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FS俳句・短歌・超ショートストーリィ2015/5

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2015/5 超ショートストーリィ

 無人のはずの屋敷にコソ泥みたいに忍び込む。無人だよな? 誰もいないよな? 建物のほうには向かわずに、生前の祖母が丹精していた庭に入り込んだ。

 祖母が生きていたのは俺が十七歳の年まで。金沢では有名だった乾さんちの家刀自は、年に二度ばかり庭師が入る程度で、家人には放置されているに近い庭を見たら嘆くだろうか。現に草葉の陰で泣いている? いやいや、あのひとは泣かずに怒るだろう。

「さつきまつ 花橘の 香をかげば 昔の人の 袖の香ぞする」
古今集 詠みびと知らず

 昔の女の和服の袖の香。この「昔のひと」は祖母だ。
 目を上げれば、昔、愛した女がその生垣から覗いていそうな、隆也くん、出てこない? と誘ってくれそうな。俺の「金沢」は祖母とあのひと。

 我が家に忍び込んでひとり、橘の花の香りに身をまかせ、昔を偲ぶのも俺には似合いだろう。

TAKAYA/30歳の初夏に

fu5.jpg

岡山和気(わけ)の藤の花です。
はなたちばなではありませんが、五月の花ということで。






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