茜いろの森

□ forestsingers □

FS俳句・短歌・超ショートストーリィ2015/12

2015/12 超ショートストーリィ

ネガティヴな性格では絶対にないつもりなのに、こうも売れないと……と悲観したくなる。
 売れないとはいってもデビューしてからまだ一年余り。デビュー前から話題になって、CD発売と同時にヒットチャートナンバーワン!! だなんて、俺たちはそんなグループじゃないのだから。

 フォレストシンガーズのリーダーとして、俺はみんなを鼓舞しなくてはならない。
 これからだ、そう、これからだ。明日こそ、明日こそ。

 合言葉のごとくそう言い交しているうちに、デビュー二年目の今年も暮れていこうとしている。時のたつのが早すぎて、俺たちは置いていかれそうになっているのか。

「本橋、見てみろよ」
「ん?」

 それでも仕事はあるのだからありがたい。冬のわりにはあたたかい九州にやってきている俺は、今夜、宿泊させてもらうヘルスセンターの窓から外を見ていた。乾が窓を開けて指さす。そこには緑いろの小さな生き物がいた。

「カエルだ」
「カエルって冬眠するんだよな。あいつはなんだか寝ぼけ面をしてないか?」
「うん。おまえみたいにボケた面をしてるよ」
「あれは、してみると……うん、本橋くん、あいつは冬眠中だったんだけど、急に起きたんだ。それであんなふうにぼーっとしている。冬眠中はものを食わないから、痩せてるんだよな」
「腹が減って起きてきたのかもしれないな」

 と、そこに、犬があらわれた。食い物を探しに出てきたはずのカエルが、犬の獲物にされようとしている? 犬は雑食なのだから、カエルでも食うのではないだろうか。
 寝ぼけガエルはぴょーんと飛び跳ねて逃げていく。逃げろ、がんばれ、とカエルに声援を送っていると、思い出した。

 今年の誕生日に乾が、俺に短歌をプレゼントしてくれた。
 今日は誕生日でもなんでもないが、俺もお返ししよう。俺だってこの有名な俳句だったら知っている。俺たちの状況にも似合う俳句だった。

「やせ蛙まけるな一茶これにあり」小林一茶

 やせ蛙の仲間である俺たちも負けない。そうさ、負けるもんか。


SHIN/ 二十五歳の年の瀬に

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Date:2015/12/15
Trackback:0
Comment:2
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Thema:ショート・ストーリー
Janre:小説・文学

Comment

* NoTitle

負けるもんか!!
・・・という心意気は大切ですね。
・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・。
私も30歳を過ぎて忘れかけていた思いだなあ、、、。。。
読んで、若さの勉強になりました。
(´▽`*)
2015/12/17 【LandM】 URL #- 

* LandMさんへ

いつもありがとうございます。

今回のこの「…………」は……と、深く考えていると言う意味だと解釈すればよろしいでしょうか。

負けず嫌いは悪く言われることもありますが、負けてもいいや、と思うのも力が抜けていいこともありますが。
やっぱりね、負けっぱなしはあまりよくありませんよね。
心意気だけでも、必ず最後に愛は勝つ~♪

あれ? ちがいましたっけ?
2015/12/18 【あかね】 URL #- 

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