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FS俳句・短歌・超ショートストーリィ2017/10

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フォレストシンガーズ

超ショートストーリィ


 夢の話なんて下らねぇ、と鼻で嗤う奴もいるが、熱心に聞いてくれている人もいるので、美江子としてはちょっと脚色したくなってきた。

「昨日の夢に猫が出てきたの」
「へぇぇ、美江子さんも猫好きになったんですね」
「幸生くんの計略のおかげでね」
「計略だなんて人聞きの悪い、乾さんじゃあるまいし」

 猫となると目を輝かせる幸生と、幸生が話に引っ張り込んだ隆也のふたりに向かって、美江子は話していた。

 とても若かったころ、美江子と幸生が公園で猫を拾ったことがある。仔猫は幸生の両親と妹たちの家に連れていかれ、大人にもなり切れないままトラックに撥ねられて死んでしまったのだが、幸生の実家に行く前に美江子ともすこし触れ合った。

 ぎぇ、猫なんか嫌い、気持ち悪い、怖い、としか思えなかった美江子の気持ちは、あのときの仔猫のおかげで変わった。幸生はそうとたくらんで、美江子と猫を触れ合わせたのだろう。

「ちっちゃい猫が何匹もいて、この子にしようかあの子にしようかって、悩んでるの。てのひらに一匹ずつのせてたんだ。ふわふわもふもふの感覚までがこの手に残ってるみたいだよ」
「美江子さんも猫と暮らしたい?」
「いつか、そうするのもいいなぁ」

 シンガーズのマネージャー稼業は生活が不規則で、ペットと暮らせる境遇ではないのが残念だが、老後あたりにはそうできたらいいとも思うようになった。

「でね」

 ここから脚色。

「この子にしようって決めた仔猫の顔が……」
「顔が?」
「幸生くんにそっくりだったんだっ」
「俺そっくりの猫……」

 きゃああ、実は美江子さんって猫じゃなくて、俺と暮らしたいんでしょっ?! 自分に都合のいい解釈をする幸生の頭を小突く隆也に、美江子は尋ねてみた。

「幸生くんも得意のやつ、やってるんだから、乾くんもやって」
「このシチュエーションにぴったりの俳句か短歌でしょ。乾さん、やってやって」

 しばし閉じていた目を開いて、隆也は口にした。

「掌にのせて子猫の品定め」 富安風生

mie/END



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うちの小梅です。










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