ショートストーリィ(フォレストシンガーズ)

FS「真」物語「真っ青」

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フォレストシンガーズ

「真」物語

真っ青

「幸生、おまえ、これ好きだろ、やるよ」
「……にゃ?」

 どさっと俺の腕の中に大量のグッズを投げ込んで、本橋さんは行ってしまった。
 あのね、リーダー? あなたは何年俺とつきあってるんですか? 俺が無類の猫好きなのは知ってるみたいだけど、これはちがうでしょ? 耳のないロボットは、俺は猫だとは認めない。

「こんなこといいな できたらいいな
 こんな夢あんな夢いっぱいあるけど
 みんなみんなみんなかなえてくれる
 不思議なボッケでかなえてくれる」

 この歌ではこう続いていたっけ。

「未来の世界の猫型ロボット
 どんなもんだい僕、ドラエモン」

 あれ? 別の歌だっけ?
 どっちでもいいけど、ぼくドラえもん、ぼく猫型ロボット、と自称しているのだから、猫型にちがいはないのだろうが、あくまでも「型」であって猫ではない。

 いつ、どこで、俺が、ドラエモン好きなんて言った? え、本橋真次郎?
 しかし、俺は好きではないが、俺の身近にはこんなのが好きそうなガキがいる。俺の息子ではなく、甥だ。ありゃ? だったらもっと身近に、こんなのの好きな子どもがいるではないか。

「広大はドラエモンは好きじゃないの?」
「ああ、おまえももらったのか。俺ももらったんだよ。広大はドラエモンよりも宇宙船なんかのほうが好きなんだけど、こんなのも喜ぶだろ」
「本橋さんにも甥はいるのにね」
「本橋さんちの甥御さんたちは、ドラエモンって年じゃないだろ。美江子さんの甥御さんってのは住まいが遠いから、おまえにくれたんじゃないのか」
「俺はドラエモンって年なんですか」
「……そうだな」

 あっさり、シゲさんに肯定されてしまった。思い込みの激しい本橋さんは、シゲさんちの息子の幼児はドラエモンが好き、猫好き幸生は猫型ロボットが好き、と決めつけたらしい。

 子どもというのは身近にはシゲさんちの広大と壮介しかいない。壮介はまだ赤ちゃんなので、フォレストシンガーズ周辺では子ども向けグッズは広大に集まる。
 あとは本橋さんと美江子さんの甥、姪、俺の甥。

 乾さんはひとりっ子独身、シゲさんの姉さんは独身、同じく独身の章の弟は大学生だから当然独身、各々にいとこや親せきはいるが、もっとも身近なのはやはり広大だ。

 ほうぼうから集まったおもちゃに囲まれて幸せそうな広大は、今夜、パパからドラエモングッズのお土産をもらうのだろう。夢の中で頭にタケコプターをつけて、宇宙旅行でもするのかな。そんな想像をしていると、俺も甥っ子たちにプレゼントしてやりたくなってきた。

 生粋の女好き、いっそあっぱれ、と言われている俺は、妹の子たちだって女の子がよかった。シゲさんちの子どもだって女の子がよかった。なのになんの因果か、全部男の子。幸生が変な気を起こさないように、神さまが配慮したんだよ、と章が言っていたが、俺はロリコンではない。

 純粋に、お守りをしてやるにも遊んでやるにも女の子のほうが楽しいな、と思っているだけなのに、男の子ばっかりだ。つまらないけど、たまには甥にもかまってやろう。

 母に電話をして、妹たちを実家に集めてもらった。上の妹の雅美の息子は誓雅、下の妹の輝美の息子は北杜。ともに広大よりも幼いのだが、ドラエモンだったら知っているだろう。ドラエモンってのはうちの母が若かりしころ、まだ独身だったころから雑誌に連載していたのだそうで、俺がものごころついたころにはテレビアニメもやっていた。

 息の長い人気者。フォレストシンガーズもそんなふうになりたいな、なんて思いながら、約束の日にお土産を抱えて実家に出向いた。

「おじちゃん?」
「ユキちゃんだよ」
「ユキ?」

 お喋りができるのはセイガだけだが、今から洗脳しておけばホクトだって俺をユキちゃんと呼んでくれるだろう。若かりしころ、好きな女の子にユキちゃんと呼んでほしくてお願いしても、女の子みたいだとか、えー、そんなのぉ、だとか言われたのを思い出す。

「セイガ、おじちゃんでいいのよ」
「ホクトも、このおじちゃんの言うことなんか聞かなくていいんだからね」
「伯父の言うことを聞かなくていいなんて、おまえたちは息子にどんな教育をしてるんだ。俺は独身なんだから、おじちゃんなんて呼ばれたくないんだよ」

 妹たちに横槍を入れられてもめていると、セイガもホクトもきゃはきゃは笑う。母もやってきた。

「幸生の声ってセイちゃんやホクちゃんに似てるのよね。雅美も輝美もちょっとおばさんっぽい声になってきたけど、幸生は子どもみたいな声だわ」
「あのさ、母さん、俺がおばさんみたいな声になったらどうすんだよ」
「そうねぇ、おじさんの声にはなりそうにないし」

 高校生の俺に、あんたってほんとに男? 染色体の検査をしたほうがいいよ、と言った母である。外見はおばさんになりつつある妹たちも、おばあさんに近くなってきた母も、中身はちっとも変っていない。俺のことが言えた義理か。

 腹が立つので、俺は甥たちに向かって言った。

「おじちゃんの言うことを聞かないと、これ、やらないよーだ……あ……」

 自らおじちゃんと言ってしまった口を押さえる。なによっ、大人げないねっ、と雅美が怒り、くれないんだったらいらないもんねーだ、と輝美はホクトを抱きしめる。母は俺の頭をごちっと殴った。

「甥たちの前で殴るなよな。伯父の威厳が台無しだろ」
「そんなもの、最初からないくせに」
「威厳がほしかったら、幸生も結婚しなさい」
「三十過ぎて独身で、そんな子どもみたいな服を着てる男に、威厳なんかあるわけないじゃん。ねぇ、輝美ちゃん」
「そうだよねぇ、雅美ちゃん」

 これぞ藪蛇。だから親の家になんか来たくなかった。妹たちになんか会いたくなかった。本橋さんがこんなものをくれるからぁ。伯父として甥たちにサービスしてやろうと思ったのに、この恩知らず。

「おまえたちは今、世界中の三十代独身を誹謗したんだぞ。あやまれ」
「お兄ちゃんのことしか言ってないもん」
「ね、ホクト、あんたは将来、こんな男にならないようにね」
「セイガ、おじちゃんを反面教師にするんだよ」
「……くそ」

 いや、恩知らずは妹たちだった。そんな奴らだと知っているのに、兄心を起こした俺がまちがってました。俺が馬鹿だったのです……。

END







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~ Comment ~

NoTitle

ユキちゃん、妹たちに苦労してるのに、やっぱり甥っ子より姪っ子がいいのかな。
いやいやユキちゃん、小さくても女の子は女。
男の子のような素朴な純粋さはないのだよ~(笑)

あ、そのうちシンちゃんのところに可愛い女の子が生まれるかも。
でもきっと警戒してユキちゃんにだっこさせてくれ奈でしょうね、シンちゃん^^
そんなシーンもたのしそうです。

あらら

ユキちゃんの妹さんたち(とお母様)、恐るべしですね。いや、ユキちゃん、完全にやり込められていますが、やはり女性たちのパワーは侮れないのでしょうね。あれ、それでも姪っ子がいいのか、と思ったらlimeさんが同じことを書いておられた^^; そうそう、プレゼントを探したり服を買ってあげるのはやっぱり女の子がいいけれど、実際にはあげたものを放り出しているのも女の子……私の好みじゃないわ!って感じなんでしょうか。

「俺はドラエモンって年なんですか」
「……そうだな」
ここが大受けでした(*^_^*)
いや、威厳なんてなくてもいいんだよ! ね。
でもこうして実家に帰って、妹たちを招集して……いろいろ言われるけれどやっぱりハッピーなのかもしれませんね。

limeさんへ

いつもありがとうございます。

小さくても女は女、の女の子が大好きなのですから、誰がなんと言ってもユキは女の子が好きです。

思い起こせば長く長く小説を書いていますから、そのときどきに書いていたものの中には必ず、三沢幸生に似たキャラがいました。

軽くておしゃべりで調子が良くて、というタイプ。
女が大好きな男。

ユキはその両方ですから、もはや最強……かな?

そういえば美江子の弟の子どもも男の子ですし、真次郎の兄のところには女の子がいますけど、もう小さくはないし。
子どもを書くにも私はやっぱり、男の子がいいようです。
ユキと真逆ですね。

大海彩洋さんへ

コメントありがとうございます。

ユキは懲りない奴ですから、いくら母と妹たちにやっつけられまくっていても、それでも女が好きなのです。

私は実際におつきあいするのでしたら、子どもでも女の子がいいです。
でも、書くのは男の子のほうが楽しいのですよね。

「俺はドラエモンって年なんですか……」
 そうなんです、精神年齢がね。

うちの父が母に「お父ちゃんは威厳がない」と言われ、「なんで威厳なんか必要なんや? そんなもん、いらん」と言っていたのを思い出します。
そのとき、ふーん、お父ちゃんもたまにはいいことを言う、と子ども心に私は思ったものでした。

私は威厳のある男は苦手だから、ユキみたいなのがいいのでしょうね。
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