ショートストーリィ(フォレストシンガーズ)

FSソングライティング物語「Anti-war song」

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フォレストシンガーズ

ソングライティングシリーズ

「Anti-war song」


 人間は戦争を起こす。
 そして人間は、戦争に反対する歌をつくって歌う

 ひとりの人間は戦争なんて嫌いなはずなのに
 大勢の人間は戦争をしたがる
 戦争を嫌うのも、戦争が好きなのも、同じ人間

 数の波に押し流されるのも人間なのだから
 僕らは歌をつくって歌おう
 
 戦争はいやだ
 戦争はいやだ
 シンブルにそう歌おう。

「乾さん……ずるいよ」
「ずるい?」
「これをやられると反対しにくいじゃないですか」

 口をとがらせているのは章だ。
 こんな曲ができた、乾さん、詞を書いて下さい、と章に譜面を渡された。章にしては静かで穏やかな曲だ。これだったら大人の男女の恋物語かな、と考えつつ、その夜は家に帰って寝た。

「好きだったのよ、今でも好き。ずーっと好き」
「……俺はなんて言ったらいいのか……」
「言ってくれなくてもいいから、乾さんは歌って」
「そうだね」

 その夜の夢に見知らぬ女性が出てきて、日本語ではない言葉で俺に話してくれた。日本語ではなくても理解できた。
 地面に横たわるひとりの男の首を抱いて、彼女は泣いていた。戦で死んだ彼女の愛する男。私は彼を愛していた。彼は死んでしまったけど、永遠に愛し続けていくと。

 そんなとき俺には、彼女にかける言葉は見つけられない。だから、歌詞にした、彼女だけではなく、戦争に関わるすべての人間に向けての詩を書いた。俺は平和な日本に生きているけれど、地球上に戦争がある限り、俺だって無縁ではないのだから。

「このままじゃ歌にはならないから、これは大意だよ。これから練っていくんだ」
「わかりますけど、俺はそんなつもりでこの曲を書いたんじゃないんだよな」
「幸生にラヴソングを書いてもらうか」
「乾さんは変える気はないんですか」
「ないよ」

 たとえばカレーライスが食べたくて、行きつけの店へと出かけていく。ところが、その店は休みだった。連れが、だったらラーメンにしようよ、と言ったとしても、俺は別のカレーショップを探す。気持ちが完全にカレー食いたいモードになっているからだ。

 同じような感覚で、この曲は俺の中ではそういうモードになってしまった。作曲者の章が不満でも俺の中では切り替わらない。

「これもラヴソングなんだよ」
「ラヴソングはいいんだけど、俺はこういうメッセージソングは嫌いなんだよな」
「俺たちらしくないといえばいえるけど、夢のお告げなんだよ」
「……またそういう意味不明なことを……」

 ずるいと章が言ったのは、反戦歌などという大義名分をふりかざされると反対できない、との意味だったのだろう。その気持ちもわかる。

 反戦歌なんてフォレストシンガーズらしくはないけれど、歌うということは俺たちらしいじゃないか。地球や人類のことを考えても、なにひとつできないちっぽけなシンガーたち。この世の中になくても誰も困らない職業のひとつ、シンガー。

 そんな俺たちにできることは、歌を作って歌うことだけ。
 だから、歌おうよ。小さな小さな声で、戦争反対、って歌おうよ。俺たちにできることはそれだけなのだから。

END






 

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