forestsingers

FS俳句・短歌・超ショートストーリィ2017/6

 ←ガラスの靴70 →FS雨の物語「時雨茶屋」
FS俳句・短歌・超ショートストーリィ2017/6


「人はいさ心も知らずふるさとは 花ぞ昔の香に匂ひける」紀貫之

 古典だったか現国だったかの教師の声が聞こえる気がする。これって中学校で習うのだったか? 小学校かな? ま、どっちでもいいや。

「こういう場合の「花」は桜ですね。最初は日本では「花」といえば梅だったのですが、いつのころからか桜になったのです。ですから、短歌や俳句では「花」は桜です。覚えておいて下さいね」

 覚えてはいるが、では、いつから「花」が桜になったのか。なぜ「梅」が「桜」に変わったのかは教わっていなかったのか。大学生になった國友の記憶にはその部分はなかった。

「奈良時代までは梅だったらしいよ」
「平安時代から桜になったんですか。なにかきっかけがあったんですか」
「日本文芸不毛の時代ってのがあって、その後で、中国から渡ってきた「梅」ではなく、日本古来の花である「桜」が日本を代表する「花」になったんだね」

 菅原道真公が……と國友に講義してくれたのは、日本文芸に造詣の深い先輩だった。

 だからね、乾さん、和歌なんてものには門外漢の僕だけど、日本では「花」といえば「桜」なのは知ってるんです。でもでも、紀貫之さんのこの「花」を「ベニバナ」だとしてもいいでしょう?

 花そのものがふるさとの香りを連れてくる。
 大学に入学するために上京してきた、國友の故郷は山形県。山形県の県花は紅花だ。

「ベニバナって別名を末摘花っていうんだよな」
「そうなんですか? 末摘花って源氏物語に出てくる、かわいそうな容貌の女性でしょ?」
「そうだよ」

 なんでベニバナが末摘花? 紅花に失礼なような……と感じたのも思い出す。

「末摘花の鼻の先が赤いからだとか、紅花は茎の末のほうから摘み取るからとか」
「末?」
「先のほうだな」
「へぇぇ。なるほど」

 思いがけなく出会った一面の紅花を見て、自然にふるさとを思い出す。自然に有名なこの歌も思い出す。国語教師の教えを思い出していたはずが、いつしかその声が乾隆也に変わっていた。

kunitomo/20/END

KIMG0206shiba.jpg
紅花ではなく、芝桜ですが。










スポンサーサイト


  • 【ガラスの靴70】へ
  • 【FS雨の物語「時雨茶屋」】へ
  • Tag List 
  •  * |

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【ガラスの靴70】へ
  • 【FS雨の物語「時雨茶屋」】へ