ショートストーリィ(musician)

「続・明日天気になあれ」

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明日天気になあれ」の続編です。


「続・明日天気になあれ」


1

 フォークデュオなんてものは今どき流行らないようだが、いくつかは人気のあるグループもいる。そのうちのひとつ、デイジーリリック。

「え? 冗談でしょ」
「冗談だったらよかったんだけどね」
「園絵さんが……デイジーリリックの……コトの……」

 日本人ならたいていは知っている、国民的デュオと呼んでも言い過ぎではないかもしれない。デイジーリリックはコトとキクの二人組だ。

 幼稚園のときに互いに初恋を感じ、中学生になって再会し、石崎詞が千田園絵に告白して、高校生になるころにはカップルになっていた。高校は別々だったのだが、大学生まではコトバとソノエはどこにでもいるカップルだった。

 高校で知り合った大村喜久雄とコトがデュオを組み、ストリートライヴなどをやっていたのは、ソノも応援していた。
 大学生のとき、デイジーリリックがスカウトされてプロになり、売れない日々に疲れていたコトに、彼の父親がアドバイスしたのだそうだ。

「ソノちゃんと結婚しろ。男は妻子がいたほうが覚悟ができてがんばれる。ソノちゃんだったら安心だよ」

 ためらったり迷ったりしたあげく、ソノとコトは二十代前半で結婚した。

「売れないままのあんたのほうが
 こんなあたしには似合ってた」

 そんな歌があるが、まさしくその通り。コトが売れないままだったとしたら、ソノとは夫婦でいられたかもしれない。コトは歌手を続けていくのを諦めて平凡なサラリーマンになり、子どももできて、三十代の平凡な夫婦として生きていたかもしれない。

 ともあれ、デイジーリリックは売れた。

 コトにはソノちゃんっていう彼女がいていいなぁ、と羨んでいたキクは、人気女優の長谷繭香と結婚して、コトよりも先にお父さんになった。コトも人気女子アナと再婚した。コトは既婚だとは発表していなかったのだが、戸籍上はバツイチなのだから、女子アナにはなんと言い訳したのだろうか。

 バツのひとつやふたつ、あのクラスの女子アナでも気にしないであろうほどに、コトは大スターになっていた。

「……園絵さんが、石崎コトバの……コトの……」
「信じられないだろうけど本当よ」
「コトって結婚してるって言ってたっけ。赤崎真美と結婚したときに、再婚だなんて発表はしなかったんじゃない?」
「発表はそうだったよね」

 おまえみたいな女がデイジーリリックのコトの奥さんだなんて、恥ずかしくて発表もできやしない。キクの奥さんはあのハセマユカで、俺の妻はこの太ったイモっぽい女? たまんねえよ。

 スターなんてものになっていなかったころのコトは、ぽっちゃりしたソノは俺のタイプだと言っていたくせに、人は変わる。心だって変わる。そうまで言われ、心底疎ましいまなざしを向けられ、コトはろくろく家に帰ってもこなくなったのだから、ソノから離婚を切り出した。

 デイジーリリックの所属事務所が代行する形で、離婚は粛々と進んでいった。ソノは旧姓の千田に戻り、結婚していたころとさして変わらぬひとり暮らしになって、平凡な会社員にも戻った。事務所からは慰謝料やその他諸々の話も届いたが、たいていは断った。

 マンションだけはもらったのだが、もとより、この部屋に石崎詞が住んでいたと知る者はほとんどいない。彼はデイジーリリックではコトとだけ名乗っているので、本名すら知る者は少ない。結婚していたとも世間には知られていないのだから、園絵の存在だって身内や友達しか知らなかった。

 会社員に戻って地味に働きはじめて数年、マンションは売って転居した。新しい暮らしにも慣れたこのごろになって、同じ部署に転勤してきた俊春が園絵に関心を示すようになった。

「千田さんは千。俺は百瀬だから百。縁のありそうな苗字だよね。飲みにいかない?」
「私のほうが十倍の苗字だから、お金も十倍出すべきかな」
「いや、半々にしようよ」

 軽いやりとりをかわして、はじめてふたりきりで飲みにいった。何度目かにふたりで飲んだ今日、百瀬俊春は千田園絵に告白したのだった。

「私、バツイチだよ」
「なんとなく、噂は聞いてたよ」
「私、百瀬さんよりもふたつ年上だよね」
「そんなことは気にならないよ。ふたつなんて同い年みたいなものでしょ。園絵さんは俺が嫌い?」
「嫌いではないんだけど、うーん、これは別に……関係ないといえばいえるんだけど……」

 こういった重大な情報を秘密にしておくのはフェアではない。園絵は思い切って、私の前の夫は……と打ち明けた。俄かには信じがたい様子だった俊春は、受け入れるとびっくりしまくって、あげくは言った。

「そっかぁ。コトって面食いだって言ってたよ。園絵さんの若いころは美人だったんだろうな。……ん? あれ? そしたら今は美人じゃないって意味……いや、そういう意味じゃないから」
「三十すぎの太ったおばさんは、若いころだってぽっちゃりしてたよ。百瀬さんって正直ね。昔は美人だったのかもしれない私なんかのどこがいいの?」
「中身がいいんだよ」

 いいや、きみは綺麗だ、なんて言われたとしても、園絵も白けてしまっただろう。俊春の身も蓋もない告白に、むしろ気持ちが傾いた。

「百瀬さんさえよかったら、交際させて下さい」
「ありがとう。嬉しいよ」

 背が高くて引き締まった筋肉質で、甘い容貌を持っていたコト。三十代になったデイジーリリックのふたり組は、コトがルックスで、キクが音楽性や歌やひょうきんな持ち味で人気がある。その人気は揺るぎなかった。

 ルックス的には俊春はキクに近いかもしれない。キクはコトよりもかなり背が低いのに、体重は多いらしくて、三人で仲良しだった時代には言い合ったものだ。

「キク、ダイエットしろよ。太ってると女の子にもてないぜ」
「ソノちゃんはコトにもててるんだから、ぽっちゃりしてるとかっこいい女の子にもてるんじゃないの?」
「女の子はぽっちゃりしててもいいんだよ。おまえ、男だろ。それに、なんだよ、その言い方は」
「……あ……ごめん、ごめんね、ソノちゃん」
「いいんだよ。ほんとのことだもん」
「ソノ、卑下するな。俺はソノの体型も好きなんだから」

 あのころはなんと遠いのだろうか。ソノのやわらかな頬、丸い肩、胸よりもふくよかな腹部、赤ちゃんみたいにぽちゃぽちゃの腕や脚、みんなみんな好きだよ、とコトが言って、両頬をあの綺麗な両手ではさんでキスしてくれた。
 
 なにかが狂いはじめたのは、デイジーリリックがブレイクしてからだ。キクが長谷繭香と結婚すると発表したのを聞いて、コトの気持ちも暴走をはじめた。

 暴走ではなかったのかもしれない。最初からまちがっていたのかもしれない。
 ちっともかっこよくもなければ、特にはとりえもなさそうなこの男、俊春が私には似合いなのかもしれない、交際を受け入れたソノを見て嬉しそうに笑っている彼に、ソノも笑いかけた。

 
2

「ものすごく久しぶりだね、元気にしてる?
 コトもソノちゃんのこと、気にしてるよ。うちの奥さんもソノちゃんとコトのことは知ってるんだ。もちろん無関係な人には誰にも話してないけど、コトと離婚したソノちゃんのことはうちの奥さんも気にしてるよ。

 先日はメールをありがとう。ソノちゃんの婚約者って男性からのメールだったからびっくりした。信用しなかったわけでもないけど、僕の立場上きちんと調べさせてもらったよ。本当だったんだね。百瀬俊春さん。よかったね。

 寂しくしているソノちゃんを見るのは僕もつらいから、会いたいとも言えなかったんだけど、近く再婚するんでしょ? だったらもういいよね。僕んちに遊びにこない?

 もちろん、奥さんも大歓迎だってよ。娘の繭遊も息子の琴遊も大きくなったし、一度はソノちゃんにも会わせたいんだ。
 ぜひ来て。返事を待ってるよ」

 大村喜久雄の名前で届いたメールに、ソノは相当に驚いた。

「これ……」
「あ? ああっ、キクがこんなのくれたんだ。本当だったんだね」
「……どういう意味?」

 コトがソノを気にしているなんて嘘だ。ソノが真っ先にひっかかったのはそこだったのだが、他もひっかかりまくるメールだった。

 つまりは俊春がキクにメールをして、キクが誰かに調べさせ、俊春がソノの婚約者、というよりも婚約するかもしれない段階だが、それはまちがいないと判明したのだろう。俊春のメールだけで信用するわけにはいかない、僕の立場上、と言うキクの立場はわかる。

 細かく調べて俊春のメールに嘘がないとわかったから、キクがソノにメールをしてきた。どうしてキクにメールなんかしたの? どうしてキクは俊春さんじゃなくて私に返事をよこしたの? ソノは俊春に質問を浴びせた。

「いや、まあ、ソノちゃんの言うことを疑ったわけでもないんだけど、本当なのかなぁって……いやいや、だからさ、デイジーリリックの所属事務所にだったらメールはできたから、コトの元妻の婚約者ですって名乗ってメールしてみたんだよ。無視されてもいいつもりだったんだけどね」

 すると、事務所としては脅迫でもされると思ったか。コトがバツイチだとは発表されていないのだから、ソノの存在が明るみに出るのは由々しき事態なのかもしれない。

「長谷繭香とキクの家庭に招かれたって、ソノちゃんはほんとにすごいね」
「……そんな単純なものなんだろうか」
「なにか問題アリ? 行こうよ。行きたいな」
「俊春さんがメールをしたのはまちがいないんだね。じゃあ、もうちょっと待って」

 脅迫メールだなどと思われては心外だ。ソノは改めてキクに返信した。

「突然で驚かれたことと思います。言い訳になりますが、私の婚約者が私の知らないうちにメールしたみたいで、ご迷惑をかけてすみません。

 デイジーリリックさんのご活躍は、陰ながら嬉しく思っております。
 これからもなおいっそうの躍進を願い、心より応援しています」

 当たり障りない文面で言い訳メールを送る。キクからのメールには彼個人のケータイメールアドレスが記されていたので、そちらに送信した。

「やだな、コトちゃん、他人行儀な。
 彼と一緒に遊びにきてよ。いつだったら都合がいい?」

 幾度かのメールのやりとりをして、キクは素直にソノとその婚約者に会いたいと願っているのだと思えた。俊春とは婚約しているわけでもないのだが、詳しく書くのも面倒なので婚約者だということにしておいた。

「私もキクくんには会いたくなくもないし、彼とあの長谷繭香の家庭だもの。見てみたいって好奇心はあるんだよね」
「でしょ? 行こうよ」
「俊春さんは私が……元夫の友達と会っても平気?」
「ただの人間じゃないんだし、あの長谷繭香と結婚してる男がソノちゃんには……いや、だから、俺だって女優に会いたいよ」

 なにかにつけて正直な男なのだから、ソノは俊春のそんなところも嫌いではないのだから、苦笑してうなずいた。

 細かくメールで打ち合わせをして再会の約束ができた当日、ハイヤーがソノと俊春を迎えにきた。タクシーならばたびたび乗ったことがあるが、契約して客を迎えに行くハイヤーには、ソノは生まれてはじめて乗った。

 ハイヤーが運んでくれたのは、タワーマンションとでもいうのか。慰謝料がわりのようにしてコトがソノにくれたマンションもまあまあ豪勢ではあったが、こことは比べものにもならない。都心の超高層ビルの一室には、デイジーリリックの所属事務所社員と名乗った女性が案内してくれた。

「やぁ、ものすごく久しぶり。入って」
「……お久しぶりです」
「あ、あの、はじめまして。百瀬です」
「どうぞどうぞ、中へどうぞ」

 以前以上に太って髪の毛も薄くなって、愛嬌のあるおじさんみたいにも見えるキクがいた。デイジーリリックはテレビにも出ているが、ソノとしては積極的には見ようとはしなかった。

「いらっしゃいませ。お会いしたかったんですよ、ソノちゃんって呼んでいい?」
「え、ええ、どうぞ」
「こちらは百瀬さんね。お似合いだわ」

 ずーっと奥へと通ると、長谷繭香がにこやかに出迎えてくれた。彼女も三十代になって盛りはすぎているのかもしれないが、肌の透明感やさりげない普段着が美貌を引き立てて見えていた。

「じゃあ、立花さん、よろしくね」

 長女はマユユ、長男はコトユ、繭香が子どもたちを紹介してくれ、子どもたちはお行儀よく挨拶をした。母の名と父の親友の名から取ったのか、平成生まれらしい名前を持つ子どもたちは、ソノたちを案内してくれた女性に連れられて部屋から出ていった。

「大人の会だから、今夜は彼女がシッターをしてくれるんですよ。子どもたちももう小さくもないけど、部屋に閉じ込めるのもかわいそうだもの。さあさ、ゆっくりしていって下さいね。飲めるんでしょ」

 ケータリングだという料理が出てくる。シャンパンも出てくる。料理や酒を運んできて給仕してくれるのはメイドであるらしい。中年の女性がふたりでサービスしてくれた。

 四人で乾杯すると、まずは繭香が現在撮影中の映画の話をした。明後日からロケでフランスに行くのだそうで、しばらくは休暇もなくなるらしい。そんなときに悪かったよね、とキクが妻に言い、あなたのお友達だもの、と繭香が微笑む。

 なんだか来たらいけなかったみたい、とソノは首をすくめたが、俊春はただ感激していてぽーっとしているらしい。

「俺、芸能人に会ったのはじめてですよ。キクさんもかっこよく見える。長谷繭香さんはものすごーく綺麗で、俺、頭が変になりそうです」
「そんなに褒めていただいて光栄ですわ」
「はい……」

 真っ赤になっている俊春に鷹揚な笑顔を向けた繭香は、ソノに向き直った。

「コトも誘ったんだけど、先約があるんですって。そしたら私が行くって真美ちゃんが言ってたけど、どうかしら」
「さあね。どうだろね。気にしなくていいから飲もうよ」

 真美とは赤崎真美? ソノとはまったくの無関係のはずの女子アナの彼女とは、現夫と元夫が同一人物というつながりがある。他の誰もが知らなくとも、真美は知っているだろう。

 ただただ、繭香さんは綺麗だなぁ、美人だなぁ、最高だなぁ、としか考えられないでいるらしき俊春は、勧められるままにグラスを重ねている。キャビアやフォアグラなども並んでいる料理を食べては、うまいけど、繭香さんのほうが綺麗だ、などと意味不明の台詞を口走っていた。

「あの、繭香さま……」

 奥さまなんて呼ばれたくないから、メイドさんたちにも繭香さまって呼んでもらってるの、と繭香は言っていた。メイドのひとりが繭香に耳打ちし、繭香は肩をすぼめた。

「キク、来たみたいよ」
「ええ? 真美ちゃんが?」
「真美ちゃんひとりじゃなくて、友達を大勢連れてきてるみたい」
「女子アナ仲間?」
「女子アナもタレントも……追い返すわけにもいかないし、俊春さんはそういう女の子たちはお好きみたいだしね、お通しして」

 かしこまりました、とメイドが引っ込み、ほどなく数人の女性が部屋に入ってきた。見たくもなくてもテレビをつけると見てしまう、人気女子アナの赤崎真美、彼女も若くはないが、デイジーリリックのコトの妻となって箔をつけたようで、フリーになってからもひっぱりだこだ。

 ちらっとソノを見やり、ああ、あんたがね、という顔をした真美は、若くて可愛い女性を五、六人引き連れていた。俊春は目をまん丸にしてへどもどしている。繭香が仕切って、今度は全員で乾杯した。

「サラリーマンなの? そういう仕事もいいよね」
「私の周りなんてちゃらい芸能人ばかりだから、俊春さんって新鮮だわ」
「私なんかこの間、芸人に告白されたんだよ。あいつだったら俊春さんのほうがましだな」
「なに言ってんだよ。俊春さんはあたしのものだよーだ」
「馬鹿じゃね? 俊春さんって彼女いるんじゃん」
「彼女ってあれ?」

 俊春を囲んでいるタレントや女子アナの卵らしき女たちが、ソノを指さしてぎゃはぎゃは笑う。キクは言った。

「ソノちゃんとゆっくり話もできないね。あっちの部屋に行こうか」
「いえ、別に話すこともありませんから」

 あー、浮気!! と叫ぶ女やら、きゃあ、キクちゃん、ふられてる!! と笑う女やら。どうやら真美の一行は少々飲んできているらしい。真美は言った。

「噂には聞いてたけど、安心したかな」
「真美さん、なになに?」
「言わせるの? 性悪ぅ!!」
「あたしがかわりに言ってあげようか」
「言うなっての」

 キャバクラってこんな感じなんじゃないの? 女たちが嬌声を上げ、中には俊春の頬を撫でたり腿に手を置いたりしているのもいる。俊春は嬉しそうにでれでれするばかり。ソノは立ち上がった。

「おいとまします」
「え? ソノちゃん、もう帰るの?」
「キクさんと繭香さんにお会いできてよかったです。これで二度と会うこともないでしょうけど、お元気で」
「そんなこと言わないで。ソノちゃんも家庭を作るんだったら……ああ、送っていくから待ってて」

 またまた女のひとりが、キクちゃん浮気しようとしてる!! と叫ぶ。繭香は素知らぬ顔をしているが、真美が言った。

「キクちゃんはあんな顔でももてるんだから、なにもあんな下級な女ってか下等な女ってか、ブスってかブタってか……やだぁ、酔ってるわ、失言、ごめんね」
「真美ちゃん、顔を洗ってきたら?」

 つめたく繭香に言われて、真美は舌を出している。キクはタクシーだかハイヤーだかを呼ぼうとしているのか、スマホを取り出している。俊春はこちらなど見てもいないので、ソノはひとり、部屋から出ていった。


3

 でれでれが顔に貼りついたまま固まってしまったような表情で、俊春がソノに打ち明けたのは、キクと再会してから半年ほど後のことだった。

「悪い、別れてくれる?」
「いいけど、どうして?」
「ソノちゃんとつきあっててよかったことって、これが最大だよ。キクんちで会っただろ。モデルのメリちゃん」
「どの子だったかな」

 五、六人いた女たちの区別はつかなかったが、モデルだというのならば長身で痩せた女か。顔はソノの記憶には残っていなかった。

「メリちゃんに告白されて、俺にはソノちゃんがいるからって断ったんだけど、二、三度寝たんだよね。そしたらできたって……」
「ああ、そう」
「怒らないの?」

 怒る値打もない、と言う必要もない。ソノは俊春を無言で見つめた。

「ごめんね、俺はソノちゃんだって嫌いじゃないし、結婚相手としてはソノちゃんのほうがいいとは思うんだ。モデルなんて頭悪くて浮ついてるもんな。ソノちゃんは俺に惚れてて、告白だってソノちゃんのほうからしたくらいだもんな。いやぁ、俺、もて期?」

 告白はあんたがしたんでしょ、と訂正する気にもなれなかった。

「だからさ、メリは遊び相手、ソノちゃんと結婚するって方向で行きたかったんだけど、妊娠されたらお手上げだよ。そこまでして俺と結婚したいって、メリもけなげだよね」
「そうだね」
「ほんとにごめん」
「いいのよ」

 あんたの本性が結婚する前にわかってよかったわ、バツニになるよりははるかにいいわ、とも言わず、ソノは席を立った。

 こんなミーハー男だとも知らなかったが、キクの家に俊春を連れていったことを後悔はしていない。幼稚園のときにコトと知り合ったのがすべての発端だったのだろうけれど、それだって後悔したってどうしようもない。

 今になって思うのは、もう二度と、絶対に、ミュージシャンなんて人種と関わりになるのはやめよう、とそれだけだった。

END







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~ Comment ~

NoTitle

・・・。
・・・・・。
・・・・・・・。
私の母親もバツイチでしたけどね。
あまり、そういったことは瑣事だと思います。
人間は過去ではなく、現在しか見れない生き物ですから。
過去に拘る人間は醜いと・・・。
今の年齢だから分かるのかな?

LandMさんへ2

お母さまが……そうなのですね。
もしもご気分を害されたのだとしたらすみません。

このストーリィの場合、離婚は特に問題じゃないのです。
主人公の元夫と、彼の所属する世界が特殊で問題なのですよね。
一般人にはやはり、ディープすぎる世界なのかもしれませんね。

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