番外編

FS超ショートストーリィ・四季のうた・全員「四季の文(ふみ)」

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フォレストシンガーズ・超ショートストーリィ・四季のうた

「四季の文(ふみ)」

「拝啓
 ゆく秋の感慨も深く 俺の心も感傷的になる。
 こんな季節だったら詩が書けないだろうか。

 書けないのかなぁ、俺には」

 詞を書くつもりが詩にもならず、手紙のようなものになってしまった。拝啓って、誰に出すんだよ、こんな手紙。苦笑いで自分の書いた文面を眺めていた、繁之、二十一歳の秋。

「明けましておめでとう
 ってさ、別にめでたくもないけどさ。

 去年の秋にデビューしたよ。
 CDも出したよ」

 ただそれだけの年賀状を母に出した、章、二十二歳の新春。

「風に舞う花吹雪が目に眩しい今日この頃

 まゆり、元気にしていますか?
 俺は本日、東京に到着しました。
 はじめてのひとり暮らし、ひとりの夜。

 十八にもなった男は寂しいなんて言えないけどね。
 いや、寂しくなんかないけどね。

 ただ、きみに会いたいよ」

 センチメンタルにすぎて恥ずかしくて、隆也、と署名もせずに破った手紙。

「暑中お見舞い申し上げます。
 ユキちゃんから葉書をもらったって、びっくりしてくれた?
 喜んでくれてる?

 仕事で海に来てるんだよ。
 仲間はいるけど、ここにきみがいたらなぁ。

 海に沈む夕日を見ると、きみを思い出すんだ。
 東京に帰ったらデートしようね」

 同じ文面で五枚の葉書を書いて、気になる女の子たちの住所と氏名を綴り、ポストに投函した、幸生、二十二歳の夏。

「メリークリスマス!!

 ごめんな、クリスマスデートの約束を破って、悪い。ごめん!!
 この埋め合わせはするから、ごめん!!」

 今から出したところで、カードが届くのはいつになることか。そんなのだったら出さないほうがいいのかな。これ以上は書くことも考えつかず、どっちつかずの気持ちを持て余していた、真次郎、二十四歳のクリスマスイヴ。

「拝啓 時下ますますご清祥のこととお喜び申し上げます
 このたび、我々フォレストシンガーズはメジャーデビュー十周年を迎えました。

 ファンクラブ発足以来、ずっと会員になっていて下さるみなさまに、ささやかながら感謝をささげたいと存じます。
 つきましては、発足当時からの会員のみなさま限定の、シークレットな集いを開催いたします。
 このお知らせが届きました方は、ぜひぜひいらして下さいね

 フォレストシンガーズ一同、心よりお待ち申しております」

 世の中が全体に筆不精になっているのは、メールがあまりにも発達したからだ。
 そんな世の中でこんな便りを出せるようになった、フォレストシンガーズ全員が三十路を過ぎた春。

END









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~ Comment ~

NoTitle

メリークリスマス!!
・・・のご時世になりましたね。
(*´ω`)

まあ、私はいつも通りクリスマスは仕事!!
・・・と決めているので。

誰もかれも。
クリスマスの生き方があるということですね。

LandMさんへ

いつもありがとうございます。

そっかー、今日はイヴだなぁ、と思うだけ。
私の場合はそんなふうです。
もう何年もなにもしていません。

ハロウインもクリスマスも、楽しむ方は目いっぱいどーぞー、ですね。

NoTitle

それぞれの手紙に、それぞれの性格がにじみ出ていますね^^
章、そっけなさすぎ~w

うん、直筆の手紙って本当に書きませんよね。
ちゃんとした手紙の書き方を忘れてしまいました。
日本人として…いいのかこれでとは思いますが、自分の字のきたなさと、感じのど忘れの酷さ等々・・・。
やっぱり、メールかLINEになっちゃいますね^^; 

シークレットなファンの集い、これはファンにとっては嬉しい便りですね。

limeさんへ

コメントありがとうございます。

それぞれの……
と言っていただけてとても嬉しいです。
章はこれでも精一杯、母ちゃんも喜んで、って感じですね。

私も昔は手紙が好きで、同じような手紙好きの友人と長文でやりとりしたりしていたのですが、ほんとに最近、まったく手紙を書きません。

メールも用事がないと書きませんが。

書く、となると嘘ばっかりの小説のほうが楽しいです。
自分の「現実」を文章にしてもつまらないんですよねぇ。

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