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FS俳句・短歌・超ショートストーリィ2016/2

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2016/2 超ショートストーリィ


 傘をさして歩くと、俺が誰なのか誰にもわからない。Nobody knows me だなんて、英語のシャレ……いや、言葉遊びというのか、同じことか。そんな歌詞を声に出さずに歌いながら歩く、小雨模様の浅草。

 浅草寺に久保田万太郎の句碑が建っていると知り、見たくなってやってきた。
 乾さんはそういうの、好きだね、とみんなが笑っている。そんな幻は振り払って句碑の前に立った。

「竹馬やいろはにほへとちりぢりに」

 竹馬の友を詠んだ句なのか。竹馬は冬の季語、二月は俳句の世界では春であろうが、つめたい雨が降っているのだから今日は冬だ。

 ちりぢりに……切ないな。

 時はただすぎゆき季節がめぐり、世の中は移ろう。売れなくてつらかった我々も、いつしかこうして、傘に隠れて歩くと他人に顔を見られない、などと考えるようになった。
 生まれて育って大人になったひとは、時が経てば老人になる。

 老人になったころには、俺たちはどうしているのだろう。
 フォレストシンガーズ結成五十周年記念ライヴなんて、やってるかな。それとも、この句のようにちりぢりに……目を閉じると、俺についての想い出話をしている年老いた夫婦が浮かぶ。あのふたりは本橋とミエちゃんか、あるいは、恭子さんとシゲか。

 話の内容を聞き取ろうとつとめてみても聞こえない。俺にはそこまでの想像力がないのか、聞きたくはないからか。生前の乾隆也の話しでもしているのならば、あのふたりは本庄広大とその妻なのかもしれない。広大が老人になっているのならば、俺は生きていなくて当たり前だ。

「竹馬の友の句から、なんだってそんな遠い未来の話を想像するんですか? 乾さん、俺の想像力がぶっ飛びすぎだって言えないよ」
「まったくだ。おまえのおかげで正気に戻れたよ」
「そう? だったら俺に電話して。このあとだったらおつきあいしますよ」

 久保田万太郎さんといえば食通でもあったのだから、帰りには彼を偲んで浅草のうまいもの屋でちょいと一杯、このあと、とはそういう意味だろう。店が決まったら幸生に電話して呼び出してみようか。

END

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~ Comment ~

な~んだ

なんだかんだ言っても、ユキちゃんと乾さんは両想いなんだなぁ~(^^)
ちりぢりに、で色んなシーンを思い描きながらも、最後は「じゃ、幸生と一緒に飲むか!」ってことになるわけなんですものね。(あれ? 曲解? 飲もうかな……→じゃ、幸生を呼ぶか。これだと反対か……)
本当に先のことは分からないけれど、人生、色々ですよね。じゃ、とりあえず飲むか!

NoTitle

久保田万太郎さんは、知らなかったのですが、乾君はそのたった一つの歌で妄想が止まりませんね。
妄想もユキちゃんのとは違って(w)趣深い・・・。そして切ないなあ。

ユキちゃんは歌の事なんて関係なく、このあと仔犬のように喜んでお誘いに乗るんでしょうね。
2人でいったい、どんな話をするのか、そっちの方に妄想が・・・。

NoTitle

フォレストシンガーズ結成五十周年記念ライヴ! 
それはすごい。それに行けるファンもすごいかも。
それが書けるあかねさんが一番すごいか^^

BOWWOWってむかーしのバンドの山本恭司さんてギターリスト(あかねさん、ご存知ですかね?)が60歳還暦ライブをするのですが凄いと思いました。
おじいちゃんバンドのストーンズもやっぱりすごい。

乾さんもユキちゃんも他のみんなも変わらないんだろうなあ。
年相応の歌を歌っていそうで妄想渋すぎます^^

大海彩洋さんへ

コメントありがとうございます。

これは作者の願望なのか……いえ、そうでもないんですけど(^^;)
シゲ&シンは結婚してますし、章はひねくれていますし、で、呼び出すのは幸生になるってわけなんですが、でも、愛し合ってるんですよねぇ。

過去と現在と未来を肴に、とりあえず飲みましょう。

limeさんへ

いつもコメント&ごひいき、ありがとうございます。
久保田万太郎さんは食通エッセイみたいのだったら読んだことがありますが、俳人でもあり文人でもあるという方なのだと思います、たぶん。
この方の俳句は私も好きです。

「女にはできるけど、男には絶対にできないことってなんですか?」
「ウェディングドレスを着るとか?」
「俺だったら着られますよ。乾さん、結婚式しましょ」
「う、ヤブヘビ……」

というような会話をするのだと思われます。

けいさんへ

いつもありがとうございます。

VOWWOWになったりBOWWOWになったりするんですよね。
人見元気さんと山本恭司さんがいたころのVOWWOW、大好きでした。
人見さんのヴォーカルじゃなかったら別のバンドみたいですけど、山本さん還暦かぁ。たしかCHARもそのくらいですよね。

ローリング・ストーンズも大好きです。私はビートルズよりもストーンズ好き派です。
デヴィッド・ボウイとモーリス・ホワイトとグレン・フライ、最近たて続けに大物ミュージシャンが亡くなりましたよね。数年前のイーグルスの来日ライヴに行っておいてよかったと思ってます。

フォレストシンガーズ五十周年。
みんな七十代になってるんですよね。おそらくは……なのですけど、そんなの書いてみたいなぁ。ダークダックスかデュークエイセスみたいな感じかな。あのおじさんたちの歌も好きです。

NoTitle

ちりぢりになるのか、ずっと一緒にいるのか。
それは時流もあるのでしょうね。
仲が良いからずっと一緒にいるわけでもないし、
そして、恋愛結婚したからずっと一緒にいるわけではない。
成行きというものがありますよね。人生は。
(;一_一)

LandMさんへ

いつもありがとうございます。
もしかしてLandMさん、結婚問題が現実化しているのかな、なんて考えすぎですか?

人の縁とは不思議なもので……
なんて歌もありますし、
そんなところも人生の妙なのかもしれませんね。
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