キャラクターしりとり小説

キャラしりとり15「お婿にもらって」

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キャラクターしりとり小説15

「お婿にもらって」

 友人に頼まれた。

「うちの母親が主催する、パーティがあるんだよ。男女取り混ぜてのコンパニオンを頼んだんだけど、人手が足りないんだよな。愛斗、バイト代はもちろん出すから手伝いにきてくれない?」
「パーティって、客は医者?」
「主な客はみんな医者だよ」

 面白そうかもな、と答えて、パーティにやってきた。友人の両親は医者。彼も僕と同じ大学の医学部に在籍していて、主催者の息子なのだから、ホステス夫妻の補佐といった役どころだ。コンパニオンは女性が三分の二ほどで、男のコンパニオンは女性客のサービスをしろと言われた。サービスといっても変なことではなく、ひたすらに女性たちを気持ちよくさせてあげること。これってホストクラブのバイトに近いんだろうか。

「愛が一斗でマナトくん、キミのルックスにはお似合いかな」
「そうですか。褒められてるのかな」
「褒めてるよ」

 お名前はなんていうの? いくつ? と声をかけてきたのは、ちょっといかつい体格の女性だった。愛斗、二十歳です、と答えると、一緒に飲まない? と誘われたのだが、僕には仕事がある。彼女は僕に名刺をくれた。

「ケータイの番号を教えてくれたら嬉しいな。また電話するわ」
「ああ、はい」

 そういうことをしていいのかいけないのかわからなかったが、お客とメールアドレスや電話番号を交換するのは厳禁と命じられていたわけでもないのだから、僕は彼女に言われた通りにした。

 けっこう楽しかった仕事が終わっての帰り道、電車の中で彼女にもらった名刺を眺める。土渕好美、富士見病院内科医と書いてあった。富士見病院は大きな総合病院だ。パーティを主催した友人の両親は開業医だが、富士見病院に勤めていたことがあると聞いていた。

 全部のお客にどこで働いているのかを聞いたわけではないが、富士見病院の話題はあちこちから聞こえていたから、関係者が大勢パーティに来ていたのかもしれない。

 名刺にはケータイの電話番号もメールアドレスも書いてある。名刺って個人情報を公開するものなんだなぁ、なんて考えて、別のことも考える。
 また電話するわ、と好美さんは言ったが、キミが電話して、と言いたかったのが本音なのだろうか。僕だって相手が年ごろの近い可愛い女の子だったらこっちから電話するが、好美さんじゃあね。

 ブサイクというわけでもないが美人でもない。背は僕よりもやや低く、骨組みのがっしりした格闘技選手みたいな体格で、体力がありそうだった。頭がいいのは見ただけでわかるような知的な顔をしていたから、悪い印象はなかった。彼女から電話がかかってきたら、話をしてあげてもいい。

 電話は翌日にかかってきて、デートに誘われた。電話で話をするんだったらいいけど、デートか。でも、年上の女性なんだからおごってくれるんだろうし、僕も暇だからいっか。

「待った? ごめんね?」
「いえ」

 指定されたのはホテルのラウンジ。仕事帰りらしい好美さんは白いブラウスにブルーのパンツで、黒いパーティドレスよりも似合っていた。

「ここでゆっくり話してから、食事に行こうか。愛斗くんは食べ物の好き嫌いはある?」
「肉はあまり好きじゃないから、シーフードがいいです」
「イタリアンだったらいいかな。愛斗くんって大学三年だっけ?」
「はい」
「そろそろ就活?」
「秋には解禁ですね」

 食べ物の話をして、そしたらあの店に行こうかと、「ピエトロ」というイタリアンレストランに連れていってもらった。レストランではさらに突っ込んだ話もして、好美さんが三十五歳だとも知った。

「愛斗くんって聞き上手だよね。話してて楽しいわ。私がデートに誘ったら出てくるんだから、彼女ってのはいないのかな」
「いるんですけどね」
「あら、そうなんだ。ま、私ほど年上の女とデートだったら、彼女も妬きもしないよね?」
「妬くかどうかは知りませんけど、言わなかったらいいんですから」
「そうだよね」

 ラウンジでのコーヒー代もレストランの料金も、当然のように好美さんが払ってくれた。彼女との会話は僕だって楽しくなくもなかったのだから、また会おうね、と言われてうなずいた。

 また会おうと言われても、好美さんは仕事が忙しい。僕はそれからは就活が忙しくなって、そうたびたび会うわけにもいかない。僕には本当の彼女とのデートもあるし、好美さんにだって同僚や友人とのつきあいもあるのだろう。今夜は看護師さんたちと飲み会、ぱーっとおごってあげなくちゃ、というメールが届いたこともあった。

「愛斗は就職、どう?」
「うん、がんばってるんだけど内定はまだ勝ち取れないな」
「私もだよ」

 本当の彼女の菜々美と会っていると、就活の話題ばかりになる。彼女も僕も暗くなって楽しくない。菜々美はため息ばかりついて言った。

「でも、男はもっと大変なんだよね。女は結婚して主婦になるって手もあるけど、男は一生働かなくちゃいけないんだもん。私はとにかく、結婚までは楽しく働ける会社を探すつもり。愛斗もがんばって」
「うん。菜々美ちゃんもがんばって」

 結婚の話なんてしたこともないけれど、いつかは僕と、と菜々美は考えているのだろうか。僕だって一生働くなんていやだなぁ、就活がうまくいかないとネガティブになって、悲しくなってきた。

「愛斗くん、元気?」
「あんまり元気じゃないんです。好美さんは暇はないんですか」
「暇は作ればなくもないよ。デートしたいの?」
「おいしいもの、食べたいなぁ」
「そうね。じゃあ……」

 手帳でも調べているのか、電話のむこうでごそごそしてから、好美さんは言った。明後日はお昼に仕事が終わるから、一緒に夕食を、と言われて僕は了承した。

「そっか、就活が難航してるんだ」
「そうなんですよ。好美さんと知り合ってから一年近くになって、僕の大学生活もあと一年も残っていない。ずーっと大学生でいたいな。このまんまのほうがいいなって思ってしまうんです」
「最近の就活はしんどいんだよね。それをモラトリアムっていうんだけど、気持ちはわかるな」
「すみません、暗い話になっちゃって」
「いいんだけどね……」

 学生のデートでは来られないような高いシーフードレストランで、伊勢海老のテルミドールを食べながら、好美さんは上目づかいで僕を見た。

「いっそ……」
「なんですか」
「お婿にもらってあげようか。半分はジョークだけど、私と結婚したら専業主夫になってもいいんだよ。二十二歳の専業主婦と三十七歳の医者の夫婦だったら、私の回りにもいくらもいる。逆だったらよくあるんだから、愛斗くんさえよかったら私は大歓迎よ」
「好美さんはそれでもいいんですか」
「それでいいからプロポーズしてるの。半分はジョークだけどね」

 半分はジョーク、それって逃げ道を作るための台詞だろうか。僕は好美さんをじーっとじーっと見た。
 一ヶ月もすれば三十七歳になる好美さんは、二十二歳になる僕よりも十五歳年上だ。若く見えるというのでもなく、頑丈そうな体格のせいもあっておばさん以外のなににも見えない。けれど優しくてかしこくて生活力があって、話を聞いていると看護師さんたちにも慕われているようだ。

 好美さんと結婚すると決めれば、僕は就活をしなくてもいい。僕が女性だとしたら、年上の男性にプロポーズされて結婚すると決めても誰にも非難されない。ネックは僕が男であるということだけ。もうひとつあるとすれば、好美さんが年上すぎることか。

「すぐには決められないよね。考えておいて。断っても恨まないからね」
「あの、えと、結婚するとなると肉体的な相性とかいうものも……」
「あらあら、真っ赤になっちゃって。そりゃそうだけど、愛斗くんは彼女とは別れるの? 私と寝たいんだったらそのあたりのけじめはつけてほしいな」
「彼女にはちゃんと話します」
「そう。そんならホテルに行く?」

 ホテルに行けばプロポーズを受けたという意味になるのだろうか。すこしためらって尋ねてみた。

「好美さんのご両親は反対なさいませんか?」
「私の親は田舎にいるって言ったよね。二十二歳と結婚するって言ったらびっくりはするだろうけど、反対はしないはずだよ。私の親は私が説得するから大丈夫。愛斗くんのほうこそ大変よね。できる?」
「なんとか……」
「そればっかりは私も手伝ってあげられないから、親の説得はしっかりやりなさいよ」
「はい」
「それからね、結婚が決まったら料理教室に通ってね」
「はい。料理は好きですからそれは嬉しいです」

 十五歳年上の医者と結婚して専業主夫になる。そう告げれば親も彼女も驚いて、僕は猛攻撃を受けるのだろうか。それが僕の大人になるための試練だというのならば闘ってみせる。就職して一生働くことに比べれば、楽なものだろうから。

END


これは治樹の小説ということで。
次の主人公は菜々美ちゃんですかね。

とか言ってますが、キャラしりとりは行き詰っています。
この続きはあるかどうか謎です。。。














 


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