと足に力を込める。内臓が破裂するぞ」
「え……う……俺、なんにもやってないのにっ」
 それでも男は黙り、木村さんが叫んだ。
「リーダー、助けてっ。この子、興奮してるよ。俺に攻撃をしかけてくるんですよっ!!」
「女の子だろ。自力でどうにかしろ」
「噛みついたりひっかいたりするんだもん。俺、反射的に殴り返しそう。リーダー、止めて」
「数馬、章に手を貸してやれ。俺はこいつを動けなくしておかないと、逃げるだろ」
「いやだ」
 そういえばあっちのほうでは、木村さんが騒いでいる声が聞こえていたのだった。なんにしたって、俺はどっちもいやだ。いやだいやだと言っていると、本橋さんはケータイで誰かに電話をかけた。
「説明すると長くなるんで、来てくれ。俺はこれからどうしたらいいのかも、決めかねてるんだよ。来い、いいから来い。ここは……目印は……」
 相手は誰だか知らないが、面白くなりそうなのだろうか。本橋さんは男の腹の上にどっかとすわってしまい、木村さんは女の子をなだめるのに必死になっている様子だ。俺は両方を見物していた。そうしていると、乾さんがやってきた。
「なんなのでしょうか、このシーンは? 俺の推測は当たってますかね、リーダー」
「うん。当たってるんだろ。乾、とにかく先に章を助けてやってくれ」
「章が先だね」
 腹の上にでっかい男にすわられているのだから、若いほうの男は死にそうになっているのだろう。静かになっている。俺は耳を澄ませて、女の子たちのほうの会話を聞いていた。
「落ち着いて、お嬢さん、落ち着いて。あいつがきみになにかしようとしたんだろ? こいつじゃないんでしょ? 章、離れろ」
「はい。乾さん、助かったよ」
「いいからおまえは離れろ。お嬢さん、鎮まって。いい子だね。怖かった? さあ、気を落ち着けて。もう怖くなんかないよ。俺はなんにもしないから。落ち着いて息を整えて。泣いてもいいから暴れるのはやめようね。さあ、いい子だ。いい子だね。なんて名前?」
 泣き声の合間に、リサという小声が聞こえた。
「リサちゃんだね。かわいそうに。あの馬鹿野郎になにかされた?」
「あちこちさわられた……」
「そう」
「それだけだけどね……リサ、穢れたの?」
「穢れたりしないよ。狂犬に噛まれて傷ついたきみの心は、時が癒してくれる。男にはそうしか言えないけど、ごめんね。男のひとりとしてあやまるよ。男ったってそんな奴ばかりじゃないんだから、男なんか大嫌いって言わないで」
「……フォレストシンガーズの乾さん?」
「知ってていただけたとは感動だな。そうですよ」
「抱っこして」
「こう?」
「お姫さま抱っこ」
「こう?」
「うん、リサ、嬉しい」
 馬鹿馬鹿しい、やってらんね、と俺は思って、むこうを見るのはやめにしていたら、木村さんが俺に近寄ってきた。
「俺もあの子に噛まれたんだぞ。乾さんのほうがいい役だな。いでいで」
「いい格好するからだよ。関係ないんだからほっときゃいいじゃん。どうせあんな女、自分もけっこう楽しんでたんじゃないの?」
「楽しいはずないだろ」
「女なんてわかんねえよ。嬉しかったんじゃないのかな」
「乾さんに聞こえるよ」
「聞こえたっていいじゃん」
「……知らないぞ。俺は知らないからな」
 またまたわけのわからないことを言ってやがる。木村章だっておっさんなのだから、俺にはわからなくて当たり前だろう。
 先に帰ろうかと思ったのだが、これからどうなるのか、面白くなくもないかと思って見ていた。女の子を抱えた乾さんが本橋さんと男に歩み寄っていき、しばし本橋さんと乾さんは相談していた。乾さんは女の子を降ろし、ケータイで誰かに電話をしてから、女の子に言った。
「落ち着いた? きみも警察に行ってくれるかな?」
「ええ? やだ」
「いやか。じゃあね、きみは逃げ出したってことにしよう。被害者の女の子は逃げたから、どこの誰なのかは知らない。それでいい?」
「このひと、どうするの?」
「きみが心配してやる必要なんかないんだよ。こいつは法律上の罰を受けるんだ。きみがそれでいいんだったらそうしよう。どこかに泊まってるの? 送っていくよ」
「友達と遊びにきてるの。送ってくれなくてもいいけど……」
「送っていきます。女の子にこんなふるまいをするなんて、俺は男として恥ずかしいんだよ。その前に、ちょっと待ってね」
 女の子には優しい優しい声を出していた乾さんは、俺の前に立って、黙って俺を見下ろした。なんなんだよっ、と俺が言い返すと、右のほっぺたに平手打ちを食わされて、俺は砂浜に尻餅をついた。
「な、ななな、なんなんだよっ!!」
 俺にはなんにも言わず、乾さんは本橋さんに言った。
「あとは頼むよ」
 目の前に星が散っている。ほっぺたがじんじんしびれている。たぶん俺は生まれてはじめて、人に本気で殴られた。だけど、なんで? なんで殴られたんだろ? すわり込んで考えていると、木村さんが言った。
「だから言ったろ。乾さんには聞こえてたんだよ」
「なにを?」
「てめえで考えろ」
「考えたってわかんねえよ」
「見下げ果てた男、いくらガキだって、乾さんから見たらおまえはそんな男なんだよ」
「意味わかんね」
 本橋さんも言った。
「俺は数馬が言ったことってのを聞いてないけど、体罰は効果的に用いるなんて言っておいて……今のが効果的だったのかな。章、数馬と先に帰れ。あとは俺がやっておくよ」
「はい。数馬、立て。行こう」
 警察が来るのだろうか。それってこいつ、かわいそうじゃないの? と俺は本橋さんに腹の上にすわり込まれて、泣きそうな顔をしている男を見ていた。
 帰り道では木村さんもなんにも言ってくれなかった。俺が質問しようとすると、黙れ、俺も殴るぞ、と言われる。木村さんにだったら勝てるかもしれないのだが、負けるかもしれないので、俺のほうからぶん殴ってやるのはやめておいてやった。
「おまえの部屋でよーく考えてみろよ。俺もてめえが……」
「なんなの、木村さん?」
「いいんだよっ。とっとと行っちまえっ!!」
 怒鳴りつけられて、腹が立つのかなんなのかもわからない気分で、合宿所の中に飛び込み、ここはおまえが使えと言われた部屋に入っていった。よーく考えても、殴られた理由なんかわからない。悪いのはあの知らない男で、俺はなんにもしていないのに。
 腹が減ってきたのだが、部屋から出ていきたくないのでベッドにころがって天井を睨んでいると、ノックの音がした。
「入ってくんなよ」
「僕だよ。いいでしょ」
「酒巻さん? あんただったらいいかな」
「木村さんからちょっとだけ事情を聞いたんだけどね……数馬くん、右のほっぺを叩かれたんだ」
 部屋に入ってきた酒巻さんが、ベッドサイドの椅子に腰を下ろした。
「乾さんは右利きだよ。普通に手を上げたら、きみの左のほっぺが真っ赤になるんだよね」
「それがどうしたんだよ」
「人を叩くっていうのに、普通はそんなふうには考えられないでしょ。激情に駆られただとか、かーっと怒ったとかだったら、利き腕のほうが上がるんだよ。なのに乾さんは、利き腕ではないほうの手できみを叩いた」
「だから、それがどうしたんだよ。ますますわかんないことを言うな」
「わからない? ずっと覚えておいて、大人になって思い出したらわかるかもしれないね。痛そうだね。冷やしてあげようか」
「いらねえよ」
 陽が暮れてきていて、部屋が暗くなってきている。酒巻さんは電灯をつけた。
「みんなみんな優しくないんだよな。酒巻さんは優しいの?」
「僕も優しいつもりだけど、乾さんだって優しいよ。思い出すと胸が痛いから言いたくないんだけど、僕も昔、乾さんに右のほっぺたを叩かれたんだ」
「人を叩く奴のどこが優しいんだよ」
「優しいんだよ。きみだって男なんだからね。乾さんの持論を考えると、きみでは若すぎるんだろうから、別の意味なのかもしれないな。悪いことをしたら、子供は叩かれたほうがいい。僕もそう思うよ」
「俺は子供じゃねえよ」
「今日のは半々かもね。悪いことをしてこらしめられた子供と、男がそんな考え方をするなんて、って意味での鉄拳と、両方経験したんだよ。きみはそんな年頃だよね。そして、きみは叩かれても泣かなかったんだろ。えらいよね」
「泣かねえよ」
「うん、えらいよ」
 低い声。優しい声。このひとだけは本当に優しいと思えた。
「あやまるような種類ではないんだろうから、ごめんなさいはしなくてもいいんだろうな。出ておいでよ。三沢さんがごはんを作ってくれてるよ。木村さんもシゲさんも手伝ってる。乾さんと本橋さんもじきに帰ってくるだろ」
「酒巻さんには、俺がなんで殴られたかわかってるの?」
「うん。たぶんね。木村さんにも当然、わかってるよ」
「俺にはわかんねえんだよ」
「そのうちにはわかるから。おなかがすいただろ? ごはん、食べよう」
「いやだ」
「そっか。じゃあ、晩ごはん抜きで反省してなさい。こらしめの続きだね」
「……あんたなぁ……」
「いい目だな。きみは僕よりずっとずっと……こんな話ってすると際限もないし、きみもお説教は大嫌いだろうけど、きみにはそのままでいいところだってあるんだよ。よくないところは乾さんや本橋さんに叱られて、すこしは叩いてももらって、治していくといいんだよ。僕もそうやって……僕にもそのままでいいところってあったんだろうか。僕も考えよう」
「なにを言ってるんだか、ほんとに全然わかんねえよ」
「いいんだよ。おなかがすいて我慢できなくなったら出ておいで」
 最後には酒巻さんもいばっていた。やっぱりあいつもおっさんだ。


3

 空腹感がつのる。けれど、あいつらの前に出ていきたくない。夜も更けてきてから、こっそり抜け出してコンビニにでも行こうと、俺は外に出た。
フォレストシンガーズの合宿所は親父の知り合いの別荘なのだが、このあたりは別荘街なのか。ぽつぽつと大きな家や小さな家が建っている。コンビニもあったのでなにか買ってこようと、俺は歩いていった。
 コンビニには俺以外にも客がいた。俺と同じくらいの年に見える男だ。身体つきも俺に似ていて小さいので、中学生かもしれない。そいつは気にせずに弁当を買って、海辺で食おうと浜に下りていった。すると、うしろから足音が聞こえた。コンビニいた男がついてきていたのだった。
「なんだよ、おまえ」
「僕、穂高っていうんだ」
「聞いてねえだろ、名前なんか」
「僕もいっしょに食べていい?」
「いいけどさ」
 よくよく見ると女の子みたいな顔をしている。声もどことなく女っぽい。ちょっと気持ち悪かったのだが、ひとりでメシを食ってもつまらないので許してやった。
「穂高か。中学生?」
「中学は卒業して、フリーター」
「中卒フリーターって珍しいよな。俺は高校生だよ」
「ふーん」
 年は同じであるらしい。ぽつりぽつりと話をした。
「数馬はバイト?」
「そうなんだ。いばったおっさんたちにこき使われてるんだよ。おまえは?」
「僕も近くの店でバイトしてるんだ」
 なんのバイトかは言わないが、言いたくないんだったらいい。だが、俺は言いたかった。
「おまえさ、フォレストシンガーズって知ってる?」
「知らない」
「あいつらには男のファンなんかいないんだろ。女のファンだってたくさんはいないんだよ。あいつらは売れてないんだよ。そいつらって歌手なんだ」
「シンガーズっていうんだったらそうだよね」
「おっさん五人のヴォーカルグループで、うちの親父が社長やってる音楽プロダクションにいるんだ。俺はあいつらの社長の息子なんだよ。普通は俺だって尊敬しなくちゃいけないだろ?」
「そおお?」
「そうなんだよ。なのにさ……えっらそうにばっかりしやがって」
 昼からずっとこんなのばっかりで、と話す俺を、穂高はつまらなそうにも、面白がっているようにも見える目で見ていた。
「知らない女の子がどうなっていようと、ほっとくだろ? おまえだってそうするだろ」
「まあね」
「本橋って奴は喧嘩が好きみたいで、乾って奴は説教が好きなんだ。説教だってやだけど、殴られるなんて耐えられないよ」
「殴られたの? なんで?」
「なんでなんだかわかんねえんだよ。おっさんたちにはわかってるらしいけど、俺は殴られるほどのことは言ったりしたりしてないんだ。なのに……」
 殴られたのを思い出すと、ほっぺたが痛くなってきた。なんだって俺が殴られなくちゃいけないんだよっ、と思うと、改めて腹も立ってきた。フォレストシンガーズの奴らは、などなどと詳しく話す俺を、自分はあまりなにも言わずに見ていた穂高が言った。
「興味はあるな。けっこうかっこよくない?」
「誰が? あいつらは最悪にださいんだよ」
「だけど、興味あるよ。連れていってくれない?」
「いやだ。そんなのよりもどこかに遊びにいこう」
「遊びにいくったってね、さっきのコンビニからだいぶ歩いたら、スナックとかって店はあったよ。カラオケもあるみたいだけど、遊びにきてるのっておっさんとかおばさんばっかじゃないのかな」
「スナックってのはスナック菓子か」
「お酒を飲む店だろ。行く?」
 行ってみても、俺たちはどう見ても未成年だろうから、追い出されるのではないだろうか。カラオケとは歌なのだから、歌といえばフォレストシンガーズ。そんなのもいやだが、カラオケだったら店に入れてもらえるだろうから、そっちに行くことにした。
「こっちだよ」
「おまえ、よく知ってるんだな」
「近くでバイトしてるからね」
 黙って歩いていくと、だっさい看板が見えた。
「ここかぁ。入りたくないな」
「だから言ってんじゃん」
「他にはないのか?」
「ないんじゃないのかな。反対のほうに行くと……そうだ、ディスコがあったよ」
「ディスコってなに?」
「古っぽいクラブってとこかな」
「踊るの?」
「そうなんじゃないかな。僕も入ったことはないけど、そっちだったら若い奴もいるかもね」
「もっと早く言えよ」
「忘れてたよ」
 腕時計を見ると十二時を過ぎている。しかし、俺は帰りたくなかった。穂高はどこに泊まっているのか知らないが、住み込みアルバイトなのだろうか。ディスコなんてところにも行きたくもなかったのだが、帰るよりはいいだろうから行こう。
 もと来た道を引き返し、穂高の案内で歩いていった。コンビニを挟んで逆方向なのだから、当然、合宿所の近くを通る。通ったとしても、誰も俺がいないのには気づかずに寝ているだろうから、平気だろうと思っていた。が、いたのだった。
「未成年がこんな時間に、外をほっつき歩いてるとは……」
 行く手に立って俺たちを睨んでいる男の顔が、薄暗い外灯のあかりに浮かび上がる。顔なんか見えなくても乾さんだ。俺が横を向いて舌打ちすると、乾さんは言った。
「きみは? 数馬の友達?」
「あんたは誰? 数馬が言ってた、フォレストシンガーズのひと?」
「乾って言うんだよ。見ればきみも数馬と同じくらいの年だね。おうちの方には断ってきたのか」
「おうちには誰もいないもん。数馬はあなたを悪く言ってたけど、かっこいいじゃん」
「ありがとう。それはいいんだけど、未成年が保護者に無断で家を抜け出していいはずがないだろ。きみの名前は?」
「穂高」
「穂高くん、きみの家は?」
「さあ」
 家があるのか? 穂高は住み込みアルバイトじゃないのか? 俺は不思議だったのだが、乾さんは言った。
「近くの別荘に滞在してるのか。ご両親は?」
「両親もいないよ。僕はみなしごなの」
「……どうやって食ってる?」
「どうだっていいでしょ。だからね、僕の心配するひとなんかいないの。乾さんは僕の心配してくれるの?」
「当たり前だろ。帰る場所はあるんだよね。送っていくよ」
「……ふーん」
 かなり変な奴だ。こいつはさっきから嘘ばっかり言っているのではないかと思えてきた。俺にそう思えてきたのだから、乾さんだって察したのだろう。乾さんは俺に向かって言った。
「数馬、おまえは帰ってろ」
「やだよ」
「俺たちの合宿所に帰らなくてどうするんだ」
「ヒッチハイクでもして、東京に帰ろうかな。俺はもうあんたらの顔も見たくねえんだよ。逃げるんじゃないからな。帰るんだ」
「ヒッチハイクなんかして悪い奴に当たったら、金も持ち物も奪われて道端に放り出されるぞ。男の子だって言ったって……」
「そうだよね」
 横から穂高も言った。
「男ったって、数馬ってわりかし可愛い顔してるし、変な趣味の奴につかまったらレイプされちゃうよ」
「穂高くん、よけいなことを言わなくていいんだよ」
「僕は経験あるんだもん」
 げっ、嘘だろ、と俺は思い、まじまじと穂高の顔を見た。乾さんも黙って穂高を見返し、一瞬の後には穂高がぶっと吹いた。
「嘘だよ」
「嘘でよかったよ。それが本当だったら俺には対処のしようもない。ともかく数馬は帰ってろ。穂高くんは送っていくから」
「いやだって言ってんだろっ!!」
 本当は帰りたい。どこでもいいから帰って眠りたい。腹がいっぱいになったら眠くなってきていたから、ディスコにも行きたくなかった。けれども、どうしても素直にはいとは言いたくなくて、俺は走り出した。
「穂高くん、待ってろよ」
 そう言い残した乾さんが追いかけてくる。乾さんは足が速くて、俺はじきにつかまってしまい、いつかのように肩にかつぎ上げられた。
「ぎゃーっ!!」
「騒ぐな。穂高くん、きみもついておいで」
 ここは人家のある場所だった。全部の別荘に人はいないのだろうが、誰かが出てきて見られるのは恥ずかしい。しようがないので黙ると、乾さんは俺をかついだままで歩き出した。穂高もついてきて、合宿所に入っていくと、乾さんは俺をソファに放り投げ、説教をはじめた。
「だからな、何度も言っただろ。数馬、おまえはなんのためにここに来たんだ。そうやって反抗ばかりするためか」
「うるせえんだよ。帰るって言ってんだろ」
「帰るんだったら朝になってからにしろ」
「やだよっ。あんたらなんかあんたらなんか……あんたらは俺の親父の会社の……俺はあんたらにいばられる筋合いはないんだよっ!! あんたらこそ俺を尊敬しろよっ!!」
「数馬……」
「うるせえんだっ!!」
 殴られるかと思ったのだが、乾さんはしつこくしつこく説教だけをしていた。俺はろくに聞かずにそっぽを向いていると、穂高が言った。
「ねえ、僕はほんとはね、近くの家に住んでるんだ。中学生なんだよ。中学生がこんな時間に外をほっつき歩いてた不良なんだよ」
「ふむ。で?」
「僕にはしないの? お説教」
「されたいのか」
 うんっ、と言って、穂高はいきなり乾さんに抱きついた。
「穂高くん……あのね……これはいったい……」
 離れてくれないかな、と言っている乾さんを無視して、穂高は言った。
「みなしごじゃなくてパパもママもいるんだよ。別荘じゃなくて、この近くに普通に家があるの。だけど、僕なんかほったらかしにされてて、パパとママは離婚するとか言ってもめてんの。穂高をどっちが連れていくかでももめてるんだけど、どっちも押しつけ合ってるんだよ。穂高なんかいらない、あんたが連れてけって、パパもママも言ってんの。僕なんかがなにをしても、叱ったりしないよ。だからさ、僕も……」
「きみの言ってることってどこまで本当なんだ?」
「さあ。どうだろ。ねえねえ……乾さん……」
「いや、あのね……幸生、なんとかしろっ!!」
 たぶん、三沢さんはドアの外にいたのだろう。乾さんに呼ばれて部屋に入ってきた三沢さんは言った。
「駄目。穂高くん。乾さんは僕ちゃんのものだから」
「ええ? そんな関係?」
「そうよ。ね、乾さん?」
「う、なんと答えるべきだろうか」
「正直に答えたらいいのよ。駄目よ、穂高くん、離れなさい」
「……穂高くん、離れなさい」
 乾さんも言ったが、穂高はぎゅっと抱きついて離れない。三沢さんは言った。
「乾さん、諦めたほうがいいんじゃありません? そのまんま抱き上げて乾さんのベッドに連れていく? 似合わなくもないじゃん」
「幸生、裏切るのか」
「俺はジョークでやってるんだけど、穂高くんはジョークじゃなさそうだし。説教してほしいんだったらみっちりしてやれば? 乾さんは大得意でしょうに」
「説教だったらいいけど、このポーズで?」
「うんうん、健闘を祈ります。数馬、行こうぜ」
 穂高は乾さんに抱きついて、幸せそうな顔をしている。こいつはゲイってやつなのか? そういう人間がいるとは知っていたが、マジで見るのははじめてだ。俺のかわりに乾さんに説教されてくれるのだったら、感謝しなくてはいけないのだろうか。


 そのせいで気分がそらされたのか。自分の部屋に入って寝て起きたら、苛々はかなり減っていた。俺はなんのためにここに来たのか? ベッドにすわって考える。
 バイクの免許を取るために、金を稼ぐために来た。俺のアルバイト料は親父が払うのか? だったらあいつらにいばられるのはまちがってるだろ? とも思うのだが、おっさんたちは学校の教師みたいなものなのか。
 学校にだって親父が授業料を払い、そのおかげで教師は給料をもらっている。なのに教師もいばっている。教師がいばってるからっていちいち学校を中退していては、学校には行けない。どこの学校の教師もいばっているはずだ。
 だったら同じじゃん。あいつらはうるさい教師だと思えばいいんだ。納得しにくかったけれど無理に納得しておいて、部屋から出ていったら三沢さんがいた。
「穂高くんには乾さんが説教して、穂高くんはそれで嬉しくなって、帰ったみたいだよ。酒巻も昨夜は泊まったけど早くに帰っていった。おまえはどう? 朝になったから帰る?」
「帰ったらバイト料はどうなるの?」
「一日分は払うけど、足りないだろ」
「足りないよ」
「さあ、どうする?」
 三沢さんは頭ごなしに説教するというよりは、こうやって俺の反応を窺って面白がっている。このおっさんにもむかつく点はあるのだが、なにを言ってもしてもこたえない奴であるらしいので、俺も気が抜けて怒る気にならないのかもしれない。
「性的マイノリティなのかな。そのあたりってノーマル至極な俺にはわからないんだけど、そうなんだとしたら、おまえは穂高を気持ち悪いと思う?」
「ノーマルって……ま、いいけどさ、別に気持ち悪くはないよ」
「うん、その考えは正しい。おまえはえらいよ」
 ここに来てはじめて褒められた気がする。正しいんだかえらいんだかは知らないが、褒められるのは気持ち悪くはないし、穂高だって気持ち悪くはない。変な奴ではあるけれど、もっともっと変な奴が目の前にいて、俺も慣れてきたのだろうか。
「みんなはランニングに行ったよ。おまえは昨夜は遅かったから、すこしはゆっくり寝させておいてやれって乾さんが言って、俺は残っておまえを待ってたんだ。おまえも走る?」
「いやだ」
「じゃあ、ランニングがわりにやろうか」
「なにをするの?」
「これだよ」
 運んできたものはバケツと雑巾。三沢さんは俺にも雑巾を渡して言った。
「雑巾がけもいい運動だよ」
「三沢さんもやるの?」
「やりますよ。やろうぜ、数馬」
「うーん……やだけど……やるよ」
「おー、いい傾向だね。素直になったじゃん」
「バイクのためだよ」
 働くなんて大嫌いだし、ランニングも大嫌いだけど、身体を動かすのは気持ちがいいとは思う。素直になったなどと言われたくもないけれど、ま、いっか、ってことにしておこう。
 ふたりして雑巾がけをしていても、三沢さんはぺちゃくちゃ喋っている。うるせえな、と言い返しても彼は怒らない。そのうちには俺も三沢さんに学校の話しなどをしていた。別荘中の床に雑巾がけをして走り回ると、腹ペコになって俺はすわり込んだ。
「腹減った」
「若者は腹を減らしてメシ食って寝て、そうやって大きくなるのもいいんだよね。つまらないことは考えず、働け働け、数馬」
「あんたもそうやって説教するんだよな」
「説教っちゃ説教だね。俺の説教なんてのは小鳥のさえずりだけど、まあまあ、いいからさ。みんなが帰ってくるまでに、朝メシ作ろうか」
「まだ働くの?」
「働かないとメシが食えないんだよ」
 今度はキッチンで働いていると、男たちの声が聞こえてきた。木村さんと本庄さんと本橋さんの声がするのだが、乾さんの声が聞こえない。そのかわりみたいに、子供っぽい声が聞こえてきた。穂高だ。
「走るっていい気持ちだね。僕も明日からも朝のランニングに参加していいでしょ?」
「いいけど、乾はいやなのか?」
 本橋さんが言い、いないのかと思っていた乾さんの返事も聞こえた。
「ランニングに参加するなとは言えないけど、走るときはひとりで走れよ、穂高。俺にからみつくな。走れないだろ」
「走るって楽しいけど、疲れるんだもん。乾さんにくついてると疲れが少ないんだ。おなか減ったよぉ。僕も朝ごはん、一緒に食べていいでしょ?」
「あつかましい奴だな」
 木村さんが言い、本庄さんも言った。
「いいじゃないか。幸生と数馬がメシを作ってるんだろ。俺も腹と背中の皮がくっつきそうだ。穂高くんも食っていけよ」
「うん、ありがとう、シゲさんって優しいね」
「……おっと、頼む。くっつかないで。俺には妻が……」
「妻なんて関係ないでしょ。乾さんもいいけど、シゲさんもいいな。どっちにしようかな」
「勝手にやっててくれ」
 うんざりした声で本橋さんが言い、三沢さんは小声で俺に言った。
「シゲさんとリーダーは穂高くんみたいのは駄目なんだけど、そっちがまちがってるんだよね。章も嫌うけど、乾さんは闇雲に排除しようって気はないんだよ。俺も乾さんと思想は似てる。とはいえ、俺にそのターゲットを向けないでほしいってのが本音だな」
「それって勝手じゃん」
「前にも言ったろ。大人ってのは身勝手な生き物なんだよ。そしたらおまえはいいのか。穂高に迫られたら嬉しいのか」
「やだっ!!」
「だろ。ノーマルな男の思想はそこ止まりだよ」
 ノーマルって誰が? と言いたかったのだが、腹が減って減って、三沢さんに言い返す元気がなくなっていた。三沢さんはキッチンからむこうの部屋に声をかけた。
「メシができましたよーっ。章、あれ、数馬に持ってきてやれよ。先輩たちはおすわり下さい。穂高もすわって。きみは乾さんのとなりにすわろうね。はいはい、そこでいいよ」
 持ってこいって? 俺になにかくれるのかな? 俺は期待しつつ、三沢さんのあとから朝メシを運んでいった。穂高は乾さんにくっついていて、乾さんは複雑そうな顔をしていた。
穂高も含めて五人の男が、おはよー、おはよー、数馬、と言ってくれる。俺も自然におはようと言い返す。そうして思い出す。俺がここに来た日に、フォレストシンガーズがみんなで歌っていたのは「tommorow」だった。明日にはいいこともあるさ、って歌だっただろうか。
 木村さんが持ってきたのは大きな籠。なんだろ、なんだろ、とちょっとだけわくわくしていると、乾さんが籠を持ち上げてにっこりした。
「数馬、今日の仕事だ」
「仕事?」
「一日分溜まってるから、しっかり働けよ」
「それって……」
 本庄さんが籠の蓋を開け、乾さんが言った。
「素敵なプレゼントだろ」
 大きな籠に入っているのは、五人分の洗濯もの。男のパンツがいっぱい。こんなプレゼントはいらない。けれど、俺はバイトをしなくてはいけないのだから、洗濯もしなくてはいけないのだろう。逃げたいけれど逃げられない。
 フォレストシンガーズは五人そろってにやにやして、穂高までがきゃはきゃはっと笑っている。やっぱりやっぱり、俺はあんたらが全員、大嫌いだーっ!!

END




 
  
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