ショートストーリィ(フォレストシンガーズ)

FSご当地ソング物語「雨の御堂筋」

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フォレストシンガーズ

ご当地ソング物語

「雨の御堂筋」

1・隆也

 街頭ライヴの予定が雨で流れてしまった。
 激しく降る雨はなんでも流してしまう。恨めしい気分で空を見上げていても、予報によると雨は強くなるばかりだとのことなので、スタッフも帰ってしまった。

「歩こうか」
「ああ」

 シゲと幸生と章も帰ってしまったので、本橋とふたり、御堂筋を歩く。

 梅田から難波へと続く大阪のメインストリートだ。俺は金沢出身だから、北陸は大阪文化圏にかすっていて、子どものころにも祖母に連れられて遊びにきたことはある。東京の大学に進学してからは、関西に時々ひとり旅をした。

 話をしても雨音に消されてしまうので、黙って歩く。本橋はなにを考えているのだろう? 無料の街頭ライヴでさえも雨にたたられて実現しない、フォレストシンガーズの悪運についてか。

 三年ほど前にメジャーデビューしてからは、関西に仕事で来るようになった。関西の主要地といえば京阪神だから、三年の間に大阪には何度来ただろう。デビュー三年、そんなに経つ必要もなく人気者になっているシンガーもいるが、俺たちの道のりは長いのだ。まだ売れていないだけ。まだ、売れていなくてもいつだって雨に降られている気分でも、なんのこれしき。

 楽しいことだってたくさんあったじゃないか。デビュー間もないころにFM放送挨拶周りをしていて知り合った、ロックギタリストのトミー。トミーは元気かな。ロックバンドにはあまり興味がないけれど、ブラックフレームスは活躍してるんだよな。トミーかぁ……楽しい記憶とばかりつながるわけでもないけれど。

 トミーから連想できるのは尚子さん。彼女の噂なんかまったく聞かないけど、どうしてるのかな。元気かな。結婚しただろうか。女性が幸せになるということは、必ずしも「結婚」とは直結しないのかもしれないけど。

「ああ、降る雨に泣きながら身を寄せて
 傘もささず濡れて夜の
 銀杏並木は枯葉を落とし
 雨の舗道は寂しく光る

 あああ、あなたの影を
 あなたを探して南へ歩く」
 
 しきりに浮かぶのはこの歌だ。俺は誰かを探して御堂筋を歩いているのではないけれど……いや、探しているのか? 誰を?
 
 だんだんと雨がゆるやかになってきたので、傘をたたんだ。


2・真次郎

 こんな感じのしょぼしょぼした雨をなんとか言うんだったよな? 尋ねたら、乾は歌で返事をした。

「小ぬか雨ふる御堂筋
 心変わりな夜の雨
 あなた、あなたはどこよ、あなたを探して南へ歩く」

 彼女を棄ててどこかに行っちまった、男を探して南へ歩くのか? 古いヒットソングだ。乾が傘をたたんだので、俺も彼に倣った。

「おまえだったら誰を探す?」
「……おまえは?」
「探したい相手はいなくもないけど、探しても仕方ないひとばかり……」
「またかっこつけやがって……そうだな、俺だったら……そうだ」
「ん?」

 ファンだ!! と力強く言うと、乾にも通じたらしい。そうだな、そうそう、ファンを探すんだよな。
 俺たちの探す「あなた」はファンだ。俺たちの歌を聴いて喜んでくれる「あなた」を探すために、南へ歩こう。御堂筋だけじゃなくて、全日本のメインストリートも制覇しなくちゃ。

END








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