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FS俳句・短歌・超ショートストーリィ2017/11

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2017/11 超ショートストーリィ

 びゅんっとばかりに音を立てて、夕暮れの海辺に風が吹いた。うっ、さむっ!! と肩をすぼめた英彦のかたわらで、隆也が呟く。

「こがらしや海に夕陽を吹き落とす」夏目漱石

 思わず笑い出した英彦を、隆也は横目でちらっと見た。

「いやぁ、乾さん、変わりませんね。いつだったかな。同じことがあったでしょ?」
「同じこと? ヒデとこうして海を見ていて?」
「乾さんとふたりきりで海を眺めたことって、学生時代から何度もありましたよね。ちょっと気持ち悪いけど……いやいや、気持ち悪くないんですけど、そして、乾さんが短歌を口にした」
「今のは俳句だ」
「ああ、そうでした」

 ひとつずつは覚えていないが、同じシチュエーションで隆也が短歌なり俳句なりを呟いた、という事実は英彦の心に残っている。同じ大学の先輩と後輩として、並んで海を見ていたころからだと約十五年。こういう男ってもてるのかな、もてるんだったら俺も短歌とか覚えようかな、と考えていた十代の終わりだった。

 もててはいるみたいだけど、乾さんがもてるのは短歌や俳句のせいでもなさそうだし、人にはガラってものがあるもんな。俺が短歌や俳句なんて、女には引かれるよな。俺だってけっこうもてるからいいんだよ。海に沈む夕陽に目をやる、ふたりともに三十代半ばになっていた。

END



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