リクエスト小説

「ハーフムーン」to たおるさん

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「ハーフムーン」

 蜂蜜いろの月が桂浜を照らしている。

 坂本龍馬が主役の時代劇にはよく登場するシーンだ。すると、さしずめ俺が龍馬で、二、三歩あとから歩いてくる女はおりょうか。それとも、土佐時代の彼女かな。龍馬はもてたというか、遊び人だったみたいだから、彼女なんて何人もいたんだろうなぁ。

 えいなぁ、と龍馬を羨みかけて、俺はひとりで笑った。
 可愛い女の子とデートしてるんだから、龍馬なんかうらやましゅうないきに。江戸時代の女よりも、現代の女の子のほうがえいに決まっとるちや。

 昼間に桂浜にひとりでいたら、同じくひとりでいる女の子を見つけた。
 都会の女の子だろうか。ひとり旅? 声をかけたかったのだが、ナンパだと思われて警戒されそうだ。俺は名前も知らない女の子をさりげなく見ていた。

「きゃ……」
「危ないっ!!」

 この海は波が荒い。俺はガキのころからなじんでいるが、観光客だと危険な目に遭うことだってある。女性や子どもだと下手をすると波にさらわれる。俺は全速力で駆けよって彼女の手を引っ張った。

「大丈夫?」
「私はちょっと濡れただけだけど……ポーチが……」
「うん、待っちょり」

 波の間に間に浮かんでいるピンクの小さな袋のことだろう。俺は彼女を浜辺に残し、ポーチを拾って戻ってきた。ありがとう、と微笑む彼女にポーチを渡そうとして手と手が触れた拍子にころんでしまった。

「きゃ、あなたこそ大丈夫?」
「こんなん慣れとるきに、平気ちや」
「……これ」
「あ、ありがとう」

 名前は教えてくれなかったが、そのときに渡してくれた真っ白なタオルも目にまぶしくて、ひそかに「たおるちゃん」と呼ぶことにした。

「タオル、洗って返したいから、明日も会えるかな」
「洗わなくてもいいよ」
「けんど……」
「タオルはいいけど、明日も……」
「会ってくれる?」

 こっくりした顔がはにかんでいて、たまらなく魅力的だった。

 夏の日は長いけれど、この時間になると暗くなってくる。月ものぼって俺たちを照らす。明日には都会に帰ると言ったたおるちゃんと、最初で最後のデートだ。

「月……」
「うん、半月だね」
「あの月は……うん、半分やきに欠けちゅう。足りない半分はつまり……」
「なんなの?」
「うん、俺、ヒデ」
「ヒデくん……」
「きみはたおるちゃん」
「たおる? ああ……そうね、私はたおる」

 察しがいいんだな、俺の言いたいこと、半分はわかってくれたみたいだ。
 そしたらあとの半分もわかってくれる? 今夜の月が半分だけしかないのは、きみがいなくなってしまうから……そんな俺の心をあらわしているんだ。夜空に浮かんだ半月は、ベターハーフが欠けている俺の心。きみの心?

 キスしていいかな? と目で問うと、彼女は今夜もこっくりした。

「好きだよ」
「私も……」

 会ったばかりでしょ、たった一度キスしただけでさよならなのに、好きだなんて。
 そんなふうにはたおるちゃんは言わない。俺だって考えない。

 ひと目惚れってあるんだよ。会った瞬間にふたりともに恋に落ちて、互いをベターハーフだと決めることだってあるんだ。俺たちはきっとそうだよ。だからね、待ってるよ、いつかきみが俺のもとに帰ってきてくれると信じてるよ。そんな想いをいっぱいにこめて、俺は彼女を抱きしめた。

「好きだよ、愛してる」
「私もヒデくんが好き」

 きみも俺と同じように信じていると信じてる。
 こんな気持ちになったのははじめてだ。胸に満ちる想いをきみに届けようと、きみの想いも受け止めようと、キスをする。強く強く抱きしめ合って、何度も何度もキスをした。



 あとがき

 え? たおるちゃん? と名前にひっかかってくれた方もいらっしゃるかな。たおるさん以外の方がそこに目を止めて下さったとしたら嬉しいです。

白蓮」のたおるさんから、ヒデのラヴラヴストーリィを書いて!! とのリクエストをいただきました。
 
 さて、ヒデの相手役は誰?
 と考え、たおるさんにご了解をいただいて、たおるさんご本人に登場してもらいました。

 ベタですけどね、ま、こんなもんで。
 たおるさんにも他に読んで下さった方がいらしたとしたらその方にも、楽しんでもらえたら最高です。
 ありがとうございました。










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きゃーきゃーきゃー!!!
ちゅーしちゃった!ヒデちゃんとちゅーしちゃった!きゃー!(*ノェノ)キャー(落ち着け

ありがとうございます(;゚∀゚)=3ハァハァ

ああ…せっかく出会ったのにすぐお別れとは切ないぜお(ノД`)シクシク
しかしヒデちゃんのラブラブはこんな感じなのですね。イメージ的に好きでも「俺好きじゃねえし!お前が好きなんだろ」みたいな態度かと思ってました(^_^;)いやー貴重なヒデちゃんが見れてうふふ♪です(笑)ありがとうございましたヽ(=´▽`=)ノ私のブログでも紹介させてもらいますね\(^o^)/

たおるさんへ

きゃーきゃー。

いや、あの、こんなんでよかったですか?
喜んで下さったのでしたら、私も嬉しいですが。

キスくらいだったら許してもらえるかな、とか、たおるさんのお好みではどんなふうだろう? とか悩んでしまったので、こんなふうになりました。

たおるさん、さすが。ヒデのイラストも描いて下さったのですものね。彼の性格を把握して下さってますよねぇ。
ヒデはたしかに、あまり恋をしないほうだと思います。

俺はもてるきに……女が勝手に俺に惚れるけど、俺は知らんきに。
生意気にもそんなふうに思うタイプですよね。
でも、そんな奴だからこそ、本気で恋したら一途なのですよ。
たおるちゃんには本気で恋をしたのです。

けれど、口に出しては、半分欠けた月は俺の心、だなんて恥ずかしくて言えないから、キスに想いを込めた。
と、そういうことにしておいてやって下さいね。

紹介もありがとうございました。
またなにかリクエストありましたら、いつでもおっしゃって下さいね。大歓迎ですから。
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