番外編

FS超ショートストーリィ・繁之「冬の酒」

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フォレストシンガーズ超ショートストーリィ

「冬の酒」

 線路沿いに小さな居酒屋がある。鉄道マニアが集う店なのだろうかと思うと躊躇もあったが、覗いてみたら時間が早いせいかひっそりしていたので足を踏み入れた。

 子どものころから電車は好きだが、鉄ちゃんではない。本橋さんも電車が好きなようで、誘われてひかりやのぞみではなくこだまに乗り、途中下車して川べりの桜を見にいったこともある。弁当やビールを買って、真次郎&シゲの花見酒、花見デュエット。

 あれはすこぶる楽しかったが、今は冬だから、外で酒を飲んで気持ちよくなって寝てしまったら遭難しそうだ。

 男の子というものは乗り物が好きだから、章だってたまにはバスや電車に乗りたくなるらしい。乾さんも幸生もひとりで乗り物に乗るのを好む。乾さんはそうでもないようだが、あとの四人は俺も含めて車も大好きだ。うちの息子、広大も電車は大好き。次男の壮介もお兄ちゃんのおもちゃの車を見てブーブーと言うようになった。

 車を運転していると飲めないから、家族でドライブとなるとそれだけが残念だ。今日は仕事で訪れた北国の町、今夜はもう自由時間で、あとはホテルに帰って寝るだけだった。

「ああ……あ、この、雪汽笛っていうお酒を燗で。ぬる燗でお願いします。それと、しょっつるひとり鍋、するめの天ぷら、変わり巻きずしってのももらおうかな。ローストビーフサラダとさしみの盛り合わせもお願いします」

 ほんと、よく食うね、と誰かが笑っている気もするが、酒と食の両方があってこそだ。

 窓からは線路が見える。ローカル線の無人駅近く。明日のライヴが行われるのはここから五つ六つ、この電車に乗って行く地方都市だ。ほんの数キロしか離れていないところに来ると、こんなに鄙びたいい風情の土地がある。来てみてよかった。料理も酒もうまかった。

 ちらちらと舞う雪も見える。
 雪が降るとうんざりし、積雪を見ると最悪だなどと言う稚内生まれの章とは正反対に、温暖なほうの三重県内陸部で育った俺は雪は好きだ。同じ雪国の金沢出身の乾さんは雪は嫌いではないらしいから、幼時体験に左右されるのかもしれない。

 あ、電車が近づいてくる気配。踏切の警報が聴こえ、電車の音が聴こえる。雪汽笛、この状況で飲む酒の名としてはまたとなくぴったりだった。

END







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~ Comment ~

NoTitle

電車に酒かあ~~~。それもまた風流なんでしょうね~~~。
・・・私は出不精で電車にも乗らないから、
電車に乗って酒を飲んだことがないにゃ。
(*´ω`)


しかし、今の季節に熱燗を飲みながら、電車に乗ってみたいですね!!

LandMさんへ

コメントありがとうございます。
お酒を飲めるお座敷列車なんてのもありますね。
駅弁とお酒で電車の旅、なんてのもありますね。

電車に乗らないとおっしゃると、出勤は車ですか?

我が家の近くにも線路沿いに居酒屋がありまして、こんなのが雪国のローカル線の駅前にあったりしたら風情がありそう、と思って書いたのでした。

NoTitle

ほんと、男の子ってなんで電車・車好きなんでしょうね。
あのスピードなのか、フォルムなのか。

私はバスは嫌いなんですが、電車は割と好きです。
小説でも、無意識にシーンを組み込んでて。
出会いと別れと、そして他人が交差する場所だからかな。

シゲの場合は、酒のお供として、楽しんでる感じですね。
ちょっとオッサンじみてるところが、彼らしいです^^

limeさんへ

コメントありがとうございます。
おっさんじみてるところがシゲらしい。
嬉しいお言葉です。

34歳とそれほどおっさんでもないんですけど、シゲには自覚もありますし、ある意味、昭和の日本のお父さんですからね。

私はバスも嫌いではないし、電車は好きです。日本中のローカル線に乗ってみたいという夢もあります。
駅、乗りもの、ほんとに、まったく知らないゆきずりのひとと触れ合ったりする場所ですものね。ドラマがはじまりそうですよね。
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