番外編

FS超ショートストーリィ・四季のうた・夏・章

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フォレストシンガーズ・超ショートストーリィ・四季のうた

「夏の草」

 つわものとは「兵」とも「強者」とも書くらしい。強者だったらフォレストシンガーズは俺以外全員、美江子さんまでも含めて強い。性格か肉体が強い。生い茂った夏草を見て、乾さんが「つわもの」について喋っていた。

「夏草や、つわものどもが夢の跡。芭蕉は平泉でこの句を詠んだんだ。平泉は奥州藤原氏が繁栄を築いた地。兄の源頼朝に追われた義経が、藤原秀衡のもとに身を寄せる。あげく、秀衡の次男・泰衡に襲われて、わずか三十歳で逝く。芭蕉が訪ねる五百年ほど前のことだよ」

 その俳句はそういう意味なのだそうだから、「兵」だ。が、と乾さんは言った。

「後年の人間がどう解釈しようと自由なんだよな。ここに立ってるんだから、シゲだったら……」
「場所を五稜郭に替えて、兵……乾さんだってそう解釈するでしょ」
「俺はシゲほど詳しくないから」
「俺は俳句とかのほうに詳しくないですし、幕末にもそんなには……」

 謙遜のしあいをして、イヤミな奴らだ。

 仕事でやってきた北海道は函館、五稜郭公園。俺は函館で木村章ソロライヴをやったのだから、函館は嫌いではない。故郷の稚内だって嫌いではないが、俺とは親子の縁を切ったといまだに言い張る頑固親父に腹を立てているだけだ。

 新緑の五稜郭。すがすがしい空気と景色。俺にはそうとしか映らない。親父が近くにいるとはいっても、函館稚内間は約700キロ、鈍行に乗ると丸一日以上かかる距離だ。同じ北海道ったってまるで近くはない。

 風が気持ちいいなぁ、あ、あそこにカップルがいる、女の子のほうは綺麗だな、男は……ちびじゃん。あれだったら俺のほうがましじゃない? などとしか俺は考えないのだが。

「あのあたりに土方歳三の遺骸が埋まってるって説がありますね」
「近年になって研究されたんだろ。それもロマンだよな」
「百五十年ほど前に……」
「軍服姿の男たちが……まだ髷も結ってたんだよな」
「百五十年ってそう遠くはない過去ですよね」

 与謝野晶子も詠んでるんだよ、と乾さんが言った。

「悲しくも、皇師とまみゆ五稜郭、オロシヤのためにそなえつれども」

 歴史好きや短歌好きと一緒に歩いていると疲れる。今の歌だって半分しか意味がわからなかった。

AKIRA/33歳/END




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