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FS俳句・短歌・超ショートストーリィ2017/7

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2017/7 フォレストシンガーズ 超ショートストーリィ


 手の中には小さな和菓子がひとつ。汗をかくんだから糖分を補給しなくちゃね、と祖母が言って持たせたものだ。

「あんたは和菓子屋の息子なんだから、甘いものは嫌いだなんて親不孝なことは許されないんだよ」
「汗をかいたら必要なのは、糖分じゃなくて塩分だろ」
「これも持っていけばいいよ」

 もうひとつ、渡されたスポーツドリンクの成分を見れば、ビタミンや塩分の他に糖分も入っている。おばあちゃんの知恵袋とかいうのはまちがってはいないのだろうし、和菓子ひとつくらいは邪魔にもならないので持ってきた。

 金沢の中学一年生、乾隆也。
 夏休みの自由研究の題材を探すために、郊外の森にやってきた。

 自由研究だったら理系じゃなくて、得意な文系のほうがいいな。
 適当な岩に腰かけて、祖母が作ってくれたおにぎりを食べる。和菓子はデザートであろうが、甘いものを最後にすると口の中に甘ったるい味が残りそうで、先に食べてしまうことにした。

「しずけさや岩にしみいる蝉の声」

 そうそう、こっちの研究のほうがいい。

 文字通りというか、俳句通りというか、松尾芭蕉のこの句がぴったりすぎるシチュエーションだ。隆也以外の人間はおそらく誰もいない小さな森の中、静けさに浸る隆也の頭上から蝉の声が降りそそぐ。

「あんたのお父さんは変人だから、このお菓子はね……」

 でこぼこした小豆で覆った水ようかん、見た目が岩に似ているからと、和菓子職人の父がこの菓子に「蝉しぐれ」と命名した。蝉しぐれに包まれて「蝉しぐれ」を食べるのは、中学生には乙すぎて気恥ずかしいような……。

TAKA/12/END



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NoTitle

個人的には。
和菓子で一番好きなのは水ようかんですね。
あの程よい甘さ。。。
夏を感じられる甘さ。
全てが和菓子の夏を象徴するような気がします。

LandMさんへ

いつもコメントありがとうございます。

私は粒あんでないと絶対にいや。こしあんは食べたくない派なのもありまして、和菓子では金つばとあまり甘くない大福が好きです。
夏場はかき氷。
ミルク金時が好きです。

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