ショートストーリィ(フォレストシンガーズ)

FSご当地ソング物語「六本木心中」

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フォレストシンガーズ

ご当地ソング物語

「六本木心中」

1 章

 CAN'T LIVE CAN'T LIVE CAN'T LIVE
 CAN'T LIVE CAN'T LIVE WITHOUT YOU BABE
 DON'T WANNA LET YOU GO

 バブル寸前の日本の女を象徴しているようにも思える歌の、英語のフレーズが聞こえてくる。

 ヒットしたとはいえ、それほど売れたわけではないらしいが、ロングセラーではあったらしい。幸生に連れてこられたディスコでかかっていたこの歌は、稚内の兄ちゃんが東京に出てきて出会った、都会の気の強い女たちを思い出させる。バブル寸前の時期にリリースされたらしい歌の、その年代を俺が知っているわけではないけれど。

 大学の入学式で話をしたのが、俺の東京の女との触れ合いひとり目だったはず。
 金もないし、気おくれしてしまうので、繁華街に遊びにいってもナンパもせず、むろん女にナンパされることもなかったから、稚内時代とちがって女の子とはまだ遊んでもいなかった。

 変形振袖みたいなのを着た長身の女は、入学式ではひとり悪目立ちして、それでいて臆してもいなかった。ミニ振袖……俺もロックファッションをしてはいたが、東京にはこんな奇抜な女がいるのかとびっくりしたものだ。

「章くん、私、覚えてる?」
「……えーっと……同じ大学に……あ、あっ!!」
「美和だよ。歌手になれたんだよね。応援してたんだ。私も嬉しいよ」

 数年前にラジオ局で、その彼女に再会した。

「入学式で話したんだったよね。よく覚えてくれてたな」
「章くんこそ、覚えててくれて嬉しいよ」
「そりゃあ、美和ちゃんはインパクトあったもん」
「あの振袖でしょ? みんなに目を剥かれたもんね」

 ふたりでラジオ局の喫茶室に入り、近況を話した。美和はフォレストシンガーズについては知っていたから、彼女のほうについてばかり聞いていた。

「ここのオーナーの息子とつきあってるの」
「ラジオ局のオーナー?」
「そうだよ。私にひと目惚れしたってしつこいから、つきあってあげてるの。今も彼と一緒だったんだけど、ちょっと局に寄りたいからって連れてこられたのね」
「ラジオに出演するわけじゃないんだ」
「私が? ラジオは顔が映らないから美和が出るのはもったいないって、彼、言ってるよ」

 聞いていると思い出してくる。美和は編集者になりたいと言っていたのではなかったか。

「出版社に就職はしなかったの?」
「え? あ、ああ、したんだよ。したんだけどね」

 有名な出版社の名前くらいならば、本を読まない俺だって知っている。美和が口にした出版社は音楽雑誌も出しているので、フォレストシンガーズも取材を受けたことはあった。

「ああ、そうなの? でも、私はよその会社にスカウトされてじきに辞めたから、美和の名前を出しても誰も知らないかもしれないよ」

 本当のことを言っているのかもしれないし、見栄を張っているのかもしれない。俺だって昔、離れていた時期に幸生と街で会ったときには見栄を張った。

「もてちゃって困るのよ。俺の命をあげるから、きみの心がほしい、なんて言われたりね」
「ふーん」
「ださいよね」

 二十代のころだったらディスコにいたらナンパだってしたけれど、もうできない。幸生が仕事の話をしているのに生返事しながら、耳では半分、歌を聴いていた。

「だけどこころなんてお天気で変わるのさ
 長いまつ毛がヒワイね あなた
 罪な目つきをしてさ
 "命あげます"なんて
 ちょっと場末のシネマしてるね

この街は広すぎる
 BIG CITY IS A LONELY PLACE
 独りぼっちじゃ
 街のあかりが
 人の気を狂わせる

 桜吹雪に ハラハラすがり
あなたなしでは 生きてゆけぬ
うぬぼれないで 言葉じゃダメさ
 男らしさを 立てておくれ」

 東京の男も女も俺が若造だったころとは様変わりしたけれど、男が草食化した分、獰猛な肉食女が増えているとか? 龍、気をつけろ、とここにはいない弟に説教したくなった。


2 幸生

「遊び相手となら
お手玉も出来るけど
いつか本気になるのが怖い
年下のくせしてさ
ヤキモチ焼くなんて
あなた売れないジゴロみたいね
 
 年下のくせしてさ、ヤキモチ妬くなんて……そのフレーズで相川カズヤを思い出した。
 派手なロックお姉さんが歌っていたこの歌から浮かぶ女性像は美江子さんとはつながらないが、卑猥な長いまつげをした年下のジゴロはカズヤとつながる。

「夜更けに目を覚ませば
 BIG CITY IS A LONELY PLACE
 人の寝息がベッドにあれば
 夢のつづきが見れる

そっと横顔 息つめて見る
あなたなしでは 生きてゆけぬ
あしたになれば 陽はまた登る
 女ですもの 泣きはしない」

 シナリオを書きたくなってきた。

 二十代のはじめごろならば、年上の女性が好きというのもよくある趣味だ。三十代半ばあたりの俺だって、年上の女性も許容範囲。年上は絶対駄目だと章は言うが、四十代の女性は魅力的ではないか。五十代以上となると俺には恋愛対象ではないが、二十代のカズヤが三十代好きなのは決して異常ではない。

 しかも、美形のカズヤは絵になる。カズヤを主役にして美江子さんをモデルにした女性との不倫ドラマ、テレビが買ってくれないかな? 本橋さんが怒るかな。奥さんがあんな美青年にもててるんだから、嬉しいとは思えないのだろうか? 本橋さん、独占欲強いもんな。

「な、章?」
「んん?」
「まあいいけどさ……」

 今夜は章といるってのに、あまり話をしていない。同じ曲を聴きながら、別々のなにかを考えている……男と女、だったらドラマにもなるが、章と幸生ではなににもならない。それでいいのだが。

END







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~ Comment ~

NoTitle

和美ちゃんの見栄っぱり感がすごいw
章君は「本当のことを言っているのかもしれないし、見栄を張っているのかもしれない」と断定しませんが、読んでて「見栄張りすぎだろ!」と思ってしまうようなセリフばかりで良いですね^^(キャラ的にw)

夢月亭清修さんへ

いつもありがとうございます。

章は自分も見栄っ張りですので、見栄を張る相手の気持ちがわかりすぎて痛くて、嘘つけぇ、と断定したりはしないのかな、と私は思っています。
私もわりと相手の台詞を言葉通りに受け取り、あとから、あれ、あれって……? と悩むことがあるのですよね。

NoTitle

章くんとユキちゃんのツーショットだ♪

美和さんみたいな人いますね。
モテて仕方ないとか、こっちはその気ないんだけどどうしてもって言われて仕方なく付き合ってるのって話よく聞きます(笑)
マウンティングっていうんですかね…
張り合わなくても普通にしてればいいのにって思うんですが…そういう問題ではないのかなぁ…

年上女性が好きな男性いますね。でも制服好き(女子高生とかです)男の人とかもいて、とりあえずどっち聞いても一旦ドン引きします(おい

2人で同じ曲聴きながら別のこと考えてる章くんとユキちゃん、私から見てるとドラマになってるよ♪
気心知れた仲良し(?)二人組のこういう何気ない一場面好きです(๑˃̵ᴗ˂̵)و

たおるさんへ

いつもコメントありがとうございます。

いますよね、こんな女。
どんな話でも自慢だと受け取れば自慢ですし、自慢も種類によってはそう悪いものではないと思うのですけど、見栄混じり自慢はみっともないかな。

二十代の男性が三十代女性が好きというのはわりと聞くのですけど、その男性は四十代になっても五十代になっても三十代が好きだったりしません?
男性の年下好きは、これはもう本能ってかサガってか、どうしようもないと思いますけどね。

最近知ったのは、おばさんは一般的に若い女が嫌いだってことです。知っている女性だったらまだしもですが。
私も小説に出てきた若い女性と、中年の男性が恋に落ちるのを読んで、けーっと思いましたもの(^o^)

章と俺、ドラマになってます?
やっぱアキとユキの危険な関係、シナリオにしようかな(幸生)

やめろ、やめてくれ。そんなの書くな。
蹴飛ばすぞっ!!(章)
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