番外編

FS超ショートストーリィ・四季の歌・真次郎「秋の肌」

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フォレストシンガーズ

超ショートストーリィ・四季のうた

「秋の肌」

 素肌に食い込んだかのような下着の跡。そんなものにぞくっとするのは緊縛趣味があるから、となにかで読んだことがあるが、俺にはそんな趣味はない。

 ただ、陽に灼けた肌にくっきり残ったビキニの跡、同じ位置には俺がはずしたビキニが食い込んでいた跡。それにだったらそそられるのは男としては普通だろ? なんて、誰に弁解しているのやら。

 プールでならばまだ泳げる、初秋の休日。

 食欲の秋が近づいているから、予防のためにも泳ぎたいな、と彼女は言った。売れない歌手同士、彼女はルックスには気を遣うだろう。俺は食っても太らない体質らしいから、適度な運動をしていれば大丈夫だが、三十を過ぎたら気にする必要も出てきているかもしれない。

「ホテルのプールか」
「そりゃあそうよ。下手に若者が集まるプールには行けないでしょ。私はまるで顔を知られてないから平気だけど、真次郎くんたちは売れてきてるもんね」
「……それほどでも……いや、いいよ。行こう」

 以前ほどにはフォレストシンガーズは無名ではなくなってきている。彼女、ヒカリはなにをどうしても売れなくて焦っているようだが、本橋真次郎はすこしは世間に知られてきた。

 なので、近頃はデートも互いのアパートで、ということが増えてきている。ヒカリは俺のボロアパートでもいやがりはせず、掃除をしたり料理をしたりしてくれる。いい奥さんになるよアピール? まさかな、ヒカリには人気シンガーになりたいって夢も野望もあるのだから、俺なんかと結婚したくはないだろう。

 結婚はまったくしたくないが、別れたいわけでもないので、たまにはヒカリのしたいことにつきあってやろう。都心からやや距離のあるホテルのプールで泳ぎ、ヒカリもこっちを強く望んでいたのかもしれない、ベッドに入って彼女のビキニを脱がせた。

 単にヒカリの肉体に溺れているだけか。太陽の匂いがするような、彼女の肌に俺は顔を埋める。
 肉体がいちばん好き、結婚なんかまだまだしたくない、するとしてもヒカリとはしたくない、そう考えるのは悪いことか? この行為は恋のあかし。それでいいはずなのに、面倒くさいことは考えたくもないはずなのに。

 俺の心には別の女の面影がある。その女とはベッドには入っていないが、キスだったらした。あの女とは迂闊に寝るなんてできない。そっちと話をしているとヒカリの肢体が脳裏をよぎり、ヒカリを抱いているとそっちの女の笑顔がぱっぱと浮かぶ。男は罪深い、と乾が呟くのは本当かもしれない。

 まるで俺、もてる男みたいだ。二股してるみたいだ。
 夏はもうじきに終わり、秋がやってくる。季節ゆえの寂しさを感じ、俺の青春ももうおしまいだな、と吐息をつく。人間なんだから当たり前なんだろうか。


SHIN/30歳/END









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~ Comment ~

NoTitle

肉体は好き。結婚は嫌。
そういうのがあると思います。いや、男だったらそんなもんです。
結婚は身体と精神を縛るもの。
セックスは欲望に忠実に!!
・・・できますからねえ。。。

LandMさんへ

いつもありがとうございます。

正直言ったらそうなんでしょうね。
欲望に忠実にするとリスクもあり、そのリスクがない相手だと年を取りすぎてて、なのだから、やっぱり若いのがいいなぁ、ってこともありそうに思えます。

肉体は嫌い、結婚はしたい。
女性だとそういう場合もありそうですね。
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