ショートストーリィ

魔法にかけられて/limeさんのイラストによせて

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lime妖狐

「魔法にかけられて」


 なんだよ、その目つきは? 俺が気に食わないの? 俺がなにしたっての?
 黙っていられると気味が悪いんだよ。なんとか言えよ。

 え? なんだって? なに言ってんのかわかんねえよ。
 おまえにはそんなしっぽがあるけど、身体つきからしても女だろ。
 女だったら女らしくしろよ。そんな言葉遣いすんなよ。

 女性差別だ? キツネのくせに差別もなんもねえだろうがよ。
 キツネ差別? 俺は人間なんだから、狐は人間に差別されて当然なんだよ。
 猫や犬だって飼うって言うだろ。狐は普通、動物園で飼育されてるんだよ。

 頭にくるメギツネだな。おまえもとっつかまえて動物園に入れてやろうか。
 いや、おまえだったらサーカスかな。
 それとも、珍種の狐だってことで、どこかの実験施設に売ってやろうか。

 うー、苛々イライラ。
 こんなに苛々するのは、おまえのじっとりした目つきが気に入らないからだよっ。

 なんだとぉ? おまえを食いたい?
 食われてたまるかよっ!! 食うんだったら俺のほうから……俺の、ほうから……

「……?」
「うわっ!! びっくりしたっ!!」
「先輩、なんかひとりで怒ってます? 僕がちょっと遅刻したからですか。ごめんなさい」
「いや、そうじゃなくてさ……」

 後輩のタカシと待ち合わせをしていたのは、博物館の前だった。博物館では刀剣展が開催されていて、日本刀マニアの僕たちはそれを見にいこうと約束していた。
 広い敷地には博物館と美術館が並んで建っているのだが、美術には興味がないので、そちらにどんな絵や彫刻が展示されているのかも知らなかった。

「わ、色っぽ……こんな絵、こんなところに飾って子どもが見たりしていいのかな」

 すみませーん、ちょっとだけ遅れます、タカシからメールが届いたときには、僕はもう博物館前まで来ていた。ちょっとだけだったら待とうと近づいて、この絵を発見したってわけ。

「異形のもの展」

 なのだそうで、代表的な絵が見本のようにして外に飾ってあった。画家は女性名だったが、僕はそのひとを知らない。ただ、色っぽい妖狐の絵に吸い寄せられるようにして凝視してしまった。

 あまり見つめていると吸い込まれそうだ。絵の中に取り込まれてセクシーな狐に食われてしまいそうで、僕は前に向き直った。そのくせ、横目で見たくなる。どうしても見てしまう。おまえを食ってやるよ、こっちに来い来い、と絵の中から言われたようで、僕は妖狐と目と目でバトルをしている気分になっていた。

 そんなところにあらわれた後輩タカシ。彼は遅刻したので恐縮しているが、現実に戻れた僕は安堵したのだった。

「妖狐と喧嘩していたんだ」
「ヨウコさん? どこにいるんですか」
「そこにいるじゃないか」
「ヨウコさんって、先輩の彼女ですか? いつの間に彼女が……彼女と喧嘩して彼女はどこかに行っちゃったとか? 僕に紹介してくれるつもりで連れてきたんですか」
「馬鹿か、おまえは。妖狐だよっ」
「だから、ヨウコさんでしょ」

 妖怪狐を妖狐と呼ぶんだよ。説明してやる気にもなれない。タカシは絵なんか見てもいないようで、先輩の彼女、ヨウコさん、えー、そんなぁ、とか言っていじけている。

「俺に彼女がいちゃいけないわけ? おまえに関係ないだろ」
「関係ありますよ。だって……だって……僕……」
「だってって……おいこら、泣くな」
「だってだって……」

 戻ってきた現実では、なぜか男の後輩が泣いている。
 泣いている男を連れて博物館になんか入っていけない。それに、博物館の中には刀たちがいるんだ。刀ってのも一種の魔物だから、妖狐とは別の魔法にかけられて魅入られたりして。

「とにかく落ち着け。お茶でも行くか」
「……はい、ぐしゅっ、先輩、優しいですよね。だから僕はそんな先輩が……」
「黙れ。それ以上言うな」

 刀はまだ見ていない。タカシは妖狐の絵も見ていない。
 しかし、妖狐はタカシをきっと見ている。いつもは単純でおバカなだけの後輩を変にさせているのはおまえだろ? タカシを連れてその場から立ち去りつつ振り向くと、妖狐が顔を上げてかかかと哄笑した。

「え?」
「……ぐしゅっ、先輩、どうか?」
「どうもしねえよ。行こっ」

 ちがうよな。変にされているのは僕だけだ。今夜は悪い夢を見そうで、けれどその夢には甘美さも漂っていそうで、いやな胸騒ぎと妙な期待が交錯していた。


END

毎度お世話になっています、limeさん のイラスト。
 
このイラストをじーっと見ていると、彼が誰かと待ち合わせているように思えました。
それから……

 けだるそうに妖艶なこのメギツネさんが笑ったら、真っ赤な口に牙が見え、きっと「かかかかか……」って声を出すんだろうな、と妄想して、こんなお話ができました。

 妖狐の魔術にかかったこのふたりの青年……さて、どうなりますか。
 ……そうか、そうなんだ、今、気がつきました。このヨーコさんは腐女子狐なのです!!




















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~ Comment ~

おもしろい~^^

ニマニマしながら読ませていただきました。
あかねさん、早速の参加、ありがとうございました!

この妖狐と、心の中でバトルしてる先輩がすごく楽しい。
うん、わかる、なんか絡んで来そうな目つきしてますよね、この狐。
そこまでなら想像が沸くけど、まさかの、この後輩(笑)
タカシのこの妙な混乱と涙は、腐女子狐の仕業なのですね!
いったいどんな術にかかったのか!
そしてこのあと術は解けるのか!

くわっと嗤った妖狐・・・こわそう~~ww

楽しいお話、ほんとうにありがとうございました^^
朝の内にリンク張れなかったら、帰ってから早急にしますね! 

limeさんへ

ちょっとふざけてしまいましたが、limeさんは怒ったりはなさらないだろうと信じていました。ありがとうございます。

この先輩と後輩には、隆夫と幸也なんて名前をつけようかと思ったのですが、やりすぎなので後輩にだけ、タカシと名付けました。
うーん、でも、タカですね。
無意識に出てしまったのね。

ヨーコちゃん視点のストーリィも浮かんでいますので、まとまったらアップさせてもらいますね。
どうしてヨーコちゃんはこんなところで、こんな目をしてするのか、って種明かしを勝手にやるつもりです。

おじゃまします

なるほど。ヨウコね。人の名前みたいに聞こえますね。ふむふむ・・・サキにもちょっと構想が湧いてきたぞ。
あ、すみません。
こういう待ち合わせのシーン、上手いですね。妖狐とのバトルも、イラストのイメージを見事に捕えられていて素敵です。視線のイメージなんかピッタリ!
それに博物館と美術館一体の施設、刀剣展、設定としても面白いです。そしてこの後輩がとても愉快ですね。タカシが先輩に抱く思いはどんな感情?こっちもちょっと妖しい。
limeさんの妖狐の絵、ここから拡がる妄想の多彩さ、楽しませていただいています。
刀を見ながらこの2人はどんな会話を交わすのでしょう?

山西サキさんへ

いらっしゃいませ。
コメントありがとうございます。とっても嬉しいです。

limeさんのイラストにコメントをつけさせてもらったときから、ヨーコちゃーん、なんてやってましたので、妖狐→ヨーコ→洋子、なんて、頭の中がそうなっていました。

おほめにあずかって恐縮至極でございます。
limeさんのイラストでみなさんがいろんな空想をふくらませ、いろんな物語ができていく。
楽しいですし、勉強にもなりますよね。
いつもlimeさんに感謝です。

日本刀は私が好きなものでして、なんとか展……京都でも日本刀展やっていたし、という発想になりました。
彼らはおたく青年ですから、マニアックな会話をするのでしょうね。

近いうちにヨーコちゃん視点の続編もアップする予定ですので、よろしかったらまた読んでやって下さいませね。

そうか

腐女子狐の妖狐さんだったのですね。いや、こういう発想はさすがにあかねさんです(^^)
そう言えば、うちに眠り猫の木彫りがあるのですけれど、百貨店で歩いている時に「ねぇ、買いなよ」って呼びかけられたんですよね。で3周くらいしてやっぱり呼ぶから買った(操られた……)……目はつぶっているんですけれど。妖しい眼力?で誰かを誘い込む……本当に猫も狐も侮れませんね。
今回は操られたのは後輩君でしたか。始めからその気があったのか、あるいはただ狐の陰謀?なのか……そうそう、しかもその術が解けたのか、まだ語られていませんね。いや、実は始めから術なんかではなかったのかも? 後輩は術にはかかっていなくて……先輩が勝手に術にかかっていると思っているだけで。
ヨーコちゃん側からは何を語るのかな?
また裏情報? 楽しみにしていますね。

NoTitle

そうか。よう狐はよう子なのですね。
こんな危ない絵の前で待ち合わせとは。あ、呼ばれちゃったんでしたっけ。
先輩は会話できるけどタカシはできないのかな。

日本刀も乱入するとなると、ややこしくなりそうですね。
日本刀、うちにも欲しいんですけど、危険物で持ち込めない(空港で取り上げられるー><)

大海彩洋さんへ

コメントありがとうございます。
さすがに……きゃああ、はい、さすがですね(^o^)

妖しい眼力で人をもてあそぶ、たぶらかす。
やはりこれは狐か猫の特技って感じがしますよね。だから、猫も狐も嫌われがち。猫が大好きなひとは多いけど、狐好き!! ってひとは少数派かな? キタキツネは可愛いけど、危険な細菌を持ってるんですよね、たしか。

実は後輩は操られてなくて、先輩がそう思ってるだけで。
なーんてご感想をいただくと、別の妄想が湧いてきそうです。
一応、ヨーコちゃん視点の続編は書いているのですが、ありきたりかなぁ。

色っぽいの書きたかったんですが、私の考える「色っぽい」は偏ってますので、その路線はなしにしました。
続編、また読んでやって下さいね。

けいさんへ

コメントありがとうございます。
そうなんです、ヨーコちゃんです。
とはいっても、続編にはヨーコは無関係ですが。

limeさんのところで、この妖狐は未成熟というようなコメントを読み、そういえば大人の身体つきではないんだな、と思ったのもありまして、いたずら狐、腐女子狐って発想も湧きました。

こんな妖艶な絵の前で待ち合わせ、え? ですが、というか、このような絵を美術館の前に展示する関係者も、え? ですよね。

日本刀は乱入すると、たしかにたいへんややこしいですので、別の話にします。けいさんもお好きなんですか? 浅草とか京都にはおもちゃの刀が売られてますが、あれでは駄目でしょうか? おもちゃでも取り上げられます?

NoTitle

まさかの展開です(笑)
後輩からのまさかの告白! そして笑う腐女子妖狐!
面白かったです(笑)さすがあかねさん。笑わせてくれます。
後輩の想いは妖狐のせいなのかな。いあ、実は少しくらい本当な部分も……!
その後タカシくんどうなったのかな(笑)長い人生一度くらい可愛い後輩と付き合ってもいいと思うぞ( ´∀`)bグッ!

たおるさんへ

ありがとうございます。
まさか、といえば、この先輩、言ってます。
いやいや、たおるさんの書かれたものの「まさか」には負けますよ、って。
(^o^)

一応、この続編は書けていますので、近くアップする予定です。
それにしてもあの「原田くん」を読んだあとでは、私が書いたのはすごくありふれているように思えてしまう。

たおるさんの書かれるものは私の波長に合うというのもあるんでしょうね。
前のも今回のも忘れられません。

長い人生、男の後輩とつきあってみるのもいい。
そうですよねぇ。ね、先輩、つきあってみる?

と書いていても、彼の名前は原田くんなのだと思ってしまう私です。
(^^;)

凶悪

 怖いぞ、女狐。男に言い寄られるなんてとって食われるより怖い。勘弁してくれ。これから毎日稲荷寿司お供えしますんで、どうか呪いを解いてくださいませ。お願いします。と先輩は申しております。

miss.key さんへ

コメントありがとうございます。
同性に言い寄られるなんて食われるより怖い、って方には相当なホラーですよね。

もしかして、続編を読んでいただけたらもっと恐怖かもしれませんので、おススメは致しませんが、よろしかったら読んでやって下さいね。

画に話しかける人っていますよね。

はたから見られると変に思われるか、バラエティだと笑いにされるでしょうね。
確かに美しき女性に頭に耳、腰から尻尾だと妖狐でしょうね。
私もそれは思いついたようなそうでないような。

妖狐はようことよびますからね。確かに何も知らない後輩は身近にそういった名前の人がいると間違えるでしょうね。

刀の展示ですか?私の家には何故か刀が飾ってあります。なんか先祖代々とかなんとか言ってますけどね。僕が生まれた時からあったんで、何であるのかはわかりません。
抜いた事はかなり昔にあります。切り裂き部分は削っていました。

私も送らせながら参加させて頂きました。
http://myworld2013.blog.fc2.com/blog-entry-691.html

遅くなりましたが、スターウォーズのC3POとR2D2のコントありがとうございます。この二体のコンビは本当に好きなんで、楽しめました。

あかねさん他にもブログやってらしたんですね。他にもtwitterやfacebookもやったりするのかな。
僕はブログだけですね。他のしたら手が回らん(笑)。

想馬涼生さんへ

コメントありがとうございます。

私は猫の写真や絵には、思わず話しかけてしまいます。
はたから見たら変な奴。
たしかに( ´∀` )

お宅に刀があるんですか?
刀剣を所持するには証明書みたいなものがいるんですよね? 私もレプリカでいいからほしいなぁ。刀って好きです。
岡山は長船という、備前の刀の本場みたいなところにも日本刀が売られていましたが、とても手は出せない価格でした。

ヨーコちゃんのストーリィ、書かれたのですね。
あとでまたゆっくり読ませていただきます。

もうひとつのブログも見て下さったそうで、ありがとうございます。BB-8はまだ定価よりもぐんと高くて買う気にならないので、安くなったら買うつもりです。

twitterはやってますが、ブログの告知くらいですね。
たしかに、よそにはあまり手が回りません。もうひとつのブログもかなり放置しています。
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

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