novel

小説388(最後の言い訳)

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フォレストシンガーズストーリィ388

「最後の言い訳」

1・まゆり


 年に一度、フォレストシンガーズが金沢に歌いにくる。彼の歌を聴いていると胸が苦しいと感じたりしたのはひとりよがりだ。二十年も前に彼に恋して、勇気を奮って彼に近づいていき、彼のほうからつきあってほしいと言ってもらって、一年ほどはつきあった。
 遠距離になってしまって別れるしかなくなった彼は、私の想い出の中のひと。なにもしつこく忘れられずにいるわけでもあるまいに。
 二十年の間には恋もした。お見合いもした。結婚には至らなかったのは、彼のせいなんかじゃない。三十六歳になった冬、今年もまた金沢に雪が降り、フォレストシンガーズがライヴを行う。何度か転職して小さな会社の事務員になっている私には、それだけが楽しみだった。
「円熟味みたいなものも出てきたよね。フォレストシンガーズももうデビューしてから十二年……すこしずつすこしずつ売れて、もうこれで地位を確立したんじゃない?」
 ライヴの余韻に浸りながらの帰り道。知らない女性が友人とそんな話をしている。そうよね、きっとそうだ、私には関係ないけど……ううん、関係なくはないんだもの。嬉しいな。
「まゆり、今、どこ?」
「ライヴの帰り」
 コートのポケットで鳴っていた携帯電話を耳に当てると、もはや数少なくなった友人のひとり、篠崎知美の声が聞こえてきた。
「フォレストシンガーズのでしょ? こんなこと、言ったらいけないんだけどね……」
「言ったらいけないことを言うの?」
「言いたいんだもん。まゆりは口が堅いでしょ」
 こんなときに携帯電話で私の批判? 私がなにか悪いことをした? と思ったのだが、そうではなかった。
「うちの旅館にね、まゆりの大好きなひとが泊まってるの」
「……え?」
「ごめん。乾さんじゃないんだよ」
「じゃあ、誰?」
「来る? 今日は金沢でライヴで、明日は富山に移動するんだって。今夜は打ち上げなんかはナシで、旅館に泊まってやすむって聞いたよ」
「ひとりだけ?」
「そうなの。彼は金沢の和風旅館に泊まってみたかったって、こっそり別行動してるのよ」
「……の、だよね」
「そうよ」
 ここでフォレストシンガーズと口にすると、近くを歩いているファンに聞き咎められる恐れがある。だが、まちがいなさそうだ。誰だろう?
「行っていいの」
「来て」
 行くわ、と応じて電話を切った。
 高校時代からの友人であった川口知美とは、一時は疎遠になっていた。彼女は結婚して関西に行ってしまったから、年賀状のやりとり程度になってしまうのは当然だったのかもしれない。しかし、去年の年賀状に知美がこんなことを書いてよこした。
「実は再婚して金沢に帰ってます。詳しいことは葉書には書きにくいから、メールしてくれないかな」
 離婚したとも知らなかった私は驚いたのだが、早速メールをして知った。
 五年ほど前に前夫と離婚して、知美は大阪で働いていた。大阪で知り合った金沢の旅館の息子と再婚して、旅館の若女将になっているという。見習いだけどね、と笑う知美には休日がほとんどないので会うこともままならないのだが、彼女が女将のもとで修行している小さな老舗旅館「小夜月」の近くでランチを二度ほどした。
 その「小夜月」にフォレストシンガーズの誰かが泊まっている? 乾さんではないそうだけど、誰だろう? だからってなにが起きるわけでもないだろうが、胸が激しく高鳴っていた。


「川口知美さんって、フォレストシンガーズのファンクラブに入って下さってました?」
「いえ……」
「そうですか。同姓同名異人かな。俺の記憶ちがいかな。ま、それはいいとして、そっかぁ、あなたがまゆりさんね……」
「あの……」
「なんとなくはね、聞いていたんですよ」
 金沢の和の旅館を体験したいと、「小夜月」に泊まっていたのは三沢幸生さん。若女将の知美とは話もしたようで、私も彼に会わせてもらえることになった。
 もちろん、私だって三沢さんは知っている。フォレストシンガーズのファンならば、メンバー五人の名前と顔が一致するだろう。CDで声を聴けば、誰が歌っているのかもわかるはずだ。私はフォレストシンガーズのファンクラブにも入っているし、公式サイトも常にチェックしているから、一方的には彼らとはおなじみだった。
「乾さんの金沢時代の彼女、高校のときにはじめてつきあったまゆりさん、初恋の女性なんだろうなあって、どんな女性なのかなあって、想像していました。想像にぴったりの、清楚で綺麗な華奢な方ですね」
「清楚だなんて年齢ではありませんけど……」
「年齢は関係ないでしょ」
 話していても甘さのある高い声で、三沢さんがお世辞を言ってくれる。乾さんが、隆也さんが私の話をした? ファンクラブの会報や公式サイトの日記などには、高校時代にはじめてつきあった女性、というのが出てくるから、これは私のこと、私だよね? とひとりで頬を染めたりはしていたが。
「とはいっても、乾さんはなんでもかんでも喋りまくるひとではありませんから、表面的なことだけですよ。あの乾さんが愛した女性って、俺はまゆりさんの名前しか聞いたことがないんだな。だからどうしたって想像が……すみません、失礼でしたね」
「いえ、そんなことは……」
 今夜の宿泊客はみなさん、食事も入浴もすませた時刻だ。知美にもようやく余暇ができたようで、旅館の地階にあるラウンジで三人でコーヒーを飲んでいた。
「それで、若女将さんからまゆりさんのお名前を聞いて、俺がお願いしたんですよ。すみません、無理を言いまして」
「無理なんかじゃありません……あの……」
「他の四人はもっと大きなホテルに泊まってますよ。俺だけが別行動なのは、彼女のところにでも行くんじゃないかって邪推されてるかもね。そんなんじゃなくて、乾さんの育った金沢の、金沢らしい風情に触れてみたかったっていうのかな。まゆりさんは乾さんの自宅、知ってますよね」
「外からだったら見たことはあります」
「外から……そうなんですね」
 親に紹介し合った仲ではないから、互いの家に上がったことはない。私は隆也さんがご両親とおばあさまと暮らしていたお屋敷は何度も何度も見て、こんな家の息子と私では釣り合いが取れないとため息をついたりもした。けど、お嫁入りするんじゃないんだから、別にいっか、と思い直した。
「高校生のつきあいって、かえって親には言わないんですよね。ですから、私は乾さんのご家族とは面識はありませんし、おばあさまの野辺送りにも欠席でした」
「それはわかりますよ。俺も高校のときの彼女の話なんて、家族にはしませんでしたものね」
「乾さんはお元気ですよね。知ってるのに……ライヴ、聴いてきたんですもの。とってもとってもよかったですよ」
「ありがとうございます」
 まゆりさんは今でも乾さんを……言いかけて言葉を切り、いや、いいです、と三沢さんはかぶりを振った。

 
 北陸でも梅が咲く時期になって、三沢さんからメールが届いた。

「あのとき、うちの事務所の社長の友人が、俺に会いにきていたらしいんです。「小夜月」のラウンジまで来たんだけど、美女と三人で話していたから遠慮しておいたとあとで聞きました。
 社長の友人ってのは金沢在住で、バツイチの六十二歳。初老なんですけど、ダンディなおじさんですよ。
 彼は香林坊で和風喫茶を経営しているんです。バツイチとはいっても子どもはいません。聞くところによると、東北で結婚して離婚して、故郷の金沢に帰ってきたそうですから、知美さんと似た立場かな。

 もと妻とは性格の不一致で別れたそうで、むこうから離婚を切り出されたと聞きました。
 どうしてこんなプライベートなことを書くのかといえば、彼、松原隼平氏に頼まれたからなんです。
 三沢さんが向き合っていたふたりの女性のうちの、ひとりは「小夜月」の若女将だと知ってる。もうひとりの女性はどなたかな? 樋口まゆりさんとおっしゃる? 独身なんですね。私の半分くらいの年齢かな? ひと目惚れなんてあつかましいだろうか。紹介してもらえないだろうか。
 紹介してもらえるんだったら、私のバツの話などはしておいてほしい、だそうでした。

 あとはまゆりさんのご判断におまかせします。断ってもらってももちろんいいんですよ。会うだけ会ってみてもいいとおっしゃるならば……」

 そんな文面のメールを見て、戸惑いを覚えた。六十二歳? 四十二歳だったらよかったのに。私は三十六歳だから、同年代の男性が選んでくれるとも思えないが、せめてぎりぎり四十代だったらな。六十二歳だと父と五つしかちがわないじゃないの。
 だけど、会ってみようかな。こんな私にひと目惚れしてくれるなんてご奇特な男性は、これが最後の出現なのかもしれないのだから。


2・隆也

 金沢にいたころにはおぼこい少年だったけれど、上京してからは純でもなくなって幾度も恋をした。
 香奈、純子、菜月、緋佐子、美里、それからそれから……交際に至った女性だけでも何人もいる。好きになって告白してふられた相手や、ゆきずりのような形で触れ合っただけの女性もいる。むこうが俺を好きになってくれて、告白してくれたひともいる。片想いをしてくれたひともいる。
 なにかのきっかけがあれば、そのひとを想い出す。
 その中でももっとも頻繁に想い出すのはまゆりだ。彼女は俺の初カノジョ。初恋というのでもないのだろうが、はじめてつきあった女の子だ。
 故郷を想うと、祖母とまゆりがワンセットになってよみがえる。
 十六で恋人同士になり、十八で別れたひと。それからは一度も会っていないから、まゆりは俺の中では少女の姿で固まっている。セーラー服、体操服、スクール水着、夏の軽装、紺のコート、ふたりきりでデートしたときの、可愛いフレアスカートやフリルのブラウス、赤い花が咲いた浴衣。
 長い髪が風に揺れて、俺を見上げて微笑んだ顔。乾くんなんか嫌い、とすねて横を向いた赤い頬。泣き顔を見つめてどうすることもできなくて、困り果てていた俺。
 ああ、青春だなぁ。
 歌を書くようになってからは、まゆりを想い出して詞や曲を作った。歌うときにもまゆりをイメージすることもある。俺が金沢で生まれて育ったということは永遠に消えないのだから、他の誰を忘れてしまったとしても、まゆりだけは忘れない、絶対に祖母は忘れないのと同じくらいに。
 東京の大学に進学した俺と、金沢の短大に進んだまゆり。あのときに俺たちの仲がおしまいになった。その年の暮れには帰郷したってのに、どうして俺は彼女に連絡を取らなかったのだろうか。あのころは携帯電話も持っていなかったから、親に紹介もしてもらっていない俺が、まゆりの自宅に電話をかけづらかったからか。
 寂しい夜に東京でまゆりに手紙を書き、読み返して未練がましさに吐き気がしそうになって、破り捨てたこともある。そうこうしているうちに香奈と恋をして、まゆりを忘却のむこうに置いてきた。
 きみだって新しい恋をしているよね。まゆりを好きになる男はいくらでもいるだろ。俺が香奈と恋人同士になってきみを忘れたのと同様に、きみだって俺を忘れただろ。十代の恋愛なんてそんなものなのかもしれないね。まゆり、さよなら。
 言い訳めいたひとりごとを言ったりもした。
 そうして俺は三十代半ば。同い年のまゆりも立派な大人の女性になったはずだ。想像してみると、俺の母のような和服姿の美女が浮かんでくる。
 ね、まゆり、俺は独身だけど、きみは結婚したんだろうな。中学生と小学生の子どもがいたりして? フォレストシンガーズの乾隆也を知ってくれている? 俺の歌を一度でも聴いてくれたことはある? 隆也くん、ますます歌が上手になったね、って、俺の歌声に陶酔していてくれたらいいな。


3・まゆり

 豊かな髪はほとんど白髪で、おなかがちょっと出ている。肥満というほどでもないが恰幅はよくて、和風喫茶の経営者というだけあって、松原さんはあかぬけた雰囲気を持った男性だった。
 三度ほどデートをして、こんなに年上でもよかったらつきあってもらえますか、と言ってもらってうなずいて、秋にはプロポーズされた。
「松原さんと結婚ねぇ……」
「いや、まゆりさえいいんだったら、お父さんもお母さんも反対はしないけどね」
「六十二歳の男性とだと、子どもは持てないよね」
 父と母は困惑顔を見合わせ、私は言った。
「私だってもう三十七歳になるんだもの。子どもはできない可能性のほうが高いと思うよ。結婚ももう諦めていたけど、松原さんはいいひとだし、望んでもらってるんだからいいんじゃないかな」
「そうねぇ。松原さんとだったら金沢で暮らせるものね」
「わしの弟みたいな年齢だけど、まゆりの年からしても仕方ないのかもしれないな」
 両親と知美には紹介はしていたので、知美は言った。
「恋愛結婚っていうんじゃないんだよね」
「お見合いみたいなものじゃない? 今まで何度もお見合いしてるけど、松原さんがいちばんしっくりしたのよ」
「この年になると、恋愛と結婚は別なのかもしれないね。まゆり、おめでとう」
「ありがとう」
 たしかに恋ではない。私が好きになり、彼も私を好きになってくれた男性と結ばれるのが最高の幸せだと考えるほどには若くない。うんと年上の穏やかで優しいひとと結婚して、静かに寄り添って生きていく幸せもいいものだと心から思えていた。
「ご縁のある相手とは、そうやってとんとん拍子に進むものなのね」
「そうね、ご縁があったのよ」
 職場のほうではびっくり仰天された。
「えーっ、結婚?」
「樋口さんが結婚するんですか」
「彼氏、いたの? いつの間に……」
「で、相手は?」
 バツイチ六十二歳と話すと妙に合点され、和風喫茶の経営者だと言うとうらやましがられたりもした。金沢一の繁華街、香林坊にお店があるので、彼を知っているひともいた。
「ああ、あのマスターね。お年のわりにはかっこいいよな。かっこいいだけに……バツイチだろ。金を持ってるし、あれでけっこう遊んでたんじゃないかな」
「樋口さん、いいの?」
「面白い話、してあげようか」
「聞きたくありませんから」
 仕事は辞めて彼のお店を手伝うことに決まっている。そんなことをして、離婚になったらどうするの? 会社は辞めないほうがいいよ、親切ごかしに忠告してくれる知人もいたが、ふたりで決めたことなのだ。
 結婚式まではお店に行くのは控えていたが、閉店後に出向いて松原さんと会うことはある。その夜にも後片付けの手伝いをしていると、店に入ってきた男性がいた。
「すみません、もうクローズしたんですけど……」
「まゆりちゃん、彼だったらいいんだよ。僕の友達だ」
「はじめまして、まゆりさん。山崎です」
「ああ、オフィス・ヤマザキの……」
 遠い昔に乾隆也という男性とおつきあいをしていた。彼は大人になって歌手になった。乾隆也の仲間である三沢幸生が、金沢に来て私の友人が若女将をしている旅館に泊まり、まゆりに会いたいと言ってくれた。三沢幸生が所属する事務所の社長、山崎敦夫氏の友人である松原隼平が偶然に私を見かけ、好きになってくれた。
 小さな縁と縁がからまり合って、結婚することになった。えにしの輪のうちのひとつ、山崎敦夫さんだ。はじめて会うにも関わらず、なつかしいひとのような気がした。


4・隆也

「乾、これ、預かってきたよ」
「なんでしょうか」
 社長が差し出したのは金の縁取りのある白い封筒。結婚式への招待状だ。開封すると、松原隼平、樋口まゆり、との名前が目に飛び込んできた。
「三沢はきみには話してないんだろ。なんだか言いにくくて、って言ってたけど、決まったらしいんだ」
「まゆりって……社長はごぞんじだったんですか」
「それも三沢から聞いたよ。乾が時々書いてる、金沢時代のハツカノってやつなんだよな。ハツカノなんて言葉、二十日みたいだな」
 じっくり話そうか、飲みにいこうと誘われて、社長行きつけのバーに移動した。
「そんな事情がね……」
「偶然なのか、三沢のお節介のせいなのか、なにがこうしてこうなって、まゆりさんと松原が結婚することになったんだよ。奪い返しにいくか?」
「まさか。過去ですよ」
「だよな」
「松原さんって方は、その過去を知っておられるんですか」
「まゆりさんが話したらしいぞ。過去といえば過去なんだから、気にしてはいないようだな」
「そりゃあそうですね」
 今年のはじめに金沢でライヴがあったときに、幸生がひとりで旅館に泊まるとは聞いていた。
「いつも泊まってるのはなんの変哲もない観光ホテルみたいなところでしょ。せっかく金沢にいるんだから、金沢らしい和の旅館に泊まりたくて探したんですよ。俺は別行動しますから」
「彼女とお忍びの逢瀬だとか?」
「そうかもしれないわよん」
 その幸生の行動がこんな縁を産んだのか。
 「小夜月」という金沢の老舗旅館。金沢にはそのたぐいの旅館は無数に近いほどにあるのだから俺は知らなかったが、そこの若女将が知美さんという。旧姓は川口、現篠崎知美。彼女はまゆりの高校時代の友人だ。ということは、俺とも高校が同じだ。
 川口知美、その名は記憶にある。本人ではなく彼女の妹がその名前を騙って俺に近づいてきた。そんな手の込んだことをしなくても……とはいえ、そうしなかったら俺は彼女をファンのひとりとしか見ていなかっただろう。まゆりの友人だと思い込んだ彼女、本名は知らない彼女とは一度だけベッドをともにして、それっきりになった。
 それはそれとして、本物の知美さんの夫が経営者である「小夜月」に幸生が泊まったのも偶然。そうと知って松原さんが訪ねてきたのも偶然。そのときたまたままゆりが幸生や知美さんと話していたのも偶然。けれど、松原さんがまゆりに恋をしたのは必然だったのか。
「松原は六十代の再婚なんだけど、まゆりさんは初婚だろ。松原は金沢で喫茶店をやってるから、仕事上の関係者へのお披露目って意味もあって、それなりの式を挙げるそうだ。フォレストシンガーズ全員が参列するのは大げさだろうけど、乾は行くか」
「……そうですね。さてさて、どうやって幸生を問い詰めてやりますかね」
「なんだったら三沢とふたりで結婚式のお招きにあずかって、デュエットでもやるか」
「それもいいですね」
 そうだったんだな、俺は勝手にまゆりの現在を想像して、優しいお母さんになっているものと決めつけていたけれど、きみはずっと独身でいたんだ。ずっと金沢で暮らしていたんだ。
 だったら、偶然が別の作用をすればよかったのに。
 ライヴや他の仕事でも、親の家に行くためにも、俺は年に二、三度は金沢に出かけていく。祖母の墓参りを思い立って、ふらりと飛行機に乗ったりもする。どうしてそんなときに、偶然にまゆりに会えなかったんだ? 運命の神はいたずらで気まぐれだから、俺ではなく幸生と会わせたのか。
 恋心は遠き日の甘い香り。なのだから、未練があるわけでもないけれど。
 失恋というのではなく終わった、まゆりとの恋。それゆえにいつまでも甘く切なく心に残っていたのかもしれない。俺は心でまゆりに言い訳ばかりしていた。
 これで本当にさよならだね。きみの結婚式で歌いたい。愛していたよ、と過去形で、きみに歌を捧げたい。結婚式ではこんな歌はタブーだろうけど、最後にまゆりに聴いてもらいたかった。

「いちばん大事なものが
いちばん遠くへいくよ
こんなに覚えた君の
すべてが思い出に

いちばん近くにいても
いちばん判り合えない
こんなに愛した僕の
すべてが言い訳になる」

END









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~ Comment ~

NoTitle

テンプレが変わっている!!??
Σ(・ω・ノ)ノ!

フォレストシンガーズももうデビューしてから十二年。。。!!!
フォレストシンガーズも時間を経過しているということですね。。。
成熟してからこそ流行るグループもありますからね。
最近は円熟されてグループのファンもいますからね。。。
そういうことを考えると長くやっているグループ素晴らしいですね。

こちらは小説収めとなります。
今年一年訪問誠にありがとうございます。
本日で今年最後のコメントにさせて頂きたいと思います。
一年間お世話になりました。
来年もよろしくお願いします。良いお年をお迎えください。
(*^^)v

LandMさんへ

いつもありがとうございます。
クリスマスが終わりましたので、テンプレはシーズンにはあまり関係ないものにしました。
たぶん、桜の時期が近づいてきたらまた変えます。

フォレストシンガーズは最近はストーリィの中では時を止めていますので、時間的には矛盾も出てくるかと思いますが、どうかおおらかに受け止めてやって下さいね。

彼らを書き始めてからでも、八年以上がたちました。
著者は進歩じゃなくて退化していそうな気がしますが、フォレストシンガーズは成長しております。

こちらこそ、2015年はとてもとてもお世話になりました。
来年もなにとぞよろしくごひいきのほどを。

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