茜いろの森

□ 番外編 □

FS超ショートストーリィ・四季のうた・真次郎「春の灯」

フォレストシンガーズ

四季のうた

「春の灯」


 おいら岬の灯台もりは……なんて歌もあったっけ。
 妻とふたりで、えーっと……なんだっけ?

「灯台を見ているから浮かぶわけだが、この歌ってなんだった?」

 沖行く船の
 無事を祈って 灯をかざす
          灯をかざす

 ひとりごとみたいに歌ってみると、乾隆也が反応した。

「喜びも悲しみも幾年月。うちの母が生まれたころくらいかな。ヒットした映画の主題歌だよ」
「灯台もりの歌だよな?」
「そうそう。今どきってハイテクが管理してるんだろうから、灯台もりなんかいないんだろうな」

 二十代も半ばだというのに、幸生と章は犬っころみたいに海岸ではしゃいでいる。おいおい、危ないぞ、とか言いながらも繁之も参加していて、真次郎と隆也は灯台を見上げていた。

「ハイテクって言い方も古いだろ」
「ハイテクノロジーだろ。なんて言いかえるんだ?」
「さあ」

 仕事でやってきた春の終わりの海辺。自由時間に五人で散歩していても、真次郎の頭の中には、こんなに売れなくてこの先どうなるんだろ、と暗い想いが浮かぶ。

「でも、灯台がさ……」
「照らしてくれるんだよな、俺たちの前途を」

 その言い方も古いだろ、と隆也を蹴飛ばしてから、ふたりで歌った。

 星を数えて 波の音きいて
 共に過ごした 幾歳月の
 よろこび 悲しみ 目に浮かぶ
            目に浮かぶ

 幾年月もの時間が流れたあとでこの場所に来たら、俺たちもこんなふうに思うのだろうか。そのときには成功しているのだろうか……そうだといいなぁ、と隆也と真次郎はふたりして、もう一度灯台を見上げた。

SHIN/26/END














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Date:2017/05/31
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Thema:ショート・ストーリー
Janre:小説・文学

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