茜いろの森

□ 番外編 □

FS超ショートストーリィ・四季の歌・真次郎「冬の曲」

フォレストシンガーズ

超ショートストーリィ・四季のうた

「冬の曲」

 ベタすぎると笑われそうだが、なんたって「冬」!! 冬なのだから「冬」だ。
 ヴィヴァルディの「四季」より、「冬」。ヴァイオリンの音色が、冬をあらわしている。わりあいに穏やかな気候の「冬」だと真次郎が感じる序盤から、徐々に曲調が高まっていくのは、空が荒れ模様になって雪が舞いはじめているのだろうか。

「冬の曲? 冬っていうと北欧のデスメタルかなぁ」
「デスメタルか。そのジャンルを聞いただけで、俺の趣味じゃないってわかるよ」
「そうやって退けないで、聴いてみて下さいよ。これなんかいいんですよ」
 
 却下!! と言い捨てて章の前から去り、隆也にも尋ねてみた。

「白い冬」
「ああ、俺たちのはじまりの曲だな」
「歌う?」
「あとで」

 十五年以上も前の大学合唱部で、隆也と真次郎がデュエットした曲だ。ヴィヴァルディには歌詞がないから、実際に歌うのは「白い冬」のほうがいい。

「シゲ、おまえは?」
「冬の曲ねぇ……北風小僧のカンタロウとか」
「うんうん、いいな」

 子持ちの繁之が選ぶ曲としては微笑ましくもふさわしい。先刻から真次郎は背中に視線を感じていたのだが、故意にもうひとりには質問をしないでいた。

「ユキの歌っていっぱいあるでしょ」
「ああ、雪の歌はたくさんあるな」
「雪じゃなくてユキですよ」
「ゆきじゃなくてゆきって、禅問答みたいに言うな」
「だから、ユキ。ユキちゃんはね、ユキオっていうんだほんとはね。だけどちっちゃいから自分のことユキちゃんって言うんだよ。可愛いね、ユキちゃん。ねえねえリーダー、無視しないで下さいよぉ」

 三十路を過ぎた男が、ちっちゃいからユキちゃんって……真次郎の頭に、本物の雪の中ではしゃぐ繁之の息子と、この三十代の可愛いユキの姿が浮かびそうになる。ヴィヴァルディの「冬」どころではない、荒れた真冬の風景だ。

SHIN/35/END









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Information

Date:2017/02/11
Trackback:0
Comment:2
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Thema:ショート・ストーリー
Janre:小説・文学

Comment

* NoTitle

冬の曲ですか。
雪があるとイメージしやすいでしょうけど。
まあ、特に日本では住んでいるところで変わりますからね。
私は凍てつく空気が冬のイメージですかね。
2017/02/12 【LandM】 URL #- 

* LandMさんへ

いつもありがとうございます。

このブログのテンプレートを変えるのも好きですけど、PCやスマホの壁紙を季節に合わせるのも好きです。

今はパソコンは雪豹。
スマホは水仙です。

今年は大阪でもときおり雪がちらついていますが、積もるまではいきません。
でもやっぱり、冬のイメージは雪景色だったりしますね。
2017/02/13 【あかね】 URL #- 

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