番外編

FS超ショートストーリィ・四季の歌・章「秋の痛」

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フォレストシンガーズ

四季のうた・超ショートストーリィ

「秋の痛」

 それ、いいじゃん。俺が言うと、幸生は嬉しそうな顔をした。

「いわし雲 飛び乗りたいな 食えるかな」

 窓から外に向かって煙草の煙を吐きつつ、幸生が呟いた俳句のようなもの。

 へぇ、章はこの句が気に入ったのか? なにやら含みがあるような顔で乾さんが問いかける。今日は本橋さんとシゲさんは別の仕事で来ていなくて、スタジオの外の塀の上を猫が通り過ぎていき、空には鰯雲が流れていた。

「今の猫が作った俳句だろ? それにしたらできは悪くないよ」
「猫?」
「あれ? ちがうのか? 猫レベルだからそうなのかと思った。幸生は猫とでも会話ができるんだから、猫の詠んだ句を発表してるのかなって」

 そうなんだろ、と俺。猫ねぇ、と乾さん。章……と乾さんがなにやら言いかける前に、幸生がにこっとした。

「それ、最高の褒め言葉だよ。ありがとう、章」
「そっか。幸生にとっては褒め言葉だよな」
「……」

 しまった、そうだった。懲りない奴、こたえない奴は、猫が作った、と言われても動じないのを忘れていた。どうせだったら、ゴキブリが詠んだのかと思った……とでも言わなくちゃ。

「へぇぇ、俺って天才。ゴキブリの代弁までできちゃうんだ。さすがユキちゃん」

 もしもそう言ったとしても、幸生の反応はこうだろうな。いつだって言い負かされてばかりいるから、たまにはへこませてやろうと思ったのに、言うんじゃなかった。

END









 
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