ショートストーリィ(フォレストシンガーズ)

FS動詞物語「打つ」

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フォレストシンガーズ

動詞物語

「打つ」

 あなたにとってのプロ野球とは? と誰かに質問されれば、章だったらこう答えるだろう。

「そうだな……ガキのころにテレビでアニメだとか歌番組だとかを見たくても、親父がジャイアンツの試合を見たがって見せてもらえなかった、って恨みだね。親父がたまに出張で留守にして、今日はあのアニメが見られるって楽しみにしていたのに、出張は中止だ、とか言って帰ってきたときの失望感、半端ないってあのことだよ。俺はプロ野球は嫌いだ。どこのチームのファンでもない。北海道のチームったって、あそこは札幌だろ。俺は稚内だから関係ないし。野球やるのはもっと嫌いだよ」

 隆也はこうだ。

「スポーツってのは戦争の代償行為だと言うんだよな。俺はスポーツ全般に興味ないから、プロ野球だって同じだよ。金沢にはチームはないし、東北も関西も中部も故郷とはほど遠いし、高校野球で地元のチームを応援するってのもなかったし、我が家はテレビをほとんど見なかったし、興味ないってのが正直なところだね。筋トレだのランニングだの、自分で体力づくりをするのは嫌いじゃないから、野球もするほうが楽しいな」

 真次郎は。

「俺の兄貴があまりにもあまりにもの空手バカだから、俺はスポーツが嫌いだったんだ。走るのは好きだったけど、野球には興味ない。親父はジャイアンツファンだったけど、いつも帰りが遅くてテレビなんか見なかったもんな。それがさ、大学に入ったら合唱部のキャプテンが、野球はカープじゃけんのう、って言う人で、洗脳されてしまった。今では俺も先輩と同じだよ。やるのも好きだ。負けると悔しいけど、スポーツって気分爽快になるんだよな」

 そして、幸生。

「負けず嫌いきわめつけのうちのリーダーと較べたら、俺には闘争心って半分もないんじゃないかと思うんだ。負けるが勝ちって言うじゃん? でも、ベイスターズだけは別だよ。カープやタイガースには特に負けたくないっ!! スポーツは好きなほうでもないんだけど、親父の影響なんだろうな。ガキのころからハマスタやベイスターズのキャンプ地なんかにも連れていってもらって、きっと一生ファンだよ。いつかハマスタで始球式やりたいな。うん、やるのもけっこう好きだね」

 最後に繁之。

「プロ野球に興味ゼロというのは、男としては変だという説がありますが……章はたしかに変かな。乾さんはやるのは好きなんだから変じゃありませんよね。俺はもう、ものごころついたときから、筋金入りのタイガースファンですよ。少年野球をやってましたから、するのも大好き。また試合しましょうよ。今度はヒデも引っ張り込みましょう」

 おまけの英彦。

「俺がシゲと友達になったのは、ひいきのプロ野球チームが同じだったからだよ。最近は時々、シゲとふたりで鳴尾浜だの甲子園だのに行ってる。プロ野球選手から彼のテーマ曲を作ってほしいって依頼を受けたこともあるよ。断ったけどね。うん、プロ野球は好きだ。故郷の高知をフランチャイズとするチームができたら……むしろ困るな。タイガースは捨てられないからね」

 マネージャーの美江子。

「私は浮動票が多いっていう、東京のもうひとつのチームのファンですわよ。それほど熱心ではないけど、観戦は嫌いじゃない。父も弟たちもサッカーのほうが好きみたいだけど、私はプロ野球のほうが楽しいな。フォレストシンガーズのみんなが試合をするときには応援に回ります。陽灼けはお肌の大敵。この年になると日盛りの戸外でスポーツすめるのは勘弁してほしいんだもの」

 観るのもするのも大嫌いだ、と言うのは章だけなので、フォレストシンガーズは時折、ファンの集いや遊びで野球の試合をする。今日は野球日和。真次郎を洗脳した大学の先輩、高倉誠のチームとフォレストシンガーズチームが。初夏の晴天のもとに集まっている。

 ファンのみなさまに参加してもらったこともあるのだが、本日は観客席にファンを招待した。美江子はそちらに回って、フォレストシンガーズチームの応援に加わっている。

「きゃーーっ!! 桜田さーんっ!!」
「タダ坊っ!!」

 バッターボックスに立つのは桜田忠弘。こんなにも観客席が満員なのは、高倉チームのゲストとして参加している大スター、桜田忠弘目当ての女性たちが集まってきたからだろう。おかげで観衆の大多数は高倉チームの応援をしているような……?

 ピッチャーは本橋真次郎、キャッチャーが本庄繁之。ファースト、フルーツパフェの栗原桃恵。紅一点のモモちゃんにも歓声が降り注ぐ。セカンド、劇団ぽぼろの戸蔵一世。ショートは俳優の川端としのり。彼らも一応は有名人といっていいのだろうが、知名度では桜田の足元にも及ばないクラスだ。

 サードは作家のみずき霧笛、監督はフォレストシンガーズ所属事務所の社長、山崎敦夫。モモちゃんの相方である栗原準は、美江子の代理としてマネージャーを務めている。控えメンバーにもミュージシャンや役者がいるが、やはりすべてのメンバー中でのトップスターは桜田忠弘だろう。

「ああ、やだやだ、やだなぁ。美江子さん、替わってよ」

 文句たらたらだった章がライト、幸生がレフト、センターは麻田洋介。彼ももとはアイドルなのだが、グループを解散してただいまは役者修行中。世間に忘れられるのは早いようで、あれ、誰? センター? 誰だろ、見たことあるみたいな……との女性の声が美江子の耳に届いていた。

 みずきさんと社長が平均年齢を上げているとはいえ、こっちのほうが若いんだし、勝ってよーっ!! 
 美江子が叫ぶと、周囲を埋めているフォレストシンガーズファンの女性たちが同調して、一緒に騒いでくれた。

END








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