茜いろの森

□ 番外編 □

FS超ショートストーリィ・四季の歌・幸生「秋の駅」

フォレストシンガーズ・超ショートストーリィ・四季のうた


「秋の駅」

 紅葉に彩られた無人駅。列車の点検だとかで一時停車するとのアナウンスがあった。降りてすこし歩いてくる時間はありそうだ。

 目的地に向かう電車には相客はまばらで、この区間は単線になるらしい。事故ではなく点検だそうだから、俺ものんびり待っていよう。

 無人駅に降りるのも珍しい経験だし、このごろはそういう駅には動物の駅長がいる場合もあるので、期待しつつ駅の中を歩く。ベストは猫駅長だけど、亀でも山羊でも小鳥でもいい。リスなんかもいいな。蛇だったりしたら……毒を持ってないんだったら、噛まないんだったら挨拶したい。

 相手がなんであってもお喋りをするのが俺だ。おまえは誰と喋ってるんだよ、アホか、幸生は、と章にはたびたび馬鹿にされるが、馬鹿に馬鹿にされてもへっちゃらだもんね。

「いないな」

 ま、いないほうが普通かな。
 
 動物駅長さんはいないようだが、単線の線路のむこうに見える紅葉は見事なまでに美しい。空気が澄んでいるから色づいた葉っぱが鮮やかで、まるで三沢幸生の声みたいに綺麗だ。

「ああ、そうか」

 ひときわ見事なこの樹だ。わりに高い細身の樹で、真っ赤な葉っぱがとてもとても綺麗。この駅は動物駅長ではなくて植物駅長なんだね。この樹、なんて名前なんだろ。ケータイで写真を撮って乾さんに送ると、間もなく返信があった。

「ヤマボウシ駅長さん、おつとめお疲れさまです」

 敬礼してみると、ヤマボウシ駅長がはらっと葉っぱを散らせて応えてくれた。

END









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Date:2016/11/12
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Thema:ショート・ストーリー
Janre:小説・文学

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