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FS俳句・短歌・超ショートストーリィ2015/11

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2015/11 超ショートストーリィ

 闇の中、とはいっても都会の道端だから、真の闇ではない。外灯のあかりがぼんやりと照らす闇の中に、ぽっと赤いものが見えた。

 ぽっと赤いものがこちらにひとつ。
 あちらにはふたつ。ふたつのほうは赤というよりも金いろだ。

「……薄ぼんやりした闇の中に黒い姿……あ、猫だ!!」
「猫? はて?」
「乾さんには見えませんか。ほらほら、ほら、猫が走っていく」
「おまえって猫となると動体視力が異様なほどになるんだな」
「そりゃあもう、猫おたくのユキちゃんですから」

 赤いものは乾さんがくわえている煙草の火で、ふたつの金いろは、走り出す前の猫の瞳だった。

「過(よ)ぎるらむとするのか否か不明にて歩道に来たる黒猫ひとつ」斎藤茂吉

 煙草のけむりとともに、乾さんがお得意の短歌を口から出す。こんなに只今の状況にぴったりの短歌が即座に出てくるとは……ん? しかし、猫ってひとつか? 悩みつつ俺も煙草をくわえたら、恐れ多くももったいなくも、乾先輩が火をつけてくれた。


YUKI/ 二十九歳の晩秋に

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