番外編

FS超ショートストーリィ・幸生「冬の兎」

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フォレストシンガーズ・超ショートストーリィ・四季のうた

「冬の兎」

 目が赤い? あ、耳が長い。

 純白の雪景色の中に真っ白な小さな生き物が動いている。幸生の視界の中をぴょんぴょん跳ね回っている。猫かな? と期待したのだが、耳の長い赤い目の生き物といえば。

「幸生くんって好きなひとがたくさんいるんだよね」
「そうだよ。ええ? おわっ!!」

 雪の中に尻もちをついた幸生を見て、小さなものはころころ笑った。

「兎が……口をきいた?」
「いいじゃない。堅いことなんか言わなくても。ねえねえ、幸生くんのいちばん好きな人は誰?」
「一番?」

 ここはどこだろう。雪の中で人間の言葉を話す白いウサギと会話をしているなんて、夢なのだろうか。なんだかこの兎、笑い声と言い堅いことを言うなという性格といい、俺に似てる? そうだよね、ま、なんだっていいや、と幸生も開き直った。

「そうだねぇ。一番好きなひとって言われるとつらいな」
「お母さんとか?」
「世界中の人間が滅亡するとして、たったひとり、救えと言われたら……」

 いくらいい加減な性格の人間だって、死にそうに悩むのではないだろうか。たったひとりを選べる人間は幸せなのか、むしろ世間が狭くて気の毒なのか?

 シゲさんだって、三人の家族のうちの誰を優先するの? 冷静に考えれば広大かな。けど、そんなの選べっこないでしょう?
 本橋さんは美江子さん? 美江子さんなら本橋さん?

 章は? 乾さんは俺を選んでくれないかな。
 で、ヒデさんは? 英彦の名前と顔が浮かぶと、自動的みたいにソフィという名前も浮かんできた。

「きみの名前はソフィだね。ずいぶんと思慮深い目をして、俺の心を読んでない?」
「ヒデさんのことも思い出してくれたんだ。それだけで嬉しいよ。僕がヒデさんと暮らしていたころにね、兎ってのは猫と変わらんのかな? 幸生が教えてくれた猫の扱い方ってやつは……って、ヒデさんが思い出してたの」

 一番好きなひとは誰? その質問はトリガーのようなものだったのか。ソフィはそんなことは忘れたかのように続けた。

「大好きなひとがたくさんたくさんいるって、素敵だよね。嫌いなひともいる?」
「いなくはないけどね」
「人間だもの」

 どこかで聴いたような台詞を口にして、ソフィが跳ねる。跳ねては跳ねて幸生の前から遠ざかり、消えてしまった白い小さな姿。ソフィの赤い目に宿った知性の輝きが、幸生の心に妙に残っていた。

END


なんだ? 意味不明、と思われた方は、こちらをお読みいただけると嬉しいです。

 番外編69(てのひらいっぱい













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~ Comment ~

NoTitle

>乾さんは俺を選んでくれないかな。
・・・って。

選ぶわけ……ないじゃない・・・・とも言い切れないところが、ミステリアス(笑)

この兎さん、罪な事を訊きますよね。
たった一人って、なかなか選べない。
でもこのソフィちゃん、自分を思い出してもらうためにこんな話題をふったのかな?
ヒデさんと暮らしてた兎さんなんですね?
ユキちゃんの何を訊きだしたかったのか・・・。

ヒデさんかあ・・・。一番微妙な存在だけど、ちょくちょく出てくるという事は、ヒデさんも、あかねさんにとってはずっと大事なフォレストメンバーなんですね。
良かったね、ヒデさん^^

limeさんへ

いつもありがとうございます。

たったひとりだけを迷いもなく選べる人間がいたら、インタビューしてみたいです。
私だったら……う? 選べるかも。
いやいや、深く考えるのはやめましょう。

ヒデにも思い入れはなくもないのですが、この兎のソフィ。
この子はいったい何者なんだ? という答えが私の中では出ていませんで、そのせいで時々、ソフィを書きたくなるのです。

隆也は誰を選ぶのかなぁ。
幸生じゃないはずですが、案外……彼は……この問題はむずかしいですが、追及してうまく物語にできたら面白そうですよね。
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