ショートストーリィ(花物語)

花物語2015/六月「きみはサンダーソニア」

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サンダーソニア
花物語2015

注:フってなに? と思われる方は、好奇心を起こされたのでしたら覗いてみられるか、見ないほうがいいのか……どちらなのでしょうかね。
腐の女性たちが主人公ですので、著者としてはオススメは致しません。そういうのがお嫌いではない方はどうぞ~。読んでいただけるととても嬉しいです。


六月「きみはサンダーソニア」


 なにを思ったのか親にサフランなどという名前をつけられたのは迷惑だったのだが、作家になるとユニークな名前は貴重だと思うようになった。

 本名の沙芙蘭は字がありふれているので、ペンネームは娑腐乱。こりゃまたすげぇ名前ですなぁ、とたいがいの人に言われていた。

「沙芙蘭だってありふれてはいないじゃないですか? サフランって名前がありふれてないんだもの。なんでそんな変な字のペンネームにしたんですか?」
「娑婆で腐って乱れてるんだよ。私にはぴったりでしょ」
「要するにあなたは腐女子ですか」
「女子ってほど若くないから、貴腐人ってやつね。貴腐ワインともいう」
「……なるほどね」

 大人の愛好者も決して少なくはないらしいが、建前は少女向けの雑誌「ローズガーデン」は、ボーイズラヴ漫画と小説をふんだんに載せている。娑腐乱著「妖しい花々」もむろんそのたぐいの小説で、短編を毎月連載していた。

 花をモチーフに、男同士の愛の世界を描く。少年と少年、少年と青年、少年と中年。サフランは男同士の耽美な愛を描きたいのだから、かたわれは必ず少年だ。中年と中年だったりするとぞっとする。

 昨今はサラリーマン同士だの、ドラッグストアに買い物にきた主夫と薬剤師の恋だのという小説や漫画もあるのだそうだが、それでは男と女の凡百の恋愛小説を男と男にしただけではないか。メンズラヴはいらない。サフランは美少年が好きなのである。

 毎月のテーマの花探しに、サフランは今日は植物園にやってきた。
 ウィークディのせいか入園者の姿はまばらで、あてもなく歩いていたサフランに話しかけてきた女性がいた。

 話の流れで小説家だと言うと、なんて名前? サフランさん? へぇぇ、と彼女は感心し、会話がディープなほうへと進んでいったのだった。

「そんなふうに言うってことは……あなた……お名前は?」
「私は平凡ですよ。花子」
「ほんとに?」
「まあまあいいじゃないの」

 四十路になったサフランよりも、彼女は十歳くらい若いだろう。この世代で「花子」とは平凡ではない。疑わしい気分でいるサフランに、彼女は名札を見せてくれた。

「花子って姓なの?」
「どっちでもいいじゃないですか」

 ショップや居酒屋の店員などにも、姓ではなく名前の名札をつけている者もいる。公には姓を名乗りたくないのか。個人情報にはうるさい時代だからなのか。サフランとしても花子の名前を追求するのはそこまでにしておいた。

「では、花子さん、あなたもフのほう?」
「嫌いじゃないですよ。サフラン先生はどんな小説を書くんですか」
「先生はやめてね」
「じゃ、サフランさん。花の取材にいらしたんでしょ。案内しますよ」

 暇だったらしく、花子は植物園を歩くサフランに同行してくれた。

「サフランっていえば、この花はユリ科に分類することもあるんですけど、イヌサフラン科ってのが一般的なんですよ」

 そこにはオレンジいろの風鈴形の花が咲き乱れていた。

「サンダーソニアだね」
「そう。この形から「クリスマス・ベル」とも呼ばれます。「チャイニーズ・ランタン・リリー」の英名もあります」
「いいなぁ、私の名前にも合ってるわけだ。サンダーソニアボーイズラヴを考えよう」

 多年生植物であるサンダーソニアは、南アフリカ共和国東部の旧ナタール共和国などの高地が原産地である。1851年にジョン・サンダーソンが発見したことから、この名前がつけられた。現在は農地開発や乱獲により、保護区を除いては、野生で観察するのは難しい。

 現在はニュージーランドなどで盛んに生産され、生け花やフラワーアレンジメントなどで利用されるため、主要消費国の中でも日本の存在感は大きい。

 専門家らしい花子の解説は、サフランにはどうでもいい。この花を美少年同士の恋愛物語にするには……と妄想をめぐらせていた。

 黄いろ味の勝ったオレンジの可憐な花。年若い美少年にたとえてもおかしくはない。

「イヌサフランなんだよね。イヌっていうと……」
「あれはは、オオバコ科クワガタソウ属の越年草ですよ」
「イヌっていうと……だけでそこへ行きつくのね」
「そりゃあね、フですから」

 植物学者でもあるらしいから、花子が即、なんとか科なにやら属などと言うのは当たり前なのかもしれない。が、イヌといったっていろいろあるだろうに、そっちのほうを連想するのも別の意味でさすがであった。

「花言葉なんかにも詳しいの?」
「管轄外ではありますが、知ってますよ」
「サンダーソニアは?」

 「愛嬌」「祈り」「共感」「望郷」「祝福」「福音」「純粋な愛」なのだそうだ。で、もうひとつは?

「信頼、女性の誠実」
「意外な花言葉?」
「ってか、意味深じゃありません?」
「かもね」

 同じことを考えているのかいないのか、ふたりともになんとなく目を白黒させているようなのがおかしい。
 偶然にも知り合った女性は、得難い友になったくれるかもしれない。サフランはかなり強くそう感じたのだが、花子もそう思っていてくれるだろうか。

 植物の知識が豊富でなんでも教えてくれるからだけではない。なんといっても「腐」の趣味が一致しているほうが大きい。この年齢で新しく友達が作れるかしら……サフランの胸は期待でふくらんでいた。

END






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~ Comment ~

サフラン

注意書きがあったから、どんな濃い奴を書かれたんだろうと思っていたら、とてもかわいらしい感じのやり取りでしたね^^
娑腐乱さん、同人じゃなくて、書籍で書かれているんでしょうか。
まだまだ、きっと偏見の持たれる難しいジャンルでしょうね。
私も、偏見は無い方なんですが、やっぱりおじさん同士はかなり引いてしまうかな。(誰も私の好みはきいてないってw)
だけど、そう言うストーリーを職業にしている人って、食傷気味にならないのでしょうか。これも、好きでないと難しいジャンルですよね。

サンダーソニアは、可愛らしい花ですよね。
花を題材に書くって言うのは面白いなあ。一体どんなストーリーになるんでしょう。
私も「ぼく夢」に、植物を使いたいので、いろいろ調べているんですが、もう思い切って架空の花にしちゃおうかな、とか大それたことを考えています。
触手植物とか、出てきたりね^^ふふ。←危ない

limeさんへ

いつもありがとうございます。

BL系には激烈な拒絶反応を示す方もおられるようですし、18禁もFC2はうるさいようですので、「注意」を入れるようにしているのですが、今回全然たいしたことはありませんよね。

反面、中年同士メンズラヴ愛好者もいるようですが、私もやっぱり「美」がつかないとなぁ……美中年と美少年だったらいいんですが、美中年と美青年となるとちょっと……と、書くのも読むのも注文が多いです。

「イヌ○○○」もはっきり書けない、書きたくないくらいですから、あまりにリアルな描写も苦手です。

サンダーソニアは私も大好きな花です。
limeさんは架空の触手植物ですか? 食虫植物とか、猛毒植物とかもいいですね。妄想するとエロティックです。
巨大な植物の触手にからめとられた白い肌の美少年が……以下、自粛しておきます。

NoTitle

今日は休みだったので、鍵コメ見て飛んできました。
おお?あの妄想のお話を、膨らませて書いちゃったんですか!
個人的にすごく読みたいです。
このユーモアを分かってくれる人がどれくらいいるのか分からないですが(私の読者様は男性も多いし)でも私はすごくたのしいなあ~^^←変な人?
もしよかったら、読ませてください。ここにUPしてもらってもいいのかな?(私のお話知らない人には??だから、申し訳ないけど・・・)

ああ~~、触手が~~の妄想も、ごちそうさまでした。
やっぱりきれいなものはいいですよね^^若い子もいいw
(でも耽美系の少女漫画は、ちょっと苦手でした><あの濃い絵柄とか・・・。私はせいぜい、猫耳萌え系だな^^)

limeさんへ

早速のお返事、ありがとうございます。

昔、よそさまのキャラをお借りしてパロディを書きましたら、その方のファンだと名乗る方に「冒涜だ」とか怒られた経験があるものでして。
今になって思うと、ご本人が怒ってらしたのかなぁ、なんですけどね。

ふくらませたと言ってもほぼあのまんまで、ちょっと小説っぽくまとめただけなんですけど、かまいません?
え、え、えっ、どうしてリクくんが妊娠?
だなんて突っ込んだら、超長編になりそうですから、そこはさらっと流して。

もうすこしだけ考えてみますね。
limeさんがお許し下さるのでしたら、近いうちにアップさせてもらいます。

グロテスクな肉食植物の淫猥な触手の先が少年の……あわわ、こんなことを書いたら、FC2に不正コメント扱いされそうですね。
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