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パロディ「太陽にほえると疲れる」

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おことわり

テレビドラマ、「太陽にほえろ」初期のころをごぞんじない方にはさっぱり意味不明かと思われますので、そんな方は読まないで下さったほうがいいかと思われます。それでも読んだとおっしゃる方がおられましたら、ご質問などもお待ちしております。



「太陽にほえると疲れる」


 彼の顔を見た瞬間、野崎太郎の脳裏にあのころが蘇った。
 あのころ、といえば何年前だ? 三十年も前か? 野崎も現役で、七曲署の刑事として日夜、忙しくも慌ただしくもあり、振り返れば絶頂期だったとも思える男盛りの日々をすごしていた。

「すると、あなたはマカロニの……」
「俺の兄を覚えていて下さったんですね。早見という姓で……」
「姓だけではありませんよ。あなたは兄さんと顔がそっくりだ」
「兄を知っている方にはよく言われます」

「マカロニに弟さんがいたとは、知りませんでしたけどね」
「兄は天涯孤独で、家族はいないって言ってたんですよね」
「私もそう聞いてましたが、縁遠くなっていただけだったのかな」
「両親は亡くなっていたんですけど、弟がひとりだけいたんですよ」
「それがあなた、ですな」

 ボス、ゴリさん、山さん、殿下、そして、長さんと呼ばれていた野崎、そんなメンバーの七曲警察署にやってきた新人刑事、早見淳。野崎が所属していた刑事第一課・捜査第一係では、仲間たちを愛称で呼び合っていた。
 あのころには流行っていたかっこいいスーツに身を包み、銃を持った早見淳はマカロニウェスタンの登場人物のようだと言ったのは、殿下という愛称の島公之だったか。それから早見は「マカロニ」と呼ばれるようになった。

「俺も兄とは疎遠になっていまして、兄が刑事になったとも知らずにいました。兄が死んでかなり経ってから連絡が届きましてね、俺は外国にいたから知人にまかせてしまって、それからまたかなりしてから日本に帰って来て……」
「そうだったんですね」

 仕事で負傷した石塚誠、通称ゴリさんの見舞いに出かけた帰り道、通り魔に刺されてマカロニは死んだ。職務中に襲われたわけではないので殉職にも当たらず、一種、犬死にだったといえる。
 マカロニの死後も七曲署には何人もの新人刑事が赴任してきては、あるいは命を落とし、あるいは去っていった。野崎は若者たちを出迎え、見送る立場だった。

「他のみなさんも……」
「そうだねぇ。あのころの仲間たちはみんな死んで、残っているのは私だけだよ。だからあなたも訪ねてきて下さったんでしょ?」
「ええ、まあ、それもあるんですが」

 生きていればマカロニも五十代だろう。野崎はとうに警察を定年退職した。野崎の前にかしこまってすわっている、マカロニの弟だって五十歳に近い年齢に見える。彼は膝で一歩進んで言った。

「兄は刑事のくせして不良っぽかったんでしょうけど、彼は彼なりに、警察官として世間のお役に立ちたいと考えていたはずです。俺も兄の志を継いで……」
「あなたも刑事に?」
「そのつもりではあったんですが、刑事にはなれなくて……」
「ああ、そうなんですか」

 もしかして、刑事になれたら七曲署の誰かに挨拶に来ようと思っていたのだろうか。が、もたもたしているうちに兄の先輩たちは皆、先に逝ってしまった。今や残っているのは野崎ひとりだ。手遅れにならないうちに訪ねてきたのかもしれない。

「それでも、交番勤務でがんばってます」
「そうですか。今後も引き続き、がんばって下さい」
「はい、俺も吠えます」

 がおーっと吠えてみせてから、マカロニの弟は咳こんだ。そんな年なのだから致し方ない。無理をしない程度に吠えましょうな、お互い、と野崎は苦笑してみせた。


END


追記

 調べてみたら「太陽にほえろ」のキャラはほとんど亡くなっているのですね。ドラマ中で死ななかった方は、現実で亡くなっています。そこで時代を十年ほど前に設定して、唯一生きていた(野崎太郎さんを演じた下川辰平さんも、2004年に逝去)長さんに登場してもらいました。
 マカロニを演じたショーケンは生きていますので、長さんを別人に演じてもらって、短いドラマにしてもらえないかなぁ、なんて考えて書きました。




 

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~ Comment ~

NoTitle

マカロニは、リアルで見てないので分からないのですが、私はドクがだいすきでした。(神田正輝さん)彼は殉職しなかったかな? 殉職キャラではなかったのかも。
そしてちょっとしかいなかったけど、三田村邦彦さん(愛称をわすれてしまった)が加わった時も、嬉しかったなあ。
彼も、石原軍団のキャラではなかったのか、すぐに消えてしまったけど。
私は西部警察が好きだったので、ときどきキャラが混同してしまって・・・。
でも昔の刑事ドラマって、ハチャメチャで楽しかったですよね^^
今はなんとなく、大人しすぎて・・・。

limeさんへ

コメントありがとうございます。
limeさんもあの時期の太陽にほえろ、お好きだったのですね。
私も、ドク、ボギー、ラガーのいた時期がいちばん好きで、そのあとはだんだん見なくなっていきましたね。

マカロニは実はあまりよく知りません。テキサスのころから見始めたのだったような……。

この短編はただ、太陽にほえると疲れる年頃になったなぁ、と言いたいだけなのですが、読んでいただいて嬉しかったです。

三田村さん、ニックネームは私も忘れてしまいましたが、心臓が右にあるっていう、ひねくれキャラでしたよね。
あの四人はよくパロディにされてました。あのころにネットがあったら、どれほどBL小説にされていたか……文字でそれっぽくされていましたけどね……なつかしいわぁ。

西部警察は見ていないのですが、刑事もの、多かったですよね。
最近は流行らないのかな。

ようやくlimeさんのイラスト、使わせてもらえるようになりました。
なかなかその数字に到達しなかったのですけど、到達したらあっという間にすぎてしまって。
近くアップさせていただきますね。
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